そういえば、アッキー★は21なのに高校三年生でしたね....留年でもしたんでしょうかね(爆笑)
ああ、後タイトルに深い意味は無いです。全然気にしなくて結構ですよ!!!強いていうなら犬をアッキー★に変えて、肉切り包丁で頭をかち割ってください。そうすれば、世界の犯罪が三割ほど減る(予定です)
後いつの間にかUAが二千を超えていた!お気に入り登録も9件だって.....ありがとう....ありがとう....僕、嬉しいよ。
さて____今回も消えずに残ったこの作品!!一体どこまで続けられるのか!?
「じゃあねー!慧音ちゃん!明ちゃん!」
「ああ!気をつけて帰るんだぞ〜!」
「....気をつけるんだぞ。」
この幻想郷とやらに来てすでに二ヶ月程たったが、やっとこさこの環境にも慣れ始めた....もっとも妖怪やらなんやらが居るだけで外の世界とそう変わらない所で慣れるも、慣れないも、そんなに関係無いが。
目の前の風景は既に夕日が出始めている。ついさっきまで子供と遊んでいたが、あの子供達は少し警戒心が薄すぎるのではないのだろうか....いきなり見ず知らずの大人と遊ぶって...いや、信頼している上白沢が居たからか?......まあいい。子供の事などどうでもいい。問題は俺自身だ。それと上白沢も。
上白沢はあの子供達と友達だのと抜かしていたが、この女はぺドフィリアなのかもしれない。これも調査が必要だな....しかし、全てまだ俺の疑いでしか無いが、もしこの女が本当にぺドフィリアで偽善者で売女なら、ろくでなしとかそういう問題では無いな....そういえばなんとなくだが、こいつは周りの人間から避けられているような気がする。俺の想像が正しいならこの状況は納得出来なくも無い。しかもこいつはかなり人の悪意に鈍そうだからな...周りに正体がバレて無いと思っているのかもしれない。
しかし、こいつがもし本気で善意の人間ならこいつは周りの連中に利用されているだけだな。始めの内は、周りの人間は良い顔をしているが、いざとなれば切り捨てられるオチが見えてくるな。今の所まともっぽいのはあの医者位だ。後は子供達か....
まあ、利用しなくてもあんな説教くさい奴と一緒に居たい奴がそういるとは思えないがな.....それ以外にもどことなくこの女には違和感を感じる。満月の時に部屋に入るなと言うのも、あの怪力も、そしてあんなに華奢な体からは想像できない様な戦闘能力(幻想郷に入る前に戦ったあの吸血鬼男を思い出す。)....狼女...妖怪...
....そういえば、未だに俺は妖怪や何やらに遭遇してはいないが、一体どういうもの物だろうか....あの『幻想郷縁起』とやらには様々な姿くらいにしか書かれていなかった。役に立たんな。
しかし、妖怪が本当に居たなんて聞いたら巧ノ助の奴は踊りだしそうだな。それに空を飛ぶ人間に変な結界だ。オカルト好きのあいつは本当に発狂するかもしれない...いや、元からあいつはキチガイみたいなもんか。
この状況をあいつにも見せてやりたい所だが、今は自分の状況を何とかしなければ。外に帰った時にでもあの林の事を教えてやろう。そしてきちんと準備をしてまた一緒に来ればいい...無論、無事帰れればの話だが。
上白沢と歩く人里の道は不愉快極まり無いが、友人の事を思い出したおかげで多少はマシになった。
相変わらず道を通る連中は多い。ほとんどが仕事帰りか、仕事の途中なのだろう。
「上白沢、ちょっと聞きたい事がある。」
「ん?なんだ?」
「お前は、後4ヶ月近く俺を居候させるつもりか?」
「.....?そのつもりだが...それがどうかしたか?」
「いや、赤の他人相手にそこまでやるのはおかしいんじゃ無いかと思ってな。」
「それはまあ...お前を一人にすれば何をするか分からないし...」
「....そうだな。少なくともお前にとっては。」
少なくとも俺はこいつの不利益になる行動を取るだろう。それは確実だ。
しかし、このまま居候なのも面倒臭い。子供達はこの女と遊ぶのを楽しんでいたようだ。俺がいればこの女は俺の事を見張っているだろうし、そうすれば子供は満足に遊べる訳じゃ無い。さっきは動かないで遊べる物......あやとりやらけんけんぱなどをやっていたが、あの位の年頃ならもっと体を動かして遊びたい筈だ。悪い事をしてしまったな...そういえばあの子達は紙芝居がどうとか言ってたな...紙芝居か...水あめとか.......あ、いや違う。子供なんて関係無い。今日の俺の思考のズレはいつに無く酷いな。やっぱりまだ疲れているのか...
まあいい、博麗神社とやらまでの道筋も知った事だし、安全圏から妖怪を見たらさっさっとここを出て行こう。上白沢に何かしらの礼の品でも置いていけばいいだろう。
上白沢の飛行を見せつけられた時は動揺してしまったが、俺はまだ完全に信じた訳じゃ無い。
妖怪という物は恐ろしい物、不可解な物、説明出来ない物...所謂昔の人間には理解出来なかった科学現象に対する総称だというのは巧ノ助の談だったが、ここではそれは当てはまらないらしい。
やまびこなんかがいい例だ。やまびこは現代では山に向かって音...即ち音波が向かい、それが山によって反射されこちらに戻ってくる現象だが、この幻想郷では実際に『山彦』という妖怪がその現象を行っている事になっている。目撃もされているらしい。
俺は巧ノ助の様にオカルトオタクではないので山彦の詳しい事は知らないが、犬みたいな容姿をしているらしい...だがそれだけだ。山彦という妖怪は温厚な性格をしているそうらしいので問題は無いと思うが。
まぁ、妖怪はただの人間では勝てない程に強いとあったが、それこそここの人里を守る自警団のこの女よりは妖怪は弱いのだろう。そうじゃ無ければ偽善者のこの女は戦わないだろう。
まあいい。俺からしてみればあの吸血鬼もどきの金髪の現実離れした強さに比べればこの女の現実的だ.....それでもただ鍛えただけの人間では勝てない程に強いが。
まぁ、まだ現実的な分対応のしようがある。対応のしようがあるこの女よりは弱いなら問題はそう難しくは無いだろう。
「ああそうだ、後藤君。」
突然の上白沢の声が俺の思考を遮る。一体なんの用だろうか。俺に対する説教はもう飽きたぞ。
「なんだ。」
「ほら、家に帰ったら客人用の部屋を掃除しようと思ってな。」
「何故?」
自分の声に若干の苛立ちを感じる....と言っても自分にしか分からないだろう。
「いや、いつまでも君を物置部屋で寝泊まりさせる訳にもいかないしな。」
「...別に俺はどこで寝泊まりしようと関係無いんだがな。」
「.....常識的に考えて、いつまでも客人を物置部屋で寝泊まりさせる訳にもいかないだろう?」
何処か呆れたような顔をする上白沢。こいつにとって俺は居候では無くて客人なのか...
「まあいい....というかなんでこのタイミングなんだ?別にいつでも問題無いだろう?」
「ほら、最近やっと人里の治安が良くなってきたんだ。いまのうちにやっておかないと、またいつ忙しくなるか分からないからな。」
「自警団の仕事か?やっぱり偽善者には美味しい立場だな。『見返りも何も無いのに頑張る自分』を楽して演出出来るからな。」
「........」
「おい、どうした?」
本当に一瞬だった、多分鍛えた自分の動体視力があって初めて見える程の間だった。上白沢の顔が僅かに...そう、ほんの僅かに曇ったのだ。『僅か』にという小さな単位に、『ほんの』と言うそれまた小さな単位を掛け合わせるほどに一緒だった。
ああクソ、こんどは構ってちゃんか....思わず反応してしまった。こいつの思う壺だな。自己嫌悪だ。
「....え!?なにかしたか私?」
「いや、何でも無い。」
.....本人がどうでもいいなら、いいんだろう。構ってちゃんだろうが、本当に何かあったのは知らないが、どちらにしよ深入りしない方が良いだろう。
「ああ、そういえば君に聞きたい事があったんだ!」
「HRUM....なんだ?」
「そうだ!それだ.....それって外の世界の言葉か?前々から気になっていたんだが....」
......そうかそうか、これに興味があるか。
「ああ、外の世界の”ヒーロー”のリスペクトだ。」
「ひ、ヒーロー?なんだそれは?」
「そうか、ここではヒーローって言葉が伝わって無いのか。」
いつ無く自分は饒舌に喋っている気がする。俺は嬉しいのか?自分の好きな物に興味を持たれて.....クソッ!最悪だな...こいつ相手に親しげに話すだなんてな。
「言葉の意味で言うなら英雄って意味になるが、一般的な意味で言うなら人を助ける為に戦っている人間を指す筈だ。」
だが、俺の気持ちに反して俺の口はそのまま饒舌に話を続ける。
「は、はあ...じゃあ、自警団みたいな物だと解釈していいのか?」
「まぁ、現実にいたらそういう事になるな。」
まぁ、あの”ヒーロー”もやってる事は自警活動だからな。漫画だが、リアリティを求めた訳だから。
というか上白沢の様子がなぜだか驚いたような調子に変わりつつあった。一体何に驚いているんだ....
「なんか、楽しそうだな。」
唐突な上白沢の言葉が俺の思考を遮る。見れば上白沢は随分と穏やかな表情をしている。もとより優しげな表情をしていたが、今は穏やかな表情をしている...そうだ、さっきまであの子達に向けていた表情に似ている。
「なんだと?」
「ほら、さっきまで全然表情が変わってなかったのにちょっと嬉しそうな顔をしているぞ。」
「.........」
穏やかな笑みを浮かべながらの上白沢の言葉に思わず黙ってしまった.....
この女の言葉でやっと自分の表情が少し緩んでいる事に気が付いた。慌てて表情を引き締める。
沸々と怒りの感情がこみ上げて来た、この女に対してもだが、自分に対してもだ。こんな事で顔をを緩ませるなんて....
「そのヒーローっていうのが好きなのか?なんならもう少し教え......」
「この話は終わりだ。」
上白沢の言葉を遮り、無理やり話を終わらす。
冷静になろう。こんな事どうでもいい事だ。そうだ....落ち着こう。落ち着くんだ。
「は?.....え?急になんなんだ?」
「どうでもいいし、なんでもいいな。」
「....あー...その...あまり聞かれたく無い事だったのか?だったら謝るが....」
「別にそんなんじゃ無い。心底どうでもいい話題だから二度と話に出すんじゃ無い....いいな?」
「そ、そう言われても.....」
俺も俺だ...好きな物に興味を持たれたぐらいで....駄目だな。慣れたとは言え、やっぱりまだ疲れているのか...この環境に慣れたと思っていたがやっぱりまだ駄目か。
周りの人間のヒソヒソとした話声が聞こえて来る...まあいい。これのおかげでこいつの印象が悪くなればいい気味だ...ちょっと気分が良くなった。ざまあみろ。
...........ん?今なにか聞こえたぞ...周りの声を聞こうと耳を澄ましたが、何かが聞こえた...なんだ。
「おーい....どうしたんだー?」
上白沢が何か言っていたが気にならなかった。なんだ、何の音だ。
耳に意識を集中させる。更に目を瞑り、余計な情報をシャットアウトする。視界という情報が暗くなり、無くなる。すると、自分と外との繋がりは音という情報だけになり、より鮮明に”音”が聞こえ始める。上白沢の声という余計な雑音は意識から除外する。
『まぁた、あいつかよ...こっちに来ないでくれよな....』
『上白沢さんも大変だなぁ....』
『あの”ハクタク”また何かやってるのかしらね....どうせ人間の振りして子供を攫おうとしてる癖して...子供に飽きたから今度は外来人を攫おうって魂胆かしらねぇ...』
”ハクタク”ってのは何かの隠語か....文面的に見れば上白沢の事を指しているんだろうが...やっぱりこの女の異常性に関係しているのか?
それに”人間の振り”か....確かに人間の色素を全力で無視した青い髪や、細い体からは想像出来ない程の怪力、その他諸々。
やっぱりこの女には何か秘密があるのか....何か人間離れした秘密が.....まあいい。今はこいつの事を知りたい訳じゃ無い。聞こえた”音”がなんなのかを知らねば。
更に耳に意識を集中する。
『あいつ.....なんなんだよ....』
『あの人もお人好しよね...』
『...んぐ....グスッ...ヒグッ....』
『なんだよ〜泣くんじゃねえよ。』
子供の泣き声かっ‼︎
自然と自分の足は走り出していた、上白沢の制止の声も少し聞こえた気がしたが、気にする必要は無い。
走っているせいで、周りの景色がめざましく動く。こちらを驚いた様な表情で見る人の顔も一瞬で視界から消え去る。
泣き声は確かにこちらの方から聞こえた。聞こえたのだからそう遠くは無いだろう。たが、自分のいた大きな道には泣いてる子供の姿は見えなかった...つまりは道の両脇の建物の裏側かッ‼︎
子供の泣き声が聞こえた方向の建物と建物の間を通り、裏へと入って行く。
建物が高い為か、日の光が届かずに薄暗い印象を与えられる。ここなら人気も少なく、何をやっても目立ちにくい。
建物の間を抜けるとまるで裏路地を沸騰とさせる細い道が左右に続いていた。
すぐに左右を確認すると、少しした場所に五人組の少年が更に小さい少年を囲んで殴りつけていた。
囲まれた少年はこちらからでも分かる程に泣いてる。明らかにリンチだ....恐らくは何かのイジメか....
「やめなさい君達ッ‼︎」
思わず口から言葉が飛び出していた。恐らくイジメを行っている少年五人組は俺の言葉でこちらに気が付いたらしく、こちらの方に顔を向けた。
俺の姿を見た少年五人組は都合が悪くなったとか『クソッタレ』だの『助かったな』だのいいながら走って逃げて行った。
悪ガキ共め....追いかけても良いが....まあいいか、今はリンチされてた少年だ。
彼を見ると倒れているだけで外傷は無さそうだ。だが、目に見えないだけで何か怪我をしているかもしれない。
見れば、あまり可愛らしい外見はしていない....正直言って自分が言うのもなんだがパッとしない容姿をしている。長い髪が顔を覆っているのとその地味な配色の着物せいか、余計に暗い印象がある。全体的に線が細くなよなよした印象も受ける。
このせいでイジメられてたのか...?
「大丈夫?怪我は無い?立てるか?」
話しかけ、手を伸ばすも、こちらを見ようともせずに嗚咽を上げるばかりで返答が無い。まあ、仕方が無いかもしれない。その気持ちは分からないでもないしな。
「あっ!...おい!なにやってる⁉︎」
追いついてきたのか、上白沢の声が背後から聞こえた....が、その瞬間嗚咽をあげていた少年は俺の横を通り過ぎ、上白沢の方へと走って行った....あれだけ走れれば取り敢えずは大丈夫だろう。
振り向くと同時に上白沢の「大丈夫か吾郎⁉︎」という声が聞こえる。なるほど吾郎君か....
完全に振り返るとこちらを睨む上白沢の姿と上白沢の影に隠れてこちらを伺う吾郎君の姿がある。どうやら要らぬ疑いをかけられているようだ。
「お前....何かやったのか...?」
「その子に聞けよ。」
上白沢はそばの吾郎君の目線に合わせるように姿勢を下げる。すると吾郎君は上白沢の耳もとに口を近付け、手を当て話し始めた。漫画の1シーンを見ている気分だ。
ゴニョゴニョと話していた様だが、しばらくすると上白沢の耳もとから手を離した。
吾郎君が話し終えたからなのか、上白沢が吾郎君の事を抱きしめ、頭を撫でた。慰めの言葉も聞こえる。
というか、この子とこいつは顔見知りか....不味いな....何か悪い影響を受けないといいが.....
「....そうだったのか...ありがとう。彼を助けてくれて。」
「そんな事より、その子の怪我とかは大丈夫か?ちゃんと見れなかったから分からない。」
「え?....あ、ああ。」
上白沢は俺に対して感謝の言葉と表情を向けた。
今は彼が立っている為か、彼の背の低さがまじまじと分かる。それが余計に彼の弱そうな印象を加速させる。
こちらから見ると、足に擦り傷の様な物が出来、僅かに血が滲んでいる。近くに水道はある...いや、井戸か。
彼はまだ少し泣いている....どうしたものか....
「大丈夫.....だそうだが....」
「大丈夫な訳無いだろう。ちょっと退け。」
上白沢に近づき、吾郎君の傷の様子を見ようとする....が、怖がられているのか。上白沢の後ろに隠れてこちらに顔を合わせようともしない。
「おい、ちょっと怪我を見せてみろ。」
「.........」
「別に痛いようにはしない。」
「........」
やはり上白沢の影に隠れるばかりで、吾郎君はこちらの方に顔を出そうともしない。まだ僅かにしゃくりあげる声が聞こえる。
人見知りなのか、俺の容姿にビビっているのか.....いや、単純に俺が暴力沙汰起こしたからだよな。
まあ、もしイジメられているなら先の二つが一番可能性があるな。
「いや....そのすまないな...この子はちょっと人見知りで...ほら、助けて貰ったんだろう?ありがとうって言わなきゃ駄目だぞ?」
上白沢は吾郎君に向かって話しかける。その言葉に吾郎君は僅かに頷き、こちらの方を向く。
「.........助けてくれて、ありがとう。」
とても小さく、耳を澄まさなければ全然聞こえない程だったが、確かに聞こえた。
「うん。感謝の言葉を言えるのは良い事だ。」
こういう所で笑顔を見せられば本当はいいんだろうけど、多分俺の顔はいつも通りの無表情だ。
「まあ、それが出来て無いお前が言うな。と言われれば何も言えないがな。」
これでオチがついたぜ。これで泣き止んで貰えれば....
吾郎君の方を向き、その反応を見る。
「.........」
だが、彼はなんとも言えない表情でこちらを見ているだけであった。ついでに上白沢もだ。
どうやら受けなかったようだ。この幻想郷と外ではあまり変わらないくせして笑いのセンスは違うらしい。
「.....まあいい。ほら、足を擦りむいてるぞ。早く洗いに行こう....近くに井戸は無いか?上白沢。」
「え?....あ、ああ。そうだな.....ここからなら私の家が近い。一旦帰ろう。」
上白沢はついていけないとも言いたげな表情だ。一体何についていけないのだか.....まあいいか。今はこの子が第一優先だ。
たかが擦り傷、されど擦り傷。医療技術があまり整って無いここでは、ただの擦り傷でも傷口から雑菌でも入って化膿でもするかもしれない。
上白沢が歩き始め、その足元に吾郎君がついて行く。俺は吾郎君の隣に並んだ。必然的に上白沢の横に並ぶ気に食わない配置になったが、今はどうでもいい。
「なあ。」
隣を歩いていた吾郎君に声をかける。俺のその声に怯えた様な様子で吾郎君はこちらを見た。難しいな...
「俺の名前は後藤明って言うんだ。宜しく。」
あいも変わらずこちらの方を怯えた様子で見続ける吾郎君。
まぁ、多少悪い気がするがこういう子には少々強引な方がいいだろう。自分の子供の頃は多少強引な方が良かった。この子と俺が一緒だとは言わないが、似ている....様な気がしないでも無い。いじめられっ子みたいだしな。
「好きに呼んで貰って構わないぞ。後藤でも明でも。他の呼び方でもな。」
「.........」
少しだが、怯えた様子が薄れた様な気がする。もう一押しくらいかもしれない。
「君の事はなんと呼べばいい?」
「........吾郎って呼んで。」
案外早く話してくれたか....まぁ、良かった。こんなので心を開いてくれるとは思え無いが、まずは一歩だ。
「そうか、じゃあ吾郎君だな。宜しく。」
声をかけるが、もう上白沢の影に隠れてしまった。うぅん、やっぱり難しいな。
.....ここでやっと上白沢の表情が見えたが、なんと言えばいいのか......あれだ。とても気に食わない表情をしている。『とっとと失せろ。死ね。』とまで言いたい最悪な気分になったが。とっとと失せろ。
「その....な。」
上白沢が声をかけてきた。何の用なのだか....嫌だな。
「やっぱり君は子供の事が好きなんじゃないのか?」
「だから違う。さっきも言ったろ。」
「でも、この子を助けたのは君じゃないか...それに...」
またもや沸々と怒りが湧いてきた....いや、駄目だ。もう目立っているとは言え、これ以上不必要に目立ちたくは無い....もう一度落ち着こう。俺は自分をコントロール出来る人間なんだ。
とりあえずこいつを黙らせればいいんだ。または話題を逸らすか..........よし。思いついた。巧ノ助によくやった”アレ”で話題を逸らそう。
「上白沢。シュレディンガーの猫と言う物を知っているか?」
「は?え?シュレ...何だって?」
「量子力学の実験....問題点を付いた思考実験だ。あくまで”思考実験”であるから実際にやった訳じゃ無いがな。」
「は、はあ....」
上白沢は突然俺が意味不明な事を言い始めからか、戸惑っている。よしよし。
「箱の中に猫と放射能性物質のラジウム、ガイガーカウンター....電離放射線検出装置だな。それに、青酸ガス発生装置を入れる。」
「私には単語の意味がよく分からないのだが.....」
「別にあまり理解する必要は無いな。その度に説明する。イオンだの何だの言っても分からないだろ?」
「確かにそうだな.....」
「それで、箱の中のラジウムがアルファ粒子...電離放射線の事だな。を出せば、ガイガーカウンターががそれを検出し、ガイガーカウンターと連動した青酸ガス発生装置が起動して青酸ガス...まぁ、平たく言えば毒ガスだな。を発生させる。そうすれば箱の中の猫は死亡する。」
「あぁ、なるほど!だから猫を殺さない為に思考実験という事なんだな。」
よし、いい感じに話題がズレてきたな。このままこいつの家に着くまで話が続けばいい。
「ちょっと違うが...まあいいや。逆にアルファ粒子が出なければ猫は死なずに生き残る。一定時間後に猫は生きているのか死んでいるのか?」
「えーと....どっちなんだ?」
「後で分かる...まぁ、そう考えれば猫の生死はアルファ粒子が出るか出ないかに掛かる訳だな。」
「うーん...確かにそうだな...」
「アルファ粒子が出るのは、アルファ崩壊が起きる事によってだ。 アルファ崩壊についてはトンネル効果まで説明しなければならないし、面倒くさいから説明を省くが、要は元あった物質が別れる物だと解釈しても構わない...これはあまり実験には関係無いからな。」
「そ、そうか....」
「ここで、仮に箱の中に入れたラジウムが一時間以内にアルファ崩壊し、アルファ粒子が出る確率を50%だとすると、逆に一時間後に箱の蓋を開けて、猫が生きている可能性も50%だといえる。したがって、この猫が、生きている状態、死んでいる状態が1:1で重なりあっていると解釈出来る。」
「なるほど....それで?この話が一体何の関係があるんだ?」
「後少しだ。俺達は経験上、猫が生きている状態と死んでいる状態の二つを認識する事が出来る。が、生きてもいて、死んでもいるような重なりあった状態を認識する事は出来ない。」
「まさかお前、自分は子供の事を好きでもあるし、嫌いでもあるだなんて言うんじゃ無いだろうな.....?」
...クソッ!ここでまた振りだしかよ。しかもそれなりに話についてきていやがる。巧ノ助ならここで投げ出すんだがな....
「そんな訳無いだろ....まあいいや、この実験の問題点は、どんなに妥当な実験方法をとったとしても実験結果は既に俺達が知っている、猫が生きているか、死んでいるかの二つだけだ。本当に知りたい、生きてもいるし死んでもいる重なりあった状態では無い。実験結果に意味が無く、検証のしようが無いという事だな。実験は検証出来なければ意味が無いしな。」
「結局何が言いたいんだ.....」
「結果的に言えば、この実験はエルヴィン・シュレディンガーという男が、ノイマンとウィグナーの理論を否定する為に使った思考実験だ。量子力学の重なりあった状態なんてありえないと皮肉った物だ。」
「それで...一体何が言いたいんだ?」
「後少しだ、後少し。それで、この量子力学と言う物の中では生きているし、死んでもいる重なった状態が存在している訳だ。この量子力学については『世界はこれさえあれば証明出来る。』って感じの物だから説明するのが面倒くさいな、時間もかかるし....まぁ、妖怪みたいな物だ。訳分からん物だという解釈で大体いい。必ずしも正確な動きをするものじゃないしな。」
「.....それで?」
「要するにシュレディンガーは『量子力学の重なりあった状態なんてねえだろ。カス。』って言いたかったんだよ....まぁ、そんなシュレディンガーの猫だが、最近では量子力学の不思議な部分の例え話にも使われるな。皮肉なのに皮肉な話だな。それにこの話を聞いただけじゃ分からないが、シュレディンガーが量子力学を作ったんだぜ。」
「それがお前の話とどう関係があるんだ.....」
結局最後まで上白沢は話題を逸らされなかった....もういい強行手段だな。すぐ目と鼻の先に例の上白沢の大きな家があるしな。
「要するにお前の質問は、お前にとってのこのシュレディンガーの猫の話と同じくらい意味の無い、カスみたいな質問だという事だな。ほら、お前の家が見えてきた。早くこの子のすり傷を洗わないと。」
吾郎君の足の擦り傷を洗うためにも話を無理やり話を切り上げ、この子を手を握ろうとするも上白沢の陰に隠れ、避けられる。やっぱりまだ難しいな.....いや、何が難しいんだ。子供は嫌いなんだよ。放っておけば勝手に治る。
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ほんの少しだけ後藤明と吾郎少年の距離が近づき、慧音が後藤明に対して疑問を持った後の夜。結局慧音は自らの家の客間の掃除をする事が出来なかった。吾郎少年の怪我の治療に時間をかけ過ぎたのだ....そう、過保護ともいえる程には。
その状況を見て、『やっぱり子供が好きなんじゃないか~。』と冗談交じりに慧音は声を掛けたがそれに対して後藤明はがん睨みで彼女に返事を返した。だが、それでも慧音は後藤明に対する見方を初めて会った当初と比べればだいぶ変えていた。慧音の後藤明に対する印象は少し良くなっていた。少なくとも慧音は、後藤明の事を『かなり人付き合いが苦手なだけで少なくとも子供の事は好きなんじゃないか?』とまで思っていた....実際はどうなのかは後藤明にしか分からないし、実際彼女の少し理論が飛躍しすぎている。これも慧音が子供好きな事があり、同じく子供が好きな事に対する親近感なのか....それとも、彼女の人の良さが招く自体なのか...恐らくはその両方なのだろう。
そんな慧音であったが、彼女は寝巻きに着替え、布団に入り、就寝していた。満月でも無い上に自警団の見回りも自分の番では無い。その上に、もう夜も遅い。既に時間は深夜帯であった。彼女に寝ない理由は無かった。
慧音は今、とても気持ち良く寝ていた。当たり前だ。ここ最近慧音はずっと忙しかったのだから。
慧音が初めて遭遇した何かと問題のある外来人...後藤明。
無差別に人を襲い、瀕死の重傷ばかり追わせていると思われる、正体不明の”顔の無い男”。
この二つの問題を相手するだけであっても、非常に労力のいる大変な事だが、慧音にはそれ以外にもやるべき事が多量にあり、非常に疲れていた。だからこそ、こうして心地よい睡眠を手に入れているのだ。
だが、その睡眠もそう長くは続かなかった......
「上白沢さん!上白沢さんッ‼︎」
突如として慧音の家の戸を叩く大きな音と、彼女の名を呼ぶ声が家の中に鳴り響く。
その音と声に、慌てて飛び起きた慧音は急いで寝巻きからきちんとした服に着替え、玄関に直行した。寝癖がまだ残っていたが、あまりのにも切羽詰まる声に気にする余裕が無かった。
「どうしました!?」
ガラリと戸を開けると、慧音の目には見覚えのある青年と、見知らぬ女性がいた。
彼は確か尾室さんだったか...と慧音は思った。慧音と同じく自警団に所属している青年だった。
普段のどこか気弱げな雰囲気に反して、とても正義感が強く、熱い青年だと慧音は記憶していた。
そんな彼が、あからさまに泣いた跡のある...更にまだ少し泣いている女性を連れてきたのだ。しかも、女性の服は破れて上半身は服として機能しておらず、尾室青年が着ていたと思われる上着で体を隠していた。
直感的に慧音にはその女性に何があったのかを悟った。だが、まだ決まった訳では無いのだ。慧音の耳が尾室青年の声を捉える。
「え...えっと、僕、今晩の見回りをしてて、そしたら彼女が居てそっそっそっそれでっ!!」
「....尾室さん少し落ち着いて。」
慧音の登場と共に捲し上げるように話始める尾室青年であったが、慧音の言葉に少し落ち着きを取り戻し深呼吸を二度ほどおこない、少し時間をもってから、改めて話始めた。
彼の話を要約すると、こうだ。
まず始めに自分は自警団の見回りで夜の人里を見回っていた。
すると、裏路地から女性の泣き声が聞こえた。
何かあると思い現場に急行した。
すると、予想どうり裏路地で服をぼろぼろにされながらも泣いている女性を見つける。
何があったのかを何となく予想した彼は何とかしようと近ずくも泣いてばかりでどうにもならない。
こういう、デリケートな問題は男の自分よりは女性の方が扱いやすいと判断した尾室青年は近くにあり、なおかつ頼りになる人物の家....慧音の家まで来たのだ。
ここまで捲し上げられた慧音は取り敢えず、二人を家に招き入れる事にした。
こんな時にどうしたらいいのか慧音には分からなかったが、彼らを放って置くわけにもいかなかった。何もしなければ何も変わらないのだ。
慧音は尾室青年を違う部屋へと押しやると、彼女を居間へと連れ込む。
座布団の上に座らせると、何かきちんと着れる物を持ってこようと慧音は思ったが、あいにく慧音と座らせた彼女とは体格が違い過ぎた。なので、大きめの毛布を持って来て彼女にかけた。
まだ僅かに嗚咽を上げていた女性であったが、不安げな顔はそのままだったが、少し落ち着き話せそうにはなった。
「その....辛くなければですが.....何があったか教えてもらえませんか...?」
非常に丁寧に、出来る限り相手に刺激を与えないように慧音は聞いた。性的暴行は「精神の殺人」とも呼ばれるほど、被害者の尊厳を踏みにじる悪質な行為だ。
そして、同じ女だからこそ、この手の問題のデリケートさは慧音にもよく分かった。現に外の世界では”性的な暴行”を受けた事に関してろくに気遣いをせずに警察や周りの人間が、質問や捜査を行い、余計に心に大きな傷を負わせた例がいくつもあるのだ。
そんな問題を幻想郷で生まれ幻想郷で育った慧音が知るよしが無いが、同じ女性として慧音は出来る限り丁寧に話を聞こうと思ったのだが.....
「...わ、私は大丈夫なんです。その...助けて貰って...」
女性はいとも容易く口を開いた。更にその返答は”最悪の結果”では無く、むしろ安心出来る無事を知らせる返答であった。
慧音はその返答に張り詰めていた緊張の糸が切れ、ホッと一息つくと同時に、疑問が浮かんだ。
彼女は助けて貰ったと言ったが、一体誰に助けて貰ったのだろうか?さっきの話では尾室青年は彼女を見つけただけだ。なら一体誰が?
更には『私”は”大丈夫なんです。』と言った。まるで彼女以外の誰かが助けを求めているかのように....
「その...今日は仕事が少し遅くなって...それで...急いで家に帰っていたんです....」
そこで彼女は恐怖を思い出したかのように体を震わせる。今考えればとんでもなく恐ろしい目に遭いかけたのだ。無理も無い。
「...その、まだ怖いのなら後でも....」
「だ、大丈夫です!....そ、それで、夜道で襲われて...顔は暗くて見えなくて....襲われて、もう駄目って思った時に....」
そこで彼女の顔に新たに恐怖の表情が生まれる。それは自分の尊厳が失われそうになった事から来たわけでは無い。暴力を振るわれる恐怖から.....いや、死の恐怖から来たものだった。
「ど...どうしたんですか!」
「あ、あの、例の”顔の無い男”が襲ってきた人を叩きのめして、連れて行ってしまって...」
「なんですって!?それは本当なんですか!?」
「は、はい...確かに話に聞いていたとうりの容姿で...殺されるかと思って...」
思わず声を上げてしまう慧音。当たり前だ、恐らく初めての”顔の無い男”の被害者以外の目撃情報なのだ。更に正体不明の彼が人助け...いや、少し誇張しすぎた表現だ。だが、少なくともか弱い女性のピンチを救ったのだ。慧音の頭の中の彼のイメージが少し良くなった。
慧音は今すぐにでも外に探しに行きたくなった...が、目の前の再び恐怖で怯えている彼女を放って置くわけにはいかない。
少しの間考えた慧音は、女性から彼が逃げた方向を聞くと、尾室青年を部屋に呼び付けると、目の前の女性の事を任せた。夜の人里を駆ける為に玄関に向かった。
玄関に向かう途中、後藤明の就寝している部屋を開けた。簡単に扉は開き、慧音は中を覗く。あれだけ騒いだのだから、起きて嫌味の一つでも言って来るのかと慧音は思っていたのだが、いっこうに起きる気配が無い。なので少し心配になったのだ。相変わらずのお人好しである。
慧音が中を覗くと後藤明は布団をすっぽりと被り就寝していた。顔まで布団に隠れていたので、呼吸の心配をしたが、苦しくなったら勝手に起きるだろうと考え、放って置くことにした。
あれだけ煩くしたというのに全く起きないとは.....やはりまだ環境に慣れなずに疲れているのだろう。と、慧音は思い、少し驚いた。慧音は今初めて後藤明の人間らしい部分を見たのだ。慧音はやっぱり後藤明もきちんと人間である事を改めて認識し、安心した。
「大丈夫、彼とは必ず分かり合える。あんなに子供の事が好きなんだ。きっと大丈夫だ。」そんな思いを心に持ちながら.....
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夜の帳の中、慧音は人間離れした凄まじいスピードで人里を走り抜ける。
慧音の考えどうり、”顔の無い男”と強姦未遂犯がどの方向にいるかは簡単に分かった。しかし、静かな人里に響く本当に小さな...慧音でなければ分からない程小さな音は明らかに暴力的な音であった。
バキッ!ボキッ!と生々しい音が遠くから聞こえ、少しずつその音が慧音の耳に近ずいてくる。
正直言って慧音はその強姦未遂犯は許せなかった。強姦とはかくある犯罪行為の中でも特に非常に悪質で許されざれない犯罪行為だ。しかも慧音は女性だ。その悪質さは嫌と言うほどわかる。
だが、やっぱり殺すのはやり過ぎだ。と、慧音は思う。今までの被害者の状態を見れば殺されているかも知れないのだ。だからこそ、急がねばならなかった。
外の世界にある街灯の光や、車のライトなどが無く、月の光が夜道を照らす。人の姿は無く、人間の犯罪者よりもルールを破った妖怪が出てくる可能性の方が高いだろう。
音がだんだんと近ずいてくる。どうやら彼らは裏路地にいるようであった。裏路地に入った慧音に耳には「えごっ!あごっ!」と呻き声が聞こえて来た。しかも、だいぶ弱ったような声だ。
裏路地に入り、少し道に入った慧音の目に衝撃的な状況が入った。
まず始めに例の茶色いトレンチコートとソフト帽に白いマフラーをトレンチコートの首元に忍ばせた”顔の無い男”が強姦未遂犯と思われる人物の髪の毛を黒い手袋で覆った手で掴み、無理やり顔を上げさせている。どうやらもう強姦未遂犯はまともに立てない程に衰弱しているようだ。
彼はこちらに気が付いた様で、指を離すとこちらを向く。しかし、慧音はこの行動で更に衝撃を受ける。彼にボコボコにされ髪を掴れていた男は慧音の知っている顔.....しかも、自警団の人間だった。
髪を掴まれていた彼は自警団...慧音もよく知っていた。自警団ではみんなを纏めるリーダー的役割をしていた中年の男性だった。彼もまた正義感に熱く、皆を引っ張る頼りがいのある男だと慧音は記憶していた。多少のセクハラをしていた事を除けばだが....慧音も何度か被害にあっていた事もあってか、あまり良い印象は無かった。
「な、何をしている!!」
「見てのとうり。”自警活動”だ。」
その声色は全く無感情で何も感じられない、それが慧音に非常に不気味な印象を与える。更に白い覆面を被っているせいか、声がかなりぐぐもっている。
まるで人形と喋っているようだ。と、慧音は感じた。その位目の前の男からは人間らしさを感じない。
「こいつはお前にやるよ。強姦魔のゴキブリ野郎だ。焼くなりなんなり好きにすればいい。」
そう言い、彼は倒れていた強姦未遂犯を慧音の方へと蹴り飛ばす。
ゴロゴロとまるで物か何かのように生気を感じさせない様子で慧音の方へと転がってきた。僅かに呼吸で胸を上下させている所だけが、彼の生きている証拠だ。
ボロボロではあるが、取り敢えず生きている事を確認した慧音は目の前の男とコミュニケーションを取ろうとする。
「強姦魔?じゃあこの人が....?」
「オレを信じるも、そこのクズを信じるもお前の勝手だが、確かにオレはそいつが女を襲っているのを見た....それともなんだ?まさかそいつとあの女は夫婦か何かかか?」
「い、いや...そうでは無いんだが...」
「まあいい。それ、お前の知り合いならしっかり躾しとけよ。猿みたい盛ってやがる。」
あからさまな侮蔑の言葉に顔を僅かに顰める慧音。だか、今まで倒れている男のしていた事を考えると、慧音はあまり彼の言葉を疑わなかった。
「....この男の事はこちらで対処しよう。」
「後二発くらい殴りたいところだが、お前が来てしまった以上無理みたいだな。ところで....」
「なんだ...?」
「なぜお前はここに来た。どうやってここを嗅ぎつけたんだ?」
「....お前が助けた人からこっちの方に居ると聞いてな。」
「何か語弊があるようだが俺はあの女を助けた訳じゃ無い。こいつが気に食わなかっただけだ。それにしても.....」
『音は小さくしたつもりだったが......化け物め....』と、彼は小さく悪態をつく。それが自分に対する物である事に気がついた慧音はまた顔を顰める。
彼はそんな慧音の様子を気にする事無く、その場から歩いて去ろうとする。
「待ってくれ!まだ話は終わって無い!」
その状況に気がついた慧音が慌てて彼を引きとめようと声をかけるも、彼はそれを無視して去ろうとする。
「人を守る為に戦っているんだろう⁉︎私と一緒に自警団で...フボッ‼︎」
去ろうとする彼の手を引こうとした慧音。だが、彼女の言葉が終わる前になんの脈絡も無く、彼は慧音を殴った。
まさか殴られるとは思っていなかった慧音は防ぐ事も避ける事も出来ずに殴り飛ばされた。
ゴロゴロと地面を転がり、倒れていた強姦未遂犯に慧音は当たる。慧音の殴られた頬がズキズキと痛む。
だが、慧音にとってはこの程度の事はあまりダメージにはならないすぐに立ち上がり、目の前の男に詰め寄る。
「いきなりなにをするんだッ‼︎」
「.......」
またもや目の前の男は慧音に殴りかかった....が、今度は慧音もある程度予想していた為か、なんなく避ける事に成功する。
その拳のスピードは人外の存在である慧音から見ればそう速くは無かったが、人間にしては異常な速さであった。
こいつは妖怪か?...と、慧音は思った。その雰囲気、身体能力。この二つだけでも人間的では無い。彼がもし妖怪だとしても正体を隠されてしまえば慧音には人外の存在かどうかは判断出来ない....だが、そんな事実があっても、慧音には素直に妖怪であると頷けなかった。
そうだ....どちらでも無い。よく分からない物だ。と、慧音は感じた....が、同時になんとなく自分と似ている。とも、感じた。
何故そう感じたのか、慧音には全く分からなかった。見た目が似ている訳でも、慧音と同じく人間を助ける為に戦っているのかも分からない。全く共通点が無いのに、何故だか感じたのだ。
「用事は済んだ。お前と組む必要も”今”は無い。」
「今はって....どういう事だ!」
男は慧音の言葉を無視して、トレンチコートの胸元に手を入れると、銃口の代わりに先端の尖った銃のような物を取り出す。
何か来るか⁉︎...と、警戒する慧音をよそに彼は上を...建物の屋根の方を少しの間見ると、上に向け銃の様な物のトリガーを引く。
ガシャン!と銃の様な物の尖った先端が傘の様に開き、幾つもの鉤爪が見える。その様子は傘の骨の様に見える。
警戒していた慧音をよそに、目の前の男は両手でしっかりと銃の様な物を構えると、もう一度トリガーを引く。
すると、空気の抜ける音と共に先端の鉤爪の束が空高く飛び上がり、建物の屋根の方へと向かう。
何かが引っかかる音の後に、男は銃の様な物を両手で引っ張る。
どうやら鉤爪の束と銃の様な物.....いや、フック銃は細い糸で繋がっているようだ。
「んな⁉︎...おい待て‼︎」
彼がもう一度フック銃のトリガーを引くと、スルスルと凄まじいスピードで糸が巻き戻され、彼の体が宙を飛んだ。
慌てて彼を止めようと慧音は近づいたが、慧音の手が彼に触れる前にあっという間に屋根の上へと行ってしまった。
唖然とした表情をした慧音を置いて、屋根の上を走り去る足音が聞こえた。
しばらくすると足音は消え、そこに残されたのは、あまりの状況に頭が追いつかない慧音と、痛みに呻き声をあげる倒れた男だけだった。
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「そうだよ。俺がヤろうとしたよ。あののっぺらぼう野郎に邪魔されたがな!」
男は簡単に自分の罪を認めた....半ばヤケクソ気味にだが。
慧音が”顔の無い男”と初めて遭遇してから早数時間。犯罪行為を行おうとした仲間を咎める為に、自警団の人間はその殆どが集まっていた。
仮にも皆を積極的に纏めていたリーダーがまさかの犯罪行為と、自警団の間では衝撃が走しり、それが事実だと知れ渡ると、もっと大きな動揺と共に、『ああ...ついにやったか....』という呆れの声も出てきた。
「仮にも自警団の人間が....こんな事を...」
「うっせぇよ!!!毎日毎日妖怪にビクビク怯えて暮らして、安全な筈の人里でもロクな暮らしすら出来ねんだよ!!穴にでもブチ込んでヤリたくなるっての!!」
「こいつ....!」
話を聞いていた男に強姦未遂犯が殴られる。その様子を慧音は爪が手に食い込むのでは?と思わず心配してしまう程強く手を握り締めていた。
人里の平和を守る筈の自警団が、こんな事をやったのだ。心優しく責任感の強い彼女が不甲斐無さや、自分の力不足を感じるのも無理は無い。
今の人里は多少治安が良くなったとはいえ、まだまだ犯罪がはこびっている。犯罪が表ざたにならないだけで確かに起こっているのだ。だが、慧音にはそれが分かっていて、何かしらの努力をしたとしてもどうにもならない、力不足な自分に腹がたった。そして、犯罪がはこびっている事に対して彼女は心の底から吐き気がするような気分であった。
既にみんなを纏めるリーダーでは無く、強姦未遂犯へと落ちぶれた彼にに対する尋問を慧音は胸に隠した激情を抑えながら見ていた。そこへ、皆が集まるからと無理やり起こした後藤明が音も無く慧音の横に並んだ。
慧音が尾室青年に聞いた所、危うく性的な暴行を受けそうになった彼女が安心のあまり、もう一度かなりの大音量で泣き出しても寝たままだったそうだ。
「こんなジョークがある。」
後藤明は慧音の返答を聞かずに話始める。
「人間が言うんだ。猿に自慰行為を覚えさせたら死ぬまでやってる。ハッハッハッハッ!」
笑い声の部分が何の感情も感じられず非常に不気味だ。まるで機械音声のようでもある。
「そしたら神が....まあ、神なんていないがね...まあいいや、そしたら神が言うんだ。人間に核兵器を教えたら死ぬまで使い続けてるわ。ハッハッハッハッ!」
そんな不気味な調子で流される、後藤明のブラックジョークを聞きながら慧音は現状に対する不満を心に抱いていた。
ちなみにアッキー★の回想に出てきた巧ノ助という人物は彼の友人です。初めの話に出てきた夏休みの宿題をやって無くて、モテなくて、オカルトと下話しかしない彼の事です。
アッキー★と親友とも呼べる間柄です。まぁ、こんなエキセントリックな性格しているアッキー★と仲良くしているだけあって彼以上にKI☆CHI☆GA☆Ⅰでエキセントリック少年ボウイ~♪な性格してます。多分この先の展開では出ません。出なくていいです。はい。
後、シュレディンガーの猫の話はクソ難しかったので、もしかしたら間違ってるかもしれません。ちゃんと専門本を読んだけどイマイチ微妙だぜ!
後、アッキー★は元いじめられっ子みたいだなぁ....超ざまああああ‼︎
後はまあ....何もない気がします。もし、何かありましたらご指摘をお願いします。今回も読んでくださりありがとうございます。