異世界迷宮と斉奏を   作:或香

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099 直談

「大丈夫ですか?」

 

 

 手当てが発動できるギリギリの距離から何度か試してみても具合が悪そうだったので、周りに目がないことを確認してから声を掛けてみる。

 

 

「───!

 どちら様でしょうか、お気遣いありがとうございます。

 ですが、問題ありませんのでお気にならず……」

 

 

 そう答えた彼女の顔色は、この薄暗さの中でも分かるほど悪い。

 手当てでHPを回復させているので、それではないとしたら……MPか。

 ずっと診療をしていたのだとしたら極度に消費している場合もあり得る。

 

 アイテムボックスから強壮丸を取り出してみたが、頑なに受け取ろうとはしない。

 

 

「奴隷であるわたくしには、身に余る施しになります。

 主の許可なく物を受け取ることはできかねます」

 

 

 青い顔を引きつらせながら丁重に断わられてしまう。

 それでも柔和な笑顔のように見えるのは、もともと目を見開かないタイプだからなのか。

 

 パーティライゼーションでなら飲み込まずにもアイテムを使えるが、MPを回復させてあげたくても、こんな状況でパーティー承諾はされそうにもない。

 

 どうしてここにいるのは彼女だけなのだろう。

 日中には、他にも奴隷と思われる黒ローブの者はいたはずだ。

 

 

「ええと、他の方は?」

「……別のお仕事をされています」

 

 

 それもそうか。

 家の中の仕事だってあるだろう。

 

 ひとまず、診療団が泊まっている村長の家まで連れて行こう。

 

 シャオクに水桶を持ってもらい、アコルトと自分が肩を貸す。

 アコルトより10cmは高い彼女に自分が横につくと不格好ではあるが、多少の支えになっているだけマシか。

 

 家の前までくると、これまで以上に申し訳無さそうに口を開く。

 

 

「ここまでお連れくださりありがとうございます。

 重ねて厚かましいお願いで申し訳ありませんが、家の裏に回っていただけませんでしょうか。

 主様に知られますと、皆様にもご迷惑をおかけしてしまいます」

 

 

 まぁウチの奴隷に勝手に何してるんだということだろうな。

 洗濯の水汲みでダウンしていたから家まで連れてきたに過ぎないのだが、サラトタの村民ではないから最悪誘拐だなんだと言い掛かりをつけられるかもしれない。

 従順そうな奴隷がわざわざ忠告するのだから、そういうタイプの主人なのだろう。

 

 注文通り家の裏に回った。

 水の補充で、洗濯途中になっていた桶がいくつか置いてある。

 ミーラスカを座らせ、追加で手当てをしているうちに、アコルトとシャオクが手早く残りの洗濯を終わらせる。

 

 

「あぁ……、お手を煩わせて申し訳ありません」

「いえ、我がサラトタの診療に来ていただき感謝しておりますので、このくらいは」

 

 

 気を利かせてくれたのもあるが、アコルトにとっては故郷の援助に来てくれた診療団、それも住人相手に実働してくれていた人物だ。

 今回はなくとも、過去に家族が世話になったこともあったかもしれない。

 

 

「(お嬢様。

 裏口からどなたか出てくるようです)」

 

 

 急にアコルトが、ミーラスカに向けていた優しい顔から真剣な顔つきで傍に控えた。

 シャオクもそっと自分側に回る。

 

 村長宅の裏口のドアがゆっくりと開く。

 

 

「ミーラスカ、洗濯は終わったのか?」

 

 

 出てきたのは、奴隷商人の男であった。

 ミーラスカは無理矢理に立ち上がり返事をする。

 

 

「は、はい!

 終わっております」

「……ほう。

 どなたかおられるようですか?」

 

 

 音を立てて立ち去るわけにもいかずじっとしていたが、雲の切れ間からの月明かりで伸びた影に気づかれてしまったようだ。

 薄暗さに油断していた。

 

 

「昼間に診療していただいた彼女を見かけましたのでお礼をしたいと思いまして……、お邪魔なようですのでこれで失礼いたします」

「おや、そうでしたか。

 ……まぁまぁ、私ともお話ししていただけませんか?」

 

 

 一瞬の間でなにやら考えついたように、男がずいずいっと前に出てミーラスカを押しのける。

 

 

「ムイノド様……」

「いい、ダセティオ様には話さん。

 お前は片付けをして戻れ」

 

「……ありがとうございます。

 かしこまりました」

 

 

 ミーラスカが桶を片付け、すごすごと裏口から戻るのを見届けてからムイノドと言われた男が歩き出す。

 

 

「いやぁ、すみません。

 私は診療団についてきました、ムイノドという奴隷商人をやっている者です。

 そちらは?」

 

 

 名乗らざるを得なくなってしまい、苦い顔を出しそうになると、それを察してかムイノドが続ける。

 

 

「まぁ、いいでしょう。

 ミーラスカは聞き分けがよいので、不用意なことは話していないでしょうしな。

 エルフの方ですからこの村の住人ではないと見受けますが、従者を2人も連れておられる。

 ちなみにどちらからいらしたのでしょうか?」

「……ルテドーナの方からです」

 

 

 馬鹿正直にシームだと答えるのも不安になったので、濁させてもらうことにする。

 方面としては間違っていないし、伯爵領よりは隣の大きい侯爵領の方が伝えやすいと思うのは、おかしくはないだろう。

 勘違いだったら後で訂正できる範囲のはずだ。

 

 ムイノドは口髭を指で整えながら、こちらの返答に矢継ぎ早に話を続けた。

 

 

「単刀直入にいいましょう。

 ミーラスカを買いませんか?」

「……なぜですか?」

 

「他人の奴隷の体調を気にして、仕事まで手伝ってしまうような方々だ。

 ミーラスカを大事にしてくださると思いましてね。

 近々あの娘は商館に戻されそうなのですよ」

 

 

 黒ローブの中で一番仕事ができるように見えていたがどうしてだろう。

 雑務も1人でやっていたようだし、ダセティオとかいう主人の不評を買ったのか。

 

 

「おっと、聞く気になってもらえましたかな?

 当然、お客様にはご説明いたしましょう。

 といっても単純な話です。

 身売りの際に、性奴隷に了承しなかったというだけですな」

「ああ、そういう……」

 

 

 思えば、ムイノドが裏口を開けた際に薄く女性の声が聞こえた気がする。

 残りの奴隷たちの嬌声だったのだろう。

 その耳で聞き取れたであろうアコルトに確認までする気はないが、横を見ると気まずそうな表情をしているから、たぶん合っている。

 

 ミーラスカは仕事ができたので、夜伽ができなくとも診療団に続けて加わっていたということか。

 今回の他の黒ローブの僧侶たちは、ミーラスカに一通り教わってみて、今後もやっていけそうだと判断されたそうだ。

 同じ仕事ができるなら、そっちの相手もできる奴隷に切り替えるという話だろう。

 

 

「それでもまた商館に戻るのであれば、またすぐ別の主人に買われるでしょう?

 彼女はその、……スタイルもいいですし、僧侶というジョブも、性格もよさそうですし。

 なぜ自分に持ちかけたんですか?」

「それは商機というやつですね。

 ここでミーラスカが売れれば、ダセティオ様は街に戻ればすぐに次の者をお買いになられます。

 診療団の持ち枠は教会の指定ですので、それ以上の人員の帯同費用は自身で賄わないといけませんので」

 

 

 要するに、あの神官は経費で落ちないから新しい奴隷を買わなかったわけだ。

 今回の診療で確認した結果、ミーラスカを替えても仕事が回るようになるので、その枠を好みの奴隷に当てるということだろう。

 

 腹立たしいが、サラトタ側としては診療業務自体に滞りはないようにはされている。

 支障をきたして上から咎められないように、そのへんは上手くやっているのだと思う。

 困るのは、診療団を迎える村長の家の夜ぐらいか。

 

 降って湧いた奴隷取引だが、もう1人は人員が欲しかったのも確かである。

 

 

「いかがですか?

 ダセティオ様はすでに売却の方針で決定していて、すでに私預かりで取引や指示をする許可も頂いております」

「…………」

 

「値段はそうですね……。

 力の強い牛人族で24歳の働き手、僧侶のジョブで雑務も熟しますので、……36万ナールというところですか」

 

 

 こちらに検討させる暇を与えず、ムイノドが次々に情報を投げてきた。

 急に今ここでと言われても、さすがに困る。

 先ほど初めてその存在を知った種族だし。

 

 

「力強いといっても、竜人族やドワーフほどではないと聞きます。

 ご覧のように人員には困っておりません。

 それに、性奴隷の了承もされていないのではないですか?」

「ああ、そうでしたね、これは失敬。

 ではそれも加味して……31万ナールといったところでしょうか」

 

 

 アコルトの指摘に、白々しく価格を下げていくムイノド。

 まだなにか隠していそうだ。

 

 

「彼女と話をさせてもらっていいですか?」

「構いませんが、取引をされる前に主人であるダセティオ様や私についてのことを、あれやこれやと聞き出されては困ります」

 

 

 さすがに釘を刺してくるか。

 神官と奴隷商人が何をやっていようが、確認すべきは奴隷であるミーラスカ本人についてだ。

 

 

「そちらについては禁じてもらって構いません。

 あくまで彼女のことを知りたいので」

「…………よろしいでしょう」

 

 

 

 村長の家の裏口の前まで戻ってきて、ムイノドがミーラスカを連れて出てくる。

 

 

「こちらの……」

「ミツキです」

 

「ミツキ殿の質問に答えるように。

 お前自身のことについてだ。

 ダセティオ様や私についての内容は答えてはならない。

 終わり次第戻れ」

「……かしこまりました」

 

 

 いつかのクラザのナルディロを思わせるしたり顔で、では明日の朝に、と返答の時間を決めて家の中へと入っていった。

 

 

 なんだか話に流されるままに交渉のテーブルにつかされたが、彼女の境遇は別として、自分たちにとって必要な人材なのだろうか。

 適性を無視して同情だけで引き取っているような経済状況ではない。

 本来はもっと資金を貯めてから仲間を増やすつもりであったし。

 

 

「あの……」

 

 

 ミーラスカが不安そうにこちらを見つめてくる。

 鑑定でこちらが一方的に知り得ているだけで、自己紹介もしないままにこの状況に連れてこられたのだ。

 

 改めて見ても、ローブごしでもグラマーなスタイルだと分かる。

 袖や裾からみえる手足は細いような気がするので、もっと食べた方がいいと思うが奴隷ならば仕方ないか。

 こちらに視線を合わせるように若干背を丸めてくれているようだが、きちんと背筋を伸ばせば170cmあるかないかの身長だろう。

 

 背丈が低くてがっしりとしたドワーフに、大柄の竜人族。

 牛人族はその中間なのだろうか。

 人間族よりは体格がいいと思うが、それが彼女だからなのか種族由来なのかまでは知らない。

 

 おっと、見つめているだけでは話が進まない。

 

 

「自分はミツキといいます。

 こちらがアコルトと、シャオク」

「ええと、わたくしはミーラスカと申します」

 

「ムイノド殿が仰るには、ミーラスカさんはそのうち商館に戻されるらしいですが……聞いていますか?」

「いえ、おそらくそうだろうとは思っておりましたが……。

 ムイノド様が契約の内容を見直さないかとおっしゃったり、仕事の内容を教えきるように指示をされておりましたので……」

 

 

 勘付いてはいたのだろうが、明らかに気落ちしているのが分かる。

 ……そうだ。

 

 

「シャオ、パーティーを誘って」

「わかりました!」

 

 

 シャオクが呪文を唱え、ミーラスカが驚いたように顔を向ける。

 

 

「ちょっと確認したいことがあるから承諾してもらえますか?

 戻る前には解除しておくので」

「はい……?」

 

 

 神官に奴隷商人に僧侶の集まりだったので、やはりパーティーは組めていなかったようだ。

 承諾してくれたようで、自分たちのパーティーの一覧にミーラスカの名前が並ぶ。

 

 パーティライゼーションを使って、ミーラスカに強壮丸を2つほど使用する。

 これでMPに関しては大丈夫だろう。

 多少顔色も良くなった気もする。

 

 パーティーメンバーとなったことで、パーティージョブ設定から取得された一覧を確認できるようにもなった。

 

 

ミーラスカ 牛人族 ♀ 24歳 僧侶Lv7

(村人5 探索者1 農夫1 戦士1 巫女1 闘士1)

 

 

 そこには見たことのないジョブ名がしれっと並んでいる。

 他のジョブが取得条件が分かりやすいものばかりなので、もしかしてこれが牛人族の種族固有ジョブだろうか。

 

 続けてジョブ自体の詳細も確認する。

 

 

闘士

 効果  HP中上昇 腕力小上昇 敏捷小上昇

 スキル ブレイク発生 スマッシュ

 

 

 かなり近接戦闘特化なジョブ効果と、ラッシュやスラッシュに似た名称の攻撃技らしき謎スキル。

 それに加えて竜騎士の『クリティカル発生』のような、『()()()()()()』というこちらも謎のスキルが1つ。

 

 同等のものだとしたら、こちらはブレイクなる効果が発生するパッシブスキルだろうか。

 

 

 ブレイク。

 ゲーム的に考えれば、敵を行動不能状態にしたり、防御面を低下させるといった効果が思い浮かぶ。

 発生ということは、攻撃の度に何かしら起こる判定が行われると考えるのが無難だろうか。

 

 これまでの知識のスキル効果の中に、それっぽいものは…………あるな。

 デュランダルにもついている防御無視に、防御低減。

 コボルトのカードによる強化がない場合は、防御緩和だったか。

 

 試してみなければ判断はできないが、攻撃時に確率で相手の防御を削減するという効果ならば、かなりそれっぽい。

 前にシャオクに確認した際に、あのスキルに使うモンスターカードはモロクタウルスの系統が落とす、『クダン』とかいう名前のカードだと聞いた。

 

 牛関連でクダンなら、創作物にも出てくることのある人頭牛身の妖怪の名が浮かぶ。

 ひとうしと書いて(くだん)であったはずだし、こじつけに近いが牛人族のスキルだといわれても違和感は少ない。

 

 あれ、でもモロクタウルスは二足歩行の牛頭と書かれていなかったか?

 混乱してきた。

 

 

「お嬢様」

「ごっ、ごめん」

 

 

 袖を引いて声をかけてくれたアコルトのおかげで、現実に引き戻された。

 聞きたいことがあると待たせていたのに、鑑定結果で一人考え込んでしまってはいけない。

 

 ……なんにせよ、闘士のジョブはかなり近接向けだと一旦考えておくか。

 

 

「ミーラスカさん。

 もし今回の派遣後に商館に戻されるとしたら、どうしたいですか?」

「……?

 そちらは次に私を買われる方がお決めになることかと思います」

 

 

 聞き方が悪かった。

 彼女はあくまで自分が商品ということを理解している。

 自らの希望を言っていい立場ではないのだ。

 

 正直に話して一つずつ質問して確認したほうがいいか。

 

 

「その、ムイノド殿からあなたの購入を持ちかけられました。

 自分たちは確かに、共にする仲間を探していたところなので、あなたについて幾つか質問します」

「はい、ミツキ様。

 お答え可能なものでしたら、なんなりとお尋ねください」

 

 

 すでにムイノドが答えろと指示をしているので、今の会話すら二度手間な事に気づいた。

 自分には面接官は向いていないのだろうな。

 わかってたけど。

 

 アコルトたちの助言も受けつつ、ミーラスカへの質問を投げかけ、順に返答をもらっていく。

 

 

 ミーラスカは元々は奴隷の生まれではないらしい。

 多種族の町で育ち、そこには他に牛人族もいたそうだ。

 両親が亡くなったのか捨てられたのかもわからない孤児ではあったが、地域で育てる方針の牛人族の中で生活できていた。

 

 牛人族は力が強くて体格もよく、闘士のジョブはやはり種族固有で、血気溢れる戦闘職なんだそうだ。

 迷宮でも果敢に自ら切り込んでいって魔物に致命的な攻撃を与え、スマッシュは武器を失ったとて拳一つでも放つことが可能な打ちつけるスキルらしい。

 実際はリーチや攻撃力の関係上、借りてでも武器を持って使うのが普通らしいが。

 

 驚いたのは、牛人族の成人の儀にあたるものだ。

 大人たちが囲い込んで動けないほどに弱らせた魔物を、成人する子どもに武器を持たせて倒させるらしい。

 なんとも物騒な儀式だが、しっかりと握ってさえいれば、武器の重さで倒せるんだとか。

 

 それだけ聞くと狂気じみた行為だが、おそらくそれが固有ジョブである闘士の取得条件の1つに関わってくるのだろう。

 行事に取り込まれることで将来一定の就業率を確保できるのは、なかなかに効率的だ。

 その後の確認ですぐに闘士になれる者もでてくることがあり、彼らは将来有望な若者とされるそうだ。

 

 ミーラスカはというと、倒しきれずに消えずに残る方が怖かったので、嫌々ながらも重たい斧を選んだと言っていた。

 たぶんそれで魔物を倒したことで、戦士と闘士の討伐条件を満たしたか。

 剣ではなかったので、剣士のジョブは取得できなかったと思われる。

 

 その後の確認では、闘士のジョブは発現していなかったそうだ。

 おそらく村人のレベルが足りていなかったのであろう。

 なりたいとも思っていなかったそうだが。

 

 

 成人後も世話になっている教会で手伝いを続けていたが、サポートを受けつつなんとか僧侶に転職することができたようで、そのまま何年か様々な仕事をしたそうだ。

 怪我をした先輩に代わって診療のために隣村まで出向いてみたり、経験だといわれて迷宮の見学パーティーに僧侶として参加させられたり。

 

 その時は、動き慣れていない新米のパーティーメンバーが喚いている方が魔物よりも恐ろしくて見ていられず、引率者が逃げ出したメンバーを捕まえにいっている間に、投げ出された盾で力任せに必死で魔物を叩いて事なきを得たらしい。

 それで何とかなるのがすごいが、種族差というやつだろう。

 とにかくそういう経験もあって、自ら戦いに行くよりも、人を癒やす診療の方が性に合っていたそうだ。

 

 それから少しあって、教会の派遣診療の仕事に携わることになる。

 何度も参加していくうちにそちらの仕事にも慣れてきた頃、当時親しくしていた友人の借金を被り、奴隷に堕ちてしまった。

 育った町で会ったことがある者だったので、なんとか力になりたいと思った矢先のことであった。

 

 その際、ミーラスカは性奴隷への同意を拒否していた。

 これまで関わってきた治療相手の中に、契約上それが可能であることを教えてくれた者がいたからだ。

 

 奴隷になった後も親身になって教会が所有してくれてたので続けて働けることになり、給金も出ず食事の質は落ちたが、それでも以前とほとんど変わらない業務に関われたのでミーラスカは感謝したそうだ。

 主人が何度か代わりつつも仕事を熟し、任地を移動しながらも派遣先の村々での人々の救われた笑顔を見られるだけで頑張れた。

 

 春には今のダセティオが主人となり、サラトタ周囲の地域で活動するようになったそうだ。

 

 診療は当然、身の回りの雑務から書類整理も一通りできたミーラスカは、診療団では頼りになる。

 丁寧な対応や柔らかい物腰もそうだが、牛人族の恵まれた容姿も相まって住民にも人気だったのではないだろうかと勝手に思う。

 

 だが、主人にとってはそうでなかったのかもしれない。

 奴隷が了承していない夜伽を強要しては、罰せられる可能性がある。

 

 職業どころか身分や生き方まで、謎のシステムに管理される世界だ。

 犯罪に相当して、神官が盗賊堕ちしては笑い草では済まない。

 それで少しずつ他の奴隷を試して、最終的に診療の仕事もその他のことも自分の好みの奴隷で固めようとしているのではないだろうか。

 

 聞いた内容に自分の推測も結構混じっているが、だいたいは合っていそうだ。

 借金の元になった友人というのも、もしかしたらミーラスカを手中に収めようとした教会の者の手引かもしれない。

 奴隷になった後に同じ業務につけたのなんて、温情なんかより()()()()()()()()()()にしか思えない。

 

 それについてはミーラスカ自身のファインプレイでマシな結果になったとはいえるが、今後年齢も重ねていけば奴隷のままでは希望する癒し手は続けられるかわからない。

 現に、任を解かれて商館行きになるところであったのだ。

 

 ミーラスカの今の状況はこんなところで、次はこれからについて確認しよう。

 




スズシロ・ミツキ エルフ ♀ 18歳 魔法使いLv28
魔法使いLv28/英雄Lv24/探索者Lv29/僧侶Lv27/巫女Lv3
(村人5 農夫1 戦士17 剣士9 商人30 錬金術師1 細工師1 薬草採取士30 森林保護官23 奴隷商人1 盗賊1)


アコルト  兎人族 ♀ 16歳 狩人Lv22


シャオク ドワーフ ♀ 19歳 探索者Lv11



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次回は4/2更新の予定です。
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