転生独立傭兵のわくわく3周クッキング   作:おーるどあっくす

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挿絵機能が復旧したのでここにもデイブレイクの画像を載せておきましたー

あと残酷な描写タグが機能してます。


エピローグ/FIRES OF RAVEN

 どこまで逃げて来たのだろうか。AC程度のブースト速度で、まさかあの炎から逃れられるなんて思ってはいなかったけれど、確かにわたしは生き残っている。

 オルクスからもらった機体の装甲は炎と嵐の熱によって焦げつき、エアの機体とは真逆の黒に塗り潰されていた。

 ルビコンから離れたどこかの星系。誰もいない宇宙に、わたしだけが漂っている。

 

 

 からっぽだったわたしは、ウォルターの遺志を継いで戦う理由を手に入れた…そう思っていた。

 けれど、既にウォルターの遺志は…託された使命は果たされた。

 

 …結局わたしはからっぽのままで、注がれた使命を飲み干せば元通りになってしまう。

 

 

 

「…うぉるたー…つぎは…なにをすればいいの…」

 

 

 

 

 

 

[………解除条件をクリア

 ハンドラー・ウォルターからの

 メッセージを再生します]

 

「うぉるたー………」

 

〔…621、仕事は終わったようだな〕

 

 酷く、懐かしい声がわたしを呼ぶ。

 

〔お前は自ら選び、俺たちの背負った遺産を清算した。すまない、そして感謝しよう〕

 

 わたしの選択によって、ウォルター達の望み通り全ては焼き払われた。コーラルを巡って人々が傷付くことも、コーラルが人を傷付けることももう無い。

 

〔621〕

 

 彼が、わたしの名を呼ぶ。

 

〔お前を縛るものはもう何もない〕

 

「………ぇ?」

 

〔これからのお前の選択が…お前自身の可能性を広げることを祈る〕

 

 …心のどこかで次の仕事を望んでいたわたしを、ウォルターの優しい言葉が突き放した。

 

 

 

 

 

 …わからない。

 

 わからない…!

 

「わかんないよ…うぉるたー…!」

 

 わたしには、わたし自身の可能性を広げるどころか、次に何から選べば良いのかすら分からない。

 

 だってわたしの選択は…与えられたものから選んだだけだから…!

 

 

 

 

 

[解除条件をクリア

 オルクスからのメッセージを再生します]

 

 …途方に暮れて泣き叫ぶわたしに向けられたメッセージはひとつだけではなかった。

 

「………おるくす」

 

『…やぁ、後輩。このメッセージが再生されているということは…まぁ、俺が死んだということだろう…』

 

 …そうだ。わたしが弱いから、わたしが甘えてしまったから貴方は死んでしまった。

 

『もしも生きているなら、今すぐこのメッセージを停止して削除してくれ。恥ずか死ぬ』

 

 彼の言う通り、このメッセージの先を聞かずに済んだのならどれほど良かったか。

 

『…まずは謝罪を。最後まで君の選択に付き合ってやれなくてごめん。それと、星外に出たら美味しいものでも食べに行こうという約束も守れなかったね』

 

 彼が見せてくれた未来。それを実現することはもはや叶わない。ウォルターも、エアも、オルクスも既にいないのだから。

 

『…俺に起きたことについて、君が気に病む必要はどこにもない。これは俺の選択の結果だ』

 

 そんなことを言われたら…自分を責めることも出来なくなってしまう。それは、彼の選択への冒涜なのだから。

 

『…さて、これからの話をしよう。前に話した通り俺は星外に滞在先を用意している。恐らく君は…路頭に迷っているだろう。今はやりたいことが見つかるまでそこでゆっくりすると良い』

 

 座標データと彼の身分が送られてきた。これが…彼の生きる筈だった未来。

 

『…好きなように生きて、好きなように死ぬ。君が、君の為に生きられることを願っているよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …やっぱり、わたしが何をすれば良いのかは分からない。けれど…今は彼らの分まで生きてみよう。それが、彼の優しさに報いる方法になるはずだから。

 

 示された座標へ、デイブレイクが再びブーストを噴かし始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コーラルを巡る争いに勝者はなく

炎と嵐の後にはかつての開発惑星の痕跡のみが残った

 

半ば死に体となった企業勢力は

惑星封鎖機構との共同声明を発表

ルビコンは廃星として

永久に放棄されることが合意された

 

そして…星系を焼き払った主犯

世界の敵たる独立傭兵は消息を絶ち

今はただ その名だけが歴史に刻まれている

 

2度目の災禍「レイヴンの火」として…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「レイヴンの火」から数年が経った。

 

 オルクスの家に訪れた()はウォルターから支払われた報酬とレイヴンとして稼いで来たCOAMで再手術を受けて人生を買い戻した。

 

 …星系を焼き払った主犯。世界の敵たる独立傭兵。コーラルの真の危険性は世間に広まっていない以上、俺たちのやったことは所詮大量殺人だ。

 

 俺がレイヴンであることに繋がりうる証拠は全て処分してからしばらく。ほとぼりが冷めた頃に俺は、ウォルターの真似事としてハンドラー業を始めた。何もせずに平穏を享受することに耐えられなくなったのだ。

 

 ウォルターが“わたし”にしてきたように廃棄寸前の強化人間を安価で購入し、オルクスが“わたし”にしてきたように先輩として導いていく。

 

 多くの強化人間を見てきた。

 

 “わたし”のように機能の死んだ者、G5のように激情を抱える者、戦いを望む者、戦いを恐れる者、殺しを楽しむ者…

 

 俺の力不足で死んだ者もいれば、実力が足りずに死んだ者がいる。人生を買い戻した者もいれば、俺の元を去り、敵対した者もいた。

 

 多くの出会いと、別れを経験してきた。

 

 強化人間を傭兵に仕立て上げ、星を渡りながら企業間の抗争に介入しているうちに、いつしか俺はハンドラー・レイヴンと呼ばれるようになった。混沌を振りまき、全てを焼き尽くす黒い鳥。捨てた筈の名前が、再び帰ってきたのだ。

 

 

 

 一度生まれたものは、そう簡単には死なない。

 

 …彼らと過ごしたルビコンでの日々を。

 

 彼らと別れ、残された孤独を。

 

 多くの人々と出会って尚…

 

 “わたし”は未だ忘れられないままでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …夢を見ている。とあるグリッドで身売りをしていた少女が、独立傭兵のお兄さんに拾われた夢を。

 

 

 

 

 

「その…傭兵のお兄さん、一晩どう…ですか?」

 

 何も特別な所のない出会い。女が男の欲を満たして、男はそれに対価を払う。そんな関係を求めて、少女が傭兵に声をかけた。

 

『………』

 

 傭兵は少女を一瞥すると、すぐに目を逸らした。

 その顔は、僅かに曇っているように見える。

 

 その日、少女が男を捕まえることはなかった。

 

 

 

 

 酷くやつれた少女が、シャワーを浴びている。暖かい水によって、身体の汚れを洗い流していく。

 

 水を止めて、身体を拭いて、備え付けの服で身体を隠した後部屋を出る。

 

「えっと…傭兵のお兄さん、身体…綺麗にしてきました」

 

 もはや男に声をかける気力もなくへたりこんでいた少女に手を差し伸べたのは、あの日声をかけても反応のなかった傭兵だった。ベッドに腰掛けて俯いていた傭兵が少女を見ると、口を開いた。

 

『…机の上に食べ物を置いておいた。味気ないレーションしか無くて悪いが』

 

「…!ありがとうございます」

 

 傭兵の言う「味気ないレーション」。それは、グリッドに立ち並ぶ店の裏で残飯を漁り、泥水を啜りながら辛うじて命を繋いできた少女にとってはこれ以上ないご馳走だった。

 

「…ごちそうさまでした。その…お兄さんが初めてのお客さんなので、上手く出来るか分からないですけど…頑張ります」

 

 男は対価を払った。ならば女はそれに応えなければならない。そう勇気を出した言葉は…

 

『あ、そういうのは良いから』

 

 あっさりと拒否された。

 

「え」

 

 …だったらなぜ私に金を払ったのか、身なりを整えさせて、食事まで与えたのかと少女は困惑する。

 

「…私を目的もなく一晩買ったり、美味しいご飯を用意してくれたり…もしかして傭兵って儲かるんですか?」

 

 身体目当てでないのなら、傭兵が少女に手を差し伸べたのは気まぐれだったのだろう。傭兵には、それが出来るだけの財力があるのだ。

 

『俺はまぁ結構反則使ってるからなぁ…死ぬリスクの方が高いぞ』

 

 傭兵稼業の危険性について傭兵が語る。それでも、後ろ盾の無い少女にとって、傭兵という仕事は希望だった。

 

「でも、お兄さんがいなければ私はきっと…このまま待つよりも、自分で現状を変えたいです」

 

 先の見えない暗闇を照らして道を示した傭兵のお兄さんは、少女にとっては手の届かない星のように映った。

 

 そんな星を追いかけて、生きるために少女は戦うことを選んだ。

 

 

 

 

 

 お兄さんを納得させてACの操縦と傭兵としての知識を身につけた少女は自らの力で衣食住を整えられるようになり、だらしないお兄さんの私生活の面倒を見るほどに余裕が生まれた。

 

 人は、求めていた物を手に入れるとすぐに次を求めてしまう生き物だ。

 

 生きる為に戦っていた筈の少女は、傲慢にも次第にお兄さんの隣で共に戦いたいというものへ変わり始めた。間近で彼の人間らしい姿を見たからこそ、自分にも手が届くかもしれないと自惚れていたのだ。

 

 

 

 

 

 お兄さんから1人前を言い渡され、その自惚れを強めていく少女の元へ通信が入った。

 

『突然ごめん、後輩と中央氷原に行くことになったんだ』

 

「ぇ…ぁ…そう…なんですね…」

 

『こっちが落ち着いたら戻るから、無理はしないようにね』

 

「わかり…ました…」

 

 お兄さんはコーラルを追いかけ、少女を置いて友人と中央氷原に向かった…お兄さんには既に、隣に立てるだけの実力を持った友人が居たのだ。

 

 …人がどれだけ手を伸ばしたところで、星に手は届かない。

 

 そんな当然のことを、少女は今更思い出した。それでも諦め切れなかった少女は、彼に認められるに足る強さを求めて戦い続ける。彼からの言葉も無視して。

 

 

 

 

 

 暑い。

 

 炎がACSの熱暴走を引き起こし、機体の姿勢制御と操縦者の冷静さを奪う。

 

 熱い。

 

 至近距離で押し当てられ続けた炎はACの耐熱限界を凌駕し、高温によって装甲が溶け落ち始める。

 

 あつい。

 

 わたしをまもっていたこあのそうこうのすきまからほのおがふきこみ、おもわずてでかおをおおいかくす。

 

 あつい、あつい。

 

 こあにあいたあなからえぐりとるように、かいてんするやいばがおしあてられる。

 

 あつい。あつい。あつい。

 

 せきねつしたぶれーどが、じわじわとくいこんでいく。

 

 あつい。いたい。あついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたい。

 

「たすけて…おるくす…さ…」

 

 おにいさんに、あいたい。

 

 

 

 

 

 身の丈に合わない願いを背負ったまま星を目指して飛び立とうとした少女の蜜蝋の翼は、あっさりと溶け墜ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夢を見ていた。胸が熱くて、痛くて、苦しくなるような…それでいて幸せな、酷く印象深い夢を。

 

 …目が覚めるとそこは、見慣れた路地裏だった。グリッド77の路地裏で残飯を漁り、泥水を啜る薄汚れた身売りの少女…それがわたしだった。

 

 例え最期がどれだけ苦しいものだったとしても、夢の中の少女は幸せそうだった。少なくとも、ただ飢え死ぬのを待つことしか出来ない今の私よりはずっと。

 

 でも結局、夢は夢。お人好しな傭兵に拾われて自立するだなんて、私が深層心理で求める理想でしかない。

 

 

 

 

 

 そう…自分を納得させるつもりだったのに。

 

 

 

 

 

『身なりの良い傭兵…それならそっちの路地に駆け込んで行ったぞ』

 

「そうか、感謝する」

 

 強面の取立て屋たちに、男の行く先を伝える傭兵の姿があった。

 

 

 

 あの出来事は…夢じゃなかった。

 

 

 

 私の死を知ったとき、お兄さんはどんな顔をしたのだろう。私を思って悲しんでくれたのかな?復讐しようとしたのかな?それとも…失望したのかな?

 

 …失望されるのは…嫌だ。

 

 次は…次こそは上手くやってみせる。

 

 彼の隣に相応しい自分になってみせる。

 

 

 

 その為にももう一度、彼に選ばれなければならない。さっき見た走馬灯を思い出せ。出会った時の私を再現してみせろ…彼の同情を誘えるように。

 

 

 

 

 

「その…傭兵のお兄さん、一晩どう…ですか?」




プロローグ/眠らぬ街の逢瀬【ALT】








































[登録番号Rb23 識別名レイヴンによる認証を確認]
[安否不明状態を解除、ユーザー権限を復旧します]

[傭兵支援システム「オールマインド」へようこそ]
[レイヴン 貴方の帰還を…]

[…失礼]
[貴方の帰還を歓迎し さらなる活躍を期待します]





 …目が覚めると、そこは見慣れたガレージだった。

「認証は通ったようだな。随分と丁重な挨拶だが…まあいいだろう」

 聞き慣れた声と、聞き覚えの無い言葉。

「「レイヴン」それがルビコンにおけるお前の身分となる。早速だが仕事を取ってきた。確認しろ、621」

 オルクスに指定された座標を目指していたわたしは、どういう訳か惑星ルビコン3に戻っていた。
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