異世界迷宮と斉奏を   作:或香

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191 容受

「ご貴族の方々が集う交流会に、自分がですか?」

 

 

 突然の誘いに動揺してしまう。

 

 

「あくまで、(わたくし)の付き添いの友人としてよ。

 前回までは仲の良い同年代の子もいたのだけれども、みーんな婚約者の領地に行っちゃったんだもの!」

 

 

 そういえばそんなこと言ってたな。

 嫁いだばかりなら、落ち着くまで気軽に他領に出かけるなんてできないもんな。

 貴族って面倒だ。

 

 聞いてみれば、カルムも当日外せない別の公務で来られないらしい。

 

 だからといって貴族じゃない者を連れて行くなんて……、ん?

 カルムが今この場にいないのは、諌める立場を放棄して、フェルスの()()()を自分が断りにくくさせるためか?

 いつの間にかまた、外堀を埋められている気がする。

 

 

「ミツキに人前で何かをしてほしいわけじゃないの。

 格式張った場というほどでもないし、近況報告というか、認識をすり合わせるというか……。

 でもそのあたりの面倒なことはルトラお姉様がやって下さるから、(わたくし)たちは他領の料理も食べ放題よ!」

 

 

 う、それはちょっと惹かれる。

 同じ料理でもその地独特の違いが表れるのが食事だからな。

 

 当主のレオニー伯爵は武闘派で通っているらしいし、フェルスの婚約も周知されているなら、その同行者にだって変なやっかみはしてこないか。

 フェルスお姉様のお姉様も、ちょっと気になる。

 

 

「ちなみに日時はいつ頃でしょうか?」

「この下月の17日になるわね。

 どうかしら、ミツキ……?」

 

 

 7日後じゃねーか!

 いや、だからこそ新たな料理の模索のために土壇場で自分を呼んだりしたんだろうけどさ。

 他に明確に予定こそ決まっていないが、明らかに貴族のいる場所に、かぁ。

 

 チラリとアコルトたちの方に視線を送るが、ご自由にという感じで自分が判断するしかない感じだ。

 シェフたちの前でも聞いてきたということは、彼らも準備で関わるからなんだろうな。

 

 

「でも、その、そういった場に出るような服も持っておりませんし……」

 

 

 今日は行き先を知らされていなかったしドレスコードもなかったが、これまで招待されて登城の際に纏っていたドレスは、あくまで初めて会うフェルスに向けて用意したモノだ。

 華美になりすぎず、金貨にも満たない額で、ナルザさんにフェルスの好みに合わせて仕立ててもらった。

 呼び出しというか糾弾というか、誤解を解くために印象を良くしようとお願いしたドレスであって、社交の場に着ていく用のものではないのだ。

 

 この身長もあって、すぐには用意できないだろう。

 成人用で間に合わせでなく、ドワーフ用ではない低身長向けのドレスなんて特注品は。

 

 

「それなら大丈夫よ!

 ミツキ、カルメリガのナルザさんにドレスをお願いしているでしょう?」

「え?

 は、はい」

 

 

 何で知って……、そういえばナルザさんは少し前にシームに行く用事があるって言っていたような。 

 

 

「この前こちらに来たときに、必要そうなら急いでお願いするかもしれないと声を掛けてみたら、すでに製作中だってお話だったの。

 ミツキが参加してくれるようなら、間に合わせるための追加料金と搬送代はこちらで出しておくわ」

 

 

 『何かあったときのために』とあの時は一応納得してドレスをお願いしたが、本当にその時がすぐあってたまるか。

 いや、直接大勢の貴族の前に出て自ら名乗って挨拶とかそういう機会じゃないだけマシか?

 見られても、フェルスの友人として失礼じゃない格好であればいい。

 

 違う、よくない、なんか行くのに前向きな思考になってないか。

 

 

「あぁ、不安ならお付きの者としてもう一人くらいなら連れてくるのもいいわよ!」

 

 

 そういう問題じゃないのだが、確かに身内が居てくれたほうが心強い。

 マナーや所作の知識についてはアコルトが適任かと横目で流し見ると、自信ありといった様子で頷いてきた。

 待て待て。

 

 

「それで、出てくれるのかしら……?」

 

 

 フェルスは両手をとって潤んだ瞳で見つめてくるが、彼女はこれを搦め手としてではなく素でやっている。

 政治的な意図もなく、寂しいから一緒に出てくれないかという単純な理由なのだ。

 だからこそ強い。

 

 詳しく聞いてみても、本当にフェルスについて回って食事をする程度らしい。

 参加者に聞かれれば、彼女が「魔法使いの自由民で、シーム在住の親しい友人」として紹介するくらいだという。

 魔法使いの自由民、初耳の情報としては警戒すべき内容故に、相手方も慎重に対応してくれそうではある。

 

 市政にそれなりに影響力のある姉のルトラ・ナルクヴェル・シームラウには自分は直接の関わりもないし、これ以上友人を他領に連れ出されるのも嫌なフェルスは牽制してくれるんじゃないだろうか。

 そういえば前に勢いで、男性に興味がないとか口走ってしまったしな。

 

 

 ここまで言われたら、……まぁもう断れないよなぁ。

 会場の端っこで珍しい料理が無料で食べられるなら、フェルスお姉様のお供として当日をやり過ごすのも悪くないかな。

 

 

「……わかりました。

 フェルスお姉様とご一緒にお料理をいただきたいと思います」

「───!

 ミツキ~~!」

 

 

 再び首に腕を回されて抱きつかれ、頬を寄せられる。

 相手の耳の先がこちらに触れると、なんだか顔が熱くなって鼓動が加速するというのは、エルフ特有の悩みなんだろうか。

 耳が長いのはドワーフも一緒か。

 男性の場合はその前に髭がこんがらがりそうだけど。

 

 

 もとより悪くはなかったが、フェルスがさらに上機嫌になって、あれもこれもと交流会の流れをさらに細かく説明してくれる。

 聞いた感じ、最初くらいはフェルスも前に出て挨拶するようだが、それ以降自分たちは回り放題の立食パーティーらしい。

 参加者にとっては食事は余興のひとつ程度なんだろうし、自分はフェルスの隣でもぐもぐして、迷惑をかけなければそれでよい。

 あんまりにマナーが酷ければアコルトがこっそり指摘してくれるはずなので、その場にいること自体は大した不安はなさそうだ。

 

 ……大丈夫だよね?

 変なことをしてくる貴族とか居なければいいんだが。

 うちのアコルトに手を出そうとしたら許さんぞ。

 

 

 ドレスの用意が難しかったらどうするつもりだったのかと聞いてみれば、既存の侍女の衣装をサイズ調整することも考えたんだとか。

 メイド服を回避できたことに安堵すべきか、人前でドレスを着て紹介されることを嘆くべきか。

 前者はその場での見た目は目立たないかもしれないが、来賓以上に食事を貪るメイドとして映りそうだし、後者はもう今更でもある。

 

 そんな感じで詳細については改めて後日説明してもらえることになり、その際に招待状も用意してくれることになった。

 今回教えた調理法に対する謝礼についても、その時提示してくれるそうだ。

 

 なし崩しではあるが、研鑽を積んだ料理を食べられることを楽しみにしよう。

 

 

 最後に3人ともフェルスに抱きしめられたところで今回の会合は終わりとなり、部屋を出た所に待っていたらしいシャイルヴェと合流する。

 

 

「この度はありがとうございました、ミツキ様。

 お急ぎでなければカルム様のおられますルテドーナの商人ギルドにお連れしてから、宿の方へとお送りいたしますが、いかがなさいますか?」

「でしたら、ギルドの方からでお願いします」

 

 

 その日のうちに両替の対応をしてくれるらしい。

 ありがたく案内を受けて、広げられた城の出入り用の絨毯から商人ギルドへと移動する。

 

 

 

 シャイルヴェが先行して受付で対応をしてくれて、パーティーの縁取りが近くに現れたからか、カルムがこちらへとやってきた。

 軽い挨拶を交わし、押さえてくれた商談部屋へと向かい、一息つく。

 

 今回はアコルトがシャイルヴェ監修のもとハーブティーを淹れてくれた。

 ここではあくまで仲買人とその常連客として扱ってくれるからか、城と比べればずいぶん気安い対応で助かる。

 

 

「フェルス様のご相談の方はまとまったようですね」

 

 

 どの口が、と内心思ったが、聞いてみればなんとフェルス自身がカルムに頼らず交渉したいという話だったらしい。

 交渉というかおねだりな気もするが、交流会に呼んだのは、単に一緒に楽しむ相手が居てほしかっただけに過ぎない。

 

 仮に先約があるとかで断っても、無理強いまではしてこなかっただろう。

 強引なところはあるが、なんだかんだでこちらに確認を取ってくれているしな。

 

 料理の方も活路は見出せそうだと伝えると、深々と礼をしてくれた。

 

 それから白金貨の件へと話は移る。

 

 

「本来でしたらギルドでの両替には手数料を頂くのですが、この度はご協力下さった感謝も含めまして金貨100枚をご用意致しました。

 どうぞ、ご確認下さい」

 

 

 こちらからのトレイにはシャオクのアイテムボックスから取り出した白金貨が1枚載っている。

 対してあちらは10枚ずつの束が10列だ。

 鍛冶師のシャオクがくるとみて、1列に入る枚数で分けるという気配りがありがたい。

 

 両者ともアイテムボックス操作の呪文を唱え、空いている列へと硬貨を収納する。

 今更こんなところで偽物を掴まされることはないが、真贋の見極めも含め、枚数確認もボックスへ納まる数で把握可能なのは楽だな。

 

 シャオクが50枚分の金貨をボックスに入れて一旦取り出し、もう半分の金貨を入れてみて、確認は完了だ。

 入らない分は、用意してきた小袋へと回収しよう。

 

 

「お受け取りしました。

 急な申し出に応えていただきありがとうございます」

「こちらこそシーム領のため、いえフェルス様のためにご協力いただき、改めて感謝申し上げます」

 

 

 互いの配下を含め礼をしあって、カルムと握手をする。

 残りの依頼分のモンスターカードは2枚だけなので、今後の連絡のついでに進捗を伝えてもらうようにお願いした。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「さてと、とりあえずパーティー編成かな」

 

 

 シャイルヴェにシームの眠る人魚亭へと送ってもらった。

 彼が引き返してからすぐ、パーティーから外されてメンバーの縁取りが消えたことを確認してからアコルトたちに向き直る。

 

 2人を勧誘し、再び淡い縁取りがされたことを確認しつつ、金貨の入った小袋をシャオクから受け取った。

 それをアコルトの荷物入れに仕舞う素振りを見せながら、自分のアイテムボックスへと収納していく。

 

 シャオクのアイテムボックスにある分は、帰ってから受け取ろう。

 

 

「じゃあボクは鍛冶師ギルドに向かいますね」

「あ、送っていこうか?」

 

「……人通りもわりとあるので、大丈夫です!」

 

 

 軽く周りを見渡したシャオクがそう返してきた。

 アコルトも耳を動かして、しばらくこのまばらな人目が減るタイミングはなさそうだと首を振る。

 

 この時間帯は混雑もしていないし、かといって全く人がいないわけでもないので、宿の前からのワープでは目に付きやすそうだ。

 それに、商店街の共用絨毯まで歩いてからワープで送るのと、まっすぐギルドへと向かうのは大して変わらないか。

 

 フィールドウォークに見せかける偽装も、時と場合によるのだ。

 

 

「じゃあ、都合の良い日を聞いておいてね。

 今日ももし長くなるなら、冒険者ギルドから迎えにいくから」

「わかりました!」

 

 

 鍛冶の教本について学ぶ日取りを相談してきてもらおう。

 費用が必要なら、彼女のお小遣いからでなく出すつもりだとも言ってある。

 知識はうちの財産だからな。

 

 

 シャオクを見送ってから、くるりと方向転換すると、ススっとアコルトが隣に並ぶ。

 

 

「じゃ、一旦家に戻ろっか」

「はい、お嬢様」

 

 

 自分たちの移動だって、目立つんじゃしょうがない。

 一番安全な自宅から帝都に飛ぶとしよう。

 

 我が家へと帰ってくると、鍵を開けて中に入る……わけではなく、裏手に回って壁にワープゲートを設置した。

 アコルトの聴覚に何も引っかかりはしないが、一応移動は見えにくい所から、という癖はついている。

 戸締りのし直しが単純に面倒なだけでもあるが。

 

 

 

 

 出てきたのは帝都の冒険者ギルドだ。

 

 ミーラスカたちはどこにいるのかな。

 送ったのは昼食を終えてからだし、飲食店ではないだろう。

 パーティー外なので縁取りは見えないため、歩いて探すしかない。

 

 とりあえず店が集まっている方へと行ってみるか。

 

 メンバー的に武器や防具は見ていないだろうということで装備類の店はパス。

 セナクロワが気になったとしても、彼女が2人より自分の興味を優先するとは思えないしな。

 

 

 

 入ってみた3つ目の雑貨屋で、アコルトが声を聞き取ったらしく奥へと進んだので、その背を追いかける。

 

 

「───55、56、あっ、御主人様!

 ……あああっ!」

「リカヴィオラ様、大丈夫、大丈夫であります!」

 

「えーっと……?」

 

 

 こちらに気付いてパッと表情を明るくして振り返ったリカヴィオラが、即座に思い出したように首を戻して泣きそうな顔になった。

 その様子に困り顔のセナクロワが宥めに入る。

 自分、なにかやっちゃいました?

 

 

「主様、こちらの時計の時間を数えておりました」

 

 

 ミーラスカが示したのは、透明な棒が付いた民芸品みたいな木工の小物だ。

 5つほど並べてあるそれは、途中をすぼめたガラスの管を木枠で留めてあり、よく見ればその内部には色のついた粉のようなものが入っている。

 砂時計、か?

 

 聞いてみれば、よさそうなモノをいくつか見つけて、計測時間が正しそうか計っている最中だったらしい。

 形状に個体差もあるだろうから、中の砂の量は調整されているはずだが、大きなズレがないかの確認は必要そうだしな。

 

 そこに自分がいきなり来たせいでカウントが飛んだようだ。

 間が悪すぎて申し訳ない。

 

 ところがそれぞれで別にカウントをしていたそうで、ミーラスカとセナクロワのカウントとほとんどズレのなかった砂時計を3つ買うことにした。

 30秒用が1つと、1分用を2つ。

 価格はまぁ帝都価格という感じでお高めだが、相場もいまいちわからないし、3つで銀貨十数枚程度なら損には感じない。

 

 茹でたり揚げたりする調理の際には重宝しそうだ。

 

 それよりも、それぞれが別で秒数をカウントしていたのが面白いな。

 確認の手法という意味では真っ当で、認識やズレを同じ方向に揃えるという意味では正しいことこの上ないのだが、そういった意味ではない。

 

 正確な時を刻むものがあるのか分からないこの世界で、常識のように浸透している時間の単位というものがあるということがだ。

 やっぱりシステム染みた何かの意志が影響しているとしか思えない。

 

 そういえば、ギルド神殿で時刻が分かるとかなんとかセナクロワが言っていたような気がする。

 騎士団はそれに合わせて鐘を鳴らしているとか。

 

 ドロップアイテムの買取額だとか、装備のスキル保有状況とか、()()()()殿()()()って部分が結構多いよな。

 そういった帳尻合わせが常識を作って、その保有には優位性を持たせて、そしてその獲得のためには迷宮を討伐する必要がある。

 迷宮の産物が生活の根幹に関わっているから、人々を向かわせる……なんて、考えても無駄なんだろうけどさ。

 

 

 

 パーティー編成を終え、雑貨屋を出た後もまだ時間があったので、例の金属板を扱っている店を探すとするか。

 

 貴族街寄りの商人ギルドへと向かい、受付に相談してみる。

 自分みたいなモグリのジョブ転職者はほぼ存在しないだろうから、真っ当な商売ならギルドに所属しているはずだ。

 

 予想通りというか、領主や有力貴族の居城や邸宅の建築に資材を卸すような業者には簡単にあたりがついたので、ギルド員に詳しく尋ねる。

 実際に取引をしてもらえるかは分からないが、窓口があるという場所だけは教えてもらうことができた。

 

 善は急げで、そちらへと向かうことにしよう。

 

 

 

 

「───すると、アイスウォールの一時保管用でお使いになりたいということでございますか?」

「はい。

 知り合いの魔道士の方が来られた際に、出していただいた氷が溶けてしまうのを遅らせたいのです」

 

 

 40歳手前の人間の商人が大きく頷く。

 名乗りでは伏せたようだが、鑑定で見れば彼も名字を持っているので侮ってはいけない。

 飄々とした様子なのに、実は伯爵令嬢の婚約者だった仲買人もいたからな。

 

 最初に6人でゾロゾロと店に入ってきてしまったせいで若干不審がられそうだったが、自分がインテリジェンスカードの確認を受けたらスムーズに話が進んだ。

 名字持ちで奴隷5人を所有する魔法使いとなれば、無下にできない相手と思ってくれたらしい。

 こういう場所でも下働きとして旅亭ジョブのエマーロ族は重宝されている。

 

 

「ええ、ええ。

 大型の氷冷庫を所有しておられる方々はそう多くありませんからね。

 むしろ飲食店などでは小型の保管庫として、そういった使い方をされるお客様の方が多くいらっしゃいます」

 

 

 なるほど。

 一度に使う金属板の量としては城や邸宅に1部屋設ける時の方が断然多いが、取引回数であればそうとは限らない。

 前線から引退後の魔道士のセカンドキャリアとして、氷を出して回ることもあると聞いていたしな。

 

 案内を受け、奥へと通される。

 部屋の中には、大きさ違いの木箱がいくつか置かれていた。

 ミニコンテナとか、そういう見た目に近い。

 

 

「こちらは見本になります。

 蓋の留め具を外して、……よっと。

 このように内側に氷魔法の欠片を入れておけば、溶けるまでの時間が長くなります」

 

 

 金属板だけじゃなくて、製品としても売っているのか。

 1m四方より少し大きいくらいの、業務用クーラーボックスといった感じだ。

 

 

「でもこの大きさだとそのままアイスウォールを発動するには小さすぎますよね」

「ええ、ええ。

 この断熱の層がありますので、砕いて敷き詰めても、実際に入れられる氷は1枚の約半分といったところでございます。

 直接スキルを使えるタイプは、……こちらのサイズですね」

 

 

 隣においてある、幅と奥行が倍近くある木枠を指し示す。

 サイズ見本ということで金属板は仕込まれておらず、枠だけ簡易的に薄い木板で組まれているモノのようだ。

 たしかにこの大きさなら、横向きにアイスウォールを発生させれば収まる余裕はあるだろう。

 

 高さは先ほどの箱と同じ程度なので、開いて中のものに触れるくらいは、自分やシャオクの身長でも問題ないはずだ。

 聞けば、完成品の蓋は側面や底面に比べて軽い造りなので、金属板が入っても開閉に種族は問わない程度の重さになるとのことだ。

 人間の割合が多い世界なら当たり前か。

 

 

「このサイズのものが欲しいのですが、購入の流れはどうなりますか?」

「そうですね。

 まず、お住まいはどちらでしょうか?」

 

「シームです」

「……シーム領の、シームでございますか?」

 

 

 そうだと答えると、お待ちくださいとなにやら説明書きのようなものを取り出した。

 

 

「シームまでとなりますと金属版と寸法図面の写しの販売となります。

 お住まいの近隣の製作所に持ち込んで、そちらで作成や修理を依頼していただく形ですね」

 

 

 あー、そういうことね。

 フィールドウォークで持ち運べる大きさじゃないから遠方まで完成品を運ぶのも大変だし、出張メンテナンスなんてやってられないからか。

 

 現地の業者に製造責任を負わせて、金属板の注文だけ受ければいいもんな。

 遠方で入れ物だけたくさん作られたところで、肝心の金属板の生産を握っているのだから、どうしたって客が増えるだけだ。

 パチモノの板が作られたって、よほど性能がよくない限りは本物に評判が及ぶことはない。

 

 もともとニカドー親方に作ってもらうことも考えていたから、ちょうどいいな。

 

 

「知り合いの大工が作れるか確認したいので、先に図面だけを売っていただくことはできますか?」

「ええ、ええ!

 もちろんでございます!」

 

 

 図面の写しで3000ナールたぁ、良い商売だな。

 まぁ魔道士に縁がなければ使えはしないんだから、それくらい持っている客が想定なんだろう。

 

 見せてもらった図には、寸法や素材、組み方などが記載されていた。

 代用品や諸注意なんかも書き込まれているようなので、セナクロワもこれなら不足はないだろうと言っていた。

 

 それに、この写しを持ってきさえすれば、帝都の指定の職人から製作について話を聞けたりもするそうだ。

 しっかりお金を払った客には融通してくれるらしい。

 どこかに見分けるための印か何かがあって、本物の図面の写しをちゃんと買って持っている、ということにも価値を持たせているのか。

 

 

 入れ物のほうが完成できそうなら、次は金属板を買いに来るとして、商人たちに礼をして店を出る。

 

 

 買い物もこのくらいか。

 一旦帰ってシャオクを回収したら、いい時間かな。

 

 昼食が早かったので、道すがら摘めるものを幾つか購入し、冒険者ギルドから自宅へとワープした。

 

 




スズシロ・ミツキ エルフ ♀ 18歳 魔法使いLv50
魔法使いLv50/英雄Lv45/探索者Lv49/魔剣士Lv7/遊び人Lv47/魔道士Lv8/巫女Lv43
(村人5 農夫1 戦士30 剣士30 僧侶30 商人30 錬金術師29 細工師30 薬草採取士30 森林保護官48 村長1 賞金稼ぎ19 騎士7 暗殺者7 武器商人1 防具商人1 奴隷商人1 料理人24 博徒36 盗賊30)

アコルト   兎人族 ♀ 16歳 狩人Lv38

シャオク  ドワーフ ♀ 19歳 鍛冶師Lv37

ミーラスカ  牛人族 ♀ 24歳 巫女Lv35

リカヴィオラ エルフ ♀ 15歳 探索者Lv33

セナクロワ  猫人族 ♀ 27歳 剣士Lv30



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次回は6/22更新の暫定予定です。


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