今朝はセナクロワがちょっと寂しそうにしていた。
昨日手紙を届けに2階へ向かった同室のリカヴィオラが、それっきり戻ってこなかったからだろう。
目を開いて注意深く見ればパーティーメンバーの薄い縁取りで居場所が分かるだけに、1人残った1階の寝室で、心配はないだろうが気になっていたはずだ。
別に彼女自身も来てもらっても構わないが、ベッドを3つくっつけた広さとはいえ、6人には狭いからと気を遣ったに違いない。
そんな彼女にも今日の予定を伝えた。
カルムの手紙にあったように昼過ぎに待ち合わせがあるので、そこまではやりたいことをして早めの食事をしたい。
アコルトとシャオクは自分とともに指定の眠る人魚亭、ミトラグの宿へと移動しよう。
用事が終わればワープで迎えに行くが、それまでは残りのメンバーは好きにしてもらっていい。
それぞれの要望を聞くと、南方の街を見て回りたいとか、帝都の行ってみたいだとか、僅かばかりに希望が出てくるようになった。
少しくらい自分本位になってくれてもいいくらいなので、前進だろう。
シャオクはシームの鍛冶師ギルドの先輩方に教本の解説を受けたいと言ってきた。
確かに前々から鍛冶師になってからなら、との条件で協力の申し出をしてくれる者も居たはずだ。
祝賀会の時にも酒樽の横は譲らないままでも、快活に話してくれていたと思う。
あちらの都合もあるだろうから、今日は予定を取り付けるまでにして、その際にまた休暇日を合わせようかな。
カルムの用事が終わったら、帝都での合流前にシャオクをそちらへ送るとするか。
家事を終えて身支度を済ませ、まずはエスラルグの街へと移動する。
数回の補給地点を経由して、やっと帝国最南の都市へと辿り着いた。
メンバー全員でくるのは初めてか。
雑貨屋に始まり、品揃えの豊富な武器防具屋の冷やかしを経て、早めに飲食店を探す。
辛い料理の多かったラエチッタよりも、こちらの方がスパイスが豊富な香りがする。
細目がちなミーラスカの表情が、いつも以上ににこやかに見えた。
大通りに面していればアタリかまでは分からないがハズレはないだろうと、営業中だったそこそこ大きめの店に入ることにしてみた。
町中華というか大衆店というか、早い時間からもそれなりの人数がひっきりなしに出入りしている。
こういう店は食べる前から美味いって思えてくるんだよな。
反省を活かして今回はこのあたりに明るそうなセナクロワに確認してから料理を注文する。
辛そうなやつと、辛くなさそうなやつ。
丁寧に同じ料理名でも香辛料を抜いたものもあるようなので、辛そうなものは数品程度に抑えておいた。
…………結果。
迷宮食材を使っていなさそうなのに、わりと美味く、そしてとても辛い。
煮込まれた肉と野菜がエスニックな香りと刺激に満ちたスープに浸かっていて、別の料理では炙られた肉にこれでもかと粉末がかかっている。
色味が薄いスパイス抜きの方もそれなりにおいしいのだが、辛すぎる料理をハフハフしながら食べたあとでは、どれも今ひとつで物足りない。
ちょびっとスパイスをかけてくれる程度の料理はないのか。
半端に刻んだ価格では手間が増えて回転が悪くなるためか、両極端しか置いていないのかもしれない。
きっと刺激を求めて通えば通うほど馴染んでしまう料理なんだろう。
たまに食べに来るならその時ピリ辛で美味しい料理がいいんですけど?
と、文句も言えるはずもなく、肥え過ぎた自分の舌が悪いと思うことにした。
もうちょっと高級寄りの店ならばその辺の融通も利きそうな気もするので、次回は慎重に選ぼう。
涙目でもぐもぐしていた一番奴隷さんも、悔しそうに癒し系辛党お姉さんへと赤いスープを献上していた。
さもありなん。
食事の後はエスラルグにしかなさそうな果実や調味料を購入し、一旦シームへと帰還する。
「帝都に送ったらパーティーを解散させちゃうから、必要ならあっちでリカに組んでもらってね」
「承りましてにございます!」
うん、返答として合っているのかソレ。
まぁ了解したことは通じている。
眠る人魚亭にはすでにカルムの使いがいるかもしれないので、ワープではなく徒歩で向かうことになる。
手紙の内容的に長時間拘束されはしないと思うが、もしもに備えてお小遣いに加えて帝都からの街移動代も持たせておいた。
自分が迎えに行ければ問題ないのだが。
帝都の冒険者ギルドに繋がるゲートを開き、ミーラスカ、リカヴィオラ、セナクロワが入っていったのを確認してスキルを終わらせた。
続いてパーティー解放を念じたことでメンバーの縁取りも消える。
今度は宿へと向かう準備として、シャオクのアイテムボックスに競売の代金が支払えるように金貨と銀貨も入れさせてもらう。
そして白金貨もだ。
硬貨での今の最大の資産はこの1枚の白金貨だが、さすがに街中の買い物では使えない。
お釣りに100枚近くの金貨を用意してくれる店はないしな。
相手も高額商品と分かっていて、用意のあるオークションで競り落とす時はわけが違う。
以前の取引で受け取りやすいように白金貨をお願いしたのはこちらだが、それ以外の資金が金貨十数枚になってしまったので、そろそろ危ないのだ。
普通の生活をしていれば問題ないのだが、いつどこで4スロット5スロットの装備が見つかるかも分からないし、気軽に使えるようにはしておきたい。
商人ギルドあたりが両替をしてくれるかもしれないが、ギルドに所属していないし手数料なりなんなりやり取りも面倒そうだ。
あちらのご相談に乗るのなら、そのあたりも含めてカルムに聞いたほうがいいと、アコルトが提案してくれた。
戸締りを確認し、眠る人魚亭ヘと向かおうか。
宿の近くまでやってくる。
扉の前にはよく見る従業員と、見覚えのあるエルフの男性が談笑しているのが見えた。
鑑定してみると、やはりカルムの使用人の冒険者であるシャイルヴェだった。
ちょうどそのタイミングで正午を示す鐘の音が響く。
邪魔をしまいと思ってか、礼をした従業員が宿の中へと入っていった。
「ミツキ様、それにお連れの方々も、急な申し出にお応えくださりありがとうございます」
「いえ、カルム殿には普段からよくしていただいているので。
シャイルヴェ殿が来られたということは……」
「はい、お連れせよとの命を受けております。
お時間はそう長くはいただかないとも申し受けておりますので、よろしければパーティーのお誘いをさせていただいても?」
「ええ、お願いします」
速やかにパーティー編成の呪文が詠唱されて、了承と同時にメンバーが淡く縁取られる。
では早速、と宿前に設置された絨毯まで移動し、フィールドウォークのスキルが行使されてゲートが開かれた。
「私に続いてお通りください」
そう言って軽く会釈したシャイルヴェが絨毯を抜けたのを追って、自分たちも扉を潜った。
***
「ご足労いただきありがとうございます、ミツキ殿」
ゲートを抜けた先はシームラウ家の出入り用の部屋だった。
カルムが出迎えの挨拶をしてくれて、銘々に丁寧な対応をしてくれる。
たぶん宿に不都合の連絡が届いていれば、すぐにシャイルヴェが戻ってくるだろうからここで待っていたんだろう。
「アコルト殿も、シャオク殿も、よくお越しくださいました」
「いえ、予定は空いていましたのでお気になさらないでください」
頭を下げる彼女たちに代わって、自分が言葉を返した。
領主の城というとこはやはり家絡みか?
何を切り出してくるのか心配だったが、こちらのそんな様子を見てか、カルムは小さく微笑んできた。
「まずはご依頼いただいていた競売の品のお取引を終わらせましょう。
応接室の方へご案内します」
カルムに続いて向かった先は前に訪れた時とは違う、小さめの部屋だ。
小さめといっても他の部屋に比べたらということで、化粧部屋よりも広いんだけどさ。
ソファに座るように促さたので自分は座ったが、アコルトとシャオクは後ろに立っていると言ってきたので、そのような配置になる。
場所が違えばカルムだって従者が椅子に座ることは別に気にしなさそうだが、体裁的にも仕方ないか。
招かれたのは主人であって、その奴隷が城のソファに腰掛けるのはまずいんだろう。
給仕の使用人が飲み物を注いでいる間に、カルムはメモとセットになっているモンスターカードを取り出し、テーブルの上に並べていく。
「ご依頼されていましたモンスターカードはほぼ揃えましたが、コボルトのものがあと2枚ほどお待ち頂くことになります。
右から珊瑚、潅木、ウサギに壺式食虫植物と、こちらの束はコボルトのカードが4枚、ですね」
「ありがとうございます」
価格も上がってきているということで、それでも抑えた落札額でなんとか揃えてくれたらしい。
今回の依頼分の大半は予備なのだし、ゆっくりでも構わなかったんだけどな。
あ、でもセナクロワの長剣に『HP吸収』を付けられる壺式は嬉しい。
8枚で4万6500ナール。
主にコボルトが相場より銀貨数枚ずつ高いが、こればっかりは仕方がない。
今回は用事もあったせいか伝令代は不要とのことだ。
毎回おまけしてもらってる気がする。
シャオクのアイテムボックスから硬貨を出してもらい、枚数の多いコボルトはボックス内に、その他はメモ付きでポーチへと仕舞う。
カルムも慣れた所作で素早く代金を確認し、あちらのアイテムボックスへと回収し終えた。
「さて、ここからはお知らせしておりましたご相談になるのですが……」
ハッとした様子のカルムが
何が始まるんだと目だけ動かして固まっていたら、アコルトが横に来て手を取ってきて、自分も立たされる。
え、なに。
そのまま開いた扉の正面に移動させられたところで、廊下を曲がって駆けてくる
「ミ~ツ~キ~!!」
ドレスの裾をたくし上げたままスピードを落とさず綺麗にコーナリングを決めた人物が現れた。
勢いのまま直前で両手を広げて、首に手を回して抱きしめてきた。
「フェ……ルスお姉、様」
「会いたかったわよ、ミツキ!」
身長差もあるので衝突直前でスピードを緩めてくれたらしく、ボディプレスが決まることはなかった。
代わりに腕を回されて見事に拘束されてしまっているが。
そのまま来られたら英雄ジョブがなかったら折れ……はしないか、思ってたより軽いし。
なんかいい匂いもするし、感触にドキドキしながらも、言葉を捻り出す。
「ご、ご相談というのは……」
「ちょっと待ちなさい。
…………ふふ、よし」
よくわからないまま堪能され、手を握られたままだがロックからは解放された。
この間、カルムは腕を組んでうんうんと頷いている。
なんとかしろよ旦那様。
あとなんでアコルトはアシストしたの?
「急に呼んでごめんなさいね。
「えっと、いったい何でしょうか……?」
「フェルス様も、ミツキ殿も、先にお座りになられませんか」
いつもの澄まし顔で促し、追加の飲み物を淹れるように使用人に目配せする。
こういう時だけ紳士になるな。
でも、引っ付かれたままよりはいいだろうと、ソファへと移動する。
テーブルを挟んで自分の対面にカルムが座り、当のフェルスはなぜか自分の横に座っている。
手も握られたまま、なんなら腕まで組まれていた。
状況悪化してない?
それでいてお姉様は無意識っぽいし。
「じゃあ改めて、ね」
有無は言わせないらしい。
長い睫毛の瞳で真横の自分を見つめて、言葉を続ける。
「ミツキに教えてもらったものも含めて、以前から試作していたシェフたちのお料理の方がだいぶ形になってきたの。
そこで、もともとあった交流の場で提供して、披露というかシーム領のアピールをという話になったのだけれど……」
フェルスが下がり眉になって、右手の人差し指を頬にあてる。
「どうも、近頃似たような料理の試作がされているようなのよね~」
交流会での提供が決まった後に、帝都の会員向けの店で試験的に出されているらしい。
どうやってその情報を掴んだのかはナイショだそうだ。
揚げ物やらパンケーキの調理法自体は、気がついて材料が揃えば誰にだってできるだろう。
こちらと違って完成形までを想定して、コストを掛けてまで試作を重ねるか、といったら別問題ではあるが。
それにミトラグの宿やその周辺では別に規制をかけているわけではないしな。
評判を聞きつけて食べに来て調理法にあたりをつけ、作るようになったという可能性はいくらでもある。
が、近々で披露が決まってからというのが腑に落ちないんだとか。
うーん、意気揚々と新作として披露したシームラウ家の面目を潰したいとかなのかな。
城の料理人たちは料理ば……料理にとても熱心で、かなり自由に動ける今の職場にとても害を為すとは思えないし。
城勤めなのに調理法のために街の宿屋でアルバイトをしてるような職場だぞ。
アレ、許されてたんだっけ。
大きな声では言えないが、普通に考えれば交流会に参加する別の貴族の関係者だろうと、ゴニョゴニョ耳打ちされた。
「だから、ミツキが他に追加できそうなレシピを知らないかなぁって思ったの。
もちろん
間近で繰り出されるおねだりが可愛い。
天然でこれなのだから、愛され令嬢が過ぎる。
カルムも、商人として内容次第では高額の金銭での取引にも応じる用意もあると添えた。
そんな貴族が満足できるようなアピールできるものがまだあるか……?
シェフたちが研鑽したもののほうがよっぽど美味しいものができそうだし、あるとすれば氷を使って冷やす……あ。
「思い出したレシピがあるんですが……、シェフのアザルボさんって本日いらっしゃいますか?」
「……?
彼なら昼食の際に見たわよ。
どうして?」
「以前、料理について聞かれたことがあったので、今回ご一緒に説明したほうがいいかなと……」
「そう?
ああ、あの宿の方に出てもらっているのは彼だったわね。
確認なら副料理長だけと思っていたのだけれど、同席してもらいましょう!」
ふー、なんとかなった。
金属板の件で氷を使ったレシピを教えるって話だったが、そう何種類もポンポン出てくるわけじゃないので、まとめさせてもらおう。
誰よりも先に教えるとは言ったが、最速が複数人ではないとは言っていない。
宿の調理で結構好き勝手にやっているようだし、あちらも強くは言ってこられないはずだ。
昼食後というのもあって、落ち着いた厨房の中には自分たちの他にはフェルスとその侍従、ガイレマ副料理長、そして料理人のアザルボが揃う。
カルムは仕事があるらしく、シャイルヴェがルテドーナへと送りに行った。
依頼には応えられそうだということで、白金貨の両替もお願いできたので、商人ギルドの方で準備してくれるそうだ。
「この度もミツキ殿のお手を煩わせることになり申し訳ありません。
「いえ、お役に立てたらこちらとしても嬉しいです。
フェルスさ……お姉様から、新しいレシピの提案があるならということで、自分が見たことのあったものが使えそうか判断して頂きたいです」
深々と頭を下げるシェフ両名に対して、そんな大層な扱いをされては困るととりなした。
それから必要な材料を伝えて、調理台に並べてもらう。
卵に小麦粉、コボルトスクロースに酪、甘い香りのするリキュール、コボルトソルト。
そして氷だ。
今回はちゃんと、ただ冷やすためなので欠片になった氷で問題ないと伝えてある。
前回紹介したホイッパーもどきはこの厨房でも重宝しているようで、使っているものをいくつか用意してもらった。
卵黄をボウルにいれ、コボルトスクロース……砂糖を加えてホイッパーですり混ぜる。
やや白っぽくなるまでしっかりと混ぜ、その後はふるった小麦粉を足して粉っぽさが無くなる程度にさらに混ぜ込む。
自分は横について指示をしているだけだが、シェフたちは作業ひとつひとつの手際が良い。
レシピを知らないだけでプロなのだから当然だが。
混ぜすぎると粘り気が出てしまうのでほどほどにして、その作業と並行して鍋に酪と砂糖をいれて火にかけている。
バニラエッセンスがあればいいんだが、そんなピンポイントな香料はないので、香り付けだけを目的としてほんの少しのリキュールも入れてある。
溶け残りがないように混ぜながら温め、酪がふつふつとしてきたら沸騰する前に火から外した。
卵液の方に温めた酪を数回に分けて加えて合わせると、全体の色合いが均一な黄白色となる。
ダマが入らないように目の細かいザルで濾しながら酪を温めた鍋へと戻し、ヘラで焦げないように全体を混ぜながら弱火にかけた。
あとはちょうどいい粘度まで慎重に加熱し、もったりとしたクリーム状になったそれをバットに移して粗熱を取った後、氷冷庫で冷やしておく。
卵白は使わず、分離しないように撹拌し、加熱しすぎず、それを冷やすという、材料それぞれの特性を活かした調理法の産物、カスタードクリームの完成だ。
ある程度温かいままでも甘いソースとして使えるものの、やはり冷やしたほうがホイップクリームと合わせてデザートに使いやすいだろう。
パンケーキに添えたり、クッキーに挟んだり、アレンジのしようはいくらでもある。
香りはどうしてもバニラっぽいものがなかったので、どの香料が合うかは彼らに研究してもらおう。
いつかのように瞳を爛々と輝かせ、毒見の後にひと掬いの味見に蕩けた表情のお姉様は置いておいて、次だ。
ほぼ同じ手順で作った、今度はリキュールと小麦粉を使わずに卵液に酪を加えたものを、残っている氷水で冷ましておく。
今度は大きめのボウルに氷の欠片、そしてコボルトソルトを加えて混ぜておく。
氷に対して塩は3分の1程度の結構な量だ。
遠い昔に理科の実験でやった、凝固点が下がるアレである。
内側に卵液のボウルを置いて、ホイッパーでぐるぐると空気を含ませるように混ぜていく。
するとボウルの接触面側から液が凍り始め、次第に自分には馴染みのあるバニラアイスクリームの見た目へと変わっていった。
バニラの香りはしないんだけど。
おおよそ固まってきたところでホイッパーをヘラに替えて、冷え固まったアイスをたたむようにまとめる。
人数分の小さなスプーンを用意してもらって、まずは自分が一口。
濃厚な酪の味が舌の上に広がり、口の中を覆うように冷たさ甘さが溶け出した。
次いでシェフたちが、その後は侍従が毒見をして、お姉様が小さいスプーンに乗るだけすくって大きく口に頬張った。
「ん~!!
ミツキ、これ、口の中で溶けて……ぁあっ!?」
「フェルス様!?」
突然こめかみに細い指を当てて顔を
シェフたちもアコルトたちも心配そうにその様子を見つめ、握ったスプーンの上のアイスとこちらの顔を視線が行き来する。
毒じゃないです、がっつくからです。
「その、ご覧になっていたように材料や工程によるものではないのです!
冷たいものをたくさん、一気に召し上がると、口の中が急に冷えてどなたでもなる現象です!」
こんなことで投獄されたくない。
やがて色んな視線が突き刺さる中、フェルスお姉様が口を開いた。
「……大丈夫よ、ミツキ、それに皆も。
呼ばれてきた別の侍従長らしき女性が状況を聞いて彼女の容態を確認し、大きくため息をついて苦々しくフェルスに声をかける。
「フェルス様、お約束したでしょう。
上品に、落ち着いてお召し上がりくださいと」
「…………はぁい」
小さい頃にも、氷を口いっぱいに頬張ってよく頭痛になっていたらしい。
どこかで聞いたように、今以上にお転婆だったというのは、どうやら間違いなかったようだ。
小言が始まりかけたその時、フェルスがアイスクリームを掬って侍従長の口へと突っ込んだ。
「ん!
……ふむ、確かにこちらでしたらフェルス様が飛びつくのも、……納得できます」
「そうでしょ!」
違います、その人は味わう前の一口目から行ったんです。
と言えるはずもなく、今回は試食会ということで免除される光景が進んでいった。
「───なるほど、氷にコボルトソルトを合わせることでより冷たくなり、それによってボウルの中の液体が固まっていくのだ、と」
「そうですね。
他にも似たような効果があるものはあるらしいですが、調達や管理の面でもコボルトソルトが安価で使い勝手がいいと思います」
「調理場には間違いなくあるものですし、有用なら仕入れの量を増やすだけで問題ないでしょう」
シェフたちの疑問や相談に答えつつ、果実水を冷やしてシャーベットにするなど、アレンジのヒントなんかも投げていく。
ガイレマ副料理長はもちろん、約束を濁されたアザルボシェフも、これならばと納得してくれた。
残った卵白の方も、いくつか使えそうな調理法を挙げておいた。
これに試作を重ねて、交流会の食事にどう組み込むかは彼ら次第だ。
「……ねぇ、ミツキ?
どうして───、いいえ、なんでもないわ」
なぜこんなことを知っているか、だろう。
自分以外の全員が似たような顔をしているから否が応でも分かる。
それでもこれ以上聞かないのは、たぶん踏み込めばこれからもシームに留まってくれるとは限らないと考えられているからだろうか。
彼女もそう思っているか、あるいはシームラウ伯爵に止められているとか。
奴隷の2人も同じように息を呑み込んで、そっと視線を外した。
こういう時、自分がこの世界の者でないのだと自覚させられる。
「ええっと、これでご用事はなんとかなりそうですかね?」
「そうね、ミツキのおかげでシェフたちも料理の目処がついたようだし、助かったわ!
あとは……」
ホッと胸を撫で下ろしたが、次の言葉に耳を疑った。
「ミツキもその交流会に出てくれないかしら?」
スズシロ・ミツキ エルフ ♀ 18歳 魔法使いLv50
魔法使いLv50/英雄Lv45/探索者Lv49/魔剣士Lv7/遊び人Lv47/魔道士Lv8/巫女Lv43
(村人5 農夫1 戦士30 剣士30 僧侶30 商人30 錬金術師29 細工師30 薬草採取士30 森林保護官48 村長1 賞金稼ぎ19 騎士7 暗殺者7 武器商人1 防具商人1 奴隷商人1 料理人24 博徒36 盗賊30)
アコルト 兎人族 ♀ 16歳 狩人Lv38
シャオク ドワーフ ♀ 19歳 鍛冶師Lv37
ミーラスカ 牛人族 ♀ 24歳 巫女Lv35
リカヴィオラ エルフ ♀ 15歳 探索者Lv33
セナクロワ 猫人族 ♀ 27歳 剣士Lv30
所持モンスターカード
・竜 1
・大木 1
・芋虫 2
・魚 2
・潅木 0→1
・珊瑚 0→1
・ウサギ 0→1
・壺式食中植物 0→1
・コボルト 0→4
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次回は6/15更新の暫定予定です。
活動報告 017 更新
活動報告というか、同原作の二次創作を考えていらっしゃる方向けの私のスタンスの周知ですので、当作品の内容や、投稿に関する内容でありません。