「トレーナーの匂いを心地よく感じるとDNAの相性がいいらしい」という噂を真に受けたウマ娘(4月25日はDNAの日) 作:のるどすとりーむ
──セイウンスカイ──
「トレーナーさん、トレーナーさん」
「どうした?」
「実はちょっとお願いがありまして」
スカイが頼み事をするなんて珍しいな、と思いながら話を聞く。
「トレーナーさんの、今着てるジャケット。それをちょーっとだけセイちゃんに貸してくれませんか〜?」
「いいけど、なんで?」
まさか俺のジャケットで魚釣りをするのではないのだろうか?一瞬そんなことを考えたが、まさかそんなことはシないだろうと、普通にジャケットを脱いでスカイにわたす。
「じゃあ、ちょっとセイちゃん横になってますね〜トレーニングの時間になったら起こしてください〜」
俺のジャケットを毛布代わりのようにして、ソファの上で寝転ぶスカイ。いったい何がしたいのか、俺にはさっぱり分からなかった。
──
しばらくして、トレーナー室の扉が開く。
「や、セイウンスカイのトレーナーさん。遊びに来ましたよ」
「おお、スペシャルウィークのトレーナーさん。あ、今スカイが寝てるから、少し静かにしてもらえるとありがたいです」
「おお、そっかそっか」
配慮してくれたのか、声のトーンを落としてくれるスペトレさん。
「最近どうですか?」
「あーそうだね。スペも結構調子整えてきているので、多分次のレースには万全の状態で出れるんじゃないですかね?」
「それはよかった。うちのスカイも最近調子がいいんですよ」
「それはそれは、今度のレースが楽しみですね」
お互いにフフフと、不敵な笑みを浮かべる。
──
「……そういえば、そちらの方では、ウマ娘がやけにトレーナーの私物を要求したがる、みたいなことって起きていないですか?」
「え?えーと……」
現在進行系で、俺のジャケットがスカイの昼寝の道具になっている。
「ちょうど今もああいうカンジで……」
「なるほど、やっぱりここもそうなんですね」
「ここも、というとそちらの方でも?」
「ええ、というか学園全体でそういう事案があるらしいですね。なんでも噂では『トレーナーの匂いがいい匂いだったら相性が良い』みたいな話が生徒の間で流行っているみたいですが」
「ハハハ、まさかうちのスカイに限ってそんなことはないですよ」
その瞬間、ソファからブフッという音がした。
「…………スカイさん?」
「…………セイちゃんは寝てま〜す……」
「いつから聞いてたの?」
「……最初から、ですね」
「……ジャケット返してくれる?」
「……断ります。いい匂いするので」
「多分ファブ◯ーズとかの匂いだから、【噂】は関係ないよ」
「そんなことは無いですよ〜……少なくとも一生トレーナーさんの匂いは嗅いでいたい匂いではあります」
「【噂】に関しては否定しないんだね……まあ、気になる年頃かもしれないけど……程々に、ね」
「……」
ソファから蒸気が出てきた。
──キタサンブラックの場合──
トレーナーという忙しい職業が災いして、洗濯できていない服が大量に溜まっていた。どれくらい溜まったかというと、トレーナー寮では捌ききれない寮だ。そういうで、溜まった服たちを学園近くのコインランドリーで洗おうとしたら、偶然学園の近くでキタサンに出会った。
「トレーナーさん、その荷物重そうですね!あたしが運びましょうか?」
「え?いやこれはこれからコインランドリーで洗濯する俺の服だから大丈b」
言い終わる前にキタサンが荷物をかっさらう。
「あたし、先にトレーナー室に運んでいますね!トレーナーさんは【ゆっくり】トレーナー室に来てください!」
「う、うん……」
少し様子がおかしい気がしたが、多分気のせいだろう。というか、これからコインランドリーに行こうと思っていたのだが……
まあそういう勘違いもあるかと思い、トレーナー室に向かった。
──
こちら、トレーナー室の扉の前ですが、明らかにトレーナー室の中の様子がおかしいです。なんかスーハースーハーしているのが扉越しに聞こえます。
「まさかね……」
どっちにしろキタサンから取り返さないといけないので、思い切って、トレーナー室のドアを開ける。
「……え?」
「スーハースーハー……え?」
俺のワイシャツをすごい勢いで嗅いでいるキタサンがいた。
「!?!?」
「あ、えっと……アハハ」
俺が混乱しているのを見ると、キタサンは少し気まずそうに笑う。
「……取り敢えず経緯を話してもらえると助かるな」
「……最近学園で流行している噂をご存知ですか?」
「噂?」
「『トレーナーの匂いを心地よく感じると遺伝子的に相性がいい』という話を聞きまして……」
「もしかして、それで嗅いでいたってこと?」
「まあ……そういうことに……なりますね」
「まじか……」
「あ、そうだトレーナーさん。これだけじゃ物足りないのでもっと匂いのあるやつください」
「君は一回落ち着くべきだ」
「いや、ちょっと待って、眼の前にトレーナーさんというのがいるじゃないですか……最初からこうすればよかったんだ」
「……キタサン?」
「トレーナーさん、失礼します」
「え?え?……ギャアアアアアアアア」
俺の悲鳴を聞いたたづなさんが助けに来るまで俺はキタサンにスンスンスーハースーハーされまくった。