サイト-██のオリエンテーション(初期)
どうぞお掛けになって下さい。皆さんお揃いでしょうか。
えぇ、ひとまず定刻になりましたので始めたいと思います。
ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、自己紹介を。
私の名前はオスカー・シュタイナー。このサイトの戦略部門長を務めている上級職員です。そして本日はこのオリエンテーションの主催者として壇上に上がっております。
オリエンテーションの内容はSCP-[編集済み]に関するものです。各々思うところはあると思いますが、皆さんには財団職員として冷静に傾聴していただければと。
はい、ではさっそくオリエンテーションに移ります。まず手元の資料をご参照いただき、ない人は遠慮せず手を上げてスタッフを呼んでください。
1.SCiP実体の説明
2.SCiP実体に対する禁則事項
3.SCiP実体の対処法
とは言っても現時点で判明している情報はごく少数。
正確には、各研究所が提唱する見解のほとんどが財団として公的な文書を作成するに足りない、エビデンスが全く足りていない状態にあります。
今我々は非現実の異常空間に囚われている可能性も、他の可能性と同率で存在しているのです。
ご存じの通り財団は非現実下においても記録を残し、後に導線を引き継いできました。
どのようにすれば脱することができどのようにすれば安全で、そしてどのようにすれば収容できるか。そうした犠牲を積み重ね、我々はアノマリーの収容手順を確立してきたのです。
そう、少し前までは。
我々が立つこの場所が何なのかはさておき、目先の脅威となりうるのがSCP-[編集済み]実体です。
オリエンテーションでは主に、これら実体群の大まかな説明と注意点についてお話しましょう。
ああ一応。
これはあくまでこのサイト独自のものになるので悪しからず。いくつかのサイトと意見交換は行っていますが標準化されたものではないので。
1.SCP-████実体の説明:
SCP-████内に存在する知的生命体は総じてSCP-████-1とされます。
これらの実体群にはヒト型機械(以下機械型)、二足歩行の動物(以下動物型)、頭上に非実体の模様を浮かべた少女(以下少女型)など多様な様相を呈しています。実体群は個体差はあるものの一様に異常な皮膚強度を有しており、いずれの実験でも5.56mmNATO弾一発の被弾に対して外傷は認められませんでした。
実体群は一般的に基底世界の人類と変わらない生活環境を有していますが、大きな相違点として【社会構造】【火器への常識】が挙げられます。
実体群のライフサイクルは乳幼児期が動物型、学齢期から青年期にかけて少女型、成人期以降は少女型を除く全てで構成されています。この傾向に見受けられる外見的分類とライフサイクルの関連性の要因や作用は不明です。実体群は【学園】と呼称される国家に準ずる統治組織を複数形成しており、その全ては少女型によって構成されています。少女型は女性的特徴を有した6歳~19歳の実体で占め、基底世界の東アジア圏に見られる初等6年、中等3年、高等3年の教育制度を採用しています。この内、指導者層に選抜されるのは高等課程の実体に限定されるため、任期は最長でも3年に留まります。
いずれの実体群も、火器を日常的に携行する習性があります。これは実体群の中で常識として扱われており、公的施設においても所持が制限されることはありません。
一番最初の説明が書かれたページを開いてください。
要約すると、我々が実体群と総称するSCP-[編集済み]-1は大まかに、機械のヒト型、動物のヒト型、そして
これらに対し銃弾の一発や二発は致命傷になりません。また日常的に火器を携行している習性が認められており、これを用いた反撃が想定されます。下手に沙汰を起こすべきではないでしょう。
実体群における学園とは、我々における国家に相当するものです。大変奇妙なことに、社会的には学生に当たるはずの実体群がこれら学園を統治しているようです。
2.SCP-████実体に対する禁則事項:
実体群は社会構造を有しているため基本的ないくつかの外交的窓口が存在し、財団は適切な窓口を通じて必要な接触を実施します。しかし実体群は収容対象の一部であり、不必要な接触は禁止されています。
現在財団が利用する窓口は【
実体と接触する際は以下の事項を厳守してください。
・不必要な会話は控える
・常に機械型か動物型に擬態し、自身が人間、財団所属であることを隠蔽する
・増援要員を常時出動可能な状態で待機させ、常に複数人で行動する
・事態が悪化した場合は即時撤退し、可能な限り交戦を控える
また何らかの事由により確保した実体などについては以下の事項を厳守してください。
・背景調査を終え次第、いずれかの窓口を通じて引き渡しを行う
・収容中、実体に対しては基本的人権に準じ適切な衣食住を提供する
・実体に対する実験は最終的には実体の同意の下実施する
次のページです。
財団は、と記載していますが、現在も財団は混乱状態を脱していません。
再度言いますがこの資料はこのサイト独自のものです。我々は実体群に対して消極的な友好的姿勢を示していますが、これが財団のスタンス、総意ではないことを考慮してください。
ここに書いてある内容のほとんどは財団職員、特にエージェントや研究員ならライセンス取得前の訓練課程で体系的に学んでいるはずです。
特異な点としては我々が人間であること、そして実体群に対してもヴェールを保つこと。
前者は弾丸一つで死に至る可能性があることを相手に悟らせないため、後者は我々のそれにひどく類似した文明が存在しているためです。
続いて、実体群と接触する際の対処法です。
3.SCP-████実体の対処法:
実体群との戦闘は極力避けてください。戦闘事案が発生した場合、先述した実体群の皮膚強度、日常的に火器を携行する習性を鑑み、動員可能人数が敵対数と同数以下であれば撤退してください。
戦闘が避けられない場合、実体1体につき戦闘訓練を受けた経験のある職員2名以上が対処するようにしてください。実体の無力化が認められた時点で対象への発砲は禁じられ、可能であれば拘束されます。
ただし、実体群に対する終了措置は財団全体への敵対を助長する恐れがあるため許可されません。
実体群の敵対を抑止する目的で、接触は以下の事項を考慮した上で平和的かつ友好的に行われます。
・企業を除いたほとんどの場合において、動物型や機械型は外交的役職に就いておらず、心理学上では成人期以降に相当する精神年齢であるため、接触には消極的かつ排他的に振る舞う
・外交的役職に就いている実体のほとんどは少女型であり、心理学上では学童期、青年期に相当する精神年齢であるため、接触に際しては慎重に言動を選ぶよう心掛ける
なお接触のための人員は、外見と内面の両面で温厚であると判断できる職員が選抜されます。
実体群の有する皮膚強度は装甲車に比肩するものと思ってください。
例え重武装のエージェントが相対しても、同数程度では劣勢です。ええ、噂は真実です。戦闘要員を有するとある財団施設はその状況で戦闘し、壊滅しました。
少ない情報を精査した、戦略部門としての見解を申し上げます。
物量の差が二倍以上かつ戦闘要員間での連携が十分な防衛戦であれば戦略的勝利は見込めます。
少なくとも、不仲で発生する戦闘事案に戦略的勝利はあり得ません。
ですので事は起こさず、戦闘は極力避けてください。
そういったトラブルを回避する目的でも、最低限の交流は必要です。
ここではコミュニケーションを行う上でのスタンスを、実体群の分類別で説明しています。
まず、財団が動物型や機械型の実体と接触する場面はほとんどありません。
これらは基底世界での大人のように振る舞いますが、積極的な接触は重大な情報漏洩に繋がる可能性があります。毅然とした態度で極力接触は避けるよう心掛けてください。
公的機関の外交的役職に就いているのは大部分が少女型の実体であり、財団は基本的にこれらに接触することになります。外見相応の精神年齢をしており、言葉や行動は難しい年頃の子に接するよう慎重に選んでください。このポストにいる個体は比較的理知的であることが多いですが、内部の統治機関はそうとも限りませんので。接触する実体の心情は可能な限り良いものにしたいわけです。
さて、これら実体群に接触する人員ですが第一陣として、既に交渉事に長けた幾人かの人員を実体群への接触要員として任命しております。
後の話ですがこの他に、SCPの消失に伴い発生した余剰人員の何割かをSCiPの関連業務に転属、再編成を行う計画が予定されています。
静粛に。落ち着いてください。
全ての人員に異動命令が下るわけではありません。
もし何らかの理由で配属を希望しないのであれば、予めその旨を上司に申告してください。もちろんプライベートを探るような真似は誓っていたしません。もとよりそのような行為は許可されませんので。
ただその希望が必ずしも通るものではないことも、頭に留めておいてください。*1
はい。資料を使った説明は以上になります。
以降は質疑応答に移りますが、その前に小休憩を挟みましょう。30分後に再開とします。
時間ですが、皆さんお戻りになりましたかね。はい。
ではここからは質疑応答の時間です。どうぞ、疑問のある方は遠慮せず手を上げてください。
財団の理に反しているのは承知の上で一つ質問を。どうしてBC兵器などを用いず、頑なに直接的かつ奥手な手段ばかり取るのですか?
権限以外にも実行できない要因があります。
SCiPに関する情報が不足している点です。
戦術上それらの兵器が有効である可能性は極めて高いと考えますが、立証はできていません。
また先にも述べたように、SCiP内文明は我々のそれと類似しており報復の可能性も否めません。
ましてや異常性の研究すらも不十分。それを実行した後に何が起こるのかも分からない現状では事は起こせない、という理由です。
ですので、まずはSCiPや実体群の情報収集を実施しているのです。
アノマリーに対し基本的人権を適応することには議論の余地があるのでは?
異常な人間型存在の収容に関する議題は事欠きません。
財団はこれに対しての明確な表明は避けていますし、倫理委員会もこの手の実験には目を光らせています。
公的に警告されるまでは今以上に配慮する必要も、過剰になる必要もないでしょう。
少なくともこの場で議論を行う内容ではありませんよ、博士。
他の財団施設との連絡はどうなっていますか?
周辺の施設とは連絡が回復していますが、本部を始めとした遠方の施設とはいまだ。
この窓口……連絡窓口に属する実体たちは、接触してくる財団や財団職員をどう認識しているんです?
選抜された接触要員には事前に説明する内容ですが、公には非営利の環境団体として活動しています。
建前上の活動内容は、植生調査と研究、場合によっては環境保護の名目で管理を行います。
職員は研究者や保全要員に扮し、温厚な菜食主義者のように振る舞っています。
ですので実体群の感性が我々と変わらないのなら、ヴィーガンが集まった環境活動団体だと認識されているはずです。
いつ家に、家族の下に帰れますか?
不明です。見込みは、はっきり言って今のところありません。
もしも気分がひどく落ち込むようなら、一度上司に相談してみてください。
気力が残っているのなら、気分に関わらずカウンセラーと話してみるのも良いかもしれません。
……そう嫌な顔をしないでください。
彼らは優秀ですよ。なにせ常日頃、アノマリーとの第一線において精神面で戦っているのですから。
趣向品の補充に支障はあります?
ええ発生しています。
食料に関しては、向こう1年は人工栽培で賄える計算です。しかし他はダメですね。
例えば私が昨年注文した車などは、ことが解決するまでは納入されないでしょう。
……はい。ですので個人の所有物を除き、今施設にある趣向品――とりわけ消費物に関しては保全部門にて管理するようにします。これらは必要に応じて配給する形になります。*2
おっと、静粛に。静粛に!
個人の所有物を除き、でしたか。
ならば研究室や部門で購入したコーヒー豆なども徴集対象で?
ええ、対象に含まれます――静粛に! 静粛に!
ここはあくまでオリエンテーションの場、資料に関係しない異論は受け付けておりません。
議論を行いたいのであれば、別途ご自身で場を設けるようにしてください。
それと、この件は施設管理官の命により施行されています。
意見書や嘆願書、署名などは管理部門に提出なさってください。くれぐれも宛先を間違わないように。
他に質問はありますか。
よろしいですかね。
はい。ではこれにてオリエンテーションを終了します。
皆さんよい一日を。