異世界迷宮と斉奏を   作:或香

91 / 186
091 調理

 クラザの迷宮2階層の入口小部屋に着いた。

 

 ここからは魔法主体での戦闘になるので、アコルトに周りを確認してもらいつつボーナスポイントを調整する。

 

 

スズシロ・ミツキ エルフ ♀ 18歳 英雄Lv24

英雄Lv24/魔法使いLv28/探索者Lv29/僧侶Lv27/森林保護官Lv23/薬草採取士Lv30

 キャラクター再設定    1 鑑定          1

 ワープ          1 詠唱省略        3

 6thジョブ       31 パーティー項目解放   1

 パーティライゼーション  1 知力         83

                       (残0/122pt)

 

 

 動作も楽になるし、帰宅までは英雄メインでいいだろう。

 万が一にも魔法使いと切り替える必要になったって、そちらの方がボーナスポイントが多くなるので面倒な調整をせずにすぐ替えられるし。

 

 デュランダルをポイントに戻し、運用最低限の項目を選択して残りは知力に振った。

 いくつか消費した強壮丸を生成でき、知力小上昇のある薬草採取士で火力も確保だ。

 アイテムボックスから神籬のスチールワンドを取り出して、準備完了とアコルトに告げる。

 

 迷宮ごとに若干違う色をした壁を頼りに、待機部屋に近い小部屋を思い出しつつダンジョンウォークを念じた。

 これならば移動できる場所にしか繋がらないので、出た先に人がいても問題ない。

 まあ、抜け出てきた部屋には誰もいなかったんだけれども。

 

 

 前回はシャオクの道案内付きで判明している最短ルートで進んでいたので、今回はアコルトに索敵してもらいつつ見覚えのあるらしい順路を進んでもらう。

 数グループのスパイスパイダーやニードルウッドを焼いて仕留めながら進んでいると、程なくして待機部屋へと到着する。

 

 ……自分の記憶じゃ迷わずに来られる気がしなかったな。

 だって1回しか来てないし!

 

 言い訳もそのへんにして待機部屋の奥へ進んでいる途中で、向こうに見えたボスへの扉が開いた。

 ちょうどタイミングよく前のパーティーが倒したところか。

 

 いや、そうやって決めつけるのは早計だろう。

 上位階層に移るまでに、念の為の確認をする習慣をつけなくてはならない。

 

 鑑定があるから、と今回はアコルトを待たせて自分がボス部屋へ侵入する。

 スキルを頭の中でずっと連呼しているが、一向にウインドウは表示されない。

 部屋の隅も確認したが出てこないので、扉の付近へと戻る。

 

 

「大丈夫そうだからアコも入ってきて」

 

 

 手招きして迎え入れたタイミングで扉が閉まり、湧き出した煙に安堵しつつ身構える。

 そういえば魔法攻撃なのを思い出して、集まった煙が蜘蛛の形を成す前に、見定めつつ後退した。

 

 

スパイススパイダー Lv2

 

 

 鑑定表記が出たタイミングでウォーターストームを発動する。

 煙が晴れて、体を水に包まれた蜘蛛が苦しむのが見えた束の間、そのまま煙へとなって掻き消えてしまった。

 

 あっけない。

 いや、これだけ火力を上げているにもかかわらず2階層程度で耐えられたら怖いか。

 

 10粒一揃いのペッパーを拾い上げてアイテムボックスへと収納する。

 小粒だが、ミルで砕けば2,3回分の料理に使えるだろう。

 こちらもカルメリガの迷宮へ来た際に寄って、度々回収していけば普段使いに困ることはなさそうだ。

 

 

 そのままボス部屋の出口を抜け、3階層へと出てきた。

 

 アコルトでなくとも、階層についた途端になにかが動いているような音が聞き取れた。

 ドタドタとせわしなく動き回るコボルトの階層へ来た、という感じがするな。

 

 とりあえず魔物がいる方向へと案内してもらう。

 

 見つける度に全体魔法を放ってから歩み寄り、近づく頃にはドロップアイテムに変わったそれを回収する。

 拾い終えたらアコルトがまた方向を示してくれるのでそちらへ向かい、視認できたらまた魔法、というサイクルができていた。

 

 スパイスパイダーはたまにスパイダーシルクを落とす程度だし、コボルトのドロップにはジャックナイフが混ざるので、討伐自体は早いのだが思っていたよりコボルトソルト集めには手間取っている。

 最大2体ずつというのも移動が増える原因だ。

 

 少し前に行った、シームの8階層なら4体まで出るので集めやすいか……と思ったが、前にその階層で救護したパーティーのことを思い出した。

 シャオクは簡単には戻ってこないだろうと言っていたし、自分たちはそれからカルメリガの迷宮主体に移ったのでその後は知らないが、同じ階層に行ったら他のパーティーとかに探されていた、なんて話になっていたら面倒だな。

 

 悪いことはしていないが、感謝されるとは限らない。

 仲間が亡くなっていたとしたら、どこからか難癖をつけられる可能性もあるかもしれない。

 関わらなければよかったが、見殺しになるかもしれないという罪悪感との天秤の結果だ。

 

 そんな事を考えながらもちびちびと集まっていくコボルトソルトが1列の半分程度に差し掛かったので、切り上げることにする。

 まだオリーブオイル集めもあるのだ。

 

 一旦ダンジョンウォークで近くの小部屋に移り、そこからワープゲートを開いた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 シームの迷宮、5階層へと移動する。

 人数も2人で共に金属装備ではないので、MPの消費も行きの時ほどではない。

 

 この階層に出現するメインの魔物はナイーブオリーブで、次点がニードルウッド、あとは稀にコラーゲンコーラルだ。

 索敵をしてもらうとすぐに、目的の魔物だとアコルトが知らせてくれた。

 

 

ナイーブオリーブ Lv5

ナイーブオリーブ Lv5

ニードルウッド Lv5

 

 

 幹が細く葉の多いナイーブオリーブに、木の肌を持った人型のニードルウッドが並ぶと、なんだか凸凹コンビのように見える。

 この場合はトリオか。

 

 以前は討伐にファイヤーストームが2発必要だったが、今日は1回の発動でそれぞれが煙へと変わった。

 魔法使いを始めとする知力補正のあるジョブのレベルが上がったことと、森林保護官の取得のおかげだろうか。

 

 試しにボーナスポイントの知力を外してみても、手数は増えないことがわかった。

 順当に成長できていることを実感できる。

 どうせだからMP回復速度に振った残りは獲得経験値上昇にでも回しておくか。

 

 

 コボルトたちとは違って複数のドロップアイテムに分かれているわけでもなく、群れの魔物の数も多いのでオリーブオイルはすぐに10個ほど集まった。

 アコルトに確認してみるも、まだ夕食時には時間があるそうだ。

 自分でもそんなにお腹が空いてきてはいないしな。

 

 今後料理に手入れにと、一番必要になりそうなオイルはいくらでも必要だ。

 いい機会として多めに集めることにしよう。

 

 

 

 戦闘時間は魔物を見つけてから念じた魔法が発生するまでの数秒なので、ほとんどがドロップ品の回収と次なる魔物への移動時間に費やしている。

 アイテムボックスの2列が埋まる程度まで、オリーブオイルを集めた。

 

 

「これだけあれば十分だよね。

 時間もよさそうかな?」

「はい、そろそろ配達の方も来られた頃ではないでしょうか」

 

 

 まだ夕方の鐘は鳴らないくらいだとは思うが、いい時間だろう。

 あまりシャオクを1人で待たせるのも申し訳ないので、そろそろ帰るとしよう。

 

 家の1階の部屋を思い浮かべながら迷宮の壁にワープゲートを設置し、順に入っていく。

 

 あまり音をたてないようにそっとゲートを抜け出ると、木組みだけのベッドが置かれた、半分荷物置き場と化した部屋へと通じていた。

 ブーツのつま先に体重をかけるように、重心を移動してゲートの正面から避ける。

 続いて出てきたアコルトが息を潜めるようにドアの近くにススっと場所を移ったので、黒塗りの壁を消した。

 

 静まり返った屋内で、アコルトが音による確認をしてくれている。

 近くに人はいないらしく、今度はほんの少しだけドアに隙間を作ると、目を瞑って聞き分けているようだ。

 

 

 

「(どうかな……?)」

「……少なくとも1階と家の周囲にはどなたもいらっしゃらないようなので、このまま部屋を出ても大丈夫だと思われます」

 

「よかった……ってシャオもいない?」

「いえ、微かにこの上の部屋から息遣いが聞こえますので、2階の寝室におられるようです」

 

 

 微かに、ということは掃除か荷運びを終えて休憩中ということかな?

 アコルトによるとシャオク1人分だけの音だけらしいし、業者もまだ来ていないか帰った後なのだろう。

 

 ドアを開けて廊下に出た後、一旦玄関から外に出てみて扉を閉じ、再度開いて声を張る。

 

 

「ただいま~!」

 

 

 驚かせるのも何だし、今帰った感を出してみる。

 アコルトの判断を信頼していないわけではないが、万が一という意味も込めてだ。

 

 まだ物の少ない家の中に反響するくらいの声量にしたつもりだが、返事はなかった。

 不思議に思いつつ、階段を上る。

 

 寝室の前まで来ても音沙汰がない。

 え、倒れてるとかないよね?

 

 

「シャオ~?

 ただいま~」

 

 

 声を掛けながら入室する。

 するとそこには、柔らかそうな布団の上ですやすやと眠る小柄な少女の姿があった。

 

 ……うん、よく寝てる。

 

 連なったベッドの上に敷かれた布団にシーツが敷かれ、掛け布団もしっかりセットされて、予備らしきものは脇に畳んで置いてある。

 枕を抱きつつ身を縮めて眠る様子に、自分もアコルトもうんうんと頷いてしまった。

 

 一応この中で最年長のはず、なのにな。

 

 

 しばらく可愛い寝姿を眺めつつ、予備のシーツやらを箪笥に仕舞っていると鐘が鳴る音がした。

 

 

 

「はっ……!」

 

 

 

 どうやら聞き慣れた音のおかげで目覚めたらしいが、枕を持ったまま起き上がったので木の実を抱えてキョロキョロとする小動物のようにも見えなくない。

 そして周りを見回したその顔と目が合った。

 

 

「ただいま、シャオ」

「戻りました、シャオさん」

 

「えっ!

 あっ、はい、お、おかえりなさい?」

 

 

 まだ混乱しているようなので、水を飲ませて落ち着かせてから話を聞くことにする。

 

 業者から荷物を受け取る際、伝えてあった風呂場近くの棚にバスタオルを仕舞い、寝室へ戻るとベッドメイクを済ませてくれていたそうだ。

 礼を述べて見送った後、寝室に戻って触り心地のいい生地の枕が珍しくもあって触れていると、昼下がりの陽気もあっていつの間にか……ということらしい。

 ちゃんと靴も脱いでいたのは偉い。

 

 お風呂に入る前ではあるが掛け布団の上だったし、よだれを垂らしているわけでもなかったので不問とした。

 

 

「寝心地は……シャオが証明してくれたからいいとしてご飯にしようか」

「すいません……。

 でも、毎日このベッドで寝られたら、おじさんの宿にはもう戻れないかもしれないです……」

 

 

 そのつもりで揃えたから問題ない。

 入浴後ならもっとすごいんだぞ、ふふふ。

 

 まあ今は食事が先だ。

 

 3人で調理場に移動し、竈に火をつけ、皿や器具をひと通り洗う。

 目の細かい新しい手拭いをおろして食器用にした。

 

 フライパンに似た平たい鍋にオリーブオイルをならしている間に、野菜やヤギの肉を切ってもらう。

 今日は面倒なので肉野菜炒めとパンで十分だろう。

 凝った料理はもうちょっと慣れてから時間を掛けて作ったっていい。

 

 一口大のやや薄切りにしたヤギの肉に、ミルで砕いたコボルトソルトとペッパーを振る。

 現世の所謂ヤギ肉は臭みがあると言われてクセが強いとされていた。

 しかしこの迷宮食材は、以前見たラム肉と同様に特に筋張っているわけでもなく、牛肉に近い見た目の印象だ。

 

 弾力が若干強そうではあるが、気持ち薄めにしたので多少焼いて固くなっても大丈夫だろう。

 

 2人とも、食材をカットするのは問題なさそうだな。

 アコルトは相変わらず武器の剣を持った時とは別人のように器用で丁寧だし、シャオクは手本を見せればだいたい同じように作業してくれる。

 

 ならし終えたフライパンのオイルはもう1つ用意した鍋に移し、そちらで冷えて仕舞っているパンの表面を焼くことにした。

 斜め切りにした断面が油を吸いつつカリカリに焼けてくれればいい。

 

 炒め物の分の油を残したフライパンに、ヤギ肉を入れて焼いていく。

 菜箸が欲しかったが、具材もゴロゴロしているから木ベラでいいか。

 

 ある程度火が通ったところで、たぶんニンジンのような野菜、おそらくイモっぽい野菜に、タマネギのような気がする野菜を加えて炒めていく。

 キャベツだろうと思われる野菜は、今回は柔らかい葉の部分だけ使ったので、後から加えよう。

 

 単純な塩コショウの味付けだが、調味料を揃えるのはまた今度の楽しみにしよう。

 

 飲食店で2人が食べる量を考えつつ用意したので、鍋の重量も含めてけっこう重い。

 腕力の弱化する魔法使いだとだめかもしれない。

 料理のときだけ料理人になるのもいいかもしれないな、まだ取得してないけど。

 

 そうこうしている内に、料理が出来上がりだ。

 切って炒めて塩コショウしただけの肉野菜炒めだが、香りがいいな。

 

 火から下ろして大皿に盛り付けている間に、アコルトに炭の始末をしてもらう。

 シャオクにはパンや皿をテーブルに持っていってもらい、その間に自分は鍋と油を片付ける。

 

 ……6人がけのテーブルの全部片側においてあるのはなんで?

 まあみんな小さいから真ん中に置くより手前のほうが取り分けやすいんだけどさ。

 

 自分の右にアコルト、左にシャオクが座って、その椅子もなんだか寄っている気がする。

 まあいいか。

 たぶん人数が増えても2人はこの配置になるんだろう。

 

 取り皿を用意して、食べられる分だけ取るように……と言おうとして止めた。

 それだとアコルトのターンで終わりそうだ。

 この子全部食べそう。

 

 代わろうとする2人を制して、とりあえず自分と同じ分量だけ取り分けて2人の前に皿を並べた。

 パンもとりあえず2切れずつ置いてみる。

 

 さあ、食べるとしようか!

 

 




スズシロ・ミツキ エルフ ♀ 18歳 英雄Lv24
英雄Lv24/魔法使いLv28/探索者Lv29/僧侶Lv27/森林保護官Lv23/薬草採取士Lv30
(村人5 農夫1 戦士17 剣士9 商人30 巫女1 錬金術師1 細工師1 奴隷商人1 盗賊1)


アコルト  兎人族 ♀ 16歳 狩人Lv22


シャオク ドワーフ ♀ 19歳 鍛冶師Lv19



---
次回は3/1更新の予定です。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。