=ポケモン図鑑=
ポケモン所有者および各学校にポケモン図鑑を一台ずつ配布した。
この図鑑はミレニアムのエンジニア部で作製された。
先生の世界と同じく出会ったポケモンを記録してそのポケモンの情報を与えると言うものだ。
このキヴォトスでロトムはまだシッテムの箱にいる個体以外は見つかっていない。
その為、ロトム図鑑やスマホロトムより低い性能である。
だが、それでもキヴォトスのマップや自身の現在地やテレビなどの複数の機能が備わっている。
図鑑から得たポケモンの情報の扱いについてはそれぞれの学校および個人の判断に任せた。
もちろん、ポケモンを使っての犯罪行為は厳しく取り締まるとしている。
=パラドックス=
ヴェリタスのみんなに呼ばれてミレニアムを訪れる。
何でも見せたい物があると言う話しだ。
「それで見せたい物ってなんだい?」
途中で合流したゲーム開発部と共にヴェリタスに部屋に入り、私はハレに問い掛ける。
「あぁ、それなら……これさ」
ボタンを押して床から台座が現れた。
台座の上にはガラスケースに入れられた虫のロボットのような存在が見える。
「これは……どこにあったんだい?」
「ミレニアム学区の郊外で見つけました」
私の問にコタマが答える。
「これ以外にも他に後五体くらいあったよ」
マキが補足として付け加える。
そうか……この子がこの世界にいるのか……
「先生はこれが何なのか知っているんですか?」
「あぁ……この子はポケモンさ」
「「「えぇー!?」」」
と全員驚きの声を出す。
「驚くことかい? マギアナと言う例があるだろ?」
「で、でもあの子と違って今目の前にいるこれは完全にロボットだよ!?」
モモイの言葉にゲーム開発部の全員が頷いて同意した。
「それはマギアナは過去の人間が生み出しており、この子は遙か未来から来たポケモンだからだよ」
「未来……タイムスリップして来たってこと?」
ハレの問に私はコクリと頷いた。
「パラドックスポケモン……未来または過去に生息するポケモンをそう呼んでいる。この子はテツノドクガと言う」
他にいたと言うことはこのパラドックスポケモンは私のいた世界ではなくこの世界の未来から来た可能性があるかもしれない。
もしかすると……調査した方がいいだろう。
「実はこれと別に他の種類があったんだけど、見つけた時にはなんか金属生命体に食われてたんだよね」
「その金属生命体がこの子だよ。後、写真で良かったらその食べられたロボットがこれ」
コタマの言葉にマキの手にはメルタンが乗っており、見せてくれた写真にはまるで深海生物のようなロボットを捕食しているメルタンが映し出されていた。
=大食いと大食い=
野生のポケモンをおびき寄せる為に大量のポフィンを手にゲヘナ自治区を歩いていた。
「ゴーゴン!」
「おや、このゴンベは……」
ゴンベが私の前に現れた。
以前ヒナの報告を聞いていたので、もしかすると……
「あら? 貴方は確かシャーレの先生ですか?」
金髪の女性に声を掛けられた。
あの写真に写っていた女性と同一人物である。
「そうだよ。君は美食研究会の人だよね?」
「はい、美食研究会の鰐渕 アカリです~」
この子以外に美食研究会のメンバーは見当たらない。
どうやら別行動中のようだ。
「このゴンベは君のポケモンかい?」
「この子はゴンベと言うのですね~。はい、私の可愛いお友達です~」
「そうか、大事にするんだよ……そうだ、良かったらこれをみんなで食べてくれ」
とポフィンの入った袋を渡した。
「あら? これは何ですか?」
「ポフィンと言う私の世界のお菓子さ。口に合うと良いのだが……」
「異界のお菓子ですか~……有り難く受け取りますね~」
このポフィンを切っ掛けに美食研究会が私に目を付けるのだが……この時の私は知る由もなかった。
=砂狼とこいぬ=
「先生、遊びに来た」
「やあ、シロコ……それにイワンコ」
シャーレにやって来たのはシロコとこいぬポケモンのイワンコである。
このイワンコは怪我をしていたところシロコが助け、それ以来シロコのポケモンになったようだ。
「すっかり元気になったようだね」
「うん……先生がくれた薬のおかげ」
あの日、ボロボロのイワンコを抱えて休むことなくアビドスからシャーレまで自転車を走れせてやって来た。
私はすごいキズぐすりで手当をし、オボンのみとモーモーミルクを与えた。
手当をして解ったことだが、イワンコの怪我は人の手によるものである。
「それで……この子を傷付けた奴は見つかった?」
「あぁ。便利屋68に頼んで処罰済みさ」
「……私も参加したかった」
「気持ちは解るが、まずはこの子のケアが優先だよ」
このイワンコは私とシロコには心を許しているが、その他の者が近づくと怯えて動けなくなってしまう。
人がトラウマになっているようだ。
私たち以外に心を開くのは恐らく時間が掛かるだろう。
=愚か者の企み=
「計画を中止しろ……ですか?」
ゲマトリアのアジトにて、黒服とマダムと呼ばれている異型の女性が会話をしていた。
「えぇ、その通りです。理由は……語らなくてもよいでしょう?」
室内をまるで魚のように泳いでいる影を黒服は見た。
先生が置いていった監視役のポケモンだ。
今もこうして黒服とマダム……ベアトリーチェの会話を聞いている。
「排除を試みては?」
「無理ですね。一度あのポケモンの能力をこの身で体感しましたが、我々ゲマトリアの力をすべて使ったとしても勝つことは難しいです」
恐らく殆どがそのポケモンのテリトリー……裏の世界へと飲まれてしまう。
運良く表の世界に留まることが出来たとしてもしあのポケモンの前では通用しないと黒服は考えている。
「ゲマトリアとしては当面の間は目立った行動は控えるようにします。私個人としては先生をこちら側に説得を試みることにします」
と告げて黒服と黒い影はその場から姿を消した。
一人残されたベアトリーチェはため息をつく。
「先生を排除すれば済む話でしょう? なぜこんな簡単なことに気付かないのでしょうか?」
自分の手駒の中でも一番の者たちを使いましょう。
そう考えながらベアトリーチェもその場から消える。
こうして愚か者が悪夢を見る時が刻々と近づくのであった。
メルタンが地味に活躍している(笑)
では、次回もよろしくお願いいたします。