6階層の魔物が出ない小部屋から、真っ直ぐにボス部屋へと向かう。
夜間にリポップしたのか、2グループほどをファイヤーストームで焼いた後、昨日は諦めた待機部屋にたどり着くとまだ誰も居なかった。
扉の前でロッドをアイテムボックスに仕舞い、ボーナスポイントを調整する。
スズシロ・ミツキ エルフ ♀ 18歳 魔法使いLv22
魔法使いLv22/英雄Lv19/探索者Lv24/僧侶Lv21/戦士Lv17/剣士Lv9
キャラクター再設定 1 鑑定 1
ワープ 1 詠唱省略 3
6thジョブ 31 武器・六 63
アクセサリ・一 1 腕力 10
敏捷 9
(残0/120pt)
素早いらしいスローラビットのボスに対して、いくらか敏捷に振ってみる。
「また自分が前に出ようと思うけど、ラピッドラビットは素早いんだよね?」
「そうですね、動きが速く普通のパーティーは長期戦になります。
でも、ミツキ様はあの素早く動くスキルがあるので問題ないのでは?」
うーん。
オーバーホエルミングは時限だし、動き自体が加速しているだけでエイムはへっぽこ剣技のままなんだよな。
外れる心配のない全体魔法は10発近くは必要になりそうだしどうしたもんか。
「あのスキルは効果時間が短いんだよね。
素人剣技自体も変わらないから、攻撃を当てないと使ったMPも回復できないし大丈夫かなぁ……」
「お嬢様。
ラピッドラビットでしたら狩りで何度か見ておりましたので、私もお力になれると思います」
珍しく戦闘に関してアコルトが進言してきた。
奴隷になってからのブランクはあるが、何度か動作を見れば鞭で動きを制限できるだろうとのことだ。
シャオクが前、自分とアコルトがそれぞれそのすぐ後ろに付く形で考える。
鞭で進路の誘導をして体当たりは盾で受け止め、動きが止まったところでデュランダルで攻撃。
鞭を巻き付かせたり盾で押さえつけて追撃。
物理攻撃がどうしても当たらないようなら、牽制と防御で守ってもらいつつ、必中の全体魔法で持久戦。
クールタイムもあるから、その間に2人の回復に努めれば負けることはないだろう。
「そもそも鉄や竜革装備なので、まずやられることはありません!」
「それはそうだけど……。
まあ行ってみよう!」
やり直しが利かないのだから、必要以上にビビりでもしょうがないだろう。
それでもこれ以上うだうだとしていると、後続のパーティーがやってきそうだ。
シャオクを先頭に、ボス部屋へと侵入する。
自分が最後に入ると、その途端に扉が閉まり、いつもの煙が集まり始める。
現れたのは、スローラビットとほぼ同じ大きさの赤い体毛のウサギだ。
ラピッドラビット Lv6
鑑定のウインドウを見つめていると、ラピッドラビットが駆け出した。
速い。
正面に盾を構えていたシャオクの側面に回り込み、急加速した。
先程のは移動で、これはダッシュなのか?
体当たりが接触する直前にシャオクが進行方向に盾を向ける。
ボスは弾かれて飛ばされる。
防御が遅れたのではない。
動きが見えていて、突進に合わせて盾のスライドをぶつけたのだ。
浮き上がったラピッドラビットが床に落ちる。
「ミツキ様!」
「あ、はいっ!」
ボケっと見つめている場合じゃなかった。
慌てて前に出てデュランダルを振ろうとしたところで、すでに体勢を立て直したラピッドラビットは距離を取っていた。
「ごめん……」
「いえ、また来ます!」
庇うように、その前に出たシャオクがボスを見据える。
ラピッドラビットは真っ直ぐに向かってきた途中で横に飛び、急に角度を変えてアコルト側へと回り込んだ。
アコルトが冷静に鞭を一閃、しかしボスはそれを跳ねて躱し、更に接近する。
鞭を引き戻し、進路を制限するように足元をピシリと叩くと、嫌がるようにまた飛び跳ねて方向転換した。
その先には、いつの間にか移動していたシャオクが待ち構えている。
鋼鉄の盾の重さと膂力でラピッドラビットを押さえ込んで叫ぶ。
「ミツキ様、どうぞ!」
「わかった!」
ラッシュだと盾の方にたくさん当たってしまいそうなので、隙間からデュランダルで切りつけた後にスラッシュを念じる。
一薙ぎしたが、これだけでは倒れず、暴れて拘束から抜け出した。
距離を取っていくラピッドラビットに向けて、ファイヤーストームを放つ。
自分の手数が稼げないなら、魔法と併用すればいいのだ。
発火直後はその場で藻掻いたが、その赤い体に火をつけたままこちらへと走ってくる。
すかさずシャオクが割り込み、最初のように突進を弾き返した。
ぶつかった時には延焼は治まり、宙に浮いたラピッドラビットの後ろ足に鞭が伸びる。
空中で逃げ場のないボスの足に鞭を巻き付け、アコルトがそのまま床に叩きつけた。
さすがに今度はチャンスだと分かる。
オーバーホエルミングを発動して駆け出し、まだのびているボスの頭にラッシュとスラッシュを打ち込んだ。
ゆっくりと流れる時間の中で、スキルの衝撃でまた暴れ出したラピッドラビットにデュランダルを突き入れる。
まだ倒れない。
シャオクもカトラスでの斬撃を何度か入れている。
追加でデュランダルで切り込んでいると、脚の伸縮で巻き付いた鞭を外したラピッドラビットが再び距離を取った。
そうだ、魔法のクールタイムは終わっている。
ファイヤーストームを思い浮かべ、再度毛皮が火に包まれると、やがて動かなくなりそのまま煙へと消えた。
ウサギの肉
無事倒すことは出来たが、自分が手間取ったせいでぐだぐだだ。
最初のシャオクの弾き返しで自分の攻撃スキルが決まっていれば、戦闘時間は半分くらいで済んだかもしれない。
2人とも敵の動きは分かっているようだった。
アコルトは実際の狩りの見学で、シャオクは他の魔物との戦闘経験からのパターンで。
文章でその特徴を読んだからといって、分かっていないのは自分だけだ。
当事者の自覚を持って即座に動けるようにならないと、今後は危ういだろう。
ドロップアイテムのウサギの肉は、道中で出たものと合わせて2つだ。
今夜の食事で調理をお願いして、2人に食べてもらおうかな。
アイテムボックスに肉を仕舞いつつ、魔法仕様にボーナスポイントを戻してロッドを取り出す。
スズシロ・ミツキ エルフ ♀ 18歳 魔法使いLv22
魔法使いLv22/英雄Lv19/探索者Lv24/僧侶Lv21/商人Lv25/薬草採取士Lv11
キャラクター再設定 1 鑑定 1
ワープ 1 詠唱省略 3
6thジョブ 31 アクセサリ・三 7
獲得経験値10倍 31 必要経験値1/10 31
MP回復速度3倍 7 パーティー項目解放 1
パーティライゼーション 1 知力 6
(残0/120pt)
6階層で3発まで持ち込めたこの編成も、7階層では4発以上かかるだろう。
それは仕方ないので置いておくとして、次層からはミノが出てくることになる。
ツノを突き上げての攻撃が危険そうに書かれていたが、問題なのは動きが遅いとは書かれていなかったことだ。
ここ数階層の通常モンスターののっそりした動きとは違う、攻撃的な動きなのだろう。
体格とツノを活かした体当たりを繰り返してくるのなら、ファイヤーストームではその炎でこちらも被害を受ける可能性がある。
水耐性を持つニードルウッドが3階層分上がって出現率が激減するのなら、ウォーターストームも実用的になるだろうか。
2人に戦闘手順を伝えつつ、6階層の出口へと向かった。
7階層の入口小部屋へと足を踏み入れる。
これで目標だった7階層まで、すべてダンジョンウォークで移動できるようになった。
シームの迷宮を進めたことで、糸やオリーブオイルを低階層で回収できるようになれたのは大きい。
「かなり人が多いようです。
ここからはシャオクさんの案内もありませんし、なかなか進みにくいのかも知れません」
入口小部屋からの索敵だけでも、複数パーティーの音が拾えるらしい。
ミノの皮が高めだし、残りは動きの遅いスローラビット、リーチの短いナイーブオリーブなら確かに人気なのも頷ける。
他のパーティーが沢山入っていることで、複数の魔物の群れに囲まれる確率も下がる。
大量に倒して稼ぐのは無理だろうが、ミノを複数体相手にする実力があれば、比較的安全に安定して狩りをするにはちょうどいい階層なのだろう。
逆に、火力で大量に倒して一気に経験値を稼ぎたい自分たちにとっては動きにくい階層だ。
「アコ、なるべく他のパーティーを避けつつ探索して行こう。
ルート取りが難しいけど、魔物だけの場所に案内してほしい」
「かしこまりました」
そこかしこに人が居るのもあって、ほとんど魔物に相対することなく迂回を繰り返している。
全然進んでいる気がしない。
進もうかとした前方の通路の奥に茶色の塊を見つける。
ミノ Lv7
ミノ Lv7
やっと見つけた初遭遇のそれは、2本のツノを携えた凶暴そうな牛だった。
パーツパーツはどう見ても牛だが、前後につまっていると描写のあったように少々不格好なフォルムをしている。
気づかれる前にウォーターストームを放つ。
茶色のその体を水の塊が包み込み、ダメージを与える。
これで完全に気づかれた。
シャオクが正面に位置取ったの見て、その後ろに入り込む。
「お嬢様、もう1歩左です」
アコルトの急な指示に驚きつつも移動する。
なるほど、これで片方のミノと自分たちが直線に並ぶので、シャオクが盾で突進を止められる。
もう片方のミノは外れたコースを進むか、相方にぶつかって速度が落ちるだろう。
助走を始めたミノに、2発目のウォーターストームを発動した。
全体魔法なので外れる心配もなく命中するが、怯む様子なくミノが進み続ける。
加速しつつ、ツノから突き進んできたミノが鋼鉄の盾と衝突する。
鈍い音が響いて、続けて2体目のミノもぶつかってきた。
こちらは盾と先鋒のミノのどちらにも当たったような形だ。
音からして結構な衝撃かと思ったが、シャオクは構えた位置から殆ど動いていない。
装備の防御力と、様々な補正を受けたステータスのおかげだろうか。
クールタイムが終わったので3度目の水魔法を念じる。
ブルッと少しだけ身を震わせただけで、どちらのミノも気にもとめていない様子だ。
頑強なのか感覚が鈍いのか定かではないが、もうちょっと効いてる感がほしい。
1体が盾にツノを押し付けながらシャオクと力比べをする一方で、もう1体はカバー範囲外から後ろの自分たちを狙おうとじりじりと移動しつつある。
ミノが足を上げたタイミングで、アコルトが軸足を鞭で払う。
バランスを崩したミノの足がもつれ、隣の1体を巻き込んで倒れ込んだ。
巻き込まれた方に、隣のミノのツノが突き刺さる。
血を流しながらザックリ刺さっていて、めちゃくちゃ痛そうだ。
ひえぇ……。
ちゃんとした装備がなければ、人にはあれ以上に突き刺さるということだ。
シャオクが盾の重さを使って2体とも押さえ込んだところで、4回目のウォーターストームを使用する。
血濡れた牛たちを水が包みこんだかと思うと、どちらも次には煙となって消えていった。
皮
皮
2体が居た場所には、血など付いた様子もない皮が現れる。
こういうところがドロップアイテムはありがたい。
ありがたいが、低階層でも肉を落としてくれないか?
「ちょっと同士討ちもあったけど、だいたい4発で倒せそうだね」
「やはり、装備が素晴らしいです!
突進を受けてもびくともしませんでした!」
装備もだと思うが、ドワーフという種族補正と、Lv11になっている鍛冶師の恩恵だろう。
パーティー全体に及ぶ、自分の英雄のジョブ効果も影響あるはずなので、それもシャオクの鉄壁に貢献しているはずだ。
「うん、防御できそうならよかった。
アコも敵をよく見て対処してくれてありがとう」
これからも精進しますと澄ましているが、耳がピコピコと動いているので嬉しいのだろう。
狩人の観察眼と器用さで、誘導に妨害にと助かっている。
「倒す方は問題ないけど、あんまり進めないのは困るね」
「それでしたら、他のパーティーに近づくことになりますが話し声のする方に向かいましょうか?」
戦闘ではなく雑談をしているなら、その場所は高確率で魔物の居ない小部屋となる。
それなら魔物との戦闘への乱入にもならないだろうし、長時間動かないグループが居るなら、もしかするとボスの待機部屋に繋がる可能性もある。
「これだけ頻繁に他のパーティーが引っかかるなら、遭遇するのはもうしょうがないよね。
そっとすれ違うくらいにするつもりで、7階層は突破する方針でいこう。
アコの言うように、会話のする方に向かう形でお願い」
「かしこまりました。
……あちらの方から戦闘ではなく話し声が聞こえますので、進みましょう」
2股の通路を右に抜け、折れた先へと歩みを進めた。
スズシロ・ミツキ エルフ ♀ 18歳 魔法使いLv22
魔法使いLv22/英雄Lv19/探索者Lv24/僧侶Lv21/商人Lv25/薬草採取士Lv12
(村人5 戦士17 剣士9)
アコルト 兎人族 ♀ 16歳 狩人Lv16
シャオク ドワーフ ♀ 19歳 鍛冶師Lv11
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次回は10/29更新の予定です。
アンケートへのご協力ありがとうございました。
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