食事を終えて入浴のためにジョブを付け替え、給湯装置へと成り果てながら考える。
探索者がLv48、森林保護官はLv47へと上がり、巫女もLv40の大台に乗った。
戦闘中に役目を終えると獲得経験値へと切り替えているので博徒の上がり方は今一つだが、遊び人のジョブも着実に伸びてきている。
今の階層でも、戦い続ければ目標のLv50に届きそうだ。
このペースならレベルキャップにも引っかかっていなさそうだし。
次の27階層の魔物はハーフハーブ。
万能丸の素となる麻黄をドロップし、ボスのハートハーブはその上位の回復薬の素材を落とす。
万能丸は状態異常の治療としては確定じゃないらしいが、その一つ上の万金丹なら期待値も高いだろう。
1つでHPとMP、それに状態異常もカバーできるのなら、これさえ大量に揃えておけば飲み間違いやアイテムボックスの圧迫を抑えられそうだ。
それに、ハーブというからには『対植物強化』の恩恵もあるだろうしな。
スライムの階層より旨味がありそうだ。
湯に浸かりながら、明日以降の予定を共有する。
湯船代わりの大桶の注文のタイミングが難しいな。
突然全員一緒に入りたいからという理由もなんだか変な感じだし、一度に作れる湯の量はまだ変わらないので、汗だく作業の時間が延びるだけに思われるしな。
もうすぐ魔道士になれるだなんて言っても、流石に信じてもらえない気がする。
なってからならば氷や雷を見せれば証拠になるが、その前だと妄言にしか聞こえない。
やっぱり明確に説明するべきか、ジョブレベルについて。
でも今度はその上昇が早くなったり遅くなったりすることの説明や、ボーナスポイントのことまで波及しそうなんだよなぁ。
焦らずに、無事に魔道士が取得ができてからにしておこうか。
***
朝食を終え、片付けや洗濯を手伝いながら、魔物について教えてもらう。
「ハーフハーブは火属性が弱点であるかわりに、他の属性に耐性を持っているでありますな。
刃先の丸い葉が付いた、腰ほどの高さの魔物であります」
耐性が多いが、草は草らしく火に弱いのはありがたい。
薬の原料をドロップするから他の魔物より危険度を下げてある、というのはメタ的な思考すぎるか。
まずはこいつを倒して便利な回復アイテムを作ってね、というゲーム的配慮あったとしても、迷宮ごとに階層の魔物が違うというシステムのせいで破綻しているわけだが。
そもそも23階層以降という時点で、到達できる探索者の層は限られているし。
何にせよ、1階層下のグミスライムのおかげで、この階層も2種類の魔物には火属性で弱点が突ける。
しかし低確率で群れに混ざってくるモロクタウルスは火属性耐性なので、対処を考えないといつまでも残ることになりそうだ。
牛肉集めは別日に取ってこの階層では避け、万能丸集めと割り切るべきかもしれない。
準備を整えてから、シームの迷宮27階層へと移動する。
ハーフハーブは魔法を使ってくるわけでもなく、動作が速いわけでもないそうだ。
単に階層相当の耐久力を持った魔物、という形で邪魔者扱いらしい。
ドロップ品も薬の原料なのでギルドで買い叩かれるし、薬師ギルド由来の大量買取の案内が出ていなければ、見向きもされないんだとか。
賑やかしといえど、コボルトみたいに弱点だらけじゃなくて耐性持ちだしな。
アコルトに索敵してもらって通路を進む。
葉の擦れる音が聞こえると先に踏み出してみれば、やはり奥にはそれがいた。
ハーフハーブ Lv27
ハーフハーブ Lv27
グミスライム Lv27
ハーフハーブ Lv27
どことなくローズマリーを思わせる形状の草の魔物が、青いスライムを囲んでいる。
ビオトープの材料みたいな連中だが、魔物には違いない。
スライムがいるので、この階層でも即座に連発ではなく断続的にファイヤーストームを発動していこう。
状態異常耐性ダウンを交えながら2発目の全体魔法を撃ちつつ、様子見だ。
ハーフハーブは動きが素早いでもなく、特殊な攻撃もない。
グミスライムに武器を当てるついでに先端をひっかけるくらいの対応でいいので、気が抜けるとまでは言わないが、張り詰める必要はないので皆も戦いやすそうだ。
アコルトが詠唱を確実に潰し、シャオクとセナクロワが槍と長剣で剪定のように端の葉を散らしていく。
麻痺になったという声に、視線の先のハーフハーブを見つめてみたが、元々のそのそ動いているのでいまいち違いがわからない。
目を凝らしてみても、横に並んだ同種と若干色が違うかなぁという程度だ。
光の加減くらいの色合いの変化は、もっと近距離で
そんな間違い探しに興じられる程に、余裕を持った戦闘が可能なのは大きい。
加えて『対植物強化』はちゃんと発揮されているようで、石化させずとも5セットの火魔法でハーブは煙へと変わり、チクチクと攻められていたスライムも間を置いて消滅した。
拾ってもらったドロップアイテムを受け取り、鑑定を行う。
麻黄
揚げパスタみたいな、枯れた細い茎のような物体だ。
落とし主のハーフハーブには見合わない形状だが、ドロップアイテムに関しては今更か。
博徒を薬草採取士に付け替えて、生薬生成と念じる。
手に乗せた1本の麻黄が、2つの丸薬へと形を変えた。
これが万能丸のようだ。
鑑定のウインドウもそう言っているし、騎士団で緊急用に配備されていたらしいセナクロワが「これが他のアイテムのように……」と気軽に使う常備薬になる未来を察していた。
その後も何戦かして、手応えを確認する。
群れの大半の魔物が数手少なく倒せるというのは、心持ちが軽くなる。
ハーフハーブを早い段階で石化させてしまえば、グミスライムの半分の攻撃回数で済むこともあった。
それでいて入手アイテムも有用なのだから、戦闘が捗るってもんだ。
強壮丸は使いやすいので使い切るまでは切り替えないものの、皆に持たせている滋養丸と毒消し丸やら抗麻痺丸やらは万能丸に1本化してしまおうかな。
万能の治療薬の中で等級が低い万能丸は、状態異常を100%回復できるわけではないものの、毒状態になればHPも減っていくわけで、まとめて幾つも飲むなら1種類の方が管理も楽なはずだ。
行き渡る分だけ回収できたら、それぞれの薬袋の中身を入れ替えさせよう。
忘れずにジョブを戻した後は、できるだけハーフハーブのみの群れを探すようにお願いしつつ、昼休憩まで階層の探索を続けた。
麻黄がアイテムボックスの3列目を埋め始めた頃、食事前にギルドでアイテムの売却をすることを思い出す。
早めに切り上げて冒険者ギルドで売却してしまおう。
一度家へと戻ってリカヴィオラから滋養丸などを回収し、薬草採取士につけかえて万能丸を生成していく。
メンバーそれぞれのポーチの治療薬も集めて、それぞれ20粒ずつの万能丸を配り直した。
リカヴィオラには在庫管理も含めて30粒と素材の麻黄も30個預けておくことにする。
余りは全て薬にしてしまって自分のアイテムボックスへと収納した。
今後狩りで入手した分は、家に置こうかな。
ワープのカモフラージュ役にアコルトを連れ、アルヴナの冒険者ギルドで不用品を売却する。
1粒60ナールで買った薬を売却すると、15ナールになってしまうのは考えものだな。
ボックスの空きを作ることが目的だから、今回限りなんだけども。
再び自宅へと戻り、昼食作りの手伝いだ。
時間もあるし、そろそろ何を作っても受け入れてくれそうなのでハンバーグでも作ろうか。
リカヴィオラに豚のロースと牛のバラをアイテムボックスから出してもらい、包丁でこれを細かくするのだと皆に指示を出した。
やはりミンチ肉は見た目的にも、他の食材でかさ増ししやすい用途的にも、迷宮食材が勿体ないというイメージらしい。
まぁ魔物がいて、自然の貝類に毒があるのが普通なこの世界で、何が混ざっているかパッと見わからないものは、印象がよくなくなるのも不思議ではないか。
身分が高ければ高いほど自分で料理なんて作らないだろうし、それも仕方ない。
塊肉から細切れにするのは大変なので、同じ力技でもテクニカルなことをしてみよう。
ポイントを振ってデュランダルを取り出し、石鹸を泡立てたファルフで洗う。
取得したてで新品のはずだが、気分の問題だ、一応。
しっかりと流して水分を拭き取った後、シャオクとミーラスカの力持ち組に預けて扱いやすい大きさに肉をカットしてもらった。
うっかりするとまな板も斬りそうだが、この2人に限っては心配もいらないだろう。
いつも通りの切れ味でスパスパといけるは見事だが、倒したら消滅する魔物と違って、脂が刃に残るのが面倒だな。
ポイントに戻せば元通りなのだが、説明が難しいので自分が洗い物を引き受けることにした。
途中で消させてもらったが。
今度は包丁で肉を細かくしてもらっている隣で、他のメンバーには野菜を刻んでもらったり、パン粉を作ってもらっている。
普段の食事に使う量を細切れ肉やみじん切りの野菜にすると、とんでもない量に思えてくる。
いや、止めなかったらそのとんでもない量を胃に収めていく一番奴隷様が実際にいるんだけどさ。
複数のボウルに分けたパン粉に酪の玉を数個ずつ加えて、十分にふやけたところにみじん切りの野菜と肉を入れ、卵を割り入れた。
塩コショウを振って、あとはひたすら練り混ぜるだけだ。
粘り気が出てまとまり始めたら、コボルトフラワーで緩さを調整しつつ、さらに揉み込むように混ぜてもらう。
食べ物であまり経験することのない感覚を皆楽しんでいるようだ。
握った指の間から生地が抜けていく感触は癖になるよな。
リカヴィオラはパン作りで慣れているようで、成形も綺麗に進めている。
アコルトの武器適性以外では、なんだかんだ不器用な子はいないんだよな、うちの子達。
ジョブ補正が全員の器用さを底上げしているからかもしれないが。
油をひいて熱したフライパンにハンバーグのたねを並べ、焼き始める。
作っておいた温水と石鹸で今のうちに手を洗っておいてもらおう。
片面に焼色が付いたら、ヘラでひっくり返す。
大きなフライパン2つで一気に全員分焼いているので、返すのも一苦労だ。
ワインを少量加えてから蓋をし、火から少しだけ遠ざける。
たねの厚みは抑えたので、蒸し焼きで十分に内部に火が通るだろう。
しばらくして蓋を開けると、ふわっとハンバーグの香りが広がった。
少し持ち上げて裏面を見てみると、こちらも焼色が付いている。
串を刺してみて肉汁が透明なことを確認したら、出来上がりだ。
ハンバーグを1つのフライパンへと移し、チーズを薄切りにしたものをそれぞれの上に乗せて、蓋をして火から外しておく。
予熱で溶かしている間に、空いた方のフライパンに刻み野菜の残りと、ワインとバターを足して煮詰め、ソース作りだ。
その間にスープやパンを温めて、皿に洗って食べやすいよう千切った葉野菜を並べる。
チーズが溶け出したのを確認したら、ハンバーグを各々の皿に取り出し、その上からソースをかけていく。
皆ももう待ちきれないといった様子で、スープを配り終えたら早々に食べ始めることにした。
ナイフを入れると、スッと切れて肉汁が溢れて、旨味の流れにチーズとソースが合流する。
今回は合い挽き肉のように牛と豚を混ぜたので柔らかく、ジューシーな食感だが、牛単体にしてもいいかもしれない。
その場合はバラ肉だと脂が多すぎるから、ボス素材のロースも混ぜないとかな。
単純な調理法だけ見れば、細かくした肉をかさ増しして焼いただけになるが、質と目的が違う。
肉自体も迷宮素材だし、パン粉はたねをまとめるための繋ぎであるし、そこに加えた酪も迷宮素材だ。
質の悪い肉の、食べる量を増やすだけの調理とは全く変わってくる。
……材料費が全然違うから当然であるが。
とにかく、ミンチ肉のイメージを払拭するには十分過ぎる美味しさで、作業の手間をかけた分だけある料理との認識を持ってくれるだろう。
薄く焼いてパンに挟むのもいい。
厚みがあるからこその食べ応えもあるが、それなら2枚でも3枚でも重ねればいいのだ。
余った食材も細かくしてしまえば混ぜ込みやすいので、買い出し前の食材の処分も兼ねて定期的にハンバーグを作るのもありだな。
火の通りが心配なら煮込みにしてしまえば問題ないし、スープも兼ねてシチュー風にするとか、アレンジだって多種多様にできる。
皆の反応は想像以上で、味も食べごたえも文句なしだ。
次回はご飯も炊いて、ロコモコ丼みたいにして食べたい。
ミンチ肉自体も、麻婆的なスパイスを利かせたエスニック料理に使うのも美味しそうだしな。
出店でスープに入った団子なんかは、イメージからどうしても安上がりな賑やかしの具のような扱いだったが、ちゃんとメインを張れるものだと声を大にして……は、難しいか。
庶民の手に入る食材は迷宮産ではないのだし。
自分が肉屋となってギルドの買取価格くらいで他人に売ったら、周囲くらいは広まるかも知れないが、確実にギルドなり、それを商売にしているところに潰されるだろう。
個人間で少量取引ならまだしも、ある意味システムの一部と言っていい価格を操作することになるのだから、そこを逸脱するのはよろしくなさそうだ。
つまりは身内だけで楽しむ、これまで通りにするしかないということである。
今後もひっそり美味しく頂いていきましょう。
食事を終えれば、しばしの休憩の後再びシームの27階層へと戻ることになる。
昼前同様、できる限りハーフハーブが多めの群れを目掛けてファイヤーストームを放つ狩りへと没頭した。
どんどん集まっていく揚げパスタ、もとい麻黄の束が、そのまま倍の数の万能丸になると思うと、非常に頼もしいな。
欲を言えばボスドロップの緑豆を大量回収して万金丹を揃えておきたいのだが、ボス部屋へと繋がる待機部屋がなかなか見つからない。
他のパーティーが少ないということは魔物の群れが倒されていないということなので、次の群れにエンカウントするまでのインターバルが短いのだ。
戦闘回数が増えて経験値稼ぎにはありがたいが、階層の探索としては進捗が今一つだ。
階層を登るにつれて迷宮自体が広くなっているとのことだが、端から埋めていくみたいなことはできないんだろうか。
通路を曲がりながらも一定方向に進んでいるつもりだったが、絶妙にカーブしていたりして端なんてものは存在しないとかなのかな。
ある程度進んで、行き止まりだったり覚えのある通路に合流した際に、ダンジョンウォークを使って小部屋に戻ったりしている。
ワープと違って移動先に選べる場所は限られているので、かえってそのおかげで場所を誤解したままリスタートということにならず、使い分けが大事なことを自覚させてくれた。
結局、夕方の帰還時になっても待機部屋を見つけ出すことは叶わなかった。
探し方が悪いのか、単に運が悪いだけなのか。
分かれ道でどちらに向かうかは相談して決めているので、自分の運だけじゃないと思うのだけれども。
自慢じゃないが、通路自体の見覚えや、どちらに進んだのだったか、自分だけじゃ覚えていられないのでね。
でもまぁ、誰の決定だろうと主人である自分の責任には違いない。
何もなければ明日もこの階層の狩りということで、大人しく帰路につくことにした。
スズシロ・ミツキ エルフ ♀ 18歳 魔法使いLv49
魔法使いLv49/英雄Lv44/探索者Lv48/森林保護官Lv47/遊び人Lv46/巫女Lv41
(村人5 農夫1 戦士30 剣士30 僧侶30 商人30 錬金術師29 細工師30 薬草採取士30 村長1 賞金稼ぎ19 騎士7 暗殺者7 魔剣士7 武器商人1 防具商人1 奴隷商人1 料理人24 博徒35 盗賊30)
アコルト 兎人族 ♀ 16歳 狩人Lv37
シャオク ドワーフ ♀ 19歳 鍛冶師Lv36
ミーラスカ 牛人族 ♀ 24歳 巫女Lv34
リカヴィオラ エルフ ♀ 15歳 探索者Lv32
セナクロワ 猫人族 ♀ 27歳 剣士Lv29
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次回は5/18更新の暫定予定です。
毎回大きく進捗があるなんてことはないので、そういう回をどう描写するかが難しいです。