異世界迷宮と斉奏を   作:或香

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209 潜行

 絨毯を購入した後は、すぐに自宅へと戻った。

 

 購入した布掛けスタンドは脚がついているので、壁際でなくても立てられる。

 だがその分、結構場所を取った。

 安定させるためにそれなりの重量もあり、絨毯を巻き取って収納もできるのだから、嵩張るのは仕方あるまい。

 

 どこに置くか悩んだが、雨風を凌げることも考えて、一旦納屋に置いておくことにした。

 他の荷物もあるので、扉を閉めると空間的にはパーティーメンバーがギリギリ入る程度の場所しかないのだが、鍵のかかる小部屋に置くことで、外からゲートの出入りが見えなくなるのは都合がよさそうである。

 せっかくの綺麗な柄を飾れないのが、ちょっと残念にも思えるが。

 

 家の中に設置することも考えたが、いくら来訪の約束をして時間を決めていたとしても、不意に裏口や通路から他人が現れるのはビックリするだろう。

 それに納屋くらいの距離なら、室内からアコルトが聞き分けてくれそうだしな。

 

 

 パラレルジョブに冒険者をセットし、吊り下げた絨毯にフィールドウォークが使えることを確認しておくのも忘れない。

 自分がワープを使う時は、絨毯が巻かれていても内壁から出てこられるので、普段はこのまま仕舞っておこう。

 

 雨の時はまぁ……、納屋から家にダッシュすれば数秒だし、問題ないか。

 

 限られた用途とワープの偽装のために所有することが目的なので、普段からここに絨毯があると吹聴するのは違うんだよな。

 リカヴィオラが正式に冒険者になったら家の中に飾ってもいいが、その時は彼女の好みのものでも新しく買ってあげてもよさそうだ。

 

 

 微妙な時刻なので、夕食にはゆっくりと時間を取ることにした。

 各々が好みの具を載せたピザを順に焼き上げ、食べながら今後の予定をおおまかに話し合う。

 

 まずは2日後、氷冷箱の設置作業だ。

 パーツ諸々が運び込まれてくる間に、朝からニカドーが排水周りを仕上げてくれるので、それの対応だ。

 木工の職人たちが箱を組み上げ、霜晶鉄の部品をはめ込めば完成だ。

 そして使用感の確認……いや、その場ではまだ氷魔法を使うことはできないな。

 

 後日、知(・)り(・)合(・)い(・)の(・)魔(・)道(・)士(・)が(・)き(・)て(・)く(・)れ(・)た(・)ことにして、氷を出しておいて冷却機能を確認してもらおうか。

 自分がボロを出さないように、シューシャトへの渡航の日に留守番メンバーにお願いしてもいいかもしれない。

 

 そして5日後は、その問題のシューシャトへの招待日である。

 もう、勝手に組まれたツアー旅行みたいに思うしかなさそうだ。

 

 ガイドに案内されて説明を聞き、用意された食事を取って、指定の宿で休む。

 文化体験もするとなると、修学旅行に近い。

 

 自由行動なんてなさそうだし、あっても指定の店や区画内とかだろう。

 そういう面でも、アイテムボックス持ちを公言できるリカヴィオラが一緒なのはありがたい。

 

 

 その2つ以外は、特に日程が決まった予定はない。

 目標としては、南方の仲買人探しだったり、新たな食事探しだったり、迷宮の踏破階層を進めていくとかあるけど。

 

 あ、そこにリカヴィオラの冒険者ジョブの取得が加わったか。

 もともと、魔道士をメインジョブに据えられる程度にレベル上げをしたいという気持ちは漠然とあった。

 でもそれ以外で、シューシャトを自分たちのタイミングで探索できるようになる他、フィールドウォーク偽装の人員の調達という面でも、身内の冒険者獲得はかなり大きい要素になる。

 

 これまでの進捗を見ても、戦いやすい植物系魔物の多い27階層なら、レベルキャップ的には問題なくLv50まで上げられるだろう。

 しかし、最大20倍までしか経験値を増加できない他のメンバーは、もっと先の階層で基礎の獲得経験値自体を増やしたほうが成長が早そうだ。

 

 それに、34階層以降のボスのドロップアイテムも気になるしな。

 カメリアオイルやレッドスパイスあたりは買うと高額なので、存在を知っていてもなかなか普段使い用には手を伸ばせない。

 それだけに、自前で調達できるなら活用法はいくらでもある。

 次に石鹸を補充する時はまたカメリアオイルを使いたいが、シームの迷宮だと38階層になるので、時期的にはまだちょっと厳しいかもしれないが。

 

 まぁ、順に階層突破を進めていこう。

 

 基本的には日々の迷宮通いを継続し、休日を作りつつ生活していく方針で認識を一致させた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 翌日は相談通り、迷宮攻略を進めていくことにする。

 博徒を入れたジョブ構成でボーナスポイントを調整し、アコルトのジョブも狩人へと変更した。

 リカヴィオラにはいつも通り留守番を頼んだ。

 

 前回振るわなかった探索は、シームの迷宮29階層の入り口小部屋からやり直そう。

 

 やはりこれまでの階層よりは人気なようで、割と早めの時間からすでに他のパーティーらしき音が聞こえるとアコルトから報告が入る。

 階層の突破が目的なので、直接接触しない分には、魔物が処理されている方が好都合だ。

 

 前回成果のなかったルートとは別方向を目指しつつ、最寄りの魔物の群れへと挑んでいく。

 発光によって明らかに目立ってしまうガンマレイバーストは、袋小路の通路や出口のない小部屋など、確実に周囲に他の者がいない時に限って使うことにした。

 

 高火力スキルを使わない分、戦闘時間は伸びてしまう。

 だが、弱点属性がない魔物は幾分か状態異常付与が決まりやすいということもあって、博徒の状態異常耐性ダウンと雷魔法の手数で危なげなく戦えている。

 単調な動きのノンレムゴーレムが主体の階層だし、回るパーティーが多いので複数の群れに挟撃されるような心配もほとんどないしな。

 回るのも倒すのも苦ではないが、ドロップアイテムの買い取り額が安いのだけが減点か。

 

 

 人の声のする方に寄ってみるルートも取ることで、魔物の出ない小部屋や、討伐済みの通路へのアクセスが増えた。

 探索範囲が広がった一方で、他パーティーが戦闘中のために通れない箇所もちらほらある。

 

 自分たちはガンマレイバースト不使用の戦闘でも8ターン、つまり数分で群れ単位の処理ができるのだが、この階層を主要な狩場としている一般のパーティーはそういかない。

 ゴーレム1体を囲んで倒すのにもそれなりに時間はかかるし、複数体に遭遇すれば足止めに人員を割かれるので、戦闘時間はさらに延びるのだとセナクロワに教わった。

 

 つまり、ボス部屋へのルート上で戦われていると、進めないということだ。

 そして今、実際にその通路と思われる場所で戦闘が行われていた。

 

 遠目の鑑定で、時折認識できる人影に目を向けてみれば、階層相応のレベルの戦士や探索者の名前が表示される。

 セナクロワやアコルトから聞く分には、苦戦している様子ではないそうなので、一般的な戦い方なんだろう。

 

 これがMMOなら、今後会わなそうな相手に辻ヒールやバフでもこっそりかけて横を抜けていくなんてこともできるかもしれないが、物理的に塞がっているのでそれもできないし、なんなら近づくだけで敵対行動と捉えられかねない。

 一応、その通路の手前の小部屋まで戻ったが、あの戦闘が終わるまで待つしかないのだろうか。

 

 他の通路はだいたい探索し終えたし、枝分かれした道も近くにはなかった。

 ダンジョンウォークを念じてみるとゲートを出せたことから、魔物の出ない小部屋に該当するようなので、一旦休憩になりそうかな。

 どうしたものかと迷っていると、自分たちが通って来た方の通路から、別のパーティーが近づいてきた。

 

 道を開けるように壁際に寄っていると、その一行はこちらを一瞥してから奥へと進んでいく。

 どうやら進みたい方向は同じらしく、詰まった通路の先を見てのため息や舌打ちが聞こえてくる。

 レベルを見る分にはキミらと大差なかったけどな。

 

 留まってトラブルに巻き込まれるのは避けたほうがいいと、早めの昼休憩をとることに決定した。

 

 

 

 

 

「体感といたしましては、あの通路を抜けられれば待機部屋もそう遠くないと思うのであります」

「あ、やっぱり?」

 

 

 家に戻ってきてから、昼食を用意した。

 焼き目のついた牛バラと、瑞々しいサラダを頬張りながら、進捗について話す。

 迷宮は、階層を進めば進むほど、全体が広がっていくとされている。

 

 騎士団の訓練で30階層あたりに通っていたセナクロワは、その前後の階層全体がどれくらいの広さなのか把握しているようだった。

 自分たちも戦闘重視で27階層の隅々まで歩いていたから、おおよその広さや位置関係はなんとなく浮かんでいる。

 今の29階層は、そこから急激な拡張はされていないだろうから、あの通路さえ抜けてしまえばすぐだろうということになる。

 

 

「そしておそらく、先ほどの戦闘が終われば、あの2パーティーが待機列に並ぶのであります」

「だよねぇ」

 

 

 乱入や他パーティーとの接触がなく、低確率ながらダマスカス鋼のドロップも期待できるボス部屋は人気だ。

 ボスのレムゴーレムは、初期状態で寝てることが多いらしいしな。

 

 通常パーティーの1戦はどれくらいかかるものなのかと聞けば、戦い慣れた団員が揃った騎士団パーティーで20分強らしい。

 ボス狙いの一般のパーティーも同等と考えても、慣れていないパーティーが間に入れば2組で1時間は待たされることになる。

 

 となれば結局、なるべく早く待機部屋に辿り着いて、ボスの待機列に並ぶしかなさそうか。

 長時間待つことになりそうなので、食後の休憩は短めにして、また迷宮に戻ることにした。

 

 

 

 ゲートを抜け出て、中断した小部屋へと戻ってくる。

 戻る前には自分にも聞こえていた戦いの音も、今では静かなので通れるようになったらしい。

 

 魔物だけでなく人にも警戒しつつ、通路を進む。

 長い直線のその先はまた小部屋に繋がっていて、部屋からは2本の道が続いていた。

 

 

「…………こちらより、複数人の話し声が聞こえます。

 ブラヒム語とバーナ語のようです」

 

 

 聴き比べたアコルトが、別言語での会話があると伝えてくる。

 言語の違う会話ということは、グループが異なる、即ち違うパーティーが近い範囲で固まっているということだろう。

 

 

 選んだ通路を進んでみれば、開けた空間へと繋がった。

 待機部屋だ。

 

 塞がった壁のように見えるボス部屋への扉と、その前に2グループが並んで座っている。

 昼食前に目の前を通り過ぎたメンバーは見当たらなかった。

 まだ、こちらへ来ていないか、すでにボス部屋に入って戦っているのかもしれない。

 

 あまり視線を向けすぎないようにざっと鑑定を流してみると、扉に近い方のパーティーに、あの時通路を塞いで戦っていた名前を見つけた。

 戦闘終了後に、後続パーティーを通したんだろうか。

 そんなやり取りをしたかどうかは分からないが、とにかく自分たちの休憩前からボス待機列は混雑していたようだ。

 

 アコルトによると、待機1番目の方がバーナ語で、手前のパーティーがブラヒム語の会話をしているらしい。

 自動翻訳だから、自分はどっちかわからないんだよなぁ。

 ウインドウに表示されたメンバーの種族で見れば、なんとなく納得できる割り振りだけども。

 

 

 先頭にセナクロワ、殿(しんがり)にミーラスカという配置で、2パーティーの後ろに並ぶ。

 小声で話せば聞こえない程度の距離を空けつつ、順番待ちだと確実に分かる程度の立ち位置だ。

 

 女性だけのメンバーでも、身長があり、迷宮での対応にも慣れているセナクロワが前にいるのはありがたい。

 ミーラスカも大盾を背に、壁となって最後尾にいてくれるので、後から別のパーティーが来ても割り込まれる心配もないだろう。

 

 近くに座った時はジロリと見定めるような目で見られたが、それきりだ。

 29階層ともなれば、下手に他人を刺激するような真似をする者は少なくなる。

 そういった、色んな意味で舐めている者から消えていくのが迷宮だと、セナクロワがしみじみと言っていた。

 

 

 昼休憩の延長という感じにのんびりと雑談をしつつ、武具の簡単な手入れをしながら時間を潰す。

 この時間があれば何群れもの魔物を討伐できるのだが、ボス部屋が詰まっているのだから仕方ない。

 

 少し前にボス部屋が開いて待機列が1つ進んだが、まだもう1パーティーが待機中である。

 後続はまだ来ていないものの、他人が目の届く距離に居られてはアイテムボックスの中身の整理もできない。

 

 探索途中なので本格的な作業もできないし、人前で話せる内容が尽きてしまえば、会話も途切れがちになった。

 

 

 

「あの……」

 

 

 そんな時に、前の待機パーティーの女性の1人がこちらに近づき、話しかけてきた。

 

 

「なんでありますか」

 

 

 半身で警戒していたセナクロワが向き直り、こちらへ向けていた柔和な顔から事務的な表情へと変化して対応する。

 

 

「待機の間に質問させてもらってもよろしいでしょうか。

 ふた月ほど前になりますが、……この迷宮の8階層で怪我を負っていたパーティーが助けられたことにお心当たりはありますか?」

 

 

 こちらの返答を待たずに続けて尋ねてくるあたり、この機会を逃すまいという意志がうかがえる。

 

 

「……だ、そうでありますが」

 

 

 あちらの顔は明らかに自分とシャオク、そしてアコルトに視線を向けてきている。

 時期的にも、セナクロワやミーラスカと知り合う前の話なので、彼女もこちらに振ってきた。

 

 

シウ  人間 女 29歳 僧侶Lv32

 

 

 鑑定をしてみるが、初めて見る人物なので当然記憶にないし、連れのメンバーにも見覚えはない。

 だが、そのエピソードには心当たりがある。

 ……あるのだが、厄介事に感じてしまうな。

 

 

「なにかあったんですか?」

「……目をかけている子のパーティーが治療をしていただいたようなのですが、まともにお礼もできぬまま去ってしまわれて、その後見かけることもなかったので探しているそうなのです。

 お話に聞いた方たちと特徴が似ていたので、勝手ながらお声がけさせていただきました」

 

 

 礼といってもなぁ、何をされるんだ。

 

 言い方は悪いが、仮に不意打ちを受けたのだとしても、8階層で瀕死になるようなパーティーから謝礼をもらおうなんて考えはない。

 だからこそ、その後の関わりがないように、あの時何も受け取らずに立ち去ったんだしな。

 その保護者からだって、見返りをもらうような気にはなれない。

 

 

「我々は順に階層を上がっているでありますし、思い当たることもないでありますな。

 治療というのは、巫女や僧侶のスキルのことでありますか?」

「ええ。

 小柄なドワーフの方から、手当てのスキルを唱えていただいたと聞いております」

 

 

 皆に見つめられたシャオクがギョッとしたが、セナクロワが手でそれを遮り、続ける。

 

 

「でしたら人違いでありますな。

 彼女は鍛冶師でありますので、アイテムボックスから……そうでありますな、靴を」

「あっ、はい!

 八百(やお)千五百(ちいほ)のお宝を、収めし蔵の掛け金の、アイテムボックス、オープン!

 ……こちらですね」

 

 

 虚空から、皮製の靴が取り出された。

 金属製の足装備をしているメンバーが履き替える用の靴やサンダルは、迷宮内では普段使わないシャオクのボックスに入れてもらっている。

 

 恩を売れる機会なのに名乗り出ようとしないこちらを疑っていた僧侶の女性も、そのパーティーメンバーも、これには納得するしかない。

 『だから言ったろ、人相だけ似てても装備も話と全然違うし』なんて声も小さく聞こえてくる。 

 

 

「たっ、大変失礼いたしました」

「見つかるといいでありますな。

 ……ああ、そうだ」

 

 

 すごすごと仲間の元へと戻ろうとした女性を、セナクロワがにっこりと笑って引き止める。

 その時ちょうど、ボス部屋への扉が開いた。

 

 

 

「先に進ませてもらってもいいでありますか?」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「あの対応でよかったでありますかな、姫?」

「うん、助かったよ」

 

 

 入口が封鎖されたボス部屋なので、姫呼びをしてくるセナクロワ。

 

 ボスのレムゴーレムは出現から動かないので眠っていたようだし、お供のノンレムゴーレム2体は、状態異常耐性ダウンを受けて、それぞれの足元から現れたサンダーウォールで麻痺している。

 全体魔法を使うとボスを起こしてしまうので、この戦闘では、単体魔法のボールと壁魔法のウォールの個別攻撃に切り替えた。

 

 チクチクとスキル武器で攻撃してもらい、お供が両方とも石化したところで雑談に切り替えた。

 戦闘の流れは待機中に十分話し合っていたので、無力化までスムーズに動けた形だ。

 眠っていなかったら掃討までノンストップのつもりであったが。

 

 

「まぁ、でも先に倒しちゃったほうがいいか」

「そうですね」

 

 

 シャオクも前に出て、レムゴーレム1体を取り囲むような位置取りに回った。

 

 岩の体の一部が金属になっているのと、ノンレムゴーレムより耐久が高いことを除けば、ボスの攻撃方法や動きにほとんど差はなかった。

 攻撃力は違っているのだろうが、試しに受けてみるなんてことはするつもりはないし、避けるか盾で流すので分かりはしない。

 錬金術師のメッキを使って、軽減状態で確認するという手もあるが、旨味の少ない階層を周回するつもりはないので不要だろう。

 

 ドロップ品にはダマスカス鋼が出ることもある……とのことだが、3体の魔物が消えたあとに残ったのは、岩3つだけだった。

 ダマスカス鋼を1つ手に入れたところで、どうせまともに装備の製造ができるまでアイテムボックスの肥やしになるしかないので、見切りをつけて売れる分だけ岩でよかったと思うことにした。

 

 

 さて、戦闘は終わったが、すぐに移動してはボス部屋の扉が開いて異常な短時間戦闘であることが露呈してしまう。

 お供を石化させてからボスへの攻撃を始めたが、それでも戦闘開始から10分かそこらしか経過していないのだ。

 

 先ほどのやり取りを振り返ろう。

 

 

 

「セナが察して上手くすり替えてくれたけど、前に8階層でやられていたパーティーを助けたってのは、自分とアコとシャオのことで合ってたんだ。

 通りがけに見つけて、見なかったことにするのもなんだから、ジョブがバレないようにシャオに手当ての詠唱を頼んで、自分がこっそり詠唱せずにスキルを使ったんだよね」

「やはりそうでありましたか」

 

「うん。

 でも、それ以上は面倒見れないから、特に何も受け取らずに離れたって感じ」

 

 

 翌日には8階層のボスを突破して、以降はカルメリガの迷宮で植物狩りにシフトしたので、あちらの知り合いが探したとしても足取りが掴めなかったのだろう。

 ギルドでのアイテムの売却は複数の街で済ませていたし、そもそも混み合うのが嫌で、他人が迷宮にいる昼の時間帯でやっていたしな。

 

 そして2ヶ月も経って戦闘メンバーにはミーラスカとセナクロワが増え、装備もダマスカス鋼やミスリル製に更新している。

 唯一といっていいド(・)ワ(・)ー(・)フ(・)の(・)ヒ(・)ー(・)ラ(・)ー(・)という手掛かりも潰えたし、パーティー壊滅の危機で混乱していたともなれば、2ヶ月前の記憶など当てにできないだろう。

 

 

「恩人を探せる程度に余裕が出てきたのでしたら、いいことでしょう」

「そうだね」

 

 

 低階層に潜るパーティーが大打撃を受け、援助があったにしても身銭を切れるくらいに立ち直れたならば、確かにいいことだ。

 自分のことで精一杯だったが、今後どこかで問題になりそうな懸念が解消できたのは、こちらとしてもプラスだ。

 プラスというか、どこかマイナスだった部分が消えたというべきか。

 

 仮に本人らにシームの街で声を掛けられても、『迷宮で、君らの先輩っぽい人たちにも答えたけど違うよ』って返せるしな。

 当時は、魔法使いの自分が僧侶のスキルを使えることを誤魔化すために、シャオクに詠唱を変わってもらっただけでしかなかった。

 だが、結果的には自分たち自身を隠す工作にもなってくれたわけだ。

 グッジョブ、自分。

 

 

 

「さてと、そろそろ次の階層に行ってみようか」

「30階層はブラックフロッグですね。

 火が弱点で、水属性に耐性を持っています」

 

「皮にぬめりがあって、斬りつけと突きを通すにはコツがいるであります」

 

 

 となると、遊び人のスキルには中級火魔法をセットするか。

 

 カエル相手に剣撃でダメージを与えるには、引くように斬るか、腕や足の付け根を狙うなど、刃が滑らないように工夫するのがいいそうだ。

 魔法で燃やした後も、体のぬめりが減って攻撃が通りやすくなるらしい。

 

 うちの場合、物理攻撃はダメージを与えることよりも、接触して状態異常を狙うのがメインなので、そこまで気にする必要はない。

 しかし、正しい対処法は学んだ方がいい。

 

 セナクロワに軽くレクチャーを受けた後、ボス部屋の出口から次の階層へと進んだ。

 

 




スズシロ・ミツキ エルフ ♀ 18歳 魔法使いLv52
魔法使いLv52/英雄Lv48/探索者Lv52/樹祭司Lv25/遊び人Lv50/魔道士Lv33/博徒Lv40
(村人5 農夫1 戦士30 剣士30 僧侶30 巫女45 商人30 錬金術師29 細工師30 薬草採取士30 森林保護官50 村長1 賞金稼ぎ19 騎士7 暗殺者7 魔剣士7 武器商人1 防具商人1 奴隷商人1 料理人24 冒険者1 盗賊30)

アコルト   兎人族 ♀ 16歳 狩人Lv40

シャオク  ドワーフ ♀ 19歳 鍛冶師Lv40

ミーラスカ  牛人族 ♀ 24歳 巫女Lv38

リカヴィオラ エルフ ♀ 15歳 探索者Lv36

セナクロワ  猫人族 ♀ 27歳 剣士Lv34



---
次回は来週~10/30更新の暫定予定です。


投稿が遅くなり申し訳ありません。
業務内容が超過しすぎており、目処が立てられないので、現時点ではなるべく来週平日中に更新したいと考えている状況です。


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