=ゲヘナの風紀委員長=
アビドスの自治区にゲヘナの風紀委員がやって来た。
目的は便利屋68……と言うのは表向きで裏の目的はシャーレの先生である私らしい。
私の身柄を手に入れれば他校……特に犬猿の中であるトリニティ総合学園のいい牽制となると考えたらしい。
(トリニティの生徒であるヒフミと関わったのが要因の一つなのだろうな)
ともあれ、相手は本気だ。
このままでは数の暴力で押し切られる……そう考えたが、ある人物の登場により事態は終息した。
「……アコ。この状況、きちんと説明して貰う」
ゲヘナ学園風紀委員長の空崎 ヒナ
どうやら今回の件は行政官の天雨 アコがヒナ委員長に黙って遂行していたらしく、彼女にバレたアコ行政官はホログラム越しに青い顔になっていた。
(彼女が強者であることは一目で見れば理解出来る……それに彼女の隣にいるポケモンも……)
ヒナ委員長の隣にポケモンが一匹いた。
わざわいポケモン……アブソルだ。
「そのアブソルは君のパートナーかな?」
撤収準備をしているヒナ委員長に問い掛けた。
「アブソル……この子のことね? ……そう、私の大切なパートナー」
「そうか……私が言うのもあれだが、大切にするんだよ?」
「もちろん」
その後、ヒナ委員長からカイザーコーポレーションとやらが何かアビドスで暗躍していることを教えて貰った。
(……そろそろお話をしておくか)
=敵にしてはならない存在=
「初めまして、私はシャーレの先生です」
「クックックッ……初めまして、先生。私のことは黒服とお呼びください」
突如来訪した目の前の男に対して冷静に接する。
だが、内心ではかなり戸惑っていた。
「ここにはどうやって来たのでしょうか?」
こことは黒服が所属しているゲマトリアと呼ばれる組織のいわゆる秘密基地のような場所。
そう簡単に侵入出来るはずのないところである。
「とあるポケモンの力を借りたのさ」
ポケモン……突如キヴォトスに現れた生物
様々な種類がおり興味深い存在と考えていたが、まさか自分たちのアジトを易々と出入り出来るものがいるとは黒服も思いも付かなかった。
「……それで、今日はどのような件でいらっしゃったのですか?」
「お願い……忠告……いや、君たちからしたらこれは脅しだね」
すると、先生の影が後ろに伸びていき、翼を生やした姿へと変貌した。
「生徒たちから手を引け。私も研究者として……未知を追い求める者として、君たちの探究心は否定しない。だが、生徒に危害を加えるようなら私は君たちを滅ぼす」
目の前にいる男は敵にしてはイケない……
ここで排除するか?
いや、逆に自身が消されてしまう……
黒服は完全に詰みであることを理解した。
「一つ聞いても宜しいでしょうか?」
と黒服は問う。
「どうして貴方が彼女たちに手を差し伸べるのですか? 貴方は異界の人間ですよね?」
「そうだね……先生だからと言う理由じゃ君たちは満足しないかい?」
「そうですね……満足はしませんが、今はその答えだけで良しとします」
「そうか……で、ホシノの件は諦めてくれるで良いんだよね? あぁ、もちろんシロコや他のみんなにも手を出さないことも確約してくれるかい?」
この男は何処までの情報を持っているのだろうか?
まだキヴォトスに来て一ヶ月もしていないと言うのに……これもポケモンとやらの能力……いえ、それだけでは足りない。
(やはり、敵に回すとゲマトリアは全滅ですね)
黒服は白旗を揚げるしかなかった。
だが、ただでは降参しない。
「解りました。生徒たちから手を引きましょう……ですが、今度は貴方を観察しても宜しいでしょうか?」
「……いいよ。けど私はただの学者でしかないからね?」
先生は答えると、目の前にリングが現れる。
どうやらアレでこの場所に来たようだ。
「監視役としてこの子は置いていくよ」
「この子……その影のことですか?」
「そう。どうせ君たちのことだ、ポケモンを今度の観察対象にするんだろ? 度が過ぎるようならその子が黙ってないからね?」
「クックックッ……承知しました」
影が黒服の所まで移動する。
そして、黒服の影と同化した。
「そうそう、君の仲間のマダムとやらにも生徒から手を引くように伝えておいてね」
と告げ、先生はリングの中に消えた。
直後、リングはその場所から消滅するのであった。
=大人は信用してならない=
「先生、大変です!!」
アビドス高等学校を訪れると、アヤネが慌てた様子で私に声を掛けてきた。
「カイザーコーポレーションに連邦生徒会の調査が入り、カイザーの不正が次々と発覚。カイザーローンにも捜査の手が入り、なんと私たちの借金が減額されることになりました!」
「あぁ、ニュースになってたね」
アビドスが借金していたカイザーの不正発覚。
今キヴォトスではこの話題で持ち切りだ。
「借金そのものはなかったことにはなりませんでしたが、それでも今までよりも状況は改善しました!」
嬉しそうに話すアヤネ。
他の子たちも前より明るくなったように見えた。
「せんせー」
とホシノが私に話し掛けてきた。
「せんせー、何かしたの?」
「……さあね? でもこれで身売りするような真似はせずに済んだでしょ?」
しばらく、沈黙したホシノは「うへぇ~」と声を出した後にこう続ける。
「やっぱり大人は信用できないね~」
「そうだよ……特に私みたいな大人は絶対に信用しないでね」
私はホシノにそう応えた。
=レポート3のトレーナーおよびポケモン=
ヒナ:アブソル
黒服:????
先生:????
ホシノの身売り阻止完了。
ついでにアリウスとシロコの件も釘を刺しておきました。
では、次回もよろしくお願いします