ギルドを出る前から冷や汗をかいていたシャオクの顔色も悪くなってきたので、一旦家へと戻る。
白金貨を持たされているプレッシャーがきつかったのだろう。
こちらのアイテムボックスに回収し、棒金も崩して収納した。
鍛冶師へとジョブを変更して、滋養丸や強壮丸といったいつもの所持品に戻す。
飲み物を飲んだあたりで体調も落ち着いてきた。
「今から自分がホスリムでアルヴナ行きの冒険者探してくるから、みんな待っててくれる?」
「かしこまりました」
「あっ、その……アルヴナでミツキ様が1人でいると絡んでくる人がいるかもしれません!
ドワーフが多いので……」
「そうなの?
まぁ移動できたらすぐ戻ってくるから大丈夫だよ」
鍛冶師の救済を謳ったギルドがあるのだ。
他の街に居辛くなった者だけではない、居られなくなった、悪くいえば追い出されたような者だっているに違わない。
それでも難癖をつけられる前に、物理的に移動してしまえば問題ないだろう。
「じゃ、ちょっと行ってくるね」
***
自宅の内壁から、ホスリムの冒険者ギルドへと出てくる。
この前の買い物のおかげで、トウキビが買える場所のイメージしかなくなってきた。
おっと、先にパーティーを解散しておこう。
鑑定を駆使しつつ、暇そうな冒険者を探す。
声を張っている冒険者もいるが、挙がった街の名前はアルヴナではなくルテドーナばかりだ。
そりゃ近くて大きい街で領都となれば、向かいたい客も多いだろう。
客が何人か集まっている冒険者のもとには、出発間近だと思って更に客が集まりやすい。
何度か募集の声を被せられて、1人も客が集まっていない冒険者の男が目に留まる。
「あの……」
「ん?
おぉ、移動かな?
カロガガなら銀貨2枚、その先のルテドーナなら4枚だよ、まあ何人か集まってからになるがな……」
ちょっと冴えない感じだが、それでも探索者Lv50まで上げた人物のはずだ。
料金もシャオクから聞いた相場と同じで、ふっかけてはこない。
アルヴナへ飛ばしてもらえるかを聞いてみたが、1人では厳しいらしい。
逆にアコルトたちを連れてきて人数分払ったほうが話が早かったか。
なんだか面倒になってきた。
ホスリムアルヴナ間の相場は300ナールだそうなので10枚ほどの銀貨を掴み、差し出しながら迫る。
「これで送るだけお願いできませんか?」
「わ、わかったわかった、それで十分だ!
それじゃ勧誘するぞ、友に応えし信頼の───」
そんなに凄んでいないつもりだったが、焦り気味に合意してくれた。
会話が苦手な冒険者だっているのは当たり前か。
スムーズにパーティー加入も終わり、代金を渡すとすぐにフィールドウォークの呪文も唱えられる。
冒険者ギルドの外壁にできたゲートを確認して、さっさとそれをくぐり抜けることにした。
出てきたのは、冒険者ギルド内の絨毯からだ。
一呼吸置いて背面のゲートが消えると、その後パーティーが解散されたと脳裏に浮かぶ。
ちょっと申し訳ない気持ちにもなったが、本当に人を待たせているので急いでほしかったし、お金も弾んだのでいいか。
出入り口脇の絨毯の前から見える範囲にも、他の街と同じようにほとんどが人間であるものの、心做しかドワーフが多い気がする。
事前情報でそのように感じているだけかもしれないが。
「回顧に巡る行程を、共に目指さん行路の先を、フィールドウォーク」
先ほど男が唱えた呪文を、今度は自分が声に出しつつ、頭ではワープを念じる。
1人で偽装するのは、どこかでボロが出そうで怖い。
やっぱり冒険者の仲間にもいてほしいよなぁ。
対外的にもいつまでも架空の協力者の匂わせを続けるのも厳しいし。
自宅へと戻り、全員をパーティーに加入させる。
これからアルヴナへと移動し、シャオクは鍛冶師ギルドへ向かってもらい、残りメンバーは防具屋にでも行くことにするか。
ドワーフの種族固有ジョブなので異種族は手続きに関われないだろうし、エルフの自分が奴隷の主人だとしゃしゃり出れば手続自体を拒否されるかもしれない。
ましてやこの見てくれだと、舐められそうだ。
前回は鍛冶師であるとの確認を通過して、費用なども教えてもらうところまで行けたようだから、変に拗らせなければ大丈夫だろう。
資金を持たせ、支払いの意志があるとして具体的な日程と手順を聞かせてもらおう。
「アルヴナのギルドへの所属に5万ナール、転属に30万ナールだったっけ?」
「そうですね。
前回聞いたときはその料金でした」
「じゃあ50万ナール分渡しておくね。
確認をされたときは料金分でいいけど、所属してすぐ転属も行うことやノルマ免除とかで追加で言われても、払う用意を見せられるようにさ」
「は、はい」
「一応今日は、あくまで手順を聞いて引き上げるってことでお願い。
先に探索者ギルドを脱退しちゃってから行くと、手続きまでに時間が空いて不自然になりそうだし。
可能な限り脱退と鍛冶師ギルド所属とを同日にして、『鍛冶師になれたから脱退した』って思われるようにしたい」
先ほど硬貨で埋め尽くされた状態から解放されて安堵したアイテムボックスが再度金貨で埋まっていく様子に、シャオクの表情がコロコロと変わる。
ごめん、慣れてくれ。
「あと、1人でまかせることになっちゃうけどシャオクが無事に帰ってくるなら、そのお金はどうなったっていいからね。
ジョブはどうにか出来るし、ギルドのことも上手くいかなくてもいいから、逃げてきて大丈夫だよ」
「……わかりました」
説明を受ける間は同じ街にいるんだし、なんとかなるはずだ。
まるで何かあるかのように話したのでシャオクが不安そうな表情になりかけたが、長年続いているギルドの手続きなら資金源になる仕事で信用を落とすような真似はしないと思うけど。
一応ミーラスカを闘士のジョブに変更しておこうかな。
ついでに自分にも剣士と農夫をつけておくか。
これでシャオクは鍛冶師のジョブに、英雄と剣士に農夫、そこに闘士の腕力補正が付与された。
並の鍛冶師じゃ相手にならない程度の力はあるし、問題もないだろう。
改めて用意を確認し、家の鍵をかけてアルヴナの冒険者ギルドへと飛んだ。
***
冒険者ギルドの建物を出て、アルヴナに訪れたことのあるシャオクから商店街があるという方向を教わる。
その場で一旦別れて、シャオクは鍛冶師ギルドがあるという方向へと進んでいった。
あちらが頑張ってくれている間、こちらもやるべきことを成そう。
まずはミーラスカ用の装備だ。
ルテドーナでも探すことになるが、少なくとも鋼鉄、もしくはダマスカス鋼以上の装備を見つけたい。
良品の部位が被るようなら、シャオクの装備も更新できるしな。
通りに面して店が並んでいる区画まで進むとすぐに、装備品の置いてある店舗が目に入る。
武器屋……は一旦置いておいて、防具屋が先だ。
ノルマで鍛冶製品を納めさせているという話が本当なのか、隣り合う店舗全体を見れば、迷宮や鉱山地帯を抱えるルテドーナに匹敵するほどに種類が豊富なようだ。
こちらの方面にも古くからの迷宮があるのかもしれない。
ドワーフは作る側にほとんど回っているのか、店員は人間ら他の種族しかいない。
鑑定を駆使しつつ、購入候補となる装備を見繕っていく。
ダマスカス鋼の兜や鎧に小手などの、今まで値段でスルーせざるを得なかった防具が選択肢に入ってくるので、色々と目移りする。
ルテドーナにもワープで向かえるので今すぐにここで購入することはないが、あれもこれもと欲しくなる。
店員に断ってから装備させてもらうと、ミーラスカも着用時の重さが分かって戦闘がより現実味を増したようだ。
頭上に角がある関係で、一部兜は装備できない物もあり、ミーラスカにおいては鉢金タイプの頭装備が基本となるらしい。
牛人族の固有ジョブの闘士が近接格闘寄りなので、膂力はあっても装備の制限があるなんてあたりが実にゲームナイズされているように感じる。
装備可能一覧の載った攻略本をください。
たしかルテドーナの方の防具屋では、白銀……ミスリルが編み込まれているという服を見かけたはずだ。
あれを自分に、もし軽量で竜革より防御力がありそうならアコルトにも纏わせてもいいだろう。
そんなことを考えつつ店内を回っていると、店員から声をかけられる。
ミスリルメッシュスカート(○)
「こちらは……?」
「魔法使いの方に人気の商品でございます。
お腰にワンドを差しておられましたので、お薦めした次第です。
ミスリルが編み込まれておりますので魔法効果を高めるとともに、普段履き慣れた靴と併用できますので体も軽く動きやすくなるでしょう」
詳しく聞いてみると、なるほどとなった。
スカートは腰から下の足装備判定となるので、装備品としては竜革のブーツと競合してしまい、片方しかステータスに影響がない。
だが、このミスリルメッシュスカートを先に身につけて装備品判定されれば、後から履く靴はなんでもいいわけだ。
金属製の足鎧をつけようが、皮の靴を履こうが、防御力は変わらない。
装備品のフィット機能だけを利用して、未装備判定のまま活動しやすい靴を選べるのはかなりよさそうだ。
それに、ジャストフィットを諦めれば装備品ではない靴だって履ける。
ちょっとヒールが高めのローファーとかありませんかね。
背の高さを少しでも上げたい感はどこかにある。
そういえば、と現代から持ち込んだブーツをザノフが高評価した理由に気づいた。
装備品ではないからとおまけ程度に考えていたが、使い方を考えれば装備品以上に高価なものだった可能性がある。
まぁ今更の話だ。
メッシュスカートに頭を戻そう。
休日のワンピースも一張羅のドレスも、裾が足元近くまであるし身につける機会も多くないからなんとか、ギリギリ、許容していた。
……着てみると意外と楽だったけど、心情的にはホントだよ!
ところが命懸けの迷宮での装備が膝下程度までしかないこのスカートになるなら、アコルトの服選びも遠慮が無くなりそうじゃないか?
いや、なる。
装備としては間違いなくアップグレードされるのだが、その……プ、プライド的な……。
…………もうないようなものか。
鏡を揃えた頃には、己の姿に毎日打ちのめされることになると思うので、早めに崩れたプライドに慣れるしかないだろう。
でもほら、パンツルックの方が好きなんだとアコルトに言っておけば!
淡い期待を持ちつつ、ルテドーナの店を見てからということにしてこの場では購入せずに退散した。
事実、他の装備も購入の際はスキルスロットが多いものを選びたいし。
一通り確認だけするつもりで武器屋の方も回っていると、姿は見えないがパーティーメンバーの淡い縁取りが近づいてくるように思えた。
目を向けてその場に留まっていると、角を曲がって出てきたのはやはりシャオクだった。
「戻りました!」
「おかえり、話はうまく聞けた?」
「はい、日程も聞いてこられたので……お家でお話しします!」
しっかり気を張った様子で、周りの目に注意して伝えてくる。
自分なんかよりちゃんと警戒できている。
「じゃあ、食事をしてから戻ろうか」
さすがにこの街で飲食店に入れば、ドワーフの客も多くなるだろう。
杞憂かもしれないが避けられるトラブルは避けたい。
一旦、ホスリムあたりで昼食を取ってから帰宅しようかな。
冒険者ギルドへと戻り、ホスリムで適当な飲食店を探して入った。
トウキビ粉のリベンジのつもりではあったが、……結果からいうとまたハズレだった。
安価な店では出てくるわけもないし、ちょっと高価そうな店では変に小洒落て金粉みたいな気分で掛けているのだろうか。
しっかり料理に使ってくれる店はないものか。
もっともっと高級店じゃないと無理かなぁ。
***
「さてと、ギルドでの話はどうだった?」
自宅に帰ってきて、アコルトにハーブティーを淹れてもらう。
中身の注がれたカップが皆の手元に揃ったので、腰を据えてシャオクに問いてみる。
「所属と転属の料金については、前回の説明と同じでした。
金貨の一部を見せたので、具体的な手続きについても教えてくれました」
「そうか、よかった」
どうやら今回も、鍛冶師のテストとしていくつか装備品を作らされたらしい。
まぁそれは、説明料も兼ねているってところだろうか。
その後、手続きの流れを聞けたそうだ。
仮に明日、夏の上月29日に料金を納めて依頼した場合は、中月3日からアルヴナのギルド所属になれるようだ。
これはアルヴナ周囲の鍛冶師ギルドの直近の試験日が中月3日であるため、そこに合わせる形となる。
アルヴナのギルドでの通常試験もあるので、そこに鍛冶師の状態で参加してそのまま登録を行う、というのが正しいか。
ちなみに話を通してあるので、数日前までに料金を納めて依頼すればいいそうだ。
今回は日程も相談済みなので前日でも構わないとの言質をもらえたようだ。
依頼が通れば、当日の試験順や担当官も調整されるようなので、そちらについては問題なく処理されるらしい。
やはりギルド神殿はあくまで転職補助機能を有しているだけで、ギルド所属の管理とは別物なんだろう。
続いて転属についてである。
転属自体はままあることなので、個人の問題であるし、普通はそこまで気にされない。
だが
せっかく何処其処のギルドを離れてアルヴナまで来たというのに、また別の地で歩もうとして後ろ指を差されるのでは困る。
特にシャオクの場合は、知り合いのいる地元へのUターンだ。
どこで試験を受けたなんて話になれば、なかなか流すことは難しい。
その際に、例えば『探索者の修行先のフウルバリで合格した』と言うことができて、実際にフウルバリの鍛冶師ギルドにその経歴があれば、調べられたって問題ない。
転属依頼では、所属時期や期間もそれらしく書類を作ってくれるそうだ。
……ちゃんと鍛冶師のジョブであるのにそこまで疑う者もいないと思うし、本人が開示しなければそう簡単に露呈することはないと思うが、安心を買うという意味もあるだろう。
アルヴナと転属元と転属先、3個所の口裏合わせと証拠作りで30万なら、理解は出来る額でもある。
鍛冶師のジョブに就いていること前提なので、無能力者を不正登録したわけではないしな。
経歴詐称ではあるが、ギルド員の所属変更歴自体はギルド自体に実害はない。
その時期にはそのような人物がいたみたいです、で済むだろう。
ってことはアルヴナの鍛冶師ギルドは30万ナールの暴利を貪っているのではなく、生活費以外に各所に根回しできるだけの額を揃える能力を持っているかの確認をさせているって意味合いが強いのか?
そう考えるとちゃんと救済をして……、いや、ノルマを課して労働させてるんじゃないか。
でもそれも、見方を変えれば継続した仕事の斡旋を……、と考えても仕方ないな。
こちらとしては手続きと処理さえ
転属手続の準備については半月ほどかかるようなので早めにやっておきたいが、探索者ギルドの脱退タイミングが難しい。
2日にギルドを変更するという旨で探索者ギルドを脱退、鍛冶師に変更してからアルヴナに向かって翌日の試験に合わせての所属依頼。
ついでにその際に転属希望を出す、というのが無難な感じがする。
現在のように探索者ギルド所属のままで依頼した際に、手続き関連で規約とかに引っかかると面倒だし。
「半月の間はアルヴナ所属ってことになると思うけど、例のノルマの仕事とかは聞いてる?」
「材料を手配されるので十数点ほど製造することになるだろうとのことです。
所属してすぐ転属依頼は珍しいそうで、ひと月分の最低数量になってしまうため、そのあたりが下限だそうです」
1日1個程度なら思ったより大したことないな。
と思ったが、それでもらえる賃金など微々たるものだろう。
それと別に自分で仕事もしなければならないし、転職後すぐのレベルの低い鍛冶師ではそれだけで手一杯じゃないか?
でも訳ありで再所属をするほどの者で、費用を払えるならある程度は経験を積んでるはずか。
他人のケースは今は考える必要もないっちゃないが。
「強壮丸を飲みつつ一気に終わらせても大丈夫かと聞きましたが、可能ならそれでも構わないそうです」
シャオクが結構ハードなことを考えると驚いたが、よく思い返してみれば毎日のように強壮丸を多用している主人もいるし、前に皮製装備を大量に作らせたこともあった。
薬でやっつける考え方は完全に自分のせいです、シャオクごめん。
なんだか色々と考えは巡ったが、鍛冶師ギルドへの所属に関してはなんとかなりそうだ。
所属先のシームの鍛冶師ギルドにも、偽装先の何処かの街の鍛冶師ギルドにも、半月の間に話を通してくれるはずであるし。
今日の残りの予定は……シャオクも連れてルテドーナの防具屋かな?
***
やはり素人集団より、知見のあるシャオクと共に回った方が戦闘面での利点なども考えやすい。
伊達に色んな装備を使いこなしていない。
アコルトも道具自体の手入れの具合やある程度の良し悪しはわかるが、魔物との戦闘を思い浮かべつつというのは難しそうだ。
見学することはあっただろうが、本格的な戦闘は自分と迷宮に入り始めてからだろうし。
良質品の部位被りが怖いので、今回はあくまで確認であってオークションを終えてから装備を揃えたいが、見つけてしまった。
ミスリルメッシュスカート(○ ○ ○ ○)
よ、4スロット……。
今の自分の竜革のブーツは2スロットなので、倍のスキルが付与できる上に白銀の魔法強化も見込まれる。
聖銀の足装備はカルムのリストにはなかったはずだし、急に出てきたところで4スロット以上のものが出てくるとは限らない。
それに被ってしまったってアコルトに回せそうだし、将来的に前衛が増えたらシャオクも槍を持って下がるなら動きやすいスカートはありだ。
う~~~ん、買うかぁ?
メイン装備がスカートとなると懸念したことが……。
「こちらですと、デザインが竜革のブーツと合いませんね……。
同じ部位なので同時に装備には含まれないようですし」
おお、アコルト自ら苦言を呈してくれるとは!
そうそう、合わないからやめとこうか。
きっと別のミスリル装備もあるよね。
「それでしたら、こちらと組み合わせてみては如何でしょうか?
女性の方に人気の靴で、迷宮以外でも普段着のお好きなスカートに合わせる方も多くいらっしゃいます!」
オストリッチパンプス(○ ○ ○)
そ、そうきたか~!
店員が持ち出してきたのは太ヒールの黒色のパンプスで、ストラップのついたシックなものだった。
ソールも厚みがあって、踵の高さが上がっても安定感がある。
オストリッチ……、オーストリッチ革といえばダチョウの革だ。
つま先の辺りの生地が多い部分には特徴的な模様があるので、おそらく合っているだろう。
店員曰くロックバードのボスの素材らしいので、竜革と同じランクの階層ということか?
それなりに防御力もありそうだ。
作中にも出てきた気がするが、細かいところは思い出せない。
知らないうちにアコルトが試し履きの許可を取っていて。
いつの間にやら試着ブースに連れて行かれて。
気がついたらスカートとパンプスを履かされていた。
「お嬢様、お似合いです!」
「あっ、うん……」
ブースを出てみると、いつもより視線が高い。
普段から履いている竜革のブーツも若干の底の厚みはあるが、オストリッチパンプスはそれよりもソールが厚い。
ヒールもそこからさらに5cmほど高さがあるので、アコルトには並べないまでも8cmくらいは上がっているんじゃないか?
自分に鑑定をかけてみると、装備の一覧にはミスリルメッシュスカートの文字はあるが、靴の方は出てこない。
パンプスそのものを見定めて鑑定すると別ウインドウで表示されたので、
ミサンガを複数結んだのと同じ感じかな。
このままスカートが装備から外れたとしても、パンプスを履き直さないと自動で装備が切り替わる仕様ではなかったはずだ。
靴も脱がずに衣服だけ外れるなんて、どういう状況だよって感じではあるが。
装備品特有の足へのフィット感はあるので、吸い付くように動かせる。
というかヒールも太いので挫いたりすることなく、走るのも問題なさそうだ。
もっとデザインに寄っていたら、角度がきつかったりヒールが細かったりで無理そうだが、このくらいなら迷宮でも全然いける気がする。
「いいね、これ」
「はい、今後はお洋服の方もこちらに合わせていきますね」
あっ。
しかも、スカートも自分の体格に合わせて収縮し、膝下まであったはずの裾から膝が見えている。
……しばらく服屋には行かない!
静かに会計をして自宅へと戻ることにした。
スズシロ・ミツキ エルフ ♀ 18歳 魔法使いLv30
魔法使いLv30/英雄Lv26/探索者Lv31/僧侶Lv29/剣士Lv9/農夫Lv1
(村人5 戦士20 巫女14 商人30 錬金術師1 細工師1 薬草採取士30 森林保護官25 武器商人1 防具商人1 奴隷商人1 料理人1 盗賊1)
竜革のブーツ(○ ○) → ミスリルメッシュスカート(○ ○ ○ ○)
アコルト 兎人族 ♀ 16歳 狩人Lv24
シャオク ドワーフ ♀ 19歳 鍛冶師Lv21
ミーラスカ 牛人族 ♀ 24歳 闘士Lv1
購入品
・オストリッチパンプス(○ ○ ○) 1(ミツキ用:装備箇所重複の為適用外)
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次回は6/2更新の予定です。
オストリッチ。
原作ではロックバードのボス、ファイヤーバードのドロップアイテムで、柔らかすぎて防具の素材にはならないとありました。
拙作では硬質の竜革に比べて、加工しやすく軽装備の鍛冶材料、かつ日用品にも使いやすい素材として採用しています。
竜革と比べて素材としての防御力や耐性は劣るものの、落とし主のように火に強く、軽くて見栄えもよくて貴族にも好評としています。
12階層から22階層で皮関連のドロップが設定されていないので、竜革と同ランク帯ですがアイテムの仕様を変更することにしました。
仮に同じ23階層のボスがファイヤーバードとランドドラゴンでは、十中八九前者を選ぶでしょうし。
ミノ・ハチノス素材より上位の装備の下地、ウサギの毛皮と同様に服飾素材、というのが実用的なラインと考えました。