=ある意味似ている=
「先生、キヴォトスに来てから一ヶ月以上が経ちましたがこちらの生活には慣れましたか?」
ある日、アロナがそう質問してきた。
「まあね……ある意味でこの世界も元の世界に似ているからね」
「先生のいた世界では銃撃戦が盛んだったんですか?」
「いや、銃撃戦ではなくポケモンバトルだよ。向こうの世界はトレーナー同士が目と目が合うとポケモンバトルが行われるんだ」
一部違う地方もあるがと最後に付け加える。
「ポケモンバトルってポケモン同士を戦わせることですよね? ポケモンの中には銃よりも火力の高いものがいるので確かにキヴォトスに似ているかもです」
「ちなみにバトルに負けたらお金を払わなければならないんだ」
「……キヴォトスよりもヤバイかもです」
激しく同意である。
=燃ゆる恋心を抱きし乙女=
ゲヘナ自治区のとある場所にて……
「く、くそ……なんでお前が我々を襲うんだよ!?」
ゲヘナ生徒は目の前にいる狐のお面をした少女に問う。
彼女の名前は狐坂 ワカモ……連邦矯正局を脱走した七囚人にして災厄の狐と呼ばれている危険人物である。
「目障りな害虫を駆除するのに理由はいるのかしら?」
そう答えるワカモ。
実際の理由はこのゲヘナ生徒がポケモンを捕まえて売り捌こうとしていたからだ。
「そ、そうだ! わ、分け前をお前にもやる! ……だから、見逃して―――」
ダンッ!
ワカモの持っていた銃から弾丸が放たれる。
それを頭に食らったゲヘナ生徒は気絶した。
「あの方を困らせる輩の言葉など聞くだけ無駄……さて、最後の仕上げをしましょう」
ワカモの後ろに九本の尻尾を持つポケモンが現れた。
きつねポケモンのキュウコンでワカモの相棒である。
「すべて燃やしてしまいなさい」
ワカモの指示にキュウコンはほのおのうずを使用する。
すると、周りにあった燃えやすいものに次々と引火し始めた。
「ふふ、これでよし♪」
燃える炎を見てワカモは満足げにキュウコンと共にその場から離れた。
=風紀委員会として=
それから五分後。
匿名の通報を受けてゲヘナ風紀委員会が現場に先着した。
「……またかよ」
銀鏡 イオリは呟く。
ゲヘナ自治区でポケモンを売ろうとしたり悪用したりする者が襲われると言う事件が発生している。
ちなみに死者はゼロ。
犯人も捕まっていたポケモンたちも安全な場所に移動されていた。
「今回も便利屋は関わってないんだよな?」
イオリは一緒に現着した火宮 チナツに問い掛ける。
「今アコ行政官がシャーレの先生に問い合わせをしているけど……今回も七囚人の一人狐坂 ワカモの仕業のようです」
相手が悪いとは言え自分たちの自治区で暴れ回るワカモについて風紀委員会はあまり良く思っていなかった。
例えそれが結果的に先生の役に立っていたとしても……だ。
「彼女自身の実力と炎を操る狐のポケモンを従えていることを考えて……やはり狐坂 ワカモの相手は―――」
「えぇ、もしも相手をするなら私とこの子がするわ」
チナツの言葉を遮り、アブソルと共にいたヒナがそう宣言した。
=盗聴は立派な犯罪です=
「……うーん、やっぱりダメか」
「なにがダメなんだ?」
なにかに悩んでいる様子のコタマに各務 チヒロが問い掛ける。
「先生の盗聴……何度やっても上手く行かない」
チヒロは聞かなければ良かったと頭を抱えた。
同時に後で先生に謝罪しなければと考える。
「上手く行かないのなら諦めなさい」
「大丈夫、別の方法を試すから」
何が大丈夫なのだろか?
そんな疑問を抱えていると、ドアから二回何かで叩く音が聞こえてくる。
「帰ってきた」
コタマがドアを開けると、一匹のポケモンがコタマの肩に止まった。
「その子は?」
「おんぷポケモンのペラップ……人の言葉を覚えて喋ることが出来る」
その説明でチヒロはコタマが言った別の方法について理解した。
「その子を使って盗聴するのか……ポケモンを悪いことに使うのは先生に嫌われるのでは?」
「うん、だからほどほどにする」
しないと言う選択肢は無いのか……
チヒロは再び頭を抱えた。
「じゃあペラップ、先生が何を喋っていたか教えて」
コタマがの言葉にペラップが声を出す。
「コタマ、私以外にこんなことをするのは許さないからね」
「…………」
「先生の方が一枚上手だったようだな」
コタマの企みは先生に見透かされていたのであった。
=忍び寄る影=
深夜、シャーレのオフィスがあるビルの前……
武装した四人の少女がいた。
「今回の任務はシャーレの先生の暗殺だ」
アリウススクワッド……マダムことベアトリーチェが送り込んだ刺客である。
「……今ここで先生を葬ればエデン条約はどうなる?」
「先生の存在がマダムの計画を大きく変えることになった……今回はその報復と言う意味があるのだろう」
錠前 サオリは戒野 ミサキの疑問に答える。
彼女が言った通りだ。
シャーレの先生が消えればエデン条約自体白紙になる可能性があるが、先生の存在によりエデン条約での暗躍が難しくなってしまった。
今後の作戦を練ろうにも先生の存在はネックである。
故に今のうちに排除した方が良い……ベアトリーチェはそう判断した。
「先生って確か異世界から来たんですよね?」
「異世界……一体どんなところなんだろう?」
槌永 ヒヨリと秤 アツコは先生がいた世界に少し興味があった。
そんな二人の会話を聞いてサオリは首を横に振って言う。
「我々には関係ないことだ……では、行くぞ」
先生の暗殺計画を実行開始。
全ては虚しい。
どこまで行っても、全てはただ虚しいものだ。
この言葉を胸に彼女たちは進む。
次回ベアトリーチェ死す・・・デュエルスタンバイ!
では、次回もよろしくお願いします。