TS転生聖園ミカが先生と付き合いつつ先生にハーレムを作らせようとする話   作:tarako

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空崎ヒナの叶わぬ恋が叶うと言うのなら

私、空崎ヒナが叶わぬ恋と聞いて思い浮かべるのは、やはり先生と生徒の恋だろう。

お互いの立場や年齢、結ばれるまでの障害は余りにも多すぎるし、もし恋人関係が露呈したら、先生の立場は色々と不味いことになる。

あぁ、そして何よりも。

 

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だから私は叶わぬ恋心に蓋をする。せめて彼の前では良い子のヒナで、彼にとっての出来の良い生徒であろうとする。

そうすることで、少しでも良い印象になったらいいなって、そんな浅ましい願望。

彼の周りには私でも把握しきれないような沢山の人がいる。そんな中で私だけにかけられた言葉や、撫でてもらった手の感触は私の一生の宝物なのだ。これ以上は望んでも手に入らない。絵に描かれた夢の世界。

 

 

それでも、と思ってしまう。

もしも私の恋が叶う日が来たら?

 

 

その時はきっと何かが狂ってどうしようもなくなった時なのだろう。世界か、先生か、あるいは私か。私は苦笑を一つ漏らすと、つまらない妄想を掻き消す。

さぁ、今日も風紀委員会の仕事だ──

 

 

 

 

ある日、先生が風紀委員会に顔を見せてくれる事になった。

仕事の話もあるが、モモトークで『ヒナが頑張りすぎてないか心配だからそっちに行くね』と言われたのは、今思いだしても頬が緩んでしまう。ありがとう先生。

 

「ですから、聞いているんですか!委員長!今の先生は危険なんです!!」

 

あぁ、うるさい……。本来ならアコも先生との会話に同席させる筈だったのだが、なぜかやたらと先生のことを敵視しているのだ。普段から先生へと突っかかるとはいえ、ここまで極端な反応を示すのは最近になってからだ。危険と考える理由を尋ねてみても『女の勘です!』としか返ってこないのだから話にもならない。私は、はぁとため息をつく。

 

「イオリ、チナツ、連れて行ってもらえる?」

 

「了解。ほら、アコちゃんわがまま言わないで」

 

「アコ行政官。あちらでコーヒーでも飲みましょう…」

 

「あ、ちょ、ちょっと!あなた達!私はヒナ委員長の為を思って…ああぁぁあぁぁぁ──」

 

アコが二人に腕を取られズルズルと引きずられていくのを呆れて見送る。そのまま別室で待機していてね。

先生が来るまでに話し合う事をまとめておこう。

それから書類を仕分けすることしばし、コンコンと部屋がノックされる。

 

 

「ヒナ、居るかな?」

 

あぁ、先生の声だ。身だしなみはさっき確かめたし、うん。大丈夫。声を聞いただけではしゃぎ出す自分に少し笑いながら、なるべく平静を装って返事をする。

 

「どうぞ、先生。開いてるから入ってきて」

 

お邪魔します。とドアが開き先生の姿が見える。久しぶりに見た先生の姿は…………。

 

「久しぶり、ヒナ」

 

そういって微笑む先生の姿は…………なぜか大人の色気みたいなものを纏わせていたのだ。うん。

 

「………え、あっ。ひ、久しぶり先生」

 

頼れる優しい先生が、その、そういうのは、反則だと思うの。

ドキドキと高鳴る胸を抑えながら、先生に意見を聞きたい資料を手繰り寄せる。

今日は少しでも長く先生と話ができたらいいな、なんて思いながら。

 

 

 

 

 

「────ありがとう、先生。やっぱり大人の視点は参考になる」

 

「役に立てたなら良かったよ、ヒナ」

 

先生と話し合いをしている時も、先生の様子は少しおかしかった。

なんというか、距離が近いのだ。

資料の数字を確認するために、私のすぐ後ろからほぼ密着した状態で覗き込んできたり。

私の頑張りをよく褒めてくれるし、撫でてくれるボディタッチが多かったり。

その度に私はドキドキ。先生は私の心臓をどれだけ鳴らすことが出来るか、試しているのではないかと思うほどだ。

 

「……んー。ちょっと疲れたかな。良かったら散歩でも一緒にどう?」

 

なので先生のその提案は渡りに船だった。

このままだと鼓動のポンプで秘めた恋心が口から溢れてしまいそうだったから。

 

 

 

夕焼けの中庭を先生とゆっくりと歩く。

見飽きた場所だけれど、先生が居ると途端に色づいて輝いた場所に思える。

てくてく、と先生が私の為に抑えてくれた歩幅に合わせるように歩く。

先生はこの無言の散歩を息苦しく感じていないだろうか、こういう時に気の利いた言葉は何をかけるべきなんだろう。そんな考えが頭にぽつぽつと浮かぶ。でも、それで焦りが生じるかと言えばそうでなくて、私にとってはゆっくり歩くこの時間が心地よかった。

 

「ヒナは、最近はきちんと眠れてる?」

 

「えぇ、何とか6時間睡眠は取るようにしてる」

 

「それは良かった。我らワーカホリック同盟が定時同盟に変わる日も近いね」

 

「何その変な同盟……ふふ」

 

先生が私の仕事量を心配して風紀委員会の皆にかけあってくれた事を知っている。

私がモモトークでする拙い雑談や愚痴に真摯に答えてくれた事を知っている。

ありがとう、先生。心の中で先生に感謝をすると、心が暖かくなる。

いや、これは言葉に出すべきだろう。い、いくよ。

 

「先生……えっと、色々とありがとう」

 

……私はもっと上手くお礼を言えないのだろうか。

先生と会う度に私は自分の口下手を呪っている気がする。

 

「どういたしまして。ヒナ」

 

でも先生の声を聞いて、すぐに失敗したかもなんて気持ちは雲散霧消する。

……本当にずるい人だ。簡単な言葉一つで私の心をこうも高鳴らせるのだから。

 

 

 

 

歩いて、歩いて、近況を軽く話して。中庭の出入り口に近づく。

先生が腕時計をちらりと確認する。あぁ、もうそんな時間なのか。

やだな、もっと先生と居たいな、と私の甘えた心が騒ぎ出す。

そんな事を言って、先生に嫌われたくない。だから、私は先生が帰る言葉を切り出しても、笑顔で送るように心構えをした。したはずだった。

 

「そろそろシャーレに戻らなきゃ。それじゃあヒナ、今日は会えて嬉しかったよ」

 

「……うん。お疲れ様、先生。私も会えて嬉しかった」

 

そういうと先生は背を向けスマホを取り出し、誰かにメッセージを送る。誰なんだろう。いいな。

先生の背中が少しずつ遠ざかっていく。待って。もう少し。

 

「ま、待って!」

 

私は思わず先生の背中に手を伸ばして、声をかけていた。

自分で自分の行動がよく理解できず、頭が混乱する。呼び止めて、どうする気なんだ私は。

 

「ヒナ?」

 

先生が驚いて振り向く。そして私の伸ばした手を自然に握ると、私を安心させるように言葉をゆっくりと紡ぐ。

 

「大丈夫、時間は沢山あるから話し足りない事があったらなんでも言って」

 

やっぱり今日の先生は少し様子がおかしい。距離が近い。私の手を自然に握る。

ぐるぐると混乱した頭が更に茹だっていく。

先生に握られた手が恥ずかしさと嬉しさで凄い熱を持つ。

混乱の極みに到達した私は、頭が真っ白になってとんでもないことを言ってしまった。

 

「あ……あ……せ、先生。あなたが好きです」

 

あぁ、終わった……。

 

「私を気にかけてくれて、色々連れ出してくれて、時々からかわれたりもしたけれど……それも嬉しかった」

 

ずっと秘密にするつもりだったのに。

 

「先生といるととてもドキドキして、どんな小さなことでも楽しくなるの。あなたとずっと一緒に居たいんです。だから──」

 

告白の台詞も自分のことばかり。困らせてごめんなさい先生。だから──

 

「私と付き合ってください」

 

私を振ってください。

 

 

 

 

 

 

真っ白になった頭で告白してから、どれだけ時間が経ったのか。

先生はきっと私をなるべく傷付けない断り文句を考えているのだろう。

改めて、何てことをしてしまったのか。こんなはずじゃなかった。

ほんの少し、先生に甘える事ができたなら、それで良かったはずなのに。

どうして、こんな。

 

「ありがとう、ヒナの気持ち凄く嬉しいよ」

 

私はもう恥ずかしさと後悔でまともに先生の顔を見れないけど、きっと先生は優しい顔をしているんだと思う。

そして、この先に続く言葉は分かっている。でも、けれど、ヒナとは付き合えない。

ごめんね先生。そんな事をわざわざ言わせて。

 

「すぅー……もし、私の話を聞いて、それでも良かったら是非付き合って欲しいな」

 

…………ん?…………んん!?

 

「実は、私は聖園ミカと付き合っていて、彼女の趣味が……寝取らせなんだ。私と他の女の子が浮気をすると凄く興奮するらしい。だから、私にミカという彼女が居ると分かった上で付き合うなら歓迎するよ、ヒナ」

 

──────んんんん????????

 

 

 

………

……

 

 

 

頭が真っ白になって先生に告白した日から数日後、私はシャーレに当番として来ていた。

理由はいわずもがな、先生と聖園ミカと話し合うためだ。

あの日、先生の衝撃的発言で完全に意識がシャットダウンした私は、今日ようやく答えを出す。

よし、行こう。

 

 

「あはっ☆ヒナちゃんだ!やっほー!」

 

「……こんにちは、ヒナ」

 

「こんにちは先生……と、聖園ミカ……さん」

 

「ミカでいいよ☆あ、あと私はヒナちゃんって呼んでいいかな?もう呼んじゃったけど!」

 

「え、えぇ。それで構わないわ……ミカ」

 

シャーレのオフィスで出会った聖園ミカは、とてもテンションが高かった。

かなりの反ゲヘナと聞いていたから、嫌味の一つや二つ飛んでくるかと思ったけど、そんな事もなく。ただ、私に会えて嬉しいとニコニコとしていた。

そう、まるで何か良いことでもあったかのように……。

 

「それでね、それでね、ヒナちゃんと先生って付き合うの?」

 

彼女は喜色満面の笑みで早速本題に入った。

や、やっぱりそれが良いことなの…?あなた、自分の恋人が浮気しようとしてるのよ??

 

「私は、ミカが良ければヒナと付き合いたい。しっかり者で頑張り屋で……それでも傷つきやすい普通の優しい女の子で、ずっと傍に居たいと思ったんだ」

 

「わーお☆……せ、先生が他の子褒めるの………………いいっ♡」

 

彼女が何か言ってるが、私は先生の話しか耳に入らなかった。

先生、そんな風に思ってくれていたんだ、と私は嬉しくなる。

 

「わ、私も……えっと、先生と付き合いたい……です」

 

私が出した答えは、先生と付き合いたいというずっと考えていた事そのままだった。

確かに、色々おかしいけど。先生と聖園ミカが付き合ってたなんて全然知らなかったけど。

その上で他の子と付き合うことを容認してるなんてまったく理解が及ばないけど。

先生と付き合えるなら、もうなんでもいいかなって。

 

「やったぁ!カップル成立だね!おめでとう、先生、ヒナちゃん!」

 

「ありがとう、でいいのかなミカ……」

 

「えっと、ありがとう?」

 

パチパチパチと彼女が祝福の拍手をする。

無邪気に心の底から喜んでいてくれる様子の彼女は、少し戸惑いのある私と先生の困惑を流していった。

 

「あ、そうだこれは聞いておかなきゃ。ヒナちゃんって女同士の恋愛はいける?」

 

「え?……いいえ、先生だけが好きだと思う。……うん、先生だけが好き」

 

「おけまる!じゃあ先生とだけの恋愛だね!」

 

彼女は上機嫌にうん、うんと頷く。

そして何かを想像したのか顔を蕩けさせる。やめなさい。

 

「先生とヒナちゃんは二人で普通に付き合う感じでいいからね?特に私に連絡とか報告とか必要無いの。好きな時に会話して、好きな時にデートしてね」

 

「あぁ、分かったよ。ミカ」

 

先生が軽く了承する。いえ、なんか本当に先生と私を付き合わせるだけという内容なのだけれど、いいのかな。

混乱しながらも私は色々と飲み込めたのだけれど、これだけはどうしても聞いておきたかった事を彼女に聞くことにした。

 

「ねぇ……ミカ。貴方はどうして先生を他の子と付き合わせようとするの?先生と恋人になっている立場というのは……私から考えると夢のようなことで、わざわざ自分から浮気させようとは思わないのだけれど」

 

私がその質問をすると、ころころと笑顔で居た彼女がすっと真面目な表情になる。

そして、しばし考えると、考えがまとまったのか話し始めた。

 

「ヒナちゃんは、先生の周りにいっぱい素敵な人が居るって考えたことない?自分よりも綺麗だったり可愛かったり、そんな自分よりも先生に相応しいかも知れない人たち」

 

「ある……というよりミカがその自分より綺麗だったり可愛かったりの立場だと思う」

 

「ふふ☆セクシーミカでごめんね?」

 

イラッ。

 

「とにかく、そういう人たちが周りに居るとじゃあ、自分と先生の愛は本物なのかな?って不安になってくるの」

 

それは、分かる。そして、先生はかなり気まずそうだ。

 

「だからそういう素敵な人達と先生が愛し合って、まだ自分の事が一番好きなら、逆に愛は本物だったって事!」

 

そう……なのかな。

 

「それに先生が私以外に見せる私の知らない顔が大好き!」

 

はぁ、はぁ、と喋っている彼女の顔が紅潮していき、声に艶がかかっていく。

 

「私一人だけでは絶対に引き出すことの出来ない先生を見ると……もう、たまらないの!」

 

「色々な先生の顔を見て、色々な先生の行動を見て、色々な先生の愛し方を見て、最後には『ミカが一番好きだよ』って言ってもらえる」

 

「それが私の最高の幸せ☆」

 

潤んだ瞳に、紅潮した顔は女の私から見ても色気が凄いと言えるもので、当然先生もくらりとしているのかと思ったら、意外と冷静に彼女に声をかけた。

 

「ミカの変態……でも愛してるよ」

 

「あっ、イク♡」

 

イカないで頂戴。

 

 

 

 

 

結局、彼女がなぜ先生に浮気をさせるかはほとんど理解出来なかったけれど。

そこには確かに先生と聖園ミカ二人の絆があるように感じられた。

だったら私が口を出してもしょうがないだろう。あんまり踏み込んで話をして彼女を理解してしまったら、戻れない所まで行ってしまいそうだし。

それに、まぁ。

 

「え、えっと良かったらなんだけど、ヒナちゃんの頭を撫でさせてくれないかな?」

 

「私の頭を……?別に、構わないけど」

 

「やった☆そ、それじゃあ失礼して。……わぁ!ふわふわ~」

 

私の頭を撫でる事の何が楽しいのか、ふにゃふにゃと笑う彼女の事が、私は嫌いにはなれないのだ。

 

 

 

 

 

いつだったか、とりとめもなく考えていた、私の恋が叶う時は何かが狂った時というのは正しかったのかもしれない。

けれど隣に先生が居るなら、狂っているのも悪くないと私は思う。




明日もヒナちゃんのお話を投稿できると思います。
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