そのまま冒険者ギルドまで歩き、そこからシームの迷宮5階層へとワープした。
前回は数グループを倒した程度で迷宮を出たので、再度最初の小部屋からスタートすることにした。
動きの遅い魔物ばかりで、2発で沈む上に案内付きなのでサクサクだ。
この後に予定が詰まっていないというのも、精神的にプラスに働いているのかもしれない。
余裕があるうちにということで、2人に相談して袋小路の通路を探してもらう。
そう、メテオクラッシュを試してみるのだ。
使えるかどうかくらいは試しておいたほうがいい。
行き止まりの奥まった向こうに、ナイーブオリーブとコラーゲンコーラルが1体ずついるのをアコルトに見つけてもらった。
気づかれないような距離のまま、小声で2人に指示を出す。
「ちょっと特殊な攻撃魔法を試してみるから、下がっていてね」
「特殊な、というのはどのような魔法でしょうか?」
「うーん、文献でしか見たことはないんだけど、こう、岩がいくつも降ってくるような強力な魔法らしい。
ちゃんと発動するかどうか確認する段階だから、まだ使えないかもしれない」
ボーナスポイントを操作して、メテオクラッシュを取得する。
戦闘後に飲んだばかりだが、もう1つ強壮丸を飲んでから通路の奥の敵を見定めた。
メテオクラッシュ、と念じるも……発動しない。
念の為、詠唱省略を外してみる。
思い浮かべたところで呪文が表示される。
取得自体はちゃんとできているのだ。
再度敵の群れを見つめて、呪文を詠唱する。
「無限の宇宙の彼方から、滅ぼし尽くす空の意志、滅殺、メテオクラッシュ!」
……。
……まあまだ無理だよね。
「ごめん、まだ使えないみたいだった……」
「それほど強力な魔法なのですか?」
「うん、普通の全体魔法は魔物の群れ単位に発動するけど、その魔法は複数の群れというか部屋全体の魔物に効果があるらしいんだ。
魔物の部屋に迷い込んだ時にも、一気に攻撃できるから使えたら安心かなと思ってさ」
「そんな魔法聞いたことありません……」
体験したから身を以て知っているが、魔物の部屋の、群れを超えて密集した状況は恐ろしすぎる。
低階層でボーナス武器を持っていたから近接攻撃でなんとかなったが、攻撃魔法を使ってくる魔物が出る階層だったら文字通り終わっていた。
今だったらまともに動けるシャオクにデュランダルを預けて前に出てもらい、壁魔法やアコルトに牽制してもらって接近を防ぎながら手当てとパーティライゼーションの回復を連打して耐えるくらいしかできないだろう。
自衛手段を早く整えたい。
先程の詠唱の声でこちらに気づいた様子の魔物たちが近づいてくる。
詠唱省略を取得し、ファイヤーストームを発動した。
後ろを確認しながら下がりつつ、クールタイムが切れると2発目を発動する。
足の鈍い魔物たちの攻撃は、やはりこちらへと届く前に終わらせられた。
オリーブオイルとコーラルゼラチンをシャオクに拾ってもらって、元の探索ルートへと戻る。
5階層の分岐は何度も左右に振られるような順路だった。
朧気に思い浮かべた脳内マップでは、移動距離の割に進行したい方向への直線距離はあんまり進めていないように感じる。
それでもシャオクが自信を持って進んでいるのだから、迷っているわけではなさそうだ。
最短ルートではないだけで、ボス部屋へと続いているだけでも案内なしで闇雲に進むよりは安心感が違う。
「お嬢様、そろそろお昼前だと思われます」
「わかった。
シャオ、ボス部屋へはまだかかりそう?」
「いえ、もう2回ほど通路を曲がれば着きます。
合間に遭遇する群れは多くても2つだと思います」
「そっか、じゃあボスを倒すところまで行っちゃおう」
どうせボス前の待機部屋まで抜けたところで、その小部屋にはダンジョンウォークが出来ないのだ。
ワープでは移動できるが、他のパーティーの目を気にすれば使えないのと同じになる。
ならばボスを倒して6階層入口に抜けてしまえば、休憩後の移動も面倒を考えなくて済む。
ニードルウッドとナイーブオリーブたちの群れを焼き払いつつ、案内通りに歩みを進める。
たしかに2グループを倒したところで、待機部屋と思わしき開けた部屋へと抜けた。
ボスへの入口前には3人パーティーが1組待機していた。
いずれも人間の男だ。
鑑定をかけたところ、盗賊ではなかったのでホッと息を吐く。
少し距離を空けて、その後ろに並ぶように手頃な石の上に座り込む。
隣に立ったままのアコルトを見てか、その内の1人が近づいてこようとして他の仲間に止められていた。
「アコ、何言ってるか聞こえる?」
「……お嬢様にお声を掛けようとしたようですが、こちらの装備を見た仲間に止められたようです」
5階層にしては竜革装備はハイスペックだし、全身金属鎧もいるし、ちゃんと見ればこの階層に来るようなレベル帯ではないと判断されたらしい。
大枚をはたいて揃えた効果が出ていてよかった。
それにしてもアコルトじゃなくて自分目当てだったのか。
シャオクは兜も鎧もしているから仕方ないとして、美人なのはアコルトだろう。
髪を整えてもらっているからといっても、やっぱり人間にとってはエルフがいいのだろうか。
こちらとしてはそういう視線は気持ち悪いのでご勘弁願いたいが。
そんなくだらないことを考えているうちに扉が開き、男共が奥へと進んでいった。
空いたスペースを詰め、ボーナスポイントを振り直す。
スズシロ・ミツキ エルフ ♀ 18歳 魔法使いLv21
魔法使いLv21/英雄Lv19/探索者Lv23/僧侶Lv20/戦士Lv17/剣士Lv9
キャラクター再設定 1 鑑定 1
ワープ 1 詠唱省略 3
6thジョブ 31 武器・六 63
アクセサリ・一 1 腕力 18
(残0/119pt)
経験値効率は一切捨て、商人の代わりに戦士と剣士の両方をつけた。
これで攻撃スキルを続け様に放てるだろう。
「この階層も、自分が剣で行ってくるね。
ここを抜けて6階層に出たらお昼にしよう」
二人の返事を聞いて、進もうと思ったがまだ扉は閉まっている。
一般のパーティーはボス討伐にどの程度の時間を要するのだろう。
「他のパーティーってボスにどれくらい時間がかかるのかな?」
「まだ低い階層ですので、階層に合ったパーティーなら15分ほどでしょう。
先ほどのパーティーは慣れていそうでしたので、もうすこしは早いと思います」
そんなもんなのか。
こちらはデュランダルならスキル発動数回分の時間なので数十秒、長くなってもその倍で済む。
つくづくボーナスポイント様のおかげだ。
水筒の水を飲んだり、伸びをして待っていると、しばらくして扉が開いた。
声を掛けて、ボス部屋へと進む。
入りきったところで煙が発生したので、今回も先行者がやられているわけではなさそうだ。
近づきながら鑑定を連発し、魔物が形作られたところでウインドウが現れる。
パームバウム Lv5
ナイーブオリーブが成長したような、幹と手足が一回り大きくなった植物の魔物だ。
先についている葉も数が多く、叩きつけられたらさらに痛そうだ。
オーバーホエルミングで回り込んで、ラッシュとスラッシュを続けて打ち込む。
その細い枝と葉を切り落とすだけで、1回ずつのスキルではまだ倒れない。
1度離れて距離を取り、パームバウムが腕を振りかぶったところでオーバーホエルミングを再発動する。
攻撃を避けてその腕の反対側に位置取った。
攻撃スキルのクールタイムが明けないので、通常攻撃で切り払う。
ボスがこちらへと振り向いたところで、再度戦士と剣士のスキルを発動できた。
細い腕を両断されたパームバウムが、煙へと変わっていく。
後に残ったのは、パームオイルだ。
オリーブオイルと同じように膜に包まれていて、掴んでみても同様にグミのような感触だ。
もうすこし量があればなにかに使えそうだが、1つだけでは少なすぎるので売却行きだろう。
使いたい時にはまた集めればいい。
ボーナスポイントを魔法編成に振り直し、ジョブも5つに戻す。
スズシロ・ミツキ エルフ ♀ 18歳 魔法使いLv21
魔法使いLv21/英雄Lv19/探索者Lv23/僧侶Lv21/商人Lv23
キャラクター再設定 1 鑑定 1
ワープ 1 詠唱省略 3
5thジョブ 15 アクセサリ・三 7
獲得経験値10倍 31 必要経験値1/10 31
MP回復速度3倍 7 パーティー項目解放 1
パーティライゼーション 1 知力 20
(残0/119pt)
ボス部屋の出口を抜けて、6階層へと足を踏み入れたところで、昼休憩前の探索は終わりということにした。
そのまま冒険者ギルドへとワープゲートを開く。
***
昼の鐘は鳴った後のようで、建物の中の人は若干少なめのようだった。
冒険者ギルド回りから商人ギルド方面に進みつつ、食事のできる店を探す。
自宅で料理が作れるようになるまで、当面の間昼食をとるのはこのあたりの店になるだろう。
クラザでもやっていたように、手当たり次第に違う店に入っておすすめを食べ、自分や2人の気に入った料理があればまた来るという感じでいいだろう。
今日は繰り出したのが遅めだったからか、大体の店は人が待っているようだった。
空いている店に入ってみたが、空いている理由がそれだというように、味も量もそこそこのものが出てきた。
2人は量以外は満足しているようなので追加で頼んだが、次回の店に期待しよう。
腹ごなしに商店街の方を歩いてみる。
シャオクも大体の場所は知っていても個々の店に入ることは少なかったようで、売り物自体をまじまじと見るのは新鮮なようだった。
日用品からなにから、生活に必要そうなものが買える場所を一通り覚えておこう。
軽く散策したところで、そろそろ午後の探索へ向かうか。
水筒の水を詰め替えながら、シャオクに確認する。
「6階層は、スローラビットだったっけ?」
「そうですね、また動きの遅い魔物なので、5階層と同じような戦闘になると思います。
ボスのラピッドラビットはスローラビットと違って素早いので、同じようにはいかないかもしれないです」
「シャオが迷宮で戦った時はどうしてた?」
「すみません。
待機部屋の場所だけ確認して、ボスには挑んでいないです」
ラピッドラビットは作中でも厄介だと説明があったし、ダンジョンウォークがあるならわざわざボスに挑む必要がないのだろう。
魔法を使ってくるボスのパーンは、詠唱遅延のスキル武器を揃えてから挑むもの、なんて描写があったくらいだ。
1体の危険なボスに挑むより、複数体出てくるものの倒すのが容易な道中の魔物を狩るのが通例なのだろう。
「了解。
戦い方はだいたいは思いついたけど、待機部屋まで行けたらまたそこで相談するね」
「はい!」
通りの店に掲げられていた絨毯から、シームの迷宮6階層へとワープした。
この階層の魔物はスローラビットということで、弱点属性はなさそうだ。
結局ニードルウッドの水耐性が問題になるので、火属性魔法でいいだろう。
出現確率が減っても、削り残しが出ると拙い。
6階層初回の戦闘は、5階層と同じボーナスポイントの編成で行ってみる。
階層の上昇で順当に強化されているなら、2発で仕留められないだろうと2人にも伝えた。
のそのそと動く音がするのでおそらくスローラビットがいるとアコルトが伝えてくる。
順路から少し外れるが、通路の先で白い毛の塊から耳がとび出ている物体を見つけた。
スローラビット Lv6
クラザの迷宮で見てはいるが、あれは5階層だったか。
群れの最大数が3体というだけで、1体だけというのもままある。
今回は火力の確認なので、1体でも全体魔法を使う。
現代にいた頃は考えもしなかったが、盗賊や魔物の部屋を経て意識は変わった。
舐めたら死ぬのだ。
ファイヤーストームを放つと、突然体が発火したことに驚いたスローラビットが暴れながらもこちらへ跳ねて近づいてくる。
言われた通り動きが遅いが、その進路にシャオクが割り込みつつ盾を構えている。
半分くらいまで近づいてきたところで、魔法が再発動できた。
やはり2発では倒せていない。
ダメージが通っているのもあってか、遅い足取りがさらに遅くなっている。
あと数歩で到達、というところでクールタイムが終わる。
3発目のファイヤーストームで、スローラビットは煙へと変わった。
やはりこのポイント構成では3発だったか。
ロッドに替えたとはいえ、6階層にもなれば確定数は減らせないようだ。
ウサギの毛皮を拾い上げてアイテムボックスへとしまう。
その後、MP回復速度のポイントをすべて知力に振ってみても、倒し切るには全体魔法3発から減らせなかった。
逆に、知力へのポイントをある程度減らしても、必要数は3発のままだった。
さすがに振らなすぎると、4発に増えてしまうようだが。
このまま階層を進んでいけば商人のレベル上げはとりあえずLv30までで終わる。
それ以降は別のジョブを育てることになり、商人のジョブ効果の知力小上昇分は他で確保しなければならない。
知力ステータスからパラレルジョブへとボーナスポイントを回し、薬草採取士を取得してみる。
これで知力に関しては、英雄の中上昇、魔法使いと商人と薬草採取士の小上昇が3つの補正がかかることになる。
試しにナイーブオリーブたちと対峙してみたが、4発かかってしまった。
なんとかこの構成で出来ないかとポイントを調整していると、確認の数戦でレベルが上がったおかげか、6階層の魔物を3発で煙に変えることもあった。
同じ種類の魔物でも生き残っているのもいたので、これは乱数というやつか?
スズシロ・ミツキ エルフ ♀ 18歳 魔法使いLv21
魔法使いLv21/英雄Lv19/探索者Lv23/僧侶Lv21/商人Lv24/薬草採取士Lv4
キャラクター再設定 1 鑑定 1
詠唱省略 3 6thジョブ 31
アクセサリ・三 7 獲得経験値10倍 31
必要経験値1/10 31 MP回復速度3倍 7
パーティー項目解放 1 パーティライゼーション 1
知力 5
(残0/119pt)
それなら今後薬草採取士が上がっていくだろうから、知力のジョブ効果が上がって確定3発になっていくだろう。
6階層はこの構成で挑むことにして、順路を進んだ。
スズシロ・ミツキ エルフ ♀ 18歳 魔法使いLv21
魔法使いLv21/英雄Lv19/探索者Lv23/僧侶Lv21/商人Lv24/薬草採取士Lv4
(村人5 戦士17 剣士9)
アコルト 兎人族 ♀ 16歳 狩人Lv16
シャオク ドワーフ ♀ 19歳 鍛冶師Lv11
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次回は10/23更新の予定です。
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24/10/24
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