一人用のポッドで来た赤い彗星もどき   作:煉月

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 2026年続き書こうと思って修正したけど持ってた漫画どっか行っちゃったから書かないかも……


一人用のポッドで来た赤い彗星もどき

 夢は記憶の整理だという話を聞いたことがあるような気がする。

 実際、直近で鮮明に記憶にある事柄を、夢に見ることもままあるだろう。

 

 その日は、人気ロボットアニメ、機動戦士ガンダムシリーズの、逆襲のシャアというアニメを見ていた。

 このアニメの続編作品がアニメ化するという話で、話題になっていたから、一度見たことはあったが改めて見ようと思ってのことだ。

 

 途中まで作業の傍らに流し見る程度で、終盤になる前に、その日の疲れもあり、いつの間にか寝てしまった。

 

 そして半端な状態で寝たからか、その時見た夢は明晰夢だった……はずだ。

 

 

 

 

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

 

「……───アムロ、なんでこれが解らん!」

「離れろ!ガンダムの力は……!」

 

「(おお、夢?モビルスーツ越しで声しか聴こえないのは逆に新鮮だ。)」

 

 

 白と濃紺のカラーのロボットを中心に、何種類かの多くのロボットが、それより遥かに大きな小惑星の片面に取り付いて、小惑星を押している。

 

 このシーンは、逆襲のシャアの終盤、地球に落ちようとしている小惑星を、主人公が押し返そうとしているシーンで、このアニメで最も有名なシーンだろう。

 

 この時の自分は、この場面を遠くから眺める形で、宇宙空間に漂うようにしており、その時点で自身が夢を見ている自覚がある夢だと、はっきり感じて思ったのを覚えている。

 

 アニメではロボット……モビルスーツのコクピットの中や、近くの母艦の中に場面が切り替わるが、ここからは、アニメのように場面が変わるわけでもなく、人の顔は見えない。

 

 

「───モビルスーツが跳ね飛ばされています。」

「何が起こっているんだ……?」

 

 

 しかし、宇宙空間にもかかわらず、なぜかセリフが、声が聞こえてくる。

 今聴こえた、遠く離れた場所にある戦艦の会話も、アニメ通りだった。

 

 モビルスーツはあちこちにあるし、戦艦だって数人しか中にいないわけでもないだろうに。

 

 更には、ピーターパンが空を飛ぶような動きで、自分も宇宙空間を自在に移動できることに気が付く。

 

 夢らしい都合のよさが面白い。

 生身の普段着で宇宙空間を漂っているのも。

 

 

 それにしても、ここから見る景色は綺麗だが、ちょっと遠い。

 せっかく夢だし近づけば、あのモビルスーツたちを間近で見られるに違いないと、身体を小惑星側へと進めた。

 

 

「───それを解るんだよ、アムロ!」

「解ってるよ!だから、世界に人の───」

 

 

「(しまった!そろそろ終わりだ、急がないと謎の光でモビルスーツどころか何も見えなくなる!)」

 

 

 このアニメの最後では、主人公を中心に小惑星全体を光が包み込み、地球から小惑星を引き離して終わる。

 この全体を眺められる距離感は、宇宙空間で感覚が狂うことを考えれば、距離で言えば何百メートルじゃ効かないとは思ったが、急ごうと思うととてつもない速さで移動出来た。

 

 

「貴様ほどの男が、なんて器量の小さい!」

 

「(間に合った!)」

 

 

 実物大で見ると迫力がある。

 東京かどっかにも実物大のモニュメントがあったはずだが、遠いので見に行ってはいないのもあってか、感動がある。

 

 本当は主人公機よりライバル機の方が好きだが、ライバル機は主人公機の攻撃を受けて脱出ポッドのみになっているのが残念だ。

 

 

「ララァ・スンは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ!そのララァを殺したお前に言えたことか!!」

「お母さん?ララァが?うわっ──」

 

「(これがサイコフレームの光かぁ……がぁッ!?頭が、うるせぇ!!?)」

 

 

 辺りを包む光を無視して近くを漂い、その光に身体が巻き込まれると同時に、人の声のようなものが無数に頭の中で反響する。

 楽しそうな声もあれば、何かに苦しむ声や、怒号も響きわたり、楽しい夢気分が一瞬でぶち壊しにされ、悪夢と化した。

 

 声に苦しむ上、方向感覚も失った結果、ライバル機の脱出ポッドの赤色が見え、そちらへと無意識に避難する。

 

 幽霊のようにポットの装甲をすり抜け、中へ入ると、中には外の謎の光が満ちてはいなかった。

 確かこの時代のモビルスーツのモニターは、全天周囲モニターという、上下前後左右の内壁全てがモニターになっているというもののはずだったが、モニターは何も映さずに真っ黒、薄暗いコクピット内で操縦席がわずかに見える程度だった。

 

 わずかに収まったような気もしたが、依然として声は鳴りやまず、ふらふらと操縦席辺りへ近づく。

 

 ……操縦席には、当然、人がいた。

 シャア・アズナブル、主人公であるアムロ・レイのライバルキャラ。

 

 オールバックの金髪に、赤いパイロットスーツに身を包む彼が、操縦席に背中を預けてぐったりと気絶しているような姿を改めて視界に認めると、急に辺りが鎮まり、時の流れが遅くなったように感じた。

 

 

 次の瞬間、シャアの瞼がゆっくりと開かれ、目が合う。

 

 

「何だ、人……?君は……?───っ、いかんな!」

「(うっ、おっ!?)」

 

 

 脱出ポッドの中にも光が入り込み、まだ脳内を荒らされ始めると同時に、シャアの手に腕を掴まれて、引き寄せられる。

 

 ぐっ、と体と体がぶつかる、と思った瞬間、意識を手放した。

 

 

 

『(この青年が何者かはわからんが、どうせ失われるならば譲ってやるのも悪くはあるまい……。なんだ、ララァ?私は────

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうしてたどり着いたのがこのパオズ山とかいうあまり聞いたことのない山って訳だ。

 意味がわからんよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じいさん、帰ったぞ。」

「おう、おかえり、どうじゃった都は。」

 

 

 木をぶった切ったような荒々しい丸太の椅子に座り、底がすり減った靴を脱ぎながら一息つく。

 

 このパオズ山から都へはすさまじい距離があり、軽く話してはいるが何日もかけて出かけてきたのだ。しかも徒歩で。

 修行の一環とはいうが、この山以外はふもとにある村くらいしか行ったことのない私にとっては、身体的にも精神的にもかなりの大冒険。

 

 実際には人ごみに慣れていないわけではなかったが、やはり見知ったものとは違った文化があると物怖じするもので、服装も相まって田舎者に見えたのか、チンピラに絡まれたりもした。

 

 

「ふもとの村とも随分雰囲気が違ったな。どういう原理で浮いてるのかわからん車も目立って。」

「はっはっは!わしも長いこと行ってねぇからな。まぁそろそろ昼飯時じゃ、食いながら聞かせてくれんか。悟空を呼んできとくれ。」

「わかった。」

 

 

 パオズ山に悟空と聞けばわかるだろう。

 

 私がいるのは、ギャグだったりゴリゴリのバトルだったりする漫画、ドラゴンボールに酷似した世界。

 その中でも、最初の物語が始まる前の、主人公が暮らしている家だった。

 

 

 

 

 

 

 近くでひと際大きい木に向かって駆け出し、一息に一番上まで登る。

 まぁ、登ったところで、見通しが良い訳では無いのだが、それでも気配を感じやすくはなる。

 

 

「……こっちか。」

 

 

 少しだけ木を降りて、幹に足裏をつけると、強く蹴りだす。

 その勢いのまま木から木へと飛び移り、山の中を進む。

 

 

 数十秒移動すると、少しひらけた場所に出て、川が流れているのが見える。

 

 川の傍には、横たわるイノシシと、脱ぎ捨てられた服。

 

 

 首が折れたのを致命傷に、血抜きがされているイノシシを後目に、脱ぎ捨てられた服を掴む。

 するとそれと同時に、少し上流の方の川の水面からザバッ、と何かが出て来た。

 

 

「ぷはぁっ!へへっ、大漁大りょ……ってあれ?兄ちゃん!帰ってたんか!」

「ついさっきにな。」

 

 

 魚の入った蔦の網を掴んで川から上がってきたのは、特徴的なボリューミーな跳ねた髪の少年。

 彼こそが、この世界の主人公にして英雄となる、孫悟空だった。

 

 

「ほら、これで身体を拭け。」

「おっとと、───ふかふかだぁ。これ、都で買ってきたんか?」

 

「ああ、うちにある使い古しの布とは大違いだ。こっちのイノシシはもう持っていってもいいのか?」

「おう!サンキュー兄ちゃん。」

 

 

 

 

 

 

「──結局、折角作った保存食を売るより、道にいた力自慢との勝負に勝った賞金の方が多かったな。」

「都は栄えてっから、まぁしょうがないじゃろ。」

「へぇ~、都には強ぇ奴がいっぱいいんのかな?」

 

「居るにはいるだろうが、じいさんより強い人はいないのではないかな。」

「じいちゃん強ぇもんなぁ、オラ手も足も出ねぇもん。」

 

 

 天気が良い昼は、外で火を焚いて食事をとることが多い。

 

 私と、孫悟空と、私たちの育ての親、孫悟飯。

 

 ……孫悟飯。

 悟空にじいちゃんと呼ばれるこの老人は、本来、原作では原作開始時には亡くなっている。

 確かそれも事故とはいえ、悟空の手によって、だ。

 

 まぁ、その過去はもう通り過ぎた話ではある。

 私も含め、3人家族として暮らしている。

 

 

「はっはっは、悟空は戦うことが大好きじゃからな!シャアものんびりしておるとすぐに追い抜かれるぞ。」

「悟空はタフすぎる。まだまだ負ける気はないがな。」

 

 

 そうだ、今の私はシャア、シャア・アズナブルだ。

 名前だけではない、今の見た目こそ原作初登場時の20だか21歳だかよりも若いものの、金髪に整った顔は変わらないし、原作で見た幼少期のシャアによく似た姿も一度通った。

 

 

 すっかり今の生活に馴染んではいる。

 気づけばそうだったと言えばそうだが、こうなる前の都会の暮らしからは信じられない暮らしだ。

 

 随分前に酔っ払った孫悟飯じいさんから聞いた話では、十年ほど以上前、私は子供の姿で、私がこうなる直前に夢で見た、シャアの乗っていた赤い脱出ポッドの中で眠っていたようだった。

 その頃でも幼稚園児くらいの年齢だと思うが、当時の記憶は正直曖昧というか、赤子の悟空にボコボコに殴られていた記憶しかない。

 

 山中をあちこち探索していた時にも、植物でわかりづらかったが2つの不自然にくぼんだ地面と、そこに一つずつ入った、大小サイズの違う機械的な球体を発見してもいる。

 その片方が、話にあった見覚えのある脱出ポットだった。

 

 ポッドの中は空だったが、家の倉庫にじいさんの体格や趣味に合わない服と、ヘルメットが家の倉庫に丁寧にしまわれていたのも見たことがある。ノーマルスーツという奴だろう。

 そこには私、というかシャアの名が書いてあったが、今の私の名をそこからそのまま付けたのか、幼少期に私が名乗ったのかは記憶が無い。ベビー悟空の蹴りで首を痛めた記憶はある。

 

 孫家にいながら、孫の名を名乗ってはいないが、私もソンシャアとなるのは違和感があるし、しっくりくるのはやはりシャア・アズナブルだ。

 私が会ったシャアにとってのシャアの名は偽名だが、今の私にとってシャアの名は本名であり、シャア・アズナブル歴も残り数年であのシャアより長くなるので、私がシャア・アズナブルだとして、もはや何の問題もないだろう(?)。

 

 知識のほとんどをこの山で得た悟空も特に疑問に思っていないし、悟飯のじいさんも最初からそういうものだと風で暮らしている。

 そもそもここで暮らす分には名前で呼び合うから気にならないのだろう、何なら悟空は私のフルネームを知らない可能性もある。

 

 

 恐らく例のシャアにとっても、私にとっても未知の山暮らしだったが、結局命の危険を感じたのは、赤子の頃の頭を強打するまでの狂暴な悟空と過ごす日々と、それから数年後の最初の満月の日くらいだ。

 

 頭を打った悟空が大人しく変わったおかげで、悟空の世話にかかりきりじゃなくなった武術の達人であるじいさんの元、拳法を教わることになってからは、危険らしい危険は力の下限が出来ない悟空の拳や蹴りを貰う時くらいだった。

 しっかり武術を覚えて、子供らしく遠慮が無い悟空を捌けるようになってから、記憶もはっきりしている。生きているありがたみを感じる。

 

 

 前の世界では太刀打ちできないような野生生物、虎や恐竜みたいなのが現れても、私は勝てる……勝ててしまう。

 悟空に劣らない所か勝る部分もある身体能力に、教えられた技術を乾いた砂のように吸い込んで我がものとする知能、第六感のような妙に気配を読み取れる能力……もしこれがシャア本来の性能であるなら、化け物と言わざるを得ない。

 

 空気にプロテインが含まれている世界、などという漫画の冗談が記憶にあるが、私の知る一般的地球人と同じ身体能力のはずのシャアの身体でこれは、あながち間違いではないのかもしれん。

 

 今はまだ悟飯じいさんより弱いと言えるが、組手をしていい所まで行くこともあるし、身体能力としては上回っている可能性もある。

 悟空の追い上げも凄まじいし、タフさでは悟空に負けるが、それでもただの一般人の精神と、MS乗り政治家の肉体がここまで仕上がるとは思っても居なかった。

 

 ……本当にこれの何千何万何億倍の実力者がこの世界にいるのだろうか。

 

 

「ふぃ~、食った食った!」

「大量に狩ってきたのは悟空だから構わんが、更に食うようになったな。これで何人分になるか……」

 

「修行も進んで、自由に山へ行っていいと許可を出してから、更に拍車をかけておるな。『よく動き よく学び よく遊び よく食べて よく休む』。これが大切じゃからな、良いことじゃ。」

 

 

 涼しい風が吹くたびに聴こえる、山の木々から聞こえるさざめきが心地よい。

 

 これから、悟空を中心に大冒険が始まり、地球の命運を左右するようになるとは、とても思えないほど穏やかだった。

 

 

「あっ!そういや都の土産まだあるんだろ?兄ちゃんみせてくれよ!」

「そうだな─────




 全員口調が違うけど、悟飯は修行を付けるということでずっと師匠っぽく喋っている、悟空は悟飯の本来の喋り方がそのまま。
 シャアは、来た時点では日本の標準語という感じの喋り方で、度々悟空に殴られながら記憶が混濁し、成長するにつれてシャアが混ざっていってかなりシャア。
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