転生独立傭兵のわくわく3周クッキング   作:おーるどあっくす

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      /決断

 …エアには何度も助けられてきた。ウォッチポイント・デルタで出会ったあの日、彼女がいなければわたしはコーラルに意識が散流して死んでいた。わたしが今の自我を確立するきっかけも、彼女が作ってくれた。システムにアクセスして道を開き、情報を集めてくれた。

 

 …わたしにはオルクスが居て、カーラが居て、チャティが居て、ウォルターも居た。

 

 でも、エアには…わたししか居ない。わたしだけが…彼女の声を見ることが出来る。

 

 エアと彼女同胞達も…ただ生きていたいだけ。それは…分かっているけれど…

 

 

 

 

 

「…ごめんね、えあ」

 

 わたしは、ウォルターを裏切れない。彼の猟犬として…使命を果たしたい。例え…友人とルビコンに生きる人々を殺すことになっても。それがわたしの意味だから。

 

 

 

 

 

《レイヴン》

 

 さよならは言わない。きっと彼女は…わたしにとって、最大の脅威となって再会することになるから。

 

《あなたの考えは分かりました…残念です》

 

 …それきり、エアの声は見えなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…仕事だ、後輩。ブリーフィングを確認するぞ』

 

 

ーーーーーーーーーー

ビジター、状況を説明するよ

アーキバスがザイレムに総攻撃を仕掛けてきた

うちの連中が応戦してるがまあ厳しい

正直言って押されてる状況だ

 

分かるね、そろそろあんたの出番だ

雑魚はうちのチャティと部下どもで持つ

あんたに任せたいのはこいつ、V.Iフロイト

企業陣営の筆頭、文句なしのエースさ

 

私は…ウォルターが託したあんたに賭けることにした

引き返せない戦いになるが…頼まれてくれるか?

ーーーーーーーーーー

 

 

 …行こう。

 

 

 

 

 

「始めるよ、ビジター。V.Iの投入まで猶予がある、その間に企業の主力機体を叩いてほしい。状況をひっくり返すにはあんたの力が必要だ。頼んだよ、ビジター!」

 

 ザイレム上層街区に降り立ち、メインシステムの稼働を開始。

 

『ここまで来たんだ。最後まで付き合うよ、後輩』

 

「…ありがとう、おるくす」

 

 

 

 封鎖機構から鹵獲されたMTを片付けながら、主力機体の元へ到着。

 

「第2隊長閣下に報告、例の独立傭兵と接敵しました」

 

〔ほう…駄犬がそんなところに。私は地上の火消しに忙しい、些事は任せます。処理しておきなさい〕

 

「些事とはね、舐められたもんだ」

 

『陰険メガネの胃に穴を開けてやろうじゃないか』

 

「…ゔぇすぱーつー、みたことあるの?」

 

『いや、ないけどあの声は眼鏡つけてると思わない?』

 

「…わからない」

 

『そっかぁ…』

 

 気の抜けた会話の裏で、あっさりとパルスブレードがLCを切り捨てた。

 

「機体が…持たない…!」

 

「目標の撃破を確認。次に行くよ、ビジター!」

 

[ボス、被害が広がっている。敵の主力は封鎖機構から鹵獲した高性能機だ]

 

「聞いてのとおりだ、ビジター。右舷エリアはチャティが何とかする、目標の撃破を急いでくれ!」

 

「りょうかい」『了解』

 

 

 

 

 

 戦闘ログ持ちの高機動LCを片付けた後、すれ違いざまに敵機を処理しながら先を急ぐ。封鎖機構のMTが相手ではRaDの頑丈なMTも分が悪いらしい。ドローンの展開したパルスプロテクションから狙撃してくるLCを片付けてから隔壁を開き、貯水ドームに突入。

 

 

 

 突入した瞬間、貯水ドームの下層から飛び出してきたHCのシールドがランスのように変形し、MTを貫く。

 

「報告します、独立傭兵レイヴンと接敵………承知しました、排除します」

 

「…今度はHC機体か。アーキバスもリサイクルが得意だね、封鎖機構も喜んでるだろうよ」

 

『射撃と近接戦闘を両立しているのか…よく出来た改修型だな』

 

 私が前衛として敵機の注意を引いている隙に背後からオルクスがミサイルでダメージを蓄積させていく。

 

「やはり只者ではない…!閣下、第1隊長殿の投入は…」

 

〔また些事で煩わせる。持たせなさい〕

 

 V.IIからの無茶振りに振り回されるHCのシールドへパルスミサイルのバースト発射が命中し、ACS負荷限界に陥った。パイルバンカーで貫かれ、吹き飛んだ所にパルスブレードが追撃。撃破完了だ。

 

「化け物め…」

 

「…この辺りは片付いたか、今のうちに補給をしておくんだ」

 

『助かるよ、まだまだ先は長そうだ』

 

 補給を済ませて隔壁にアクセス。

 

 

 

[ボス、敵の増援だ。このままでは持たない]

 

「チッきりがないね…!ビジター、救援に向かってくれるか?オルクスは左舷エリアに残って増援に対処してくれ!」

 

「りょうかい」『…ッ!了解』

 

『…こちらが片付いたら俺も向かう。チャティは頼んだぞ、後輩』

 

「まかせて」

 

 

 

 来た道を戻っていくオルクスに背を向け、隔壁の先の連絡通路を進む。

 

[ボス、高速接近する機体反応がある。この識別コードは…]

 

「V.I…フロイトが動き出したようだね…!急いでもらうよ、ビジター!」

 

 

 

 再び隔壁を開き、右舷に到達。チャティの元まで駆け抜ける。

 

[待ちわびたぞ…ビジター]

 

「間に合ったみたいだね…よく持ちこたえたよ、チャティ!」

 

[そうだな、これでようやく反撃に移れる]

 

 交戦開始だ。

 

「LC機体が複数…あとはプロテクション展開ドローンか」

 

[援護しよう、俺は正面で敵を引き付ける]

 

『…こちらオルクス…AC2機との交戦開始』

 

 AC…V.VホーキンスとV.IVペイターだろうか?

 

 

 

 チャティが攻撃を引き受けている隙に敵勢力の背後に回り込み、まずはプロテクションを展開しているドローンを破壊。チャティへバズーカを構えるLCをパイルバンカーで貫く。

 

[…ボス、V.Iの反応が近い]

 

「そうかい、休ませてはくれないみたいだね…!」

 

 チャティとわたしで挟撃してACS負荷限界に追い込み、再びパイルバンカーで撃破。これでこちらは片付いたけれど…

 

〔…どういうことだ?些事ではなかったのか?まあいい、そのためのV.Iです〕

 

 …まだ、終わりじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アーキバスとベイラムの標準フレームを組み合わせた青いACが、環流型ジェネレータ特有のこれまた青い噴射炎と共にアサルトブーストでこちらに迫る。

 

「お前がレイヴンか…ウォルターの猟犬とやるのは初めてだ、退屈させてくれるなよ」

 

 V.Iはわたしとの戦いを望んでいるらしい。アサルトブーストで………違う…!?

 

「ちゃてぃ!」

 

「安そうな方から片付けよう」

 

 間に合わない…!

 

「…ボス、ビジ…ター…」

 

 一閃。V.Iのレーザーブレードが、チャティを斬り捨てた。

 

 

 

「チャティ!?ビジター、チャティが…!」

 

「無人ACだな、そういう動きだ」

 

 取り乱すカーラと、つまらないとばかりに吐き捨てるV.I。

 

 そんな敵機の姿に腹が立つ。ここにオルクスがいればと思ってしまう自分が情けない。

 

 

 散布ミサイルを発射。アサルトブーストでミサイルと共に突撃し、ライフルとマシンガンを連射。敵機が放ったレーザードローンは無視出来るほど弱くはないが、対処する余裕も無い。

 

 今は、目の前の、敵を、殺す。

 

 敵機の姿勢が崩れた。アサルトブーストの慣性を乗せた鉄杭を、炸薬と共に叩き込む………外した。ギリギリの所で避けられた。

 

 

 

「なるほど、そういう動きもあるのか…面白いな」

 

〔フロイト、何を遊んでいるのです。目標はあくまでザイレムの掌握です。その駄犬は無視して構いません〕

 

「そうだったな、スネイル。了解した」

 

 空返事と共に、通信が切られる。

 

「さて、続けようか」

 

 …わたしよりも人間らしさのあるAIだったチャティのことを、ただの無人ACと切り捨てたV.Iが許せない。でも…

 

「………頼む、ビジター」

 

 なんとか思考を整理して指示を出そうとするカーラの声を聞いて、わたしも少し冷静になった。敵はランク1、怒りに任せて勝てる相手ではない。

 

 

 

 敵機の武装はとにかくドローンが厄介だ。全方位からわたしにレーザーを放ち無視できないダメージを与え、アサルトライフルと共に回復の暇を与えずACSへの負荷を蓄積させてくる。かといって彼らに気を取られると、今度ば拡散バズーカが脅威となる。

 

 互いにパイルバンカーと拡散バズーカを警戒しての立ち回りとなり、中距離での撃ち合いで隙を伺う。

 

 レーザーブレードで切り込んできた敵機をアサルトアーマーで迎撃。ACS負荷限界に陥った所にパイルバンカーを構えるが、パルスアーマーを削るだけに終わる。

 

 パイルバンカーの反動で足を止めたわたしに拡散バズーカが全弾命中し、逆にACS負荷限界。レーザーブレードによる回転斬りが直撃する。

 

 …読み負けた。もう少し攻撃してパルスアーマーを使わせてからアサルトアーマーで吹き飛ばすべきだった。

 

 

 

「こちらを選んで正解だったな。お前の戦い方、まさに猟犬という感じだ。この高高度で、鳥じゃないのが面白い」

 

「…ビジター、指示が遅れてすまない。レーザードローンには特に気を付けるんだ。あれを使いこなせる人間はそうはいない…」

 

 完全に遊ばれている。レーザードローンに動き出しを狙い撃たれ、上手く攻めに出られないまま一方的にダメージが蓄積していく。この状況を打破するには…

 

 

 

「ここは景色もいい…このまま、お前とやり合い…」

 

 V.Iの背後から、ブーストキックが直撃。

 

『仲間外れはよくないな、俺も入れてもらわないと』

 

 アサルトアーマーによって、敵機の姿勢が崩れた。

 

「おるくす…!」

 

『…チャティは間に合わなかったか…待たせてすまない』

 

 オルクスが、パルスブレードでロックスミスのレーザードローンを両断した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …時は遡り貯水ドーム。隔壁の先へ急ぐ621に背を向けて増援の対処に向かう。わざわざ俺に対処させるということは…ホーキンスかペイター辺りか?早く片付けてチャティを…!

 

 

 

 ザイレム上層街区の屋根に到着した俺に向けて放たれたグレネードを跳躍して回避。背後で爆発が起こる。

 

 

 

「お出ましね、オルクス」

 

『…まさか、ここで来るとは…アーキバスに金でも積まれましたか?それとも、レイヴン先輩の仇討ち?』

 

「企業の走狗となるつもりも、生きているあいつの仇を取る必要もない。目標はお前だ」

 

 増援としてやってきたのは、キングとシャルトルーズ…ブランチの先輩方だった。俺がブランチに相応しくないから消すとかそういう話か?

 

「あいつからあんたを連れ戻すように頼まれてる。一応聞くけど、今からでも戻るつもりは…」

 

『ありません。後輩との約束がありますから』

 

 …レイヴン先輩が俺を…?相変わらず目的は見えないが、ウォルターからの依頼と621への約束、そして俺自身の答えの為にもここは退けない。

 

「約束とは律儀だな…やはりお前は独立傭兵には向いていない。真面目に背負い込み過ぎる」

 

「正直、ブランチにも向いてなさそうだけどね…なんであいつがそこまで拘るんだか」

 

 

 

 これ以上の会話は無意味か。621達に通信を入れて回線を切る。

 

 

『…立ちはだかるなら、先輩達でも容赦は出来ません』

 

「言葉は不要か…仕掛けるぞ、シャルトルーズ!」

 

「偉そうにしない!」

 

 戦闘開始。まずは後衛のシャルトルーズから墜として連携を潰す。

 

『ブランチ…止まり木は地面に根を張っているのがお似合いです』

 

 グレネードキャノン、双身式レーザーライフル、バズーカ、拡散レーザーキャノンを躱しながらミサイルと共にアサルトブーストで接近。

 武装を使い果たしたアンバーオックスへチャージされたパルスブレードを叩き込む。怯んだ所にミサイルが着弾して追撃。スタッガーに陥った機体をブーストキックで吹き飛ばす。

 

「っ…あんた、これまでとは動きが…!?」

 

『先輩の顔を立てる為に手を抜いてランク7に収まってました、と言ったら怒りますか?』

 

「…舐められたものだな、ますます負ける訳にはいかなくなった」

 

 

 キングのチャージリニアが、俺の頭上を通り過ぎる。ABBOTの中、遠距離アシスト性能ではそんなものだろう。アラートに反応して3連レーザーキャノンも回避して、シャルトルーズへの攻撃を再開する。

 

 左右交互に放たれる双対ミサイルが行動を縛り、クイックブーストを吐いた瞬間に爆導索が絡めとる。パルスハンドミサイルのバースト発射を至近距離で命中させてスタッガー。パルスブレードで切り裂いた。

 

「あなたの…勝ちみたいね…」

 

『脱出を、シャルト姉さん』

 

 

 

 …次はキングだ。今度は逆にこちらが引いてミサイルで牽制する。

 

「この感覚…お前も戦意を内に秘めるタイプだったか」

 

『そうなんですかね…負けず嫌いな自覚はありますが』

 

 衝撃が蓄積してきたのを確認して間合いを詰める。パルススクトゥムにパルスハンドミサイルを撃ち込んでスタッガー。パルスブレードをチャージして見せつける。

 

「そちらから攻める必要はなかっただろう…焦ったな?」

 

『まぁ、急いでるのは確かです』

 

 キングのアサルトアーマーを後出しアサルトアーマーで掻き消す。アスタークラウンに、パルスブレードを突きつける。

 

 

 

「…容赦出来ないんじゃなかったのか?」

 

『まだ時間はあります。星外に脱出してください』

 

「…キング、私たちの完敗みたいね」

 

「そのようだな。終わったら、あいつに顔を見せてやれ」

 

『…はい、また会いましょう』

 

 

 

 アスタークラウンの狭そうなコックピットに2人は乗り込んで去っていく。分かって貰えたというか。わからせたというか…ひとまず脅威は退けた。やっぱり俺、身内に甘過ぎるのかもな…

 

 

 

 …チャティには、間に合わなかったか。結局俺は、何も変えられていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レーザードローンを切り落としたオルクスが、V.Iフロイトを足蹴にしてわたしの隣に降り立つ。

 

「確か…独立傭兵のアクスだったか?水をさすなよ」

 

『オルクスだ…悪いが、戦う為に生きているような奴に付き合うほど暇じゃない』

 

 

 そう吐き捨てたオルクスが今度はわたしの方へ声をかける。

 

『厄介なドローンは消えた。ここからは俺が援護するよ』

 

「ありがとう」

 

 V.Iはオルクスとわたしの放つ4種のミサイルには反応こそしているものの、対処が追いついていない。ある意味、先程までのレーザードローンに対する意趣返しと言えるかもしれない。

 

 

 

 あれほどわたしを苦しめたV.Iは、パイルバンカーとパルスブレードによる挟撃であっさりと動作を停止。

 

「動け…ロックスミス…!まだだ…!これからもっと、面白く…」

 

 その声にロックスミスが応えることはない。ジェネレータが爆ぜ、V.Iは沈黙した。

 

 

 

「………V.Iフロイトの撃破を確認。ビジター、あんたに賭けて正解だった」

 

「私も、ウォルターも…チャティだってそうさ」

 

 

 戦いの後には、痛みだけが残った。




真レイヴンさんじゅうななさいはさぁ…
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