「タルタートルは頭や手足にある程度攻撃を受けると、その硬い甲羅に体を引っ込めるのであります。
魔法使いがおらず、スキル武器もないパーティーではなかなか攻めるのが大変ですが、ミツキ様がおられるこのパーティーでは、籠もらせた方が反撃の暇を与えずに倒せるでありますな」
「魔法は撃ってこないの?」
「少なくとも頭が出ていない状態では使ってこないのであります」
魔物のスキルも、対象を視認してから発動する必要があるのだろうか。
そうすると、目の付いていない植物たちが使ってくるのはどういうことだ。
設定資料集ください。
「でも引っ込むまで結局攻撃し続けないといけないんだよね?」
「いえ、
一定時間は籠もったままになるので、頭の正面以外は比較的安全となるのでありますよ」
なんともゲーム的な対処法だ。
ちなみにその頭の正面は、防御の解除と同時に噛みつきが飛んでくる可能性があって、わりと危険らしい。
タルタートルの体長的に、同時攻撃には2人が必要になるが、セナクロワ、シャオク、アコルトと、3人いれば初動から問題なく動きを止められそうだ。
止めた後は誰かが動きを見ていればいいし、そもそも再び動き出す頃には戦局も終盤だろう。
「じゃあシザーリザードの方は?」
「あちらは背より低い位置で武器を突き出せば、簡単に怯むのであります」
先程の戦闘で、セナクロワがシザーリザードに対して剣を差し込むようにしていたが、それか。
体も大きくなって鋏を持っているといっても、基本の形状はトカゲだ。
地を這うように動き、普段は自分の頭より高い位置にいる敵を相手にしているのである。
警戒しているよりも下方からの攻撃に弱いというデザイン的な弱点にこれまたゲームっぽさが感じられるし、この世界の住人たちが騎士団という組織の中で、戦闘経験が蓄積されてその知識が共有されているということが、実に面白い。
助言通りに実戦に挑んでみれば、器用に鞭を操るアコルトも、要領の良いシャオクも、これまでよりずっと余裕を持って立ち回れている。
素人目にもそう見えるのだから、本人たちはさらに動きやすいんだろう。
敵の数が多ければミーラスカの大盾でその進路を封じられるし、群れの魔物が5体の時でも手が足りないということはなくなった。
他の魔物の対応策についての教えを乞いながら階層を回っていると、結構すんなりと待機部屋へと辿り着いた。
戦闘にゆとりが持てると、心持ちも楽になっていつもより捗ったのかもしれないな。
待機中のパーティーもいないし、扉も開いているので、ボスを倒せばちょうどお昼くらいか。
経験値関係のボーナスポイントをパラレルジョブへと一部振り直し、7thジョブには博徒を据える。
「ボスのマザーリザードは、シザーリザードを生み出すことはご存知でありますか」
「うん、魔物についての文献で」
シャオクたちは図書館で、自分はWeb上の
実物は見たことがないと伝えると、少し詳しく教えてくれた。
生み出すといっても、マザーという名だからその身体から産み落とす、というわけではないらしい。
そりゃ出産していたら隙だらけだろう。
ボス部屋での魔物の登場のように、マザーリザードの周囲に煙が発生し、それが集まってシザーリザードになるのだという。
なるほど、どちらかというと近くに配下を召喚、というかスポーンさせる特性のようなものなのだろう。
新たに出現したリザードたちは、ドロップアイテムを落とさないらしい。
ただの推測でしかないが、経験値ももらえないんじゃなかろうか。
ボスの動きを封じて、小部屋で邪魔が入らず無限に稼ぐなんてことはできなさそうな気がする。
ブリーフィングを終え、ボス部屋の偵察もしてもらって、倒し残しがいないことを確認すると、全員で足を踏み入れた。
扉が閉まり、煙が現れる。
やがて大きな塊と、もう2つの塊に分かれると、集まった煙が魔物へと変わった。
マザーリザード Lv24
タルタートル Lv24
シザーリザード Lv24
シザーリザードよりふた回りほど大きいトカゲと、今日だって何度も倒してきた2種類のお供だ。
マザーリザードには鋏がない。
代わりに鋭い爪が付いているので、こちらのほうが順当に魔物化したトカゲという感じである。
まずは挨拶代わりのサンドストームの2連発。
体の周囲だけの短時間の砂嵐を浴びせているうちに、それぞれを指定して状態異常耐性ダウンを発動した。
アコルトが竜革の鞭を低く横薙ぎに振るい、シザーリザードの顎の下辺りを叩く。
それとほとんど同時に前に出たシャオクとセナクロワが、各々の武器でタルタートルの頭と尻尾を攻撃した。
怯んだ2体を押しのけるように、ミーラスカが大盾を掲げてマザーリザードの正面へと位置取る。
いい初動だ。
マザーリザードは飛びかかって大盾を引っ掻いた後、すぐに距離を取った。
お供と違って重い鋏がない分、身体が大きくても機敏に動けるようだ。
タルタートルが甲羅に籠もって防御を決め込んだところで、セナクロワがマザーリザードに、シャオクはシザーリザードを相手するため位置を変えた。
アコルトは一定時間反撃がこないのをいいことに、タルタートルを滅多打ちだ。
甲羅だって亀の一部には変わりないので、攻撃を当てれば当てた分だけ状態異常の判定が行われる。
すぐに麻痺、そして石化したと報告があがったので、もう甲羅のオブジェの出来上がりだ。
シザーリザードを怯ませながら槍と盾を使って動きを制限させているシャオクもすごいが、ボス相手に長剣1本で防ぎきっているセナクロワもすごい。
そのどちらにもカバーに行ける位置で見守っているミーラスカが、加勢せずとも問題なさそうだ。
もっと数や身体の大きい魔物相手なら大盾の出番も増えるだろうが、この階層程度なら元騎士には造作もないんだろうか。
そう思ったタイミングでマザーリザードが鋭く吠える。
その鳥のような甲高い声で叫んだのを合図としてなのか、急にボスの両脇に煙が立ち込めた。
戦闘開始時のようにシュルシュルと煙が収束し、僅かな時間で2体のシザーリザードが現れた。
所謂ゲームで仲間を呼ぶ魔物、という括りに当てはまるのだろうが、突然新たな魔物が追加されるというのは厄介過ぎる。
いや、急に扉が開いて外からのこのこ来られても困るんだけどさ。
ミーラスカが新規の2体を引き付けに行ったところで、最初からいたシザーリザードが麻痺したようだ。
クールタイムごとに放ち続けている全体土魔法の回数から考えれば、再び動き出してこちらに接近する前には倒せそうである。
シャオクたちもそう判断したのか、新規のリザードへと標的を変えて、アコルトたちへと指示を出す。
「ミラさんはさらに詰めて!
アコさんは回数重視で!」
2人から短く了解の旨が返ってきた。
迷宮慣れしているシャオクが戦況管理をして、指示を受けた2人が応じるといういつもの流れだが、今日はセナクロワもいる。
ボス相手の援護は必要かと確認が飛ぶ前に、マザーリザードの頭突きを剣で逸らした彼女が、向こうを見たまま空いた手でヒラヒラと不要の意を示した。
そうしてまた攻撃を捌く作業へと戻っていく。
頼もしいな。
その調子で戦闘が進んでいくと、さらなる配下がスポーンする前にボスを煙に変えることができた。
流石に5分かそこらで何度も呼び出すほど鬼畜な仕様ではないらしい。
分かったことは2つ。
1つ、マザーリザードによって新たに呼び出されたシザーリザードは、鑑定上は階層を闊歩するそれと同じLv24との表示がされているが、耐久値が低いこと。
討伐に必要な土魔法の手数が、1ターン分少なかった。
石化はしなかったので魔法弱化はされていないはずなので、HPの最大値が低いか、もしくはある程度減った状態で呼び出されていることになる。
それに加えて麻痺にかかる回数もかなり多かった。
サンプル数が少ないが、耐性関係が諸々劣化版になっているのかもしれない。
もう1つは、ボスが石化して機能停止してから、スポーンしたリザードの明確に動きが悪くなったことだ。
魔物なのでオロオロとしているかまでは分からなかったが、自慢の鋏を使った攻撃もせず、周囲を眺めるだけの時間が増えたのだ。
ゲーム的に評するのならば、司令塔を失った召喚ユニットという感じだろうか。
このあたりが階層道中の、そしてボス部屋で最初に現れたシザーリザードとは明らかに違っていた。
セナクロワが言うには、前のパーティーが全滅したとしても、その戦闘で呼び出されたであろうシザーリザードは消えるらしい。
らしいというのは、ボス部屋で全滅以外に離脱する
配下を呼び出される前にパーティーが全滅したのか、呼び出された配下だけは倒して全滅したのか確認はできないが、とにかく次にボス部屋に入った際には、ボスのみないし、ボスと初期のお供だけが残っている状態なのだという。
戦闘状態が終わることで、追加ユニットだけはデスポーンするのかな?
システム的な理屈を考えれば、それっぽい仕様ではあるか。
新規出現したシザーリザードが残り続けるようなら、マザーリザードの待機部屋を占拠して、扉が開く度に罪人や所有放棄した奴隷を放り込み続けるだけで、不落のボス部屋が出来るだろう。
地上に迷宮が出現した時点で50階層以上あるはずなので、その中に確実に存在する階層で
1パーティーしかボス部屋に入れないのに、劣化版だろうと何十体も魔物がいたらまともな攻略はできないだろう。
自分の場合は、戦闘中にも使えるワープとボーナス魔法の撃ち逃げができるので例外中の例外だが。
そもそもそのマザーリザード自体が56階層以降の道中に群れとして複数徘徊しているのだから、追加リザードがデスポーンなしなら階層入口の小部屋以降進めなくなってしまう。
───
融通が利かない創造主様も、そのくらいは管理しているらしい。
さて、だいぶ思考が逸れたが、マザーリザードのドロップ品は、ビアワックという赤黒い肉っぽい見た目の謎の塊だ。
筋繊維のように見えるので、これはトカゲの……肉?
たぶん現代のどこかの国の言葉でそれっぽい単語なんだろうが、分からない。
鑑定のウインドウで謎の翻訳を受けてのカタカナ語なので、見たことのない響きなのは単純に自分の知識不足か。
同ランク帯に牛肉が待っているのに、それに竜皮とか竜肉なんてモノもあるのに、わざわざそんな儀式めいたアイテムを口にする必要はないだろう。
セナクロワが教えてくれたのは、薬の原料になるらしいということだけだ。
何の薬かまでは教えてくれない。
姫には不要と言われたので、素直に売却に回そう。
あ、他人の乱入のないボス部屋だからか、また姫呼びしたな。
昼休憩にちょうどいい時間ということで、ボス部屋を抜けて25階層に進んだところで、ワープで一時帰宅した。
***
昼食はパンに何を合わせようかと考えていたが、パスタ生地とスープを作ってくれていた。
彼女の前では数える程度しか作っていないが、セナクロワにも食べさせてみたかったらしい。
パスタマシンなんて高尚なモノはないので、いつも通り薄く伸ばして短冊型にカットする。
香味野菜をオリーブオイルで炒め、蛤と白身に白ワインを加えて蓋をする。
蒸し焼きにしている間にパスタを茹で始め、少し固めくらいでザルにあげてお湯を切った。
形が崩れないように先に蛤と白身は皿に取り分けて、旨味の溶け込んだソースにパスタを投入する。
アルコールを飛ばすついでに汁を吸わせるために軽く煮た後、塩胡椒と刻んだハーブ、オリーブオイルを追加してよく混ぜた。
あとは魚介の皿に取り分けて、温め直したスープと、足りなさそうな人にはパンも配って食事開始である。
ボンゴレとは二枚貝のはずだから、
レッドスパイスこと唐辛子は調味料の店に粉末しかなかったので、形はないが味はほぼ一緒だろう。
冒険者ギルドの方ならまるのまま手に入るか。
うーん、美味しい。
味付けもだいたい覚えたろうし、次くらいから自分抜きでも同じものが作れそうだな。
セナクロワは最初に盛り付けられた蛤と白身を見て固まっていたが、今は考えるのを放棄してニッコニコで舌鼓を打っている。
買値の4分の1である売値でいっても1皿200ナールはするだろうしな。
横にあるパンは1つ1桁ナールなのに。
美味しくて皆が満足すればエンゲル係数なんてどうでもいいのだ。
食はすべての基本である。
昼食を終えて、食後のハーブティーを淹れてもらって小休止。
今日のセナクロワの働きで、迷宮での探索もより安全に立ち回れることが分かった。
彼女本人も、新たな装備で半日動いてもらって、ボスのマザーリザード相手にも危なげなく対処できることを確かめられた。
そうなると、次はどのジョブの育成を進めるかという問題になる。
階層探索中の戦闘での、麻痺や石化の頻度は悪くない。
博徒による耐性ダウンを使用せず、戦士のままでも、武器スキルの付与強化で十分ということだ。
もちろん暗殺者で進めれば今以上に付与頻度が上がって、敵の機能停止までの時間が短くなるのは歓迎すべきことなのだが……。
まだ見ぬジョブに思いを馳せてしまうのは、やはりゲームプレイヤー的思考か。
原作の作中に出てきた手順を追って、順当にジョブを取得していくというのもいいが、牛人族だったり、魔剣士だったりと、自分にとっての新要素にはどうしたって心が沸き立つ。
「あ、そうだ」
「どうされましたか、お嬢様」
そうだ、原作といえば、仲間に騎士のジョブ持ちがいるならできるじゃないか。
「セナ、ちょっときて」
「なんでありますか?」
使用中のボーナスポイントを99ポイント以下にしてから、セナクロワに説明する。
「一旦、セナのジョブを騎士にするから、任命のスキルを使ってもらえる?」
「姫を、……村長にするでありますか!?」
「いや、まぁそうなんだけど……。
取得ジョブの数を増やしたいだけだから、すぐに魔法使いに戻るよ」
本来は領主に正式な届け出を受理されてから行うもので、騎士団の配備されていない村落に派遣された騎士が執り行うそうだ。
スキルとしては一般の騎士も保有しているが、聖騎士がいればそりゃ聖騎士がやるよな。
そのため、9割以上の騎士は任命スキルを使用することはなく退役するらしい。
なので、最初は驚いていたセナクロワも、初めて使うことに興味津々だ。
久々に騎士ジョブへと戻った彼女が、姿勢を正す。
「……コホン。
いくでありますよ!」
「お願いね」
「はっ、
スズシロ・ミツキ エルフ ♀ 18歳 村長Lv1
村長Lv1/英雄Lv43/探索者Lv46/森林保護官Lv45/遊び人Lv43/巫女Lv34
おお、本当に村長になれた。
特に光ったりはしないか。
興奮した様子のセナクロワが、すぐにインテリジェンスカード操作の呪文を唱える。
こちらも釣られて片手を上げると、詠唱が完了してカードが飛び出した。
「ミツキ村になってしまいますね、お嬢様」
「じゃあボクは村一番の鍛冶師になりますか!?」
「わたくしも唯一の巫女になるのでしょうか……」
「
遊んどるな、みんな。
セナクロワは使うことのなかったスキルの成果であるインテリジェンスカードを、感慨深そうに眺めていた。
一応、詳細を見ておくか。
村長
効果 体力小上昇 知力微上昇
スキル インテリジェンスカード操作
うーん、しょぼい。
一応、村長のカード操作では、盗賊を奴隷に変更できるんだったっけ。
自分も騎士のジョブを保有済みだが、騎士なら盗賊だけでなく脱税者も奴隷に変更はできると聞いた。
じゃあ下位互換でしかない。
それでも1ジョブは1ジョブだ。
条件をクリアして取得したジョブと、今のように強制変更したジョブでは扱いに違いがあるかは分からないが、役に立つ時があるかもしれないしな。
でも今は用がないのでメインジョブを魔法使いにさっさと変更した。
ミツキ村長、在任期間3分で廃村。
ちょっと横槍、というか自分から逸れたんだが、話を戻そう。
ブラヒム語にしかり、モノの名前にしかり、日本かぶれとしか思えない創造神のこの世界なら、きっとあるだろう。
───日本刀とか、侍とか。
武器に関しては西洋メインの装備に加え、柳葉刀のように東洋っぽい武器も存在している。
ならば日本刀の類もありそうじゃないか?
そして侍。
日本人向けゲームで装備も揃えているなら、まず人気ジョブとして高確率で存在しそうだ。
もしあるのなら、ぜひセナクロワにジョブに就いてほしいと思った。
長剣を刀に持ち替えて、長身の麗人の女武者。
仲間に欲しくない?
自分が取得できたとしても、前衛で攻撃を受け持つ度胸もないし、技術を身につけるのは難しそうだ。
それに森林保護官の上のジョブが物理方面に伸びるとは思えないしな。
でも褐色エルフ女侍はそれはそれで……。
……過ぎた妄想はここまでにしよう。
「セナが今後ジョブを鍛えていくとして、改めて考え方はどうなったかな?
今日の戦闘を含めて」
「そうでありますな……。
戦士のジョブでもマザーリザードを問題なく相手取ることができたでありますが、この先も迷宮を進んでいくとなると、私の役割としては力と速さが求められるでありましょう。
30階層、40階層よりも先を目指していくとのお話でありましたし」
力と速さ、か。
目下の懸念は、村の魔物が最大5体から6体に増える32階層以降、そして出現する魔物のランクが変わる34階層以降を見据えてのことだろう。
そこから先は低階層のボスとして出てきた魔物が道中を闊歩し、その奥で新たな魔物がボスとして待ち受けている。
そこまで考えると、躱したり、流したり、防いだりするのにもう一歩ほしいということか。
戦士のジョブ効果は体力小上昇とHP微上昇。
力……、腕力に補正のあるジョブは、英雄や鍛冶師を除けば農夫と剣士と賞金稼ぎくらいだ。
しかし賞金稼ぎは微上昇だし、農夫は派生先があったとしても戦闘向きとは考えにくい。
現状で腕力に補正のあるジョブが、知力補正のあるジョブに対して少なすぎる。
前衛を受け持つという意味で本人が必要としているのなら、新たなジョブ自体を開拓しなければならない。
となると足掛かりになるのは、剣士か。
「そういえば剣士の先のジョブが身軽とかなんとか言ってなかったっけ」
「
曰く、力も速さも剣士の頃より伸びた、と」
流石に翻訳を受けたケンゴウという響きは、
その人自体の膂力や技量の可能性もあるけど、腕力や敏捷のステータスにさらなる補正がかかっている可能性もあるな。
あとは魔法使いと英雄の違いのように、メインジョブに設定した時の基礎能力自体の補正が上がっているとか。
しかし、既に戦士を派生ジョブが出るレベルにまで上がっているのに、またLv1の剣士から育て直すのか?
パラレルジョブの設定できる自分と違って、彼女たちは同時に複数のジョブを育成することは出来ない。
「……ちなみに他のジョブの上のジョブって聞いたことある?
戦士の先とか」
「騎士団に所属する以上、戦士での修練を積む者は、騎士に転職可能になったら騎士になるでありますからな……。
そのまま戦士を極める、という者はなかなかいないのであります」
「だよねぇ」
戦士から騎士、騎士から聖騎士、というのが団員としての王道のルートだろう。
先程の指南役とか、貴族の魔法使いとか、継続戦闘を目的とした僧侶や神官と違って、目指すものが固定されていても仕方あるまい。
別ジョブの者たちは剣士ギルドや教会とかから出向していたりするらしいし。
「……あ!
そういえば、であります」
「ん?」
「過去にある街の自警団と協力して任務にあたったことがあったでありますが……。
そちらの団長殿は、
「ユウシ……」
語感的には、魔法使いの先の魔道士のように、戦士の先の中位ジョブとしてのそれっぽさはかなりある。
「インテリジェンスカードの検分は、私の所属部隊の合流前に行われておりましたので、詳しくは確認できなかったであります。
申し訳ないであります」
「ううん、十分だよ。
参考になった」
候補っぽいジョブの存在だけでも、大きな手掛かりだ。
しかし、戦士のジョブには腕力の補正はないので、中位ジョブに新たに上昇効果が現れるかは賭けになってしまう。
「結局、どうしようかな……」
「……私は、姫のお力になるのでありましたら、ジョブは問わないであります。
それに、もう暗殺者なるジョブの獲得ができたのでありましたら、いつでも戻すことも可能でありましょう」
そうか、そうだよな。
セーブポイントではないが、これまでの彼女の努力で、暗殺者ジョブになれる道は確保されているのだ。
剣士を育ててみて良い結果にならなかったとしても、そもそも強力なジョブ路線にいつでも戻ってこられる。
じゃあ、彼女には一旦剣士の道を歩んでもらおうか。
セナクロワのジョブを剣士へと変更し、経験値稼ぎとMP回復薬の補充のため、フライトラップのいるシームの迷宮15階層へとワープした。
スズシロ・ミツキ エルフ ♀ 18歳 魔法使いLv46
魔法使いLv46/英雄Lv43/探索者Lv46/森林保護官Lv45/遊び人Lv43/巫女Lv35
(村人5 農夫1 戦士30 剣士30 僧侶30 商人30 錬金術師29 細工師30 薬草採取士30 村長1 賞金稼ぎ19 騎士7 暗殺者7 魔剣士7 武器商人1 防具商人1 奴隷商人1 料理人24 博徒30 盗賊30)
アコルト 兎人族 ♀ 16歳 狩人Lv35
シャオク ドワーフ ♀ 19歳 鍛冶師Lv33
ミーラスカ 牛人族 ♀ 24歳 巫女Lv32
リカヴィオラ エルフ ♀ 15歳 探索者Lv30
セナクロワ 猫人族 ♀ 27歳 剣士Lv1
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次回は3/30更新の暫定予定です。
こういう魔物がいたらどう対処する、どういう特性があるという部分を考えるのは楽しいです。
ポンポンと魔法を撃って倒しましただけではあまりに味気ないかと思いましたので、形状を想像しやすいようにイメージを固めています。
読者にとって合わない作品でしたら、継続して読む必要は全くなく、仮に低評価を付けたとしても1回だと思うのですが、毎更新ごとに低評価をつけてくる粘着行為を数カ月受け続けています。
剰え誤字報告までしてくるのはどういう神経をしているのか分かりません。
激務期間でも同様でしたので、今後筆を折るとしたら第一原因はその方です。