殺し屋してます。幼女拾いました。   作:湯タンポ

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人を殺す才能と人を殺しても何も感じない才能は別物や

根が真面目で優しやつほどそれはハッキリと分かる。





ロシア幼女、実戦を知る。

 

 

 

 

「……今のを避けますか、よく訓練されている。」

 

 

 

 

 

 

「ヒュー!さっすが『CLOVER』のトップランカー水無月。拳銃くらい良けれるってか!」

 

 

その声が聞こえた方向に水無月が視線を向けると、そこには2人の男。

 

 

片や目算2mほどはありそうな大柄のスキンヘッド。

 

片や大学のヤリサーにでも居そうな金髪のチャラそうな男。

 

 

仏陀とキリストが肩組んでるくらい違和感しかないアンバランスな組み合わせだが……共通しているのは、共に拳銃と刃物を所持しているということ。

 

 

「おいおい、日曜日の戦隊ヒーロー物の悪役だってこんなド派手な登場しねぇぜ……誰だテメェら。」

 

 

水無月はテーブルから身を出し、2人の男に問う。

 

 

「ああ?おいおい水無月、この業界で俺らの名前聞いたことねぇのかよ?」

 

 

「然り、我ら『玄龍会』のリュエとスゥエを知らないとは言わせませんよ。」

 

 

「テメェらみてぇなアポ無し野郎知るか!……って言いてぇところだが…『玄龍会』……お前らお節介焼きのチャイニーズ・マフィア共か」

 

 

「その認識で間違いありません、我らが首領は貴女をご所望です。」

 

 

『玄龍会』―――それは中国裏社会最大規模を誇るマフィアである。

 

 

様々な街や国への勢力拡大に余念がなく、水無月が属する組織『CLOVER』も世界最大規模の殺し屋組織であるために、彼らと利権絡みの小競り合いなど

 

はそう珍しいものでは無い。

 

 

しかし、今回のように日本の地で彼らと衝突するというのはあまり聞かない話ではある。(ない訳では無いが)

 

 

「で?大陸から態々御足労してまで何の用だ?爆買いか?電気屋ならすぐそこだぞ」

 

 

「中国の爆買いブームは何年か前に終わりましたよ、水無月殿。それに先程も言ったように我れらの首領が貴女の首をお望みなのですよ。」

 

 

「あっそ、まぁ理由はどうでも良い。そんなことよりよぉ…」

 

 

水無月が、リュエとスゥエに言葉を返しつつテーブルから身を出す。

 

 

その両手には拳銃が握られており、彼らへと向けられている。

 

 

「よくもまぁエリザヴェータとの憩いの時間を邪魔してくれやがって………っ!テメェらみてぇな空気の読めないカス野郎共は杏仁豆腐の具材にしてやんよ…っ!!!」

 

 

水無月が叫ぶとほぼ同時に発砲音が木霊する。

 

 

その銃弾は彼女の両サイドに立っていた2人の足元に着弾した。

 

 

「シュッ……殆ど一発の銃声に大して弾は3発…凄まじい早打ちですね。」

 

 

「ひゅー!しかもそれが2丁同時に火を吹きやがる!噂に違わぬ戦闘力じゃあねぇか!燃えるねぇ!……だが」

 

 

「ええ、我らの敵ではありませんね。」

 

 

リュエとスゥエが余裕綽々といった様子で水無月を挑発する中、彼女はその挑発に乗らず冷静に状況を分析していた。

 

 

(…今のを避けるっつー事は、こいつらはただの雑魚じゃねぇ。武闘派、それも組織のトップから直々に司令が伝わってるってことは…幹部クラスか?)

 

 

水無月がそんな推測を立てたその瞬間、今度は彼女の両サイドからリュエとスゥエのナイフが襲い掛かる。

 

 

「チィッ!」

 

 

回避は間に合わないと判断した水無月は、拳銃を瞬時にホルスターに戻すと、太ももの裏のベルトから一対のカランビットナイフを神速の勢いで抜き取り、それ等を防ぐ。

 

 

(…雑魚じゃあないが、攻撃は対応出来るし、個としてはどちらも俺より弱い。

 

……問題は、妙にうざったい連携、そして何より…)

 

 

「……姉さん」

 

 

(何よりエリザヴェータが見ているからかっこよく勝ちたいっ!!!)

 

 

水無月が両サイドの敵に意識を向けながらちらりとリーザを見ると、彼女は心配そうにこちらを見つめている。

 

 

(うわマジ可愛い……じゃ無くて!この程度の奴等なら心配ねぇってとこを見せとかないとな!)

 

 

「ハッ!」

 

 

「おおっとぉ!?」

 

 

水無月は迫っていたリュエの攻撃を弾くと、そのままの流れでスゥエに回し蹴りを放つ。しかし、それはバックステップで回避されてしまう。

 

 

(やっぱこいつら雑魚じゃねぇしうざっ!ゲームで例えると大した素材ドロップしない癖に無駄に強いやつだろ、しかもそいつらの討伐が目的になるほどのやりごたえは無いビミョーな奴!)

 

 

水無月が心の中で悪態をついていると、またしてもリュエとスゥエのナイフによる連携攻撃が迫り来る。

 

 

「うぉお!?あぶねぇ!か弱き乙女にんな攻撃してんじゃねえよ!」

 

 

「……か弱き乙女…?」

 

 

「さっきコイツと一緒にいたちっこいロリっ子の事じゃね?」

 

 

「……あぁ、なるほど」

 

 

「殺すぞカス共が…っ!殺すけど」

 

 

水無月が額に青筋を浮かべながら2人の連携攻撃を捌く中、スゥエは彼女の言葉を反芻し、リュエと視線を交わして小さく笑った。

 

 

「いやはや、これは失敬。

 

我々の認識ではか弱き乙女には程遠い貴女の力量から鑑みると、か弱いという言葉に縁遠く思えましてねぇ……」

 

 

「…どっちかつうと雌ゴリラじゃね?」

 

 

「それはゴリラに失礼ですよ、」

 

 

「あ゙あ゙?」

 

 

(うん、こいつら死刑。)

 

 

水無月の心の天秤がブチ切れた瞬間であった。

 

 

「茶番は終わりだ、俺らもさっさと帰って女抱きたいんだよね!」

 

 

リュエがスゥエの背後から飛び出し、ナイフを閃かせて水無月に襲い掛かる。

 

 

と同時にスゥエが水無月の退路を塞ぐように移動し、青龍刀を構える。

 

 

 

 

「あ〜ウザ。エリザヴェータの手前カッコつけようと思ったけどもういいわ」

 

 

彼らのその連携を見た水無月は、そう呟いて片方のナイフを戻すと、独特の構えとステップを踏む。

 

 

軍隊格闘術をベースとし、合気道に中国拳法、システマといった様々な技を混合した彼女の我流格闘術。

 

 

水無月が『CLOVER』のトップランカーにまで上り詰めたのは、圧倒的なまでの近接戦闘の戦闘力の高さだ。

 

 

「……シー…ッ…」

 

 

「おいおい急に黙り込んでどうしたよ!さっきまでお喋りだ」

 

 

構えを取るともに静かになった水無月に、リュエが挑発まがいの言葉を掛けようとした。

 

 

しかし、その言葉が最後まで吐かれることは無かった。

 

 

「がアッ…!てめぇなにをしやがっ」

 

 

「……シッ…」

 

 

リュエが言葉を続けようとした僅かコンマ数秒の間に、水無月の目潰しによって彼の視界は無くなり、それに気付いて言葉をあげた時には彼の人生は終わりを迎えていたのだから。

 

 

「リュエ!…っ我が青竜刀で真っ二つにしてあげます!」

 

 

水無月がリュエを仕留めたその瞬間に、スゥエが彼女に青竜刀を振りかぶる。

 

しかし、そんな攻撃を避けられない彼女では無い。

 

 

彼女は振るわれた一閃を難なく回避し、その勢いのまま背後にいるスゥエの首筋へ蹴りを放った。

 

 

「な゙っ!?っく」

 

 

しかし、それはスゥエの青龍刀によって弾かれてしまう。

 

 

(そう防ぐと思った。)

 

 

彼女は防がれる事を察知しており、弾かれた勢いを殺さぬまま回し蹴りをスゥエの金的へ放った。

 

 

「ひぎっ」

 

 

水無月の渾身の蹴りがスゥエの股に直撃し、声にならない悲鳴をあげるスゥエ。

 

 

その一瞬を見逃さず、水無月は得意の早打ちでスゥエの脳髄に三発の弾丸をプレゼントした。

 

 

スゥエの脳髄が弾け、身体が力無く床に倒れる。

 

 

(……状況終了。)

 

 

打ち損じて居ないことを確認した水無月は、意識を切り替えるように一度目を瞑る。

 

 

 

「………え、あ…」

 

 

そして再び目を開けた時、水無月は目の前の光景に、身体を震わせた。

 

 

「ぁ…また、"私"…殺した、ひとを……」

 

 

自らの手で屠った2人の死体の前で、血塗られた両手を震わせながら、水無月はぶつぶつと呟く。

 

 

「いや、違う…殺したのは"私"じゃない…俺が殺したんだ。落ち着け"私"。殺したのは俺だ、水無月だ。」

 

 

自らを落ち着けるように、水無月は早口で自らの名を呼ぶ。

 

 

「水無月、俺は水無月だ。"私"じゃない。―――じゃない。俺が殺したんだ。俺は組織の為に組織に敵対する奴を、俺の命を狙ってきたヤツを殺しただけ、つまり組織の命令に従っただけだ。」

 

 

水無月は、まるで自己暗示をかけるかのように、何度も"私"と"俺"を使い分けながら呟く。

 

 

「そうだ、俺は組織に命令されて人を殺した。だからこれは"私"の意思じゃない。"私"が殺ったんじゃない。……うん。大丈夫、大丈夫だ……」

 

 

「……姉…さん…?」

 

 

 

その様子を見たリーザは、少し顔色の優れない水無月を気にかけた。

 

 

「っ…大丈夫か?エリザヴェータ、怪我とかしなかったか?」

 

 

「……あ、はい。私は姉さんの隠れながら姉さんの戦いを見ていただけなので全然何ともありません。」

 

 

「そうか……なら良かった……」

 

 

水無月はリーザの無事を確認すると、ホッと胸を撫で下ろす。

 

 

「あの…姉さん、大丈夫ですか?」

 

 

「あ、あぁ!大丈夫に決まってんだろ?ちょっと……そう!ちょっと疲れただけだ。」

 

 

「……そうですか、それなら良いんですが……」

 

 

リーザの心配そうな視線に、水無月は笑って返す。

 

 

(やべぇ……さっきはなんとかなったけど、また出てきたらどうしよう。)

 

 

水無月がそんな不安に駆られていると、彼女の携帯から着信音が流れる。

 

 

「っ!」

 

 

その着信音に驚いたのか、水無月の肩が大きく跳ねた。

 

 

「…はい、俺です。」

 

 

だがその動揺も一瞬。彼女は瞬時に意識を切り替えると、組織の人間としての応答を始めた。

 

 

『おう水無月、えらい心拍数上がったって報告合ったけど……大丈夫か?』

 

 

「……ええ、問題ありませんボス。先程玄龍会の襲撃に遭いましたが、撃退に成功しました。」

 

 

相手は『CLOVER』のボス……つまり水無月を含めた組織のトップ。

 

 

電話口の向こうで彼の覇気に満ちた声が響く。

 

 

『…ほー…玄龍会か……また懐かしい奴らやなぁ……死体処理班をそっちに送ったさけ、取り敢えず戻っといで。』

 

 

「はい、すぐに戻ります。」

 

 

『……水無月、またアレ出たんやろ?朧の中国行きは1日延期にしたけ、帰ってきたら朧と話しぃや。』

 

 

「……はい、分かってます。では失礼します。」

 

 

通話を終えた水無月は、携帯をポケットにしまうと、大きく深呼吸をする。

 

 

「ふぅ……よし、エリザヴェータ、宿舎に帰るぞ。」

 

 

「え、あ……はい!」

 

 

水無月はリーザにそう促すと、停めていた車に乗り込んだ。

 

 

 

 







ちなみに私中国の名前とか全然知らないので名前割と適当に着けました、なんか変だったらいってクレメンス。

リーザは成長――

  • する(クーデレロシア美女)
  • しない(合法ロリ)
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