200 饗宴
入室を許可する声に、シャイルヴェが扉を開いて脇に控え、
本来なら、自分はフェルスお姉様に続いて入室するべきなんだろう。
しかし、今は腕を取られている。
離れるわけにもいかず、結局同じ歩調で執務机の前まで進むことになった。
ルトラ・ナルクヴェル・シームラウ エルフ ♀ 24歳 魔法使いLv32
机の向かい側にいるのは、フェルスと同じ金色の髪を伸ばし、彼女ともレオニー伯ともよく似た美しい女性だ。
こちらを睨むような表情をしているのは、無作法な入室に怒っているからだろうか。
あなたの妹さんのせいなんですけど。
「……フェルス」
「はぁい、お姉様」
名を呼ぶ声にフェルスが返事をして腕を解き、解放された自分も姿勢を正す。
それでも眉間の皺はなぜか消えないが、美人なのにもったいない。
「妹からよく聞いている。
母上にもお目通りは済ませているそうだが、私とは初めて相見えることになるので、名乗ろう。
シームラウ家が長女、ルトラ・ナルクヴェル・シームラウだ」
「スズシロ・ミツキと申します。
お目にかかれて光栄です」
互いに名乗ったものの、それ以上会話のラリーが続かず、微妙な沈黙が流れる。
なんとか捻り出したような「家名を先に呼ぶのだな」という言葉に、「癖でそう名乗ってしまうだけなので、どちらからお呼びいただいても嬉しいです」と返してみたり、「母上と同じようにミツキ殿と呼んでも構わないか」とか、ぎこちない会話がなんとか繋がったので、少しばかりだが歩み寄れた気がしてきた。
その様子に見かねたのか、フェルスが口を開く。
「シャイルヴェ、悪いのだけれど……いい?」
「かしこまりました。
お声が掛かるまで外でお待ちします」
フェルスに声を掛けられたシャイルヴェが、騎士を連れ立って退室する。
扉が閉まった音を聞いてから、ルトラが俯いて眉間を押さえ、フーッと息を吐く。
残ったのは女性陣だけだ。
「すまないな、フェルス。
そしてミツキ殿も」
「いえ……」
「お姉様は気にし過ぎなのよ!
お仕事にも根を詰めすぎているわ」
男性の目がなくなったからか、注意されたばかりだというのにフェルスが自分の後ろに立って両肩を掴み、そこから顔をのぞかせるようにルトラに意見した。
「全くフェルスは……。
ふっ、報告以上にミツキ殿は懐かれているようだな」
「フェルス様にはいつも気にかけていただいております」
警戒と緊張が解けたのか、吊り上がっていたルトラの眉も下がる。
『お姉様』と付けなかったせいか、今度はフェルスの方の眉がピクリとした。
どうやら本人としては、いつものように呼んでほしかったらしい。
とはいえ、実の姉を前にして変な敬称を付けさせるわけにもいかず、渋々と言った様子で表情を戻した。
そして、顔を寄せて耳打ちしてくる。
「(お姉様はね、怒っていたわけじゃないのよ。
威厳のあるお母様に憧れているのよ)」
「フェルス、どうした」
「何でもないわ、お姉様!」
妹に向ける慈しみの眼差しをよく見れば、目尻も下がっていて、なるほど元々タレ目がちのようだ。
あの凄みのあるレオニー伯と比べると、随分と人当たりの良さそうな顔立ちである。
先ほどまでの表情やこの口調も、母親に
それにしても年齢の割にジョブレベルが高いのは、しっかりと迷宮に入っているからだろうか。
フェルスによれば魔法使いとしてもちゃんと打ち込んでいるらしいし。
もちろん貴族だし、公務もあるだろうから、同じパーティーの家臣団によるレベリングもしているかもしれない。
そういえば以前出会ったフェルスの伯母で魔道士のルプスは自分について、このルトラより才能がありそうだと言っていた。
あの時点でもこちらの方が魔法使いのレベルは高かったが、迷宮と魔物と向き合った年月で考えれば、遠く及ばない。
鑑定を使えたらそれどころじゃない反応になるだろうからレベルが見えたなんてことはないにしても、感じ取れるような何かが見えていたんだろうか。
熟練者の勘、ってやつなのかもしれない。
その後は、交流会の流れにルトラが補足を入れつつ再確認したり、自分が着ているドレスを何故かフェルスが自慢気に姉へ紹介したり、お揃いのガラスのブローチを見せつけさせられたりなどした。
シームの迷宮への立ち入り状況についても少しばかり確認されたので、今は24階層あたりだと答えつつ、適正階層を測りかねているため上下しているとも伝える。
これは問われることも想定して、セナクロワやシャオクと事前に考えていた内容だ。
シザーリザードとタルタートルなら弱点属性も揃っているし、稀に出るグラスビー以外は状態異常もなく対処もしやすいので、不自然にならない階層だ。
実際の探索中の階層とずらすことで迷宮で関係者と鉢合わせするのを避けられるし、万が一戦闘を見たいと希望されても連続魔法を使用せずに危なげなく終わらせられるだろうと考えていたが、特にそれ以上深掘りされることもなく話題は変わっていった。
フェルスがアコルトに加え、他のメンバーのことまで話し始めたところで侍女が制し、時間もそろそろだと指摘が入る。
「もうしばし話し続けたいところだが、まだ別の仕事もあってな。
すまないがミツキ殿、フェルスを頼まれてくれるか」
「はい、お守りいたします!」
「…………!
ふふ、そうではなくてだな、……いや、守れるほどとは頼もしいな。
この交流会の後も、これからも良き友でいてやってほしい」
警護の騎士たちがいるのだから護衛なわけがなく、勘違いで恥ずかしくなった。
使えるスキルの多さやレベルだけならそれなりに高くても、肝心の技術は本職に代われるほどあるわけじゃない。
笑って流してくれただけありがたいと思うことにしよう。
フェルスもだんだんと気分がよくなってきたのか、再度腕を絡めてきたりもしたものの、今度は特にお咎めなしだった。
威厳を出すにも、身内が客人にくっついていては立つ瀬がなかったから注意しただけで、今は互いの侍女しかいないから大目に見てくれている、ということなのかな。
顔合わせとしてはだいぶ長い会合になってしまったが、好感触を得られたのでこちらとしてもよき出会いとなった。
レオニー伯にも悪くない印象を持たれていると思うので、心配しすぎだったかもしれない。
執務室から出て、待機していたシャイルヴェと騎士と合流し、今度は移動部屋の絨毯へと向かう。
そこからフィールドウォークで飛んだ先は、城と同じような造りの部屋である。
シームラウ家の方は最低限という程度の内装だったが、こちらは華美な装飾が施されている。
他領のお偉いさんが利用することを考慮してなんだろう。
周囲には騎士が何人も待機しており、フェルス以外はカードのチェックを受けた。
こちらのパーティーの騎士が届け出のような物を出していたので、そちらとインテリジェンスカードで出席確認をしているようだ。
お待たせしましたと声がかかり、一同で控室へと歩みを進める。
本来なら領主家であるフェルスは別室待遇らしいが、自分と一緒に行動するつもりなのでそちらの対応は断ったみたいだ。
まぁ、今日は公務的な仕事に関しては姉のルトラに任せきりのようだし、友人枠の部外者の自分とまとめて警護するほうが楽だろうから認められたっぽいな。
細かいところは分からないが、素人目にはそんな理解で十分だろう。
ドレスを着て
同行している自分も、食への興味という点では人のことは言えないか。
ガイレマ エルフ ♂ 50歳 料理人Lv33
広い調理室で目についたのは、指示をしているガイレマ副料理長の姿だ。
それにアザルボや、いつか見たシームラウ家の料理人たちの面々も作業している。
フェルス肝いりの料理披露の場になるのだから、いつもの部隊になるのは当然だったか。
領主のレオニー伯は城に居るはずなので、未だ見たことのない料理長もそちらにいるはずだし。
スススとフェルスが料理人たちへと寄っていったので、自分たちも集団に近づく。
「───2番はそちらの皿で!
おや、フェルス様、いらっしゃいましたか。
ミツキさんも……と、本日はミツキ様とお呼びしたほうがよろしいですか?」
「うーん、会食中で他領の方がいらっしゃる時だけでいいんじゃないかしら」
「はい、自分については好きに呼んでいただいて構わないです」
途中で気づいたガイレマが、調理作業者たちと距離を取れるようにこちらへと向かってきてくれた。
フェルスが平気で作業中の会話に混ざってくるのは、領ではいつものことなのだろう。
それぞれの料理人も顔だけ向けた簡単な挨拶だけで、作業へと戻っている。
アドバイスでも、と言われてはいたが、皆迷いなく調理を進めているので何度も練習を重ねていたことが窺える。
今更自分が口を出す必要はなさそうだ。
野菜を下茹でしたり、何かを油で揚げているようだが、シームラウ家ではない印を付けた騎士が複数見張っているので、食材にはこれ以上近づくのはやめたほうがいいだろう。
領外の貴族も食べるので、要らぬ疑いを掛けられるのは避けるべきだ。
同じ部屋の別の区画には、違う料理人の集団も居るので、あちらは別の領地の者たちらしい。
ここ以外にも調理設備の揃えてある部屋ももう一つあるらしく、何領かのチームがそれぞれの部屋に振り分けられてるのだとか。
フェルスが小さく「試食は難しそうね……」と呟いたが、ここじゃあそれをするのにも毒見をつけないとダメなんじゃないか。
いかに領内で自由に振る舞っているかが、また知れた気がする。
だからこそ領民とも距離が近く人気があるとも言えるのだが。
ガイレマ副料理長も、「楽しみにしていてください」と自信満々といった様子だったので、後にとっておくのがよさそうだな。
フェルスも悟ったようで、先程の控室に戻ることにした。
控室にはシームラウ家が持ち込んだカップや茶葉が用意してあったので、侍女が用意してくれた飲み物を飲みながら雑談をして過ごす。
先程の料理の話から、シームやルテドーナ、帝都の料理の話をしたり、今朝ナルザさんがいたことも含めて服飾の話など、店の品揃えや流行などについてが話題となった。
料理はともかく、コーディネートは髪型に至るまでほとんど他人任せなので、自分はただ頷くことしかできなかったので、アコルトを連れてきて本当に助かった。
今の自分の髪がどう結われているのかすらよく分からないしな。
パーティーの侍女以外にも、シームラウ家の女騎士や使用人が話に混ざってきたので、男性の騎士は肩身が狭そうに部屋の隅に移動して待機を続けている。
分かるぞ、その気持ち。
シャイルヴェは慣れているのか、しれっとハーブティーを淹れ直したりしながら傍に控えているので流石だ。
カルム付き故にフェルスへの対応もバッチリなんだろう。
そうこうしている内に時間は意外と経過していたようで、食事会がまもなく始められるという伝令がやってきた。
男性は部屋の外に追い出されて、自分とフェルスの化粧直しと服飾の最終調整を行う。
アコルトと侍女たちも身だしなみを整え、準備を終えて会場へと移動した。
会場は立食形式で、各コーナーで気に入った料理を側仕えに取らせ、テーブルでいただくかたちだ。
ルトラたちはまだ移動してきていないようで、自分たちが一番乗りである。
周りを見れば各々領章らしき印をつけた騎士に聖騎士が整列している。
あのおしゃべり聖騎士のビダウトもしっかりいたので、会釈だけしておいた。
続々と各種料理が揃っていく様子にはワクワクする。
フェルスお姉様も待ちきれないようで、他の参加者が入ってくるであろう扉を恨めしそうに見つめている。
やがて全てのコーナーに料理が揃う頃、会議を終えたらしいルトラたちが入場してきた。
隣のフェルスの晴れやかな表情は、姉の姿を見たからなのか、やっと食べられるからなのかは分からない。
それぞれに飲み物が配られ、ルトラの紹介でなんとかという領の重役らしき人物が音頭を取って食事会が開催される。
鑑定もあるし、どうせ自分に関わることはないだろうから聞き流してしまった。
始まってから何人かは、開始後にフェルスのもとへ挨拶に来るものもいたが、それを予見して彼女に下がっていいと言われている。
さっきまで料理に釘付けだったお嬢様とは思えないほど、丁寧な対応で挨拶をこなしているのは、教育の賜物なんだろう。
そのついでに何度かこちらを示して自由民の友人であると紹介しているようです、とアコルトが聞き取って伝えてくれる度にそちらを向いて礼だけをしているが、それ以上寄ってきてまで話しかけてくる者はいなかった。
それくらいの扱いで十分だ。
そろそろ料理を見て回るかな。
それぞれ3種類ずつの料理が各領のコーナーに並んでいる。
まずは一番近いシーム領からにするか。
アコルトに取ってきてもらいながらその様子を後ろから眺める。
顔馴染みの料理人に出してもらったのはガレットっぽい包み焼きだ。
薄く焼いた生地に、下茹された野菜と芋を千切りにしたものを包み、中央には卵が乗っているようだ。
ペッパーの効いたベーコンも一緒に入っていて、小さめで食べやすいが食べごたえはある一品だ。
なにせ料理の種類が多いので重たくならないように、それでいて複数の食感も楽しめる前菜となっている。
2品目はトンカツっぽいな。
油が切れるように網の上に置かれているが、もらうようにお願いすると、用意された小さい鍋でサッと揚げ直してくれた。
ナイフを入れていくと、サクッと衣が切れる音が食欲をそそる。
その際に断面からチーズが流れ出てくるのが見えると、音や匂いだけでなく、目にも美味しい。
味を確かめるべく頬張ると、厚みある肉にしてはとても柔らかく、肉汁も溢れてくる。
やや薄めにスライスした肉を重ねて、そこにチーズとハーブを挟んである、所謂ミルフィーユカツ的な仕上がりだ。
大きい肉にチーズを加えてはと過去に伝えたことはあったが、このように手を加えてくるとは流石である。
肉自体も迷宮食材の豚バラとロースを重ねて脂の量も調整しているようで、クドすぎない。
こちらの表情に担当の料理人も満足な様子だ。
フェルスお姉様もお気に入りの料理らしく、嬉しそうに頬張っている。
もう1品は冷たいデザートだそうなので、他を回ってきてからではどうかと提案されたため、楽しみにとっておこうか。
帝都に近い、ルテドーナ寄りにあるというリルゴン領の料理をいただく。
こちらの料理は端的に言えば、ラム肉のカツレツだった。
以前、眠る人魚亭で出したものを食べた誰かが、アレンジしたのかもしれない。
おそらくフェルスが懸念していた、帝都の店で提供されていたらしい料理というのはこれだろう。
シームの方では油の値段を度外視して、多めの量で揚げているが、こちらは自分が最初に見せたような少量の油で揚げ焼きにしているように思えた。
肉を叩いて伸ばしており、食感を良くするのと同時に、時間を掛けすぎて温度が高くなりすぎて焦げるということを防いであるようだ。
もともと他の肉に比べて火が通りやすいのでラムを採用しているのだろう。
そこにラタトゥイユのような、ソースも兼ねた角切りにされた煮込み野菜が添えられている。
これはこれで完成度は高いし、迷宮食材も使われているので味もいい。
でも、ラム肉さえ提供すれば宿の調理担当でも作れそうな気がする。
もちろん個々の技量のレベルはこちらの方が格段に高いが、創意工夫という点ではどうしてもな。
他に気になったのはデザートだ。
タルト生地の中に入っている、プリンに近い食感の甘い物。
卵に酪に砂糖に、おそらくトウキビ粉の甘さも感じられる。
しっかり冷やしてあったので美味しかったが、切り分けると崩れやすいのが難点だな。
突然決まった交流会での提供に合わせて仕上げたのなら及第点だろう。
こちらは何様なんだという話だが。
少量ずつで様々な料理を食べる中で、食レポのようにちゃんと1品1品料理人を褒めているフェルスお姉様を見ると、なんだか誇らしい。
それでいて自身の好みという形で明確な改善案も述べるものだから、最後の方は各領の料理人が少なくとも1人は、それをメモするためについてくるような状況になっていた。
姉のルトラと違う方面で存在感をアピールできているし、嫌味がないというのも人から好まれる要因だろう。
最後にシーム領のコーナーへと戻ってきて、満を持してデザートをお願いする。
すると料理人は箱からパンのようなものを取り出して包丁で半分にし、そこに別の箱から取り出した白い塊を大きなスプーンで掬って、その間に挟んで盛り付けた。
渡された皿の上に乗ったものをよく見れば、アイスクリームを挟んだパンに見える。
一口齧ってみたところ、もちもちとしたそれはドーナツ生地とでもいうか、とにかく濃厚なアイスクリームと合う美味しいバンズのようなものだ。
挨拶に行った時に揚げていたのはこれか?
若干の塩気が、甘いアイスクリームを引き立てる。
今回出される料理を事前に知っていたであろうフェルスも、ニヤニヤとこちらの反応を窺っているが、あちらのアイスサンドは蜂蜜がかかっているようだ。
ずるいぞ!
関係性上競っているわけではないが、デザート部門に順位をつけるならプリンタルトもどきも押しのけて、こちらが堂々1位だろう。
他領の人々の空いた皿を見れば、どれにも溶けたアイスの跡が見える。
決して他の領が用意した料理の質が悪いわけではないが、メイン部門ではミルフィーユチーズカツにも及ばないと思う。
たぶんこの国の言葉で名付けられているだろうから、ミルフィーユとは呼べないけど。
食のアピールとしてはシームに軍配が上がったろう。
作り方が他の領の料理人に見られたので、これ以降広まることはあっても、一応正式な会合なので、この会でシーム側が出した料理だと記録されるはずだしな。
食べ始めてからルトラの眉が下がりっぱなしだったのは可愛らしいが、他の者の目にどう映るかちょっと心配なところもあるものの、きっと上手くやるだろう。
一旦、会合を締めるということで全体への挨拶があり、食事会は無事終えることとなった。
アコルトのお腹が今にも鳴り出さないか、それだけが心配である。
残った分で足りず、ガイレマ副料理長たちが追加で作る羽目にならなきゃいいけど……。
料理といえばひとつ気になったのが、ルテドーナ領のステーキについていた薬味っぽいものである。
植物の根を刻んだものと聞いたが、辛味といい爽やかな香りといいワサビっぽかったんだよなぁ。
サビアって名前だそうだが、どこかで聞いた気がするが思い出せない。
肉に合っていたし、近場で手に入るなら探してもよさそうだ。
内陸のルテドーナで使われているなら、よほど特殊な輸入物じゃない限りは見つかるだろう。
フェルスがルトラと話している間に、何故か自分に話しかけてくる者がいた。
「失礼いたします。
先ほどフェルス様とご一緒にいらした方……ですよね?」
「……はい?」
「突然お声がけして申し訳ありません。
トシュミス男爵家のノスアラ・トシュミスと申します。
先程はきちんとご挨拶できませんでしたので、改めてと思いまして」
ノスアラ・トシュミス エルフ ♂ 21歳 騎士Lv19
フェルスお姉様より少し背が高い程度の、優男というよりはだいぶ童顔の青年だった。
いや、青年というよりは中性的な少年にも見えるかもしれない。
エルフだから実年齢より若く見えるのは珍しくないのだろうけれど。
目測170cmもなさそうだから、ミーラスカよりも低そうに思える。
さり気なくアコルトの方を流し見たが、彼女は頭を下げたまま小さく横に首を振っている。
シームラウ家の使用人から主要な参加者の家名を教わっていたし、物覚えのよい彼女に心当たりないということは、自分のように誰かの連れとかだろう。
男爵家なら爵位的にも大きい領地とかではなさそうだし。
「ご丁寧にありがとうございます。
フェルス様にご招待いただきました、スズシロ・ミツキです」
「スズシロ様、ですね。
よろしくお願いいたします」
そっちは名字なのだが、この場だけの相手だし訂正するのも面倒だった。
元日本人的には、名字呼びの方がしっくりくる。
「それにしても、本日のシーム領のお料理はとても興味深かったですね。
ああいった料理は初めていただきました」
「それは……ありがとうございます。
フェルス様がシェフの方々と、色々と研究をされているようで、披露の場に自分……私もお呼びいただいて大変光栄でした」
「特に最後のデザートには驚きました。
あちらはシーム領ではよく召し上がるものなのでしょうか?」
「いえ、見かけたことはございませんので、新たに開発された料理なのでしょうね。
私も後ほどフェルス様に確認しようと考えておりました」
嘘は言っていないし、これくらいに濁しておけば追求されたとてどうとでもなる。
「そうでしたか。
ではスズシロ様もシーム領のお料理についてはお詳しいわけではないのですね」
「はい、私もこちらに来てまだそれほど長くありませんので」
「なるほど……」
これも嘘ではない。
郷土料理なんてこれっぽっちも知らないしな。
ノスアラが自身の頬を指でなぞった後、口を開く。
「スズシロ様はシーム領のご出身ではないのでしょうか?」
「はい、違いますね」
「やはり、その……南の───」
ノスアラが言いかけたところで、活気ある声が響く。
「ミツキ、お待たせ!」
「フェルスおね……様!」
「あら、ノスアラ様。
何のお話をされていたのですか?」
「フェルス様、この度は素晴らしいお料理を楽しませていただき、ありがとうございました。
スズシロ様……ミツキ様には、シーム領のお料理について伺っておりました」
「そう……なのですね。
ミツキにはこの後用事がありますので、このあたりで失礼させていただきますわね」
「これは失礼いたしました。
フェルス様、ミツキ様、お引き止めしてしまい申し訳ございません。
それでは、私はこれでお暇させていただきます。
お招きいただきありがとうございました」
「こちらこそ、ご参加いただき嬉しく思いますわ。
お気をつけてお帰りくださいませ」
「ありがとうございます、では失礼いたします」
どちらもにこやかに返した後、礼をしてノスアラが去っていく。
控えていた従者とともに扉の向こうに姿が見えなくなった後、フェルスがそっと聞いてきた。
「……ミツキ、何をお話していたの?」
「言っていた通り、料理についてですよ」
「そう?
前に男性が苦手って言っていたから心配しちゃったわ」
……あぁ、カルムとの密会で冤罪の時のか。
男に興味がないとか言っちゃったから、フェルスお姉様は気にしていてくれたらしい。
実際、男女どちらだろうが面倒なやり取りになってきていたから、強制終了させてくれて助かった。
素直に心配してくれたことに感謝を述べる。
「ふふっ、
それに……そろそろ退場しないと使用人たちがいつまでも食べられないものね」
そうだった、と振り返ってみれば、その発言にアコルトが尊敬の眼差しをしている。
悪かったよ。
お腹が演奏をし始める前に移動することにした。
スズシロ・ミツキ エルフ ♀ 18歳 魔法使いLv51
魔法使いLv51/英雄Lv47/探索者Lv51/樹祭司Lv10/遊び人Lv49/魔道士Lv28/巫女Lv45
(村人5 農夫1 戦士30 剣士30 僧侶30 商人30 錬金術師29 細工師30 薬草採取士30 森林保護官50 村長1 賞金稼ぎ19 騎士7 暗殺者7 魔剣士7 武器商人1 防具商人1 奴隷商人1 料理人24 博徒38 冒険者1 盗賊30)
アコルト 兎人族 ♀ 16歳 探索者Lv10
シャオク ドワーフ ♀ 19歳 鍛冶師Lv39
ミーラスカ 牛人族 ♀ 24歳 巫女Lv36
リカヴィオラ エルフ ♀ 15歳 探索者Lv35
セナクロワ 猫人族 ♀ 27歳 剣士Lv32
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次回は8/24更新の暫定予定です。
更新が遅れすみません。
来週は月曜日に戻したいと考えていますが、あくまで暫定となります。