転生独立傭兵のわくわく3周クッキング   作:おーるどあっくす

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遅くなって申し訳ない…


媚 を 売 ル ビ コ ン 

「…つまり貴方がオルクスであるのは確かだが、私を助けたのはオールマインドの作り出したデッドコピーであると?」

『はい…』

「それで、オールマインドを敵に回した貴方はオルクスの名義を捨てて女装し私のライセンスを狙って傍観していたということか」

『はい…そういう訳です…』

「どういう訳なんだ…?最後だけおかしいだろう…」

 

 おかしいな…なぜ信頼関係もクソもない初対面のドーザーへここまでの経緯を洗いざらい吐かされている?もしかして俺、自分が思っているより隠し事が下手なのでは?まぁ、元一般文系大学生に腹の探り合いをさせる方が無理があるか…などと自分を正当化しておく。

 

「オールマインドを敵に回すなんて一体何を…?あの傭兵支援システムは登録してトレーニングを受けるだけでパーツをくれる優良システムだと思っていたのだが…」

 

 確かに一般の登録傭兵、あるいは前世の俺のようなプレイヤーからすればオールマインドはパーツの贈呈やシミュレーターの提供、ショップの運営(しかも買値と売値が同じ)まで手厚くサポートしてくれている。リリース計画なんて木端傭兵からすればなんの関わりもないことだし。

 

『君を巻き込まないためにも詳しいことは話せないが、とある計画の協力者として近づいて動向を探っていたら裏切りが露呈して追われている』

「もう巻き込まれているような気がしなくもないが…要するに行く宛がないのだな?」

『はい…』

「それならば、うちに来るのはどうだ?」

『…はい?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ここは…』

「シシル旧軍港へようこそ。歓迎しよう、ささやかなものではあるがな」

 

 シシル旧軍港…バートラム旧宇宙港と同じくかつて惑星封鎖機構が運用していた軍事拠点のひとつだったらしい。封鎖システムの完成によって既に役割を終えたとはいえ、ウォッチポイント・アルファのある中央氷原とベリウス地方を繋ぐ重要施設をそのままにしているのか?

 

『封鎖機構の拠点を利用するなんて随分思い切ったことを…』

「ルビコンが封鎖された当時なら兎も角、今の封鎖機構には強襲艦があるからな。荒れやすい海の環境に依存する船舶輸送なんて時代遅れだろう?」

『それもそうか』

 

 確かに、星間航行が当たり前のACVI世界なら星外に持ち出しにくい船なんて作るだけ金と時間の無駄か。ショッギョムッジョ…

 

「おかげで私達でも屋根とベッドにありつけているのだからありがたい限りだな」

『だからコヨーテスに狙われている訳か…』

「もちろんそれもあるが、もう一つ。奴らの新しいボス…確かホーネット・プルートゥだったか?」

『惜しい、オーネスト・ブルートゥだな』

「そう、そいつが離反したときにRaDから引っこ抜いてきた技術者が船に興味があるらしい」

『…待ってくれ、船があるのか?』

「あぁ、なんなら私はその船室に住んでいるぞ。なんだかボスっぽいだろう?」

 

 ふんす、と無い胸を張るヒビキの頭の悪そうな発言はとりあえず置いておこう。俺のチャート*1のうちの一つ、「グリッド012のある中央氷原への移動手段」がまさかこんなところにあるとは…

 

『…その船って、まだ使えるのか?』

「うちのメカニックが修繕中だが…私達の収入では資材が足りなくてな」

 

 人材は居るが資金がないのか…これは付け入る隙があるのでは?

 

『ここにACを所持していてそこそこ腕の立つ元独立傭兵がいるんだが…興味ない?』

「貴方がそこそこなら私達の立場がないんだが…まぁ、興味がなければそもそもこうして呼んだりはしていない。貴方はライセンスが必要だと言っていたな」

『ああ…それと可能ならば中央氷原に向かう移動手段として船を使わせてもらいたい。足とか舐めましょうか?』

「いきなり下手に出てきたな…」

 

 誉は(エノメナの)膝枕で死にました…(遠い目)

 お世辞にもチャートとは言えたものではない行き当たりばったりの計画がここにきて現実味を帯びてきた以上、このチャンスを逃す訳にはいかない。その為なら土下座も足舐めも腹踊りだってやってみせる覚悟だ。

 

「…正直魅力的な提案ではあるが、流石にそこまで要求するつもりはない。私が貴方に頼みたいのはAC乗りとしての私、ヒビキの影武者だ」

『待って!?足舐めを魅力的に感じてる方に意識が引っ張られて全然話が入ってこないんだけど!?もしかしてSっ気あるの!?』

「サイレンス・シジマ達との戦闘を見ていたのなら分かるだろうが、私の実力はドーザー集団“ストークス”のボスとしてあまりにも不足している。これまでは輸送機の護衛やジャンク拾いなんかの戦闘を避けやすい仕事でなんとか切り抜けて来たが、船を修理していくには報酬が足りていない。それに、これからコヨーテスからの攻撃もますます勢いを増していくだろう」

『ちょ…このまま話続けるつもりとか正気か!?』

「そこで貴方には私の代わり、つまり“ストークス”ボスのヒビキとして仕事を引き受けてもらいたいという訳だ。そうすれば私達は資金を獲得して船を修理でき、貴方はその船と私のライセンスを利用出来る。悪くない提案だろう」

 

 この女、俺の疑問を完全スルーして言いたいことだけぶち撒けやがったんだが…!?とはいえ、確かに提案そのものは悪くないのが事実だ。ただ…

 

『ヒビキ…お前、ストークスの構成員に逃げられてたけど大丈夫か?』

「あぁ…あれはいつものことだから大丈夫だ、問題ない」

『えぇ…?』

「今回のように絶望的な状況で部下を逃した後奇跡的に生還したのも2度や3度ではないから、私も部下も慣れたものだ。だからこそ、私はフルーク(まぐれ当たりの)・ヒビキと呼ばれているわけだが」

『えぇ…』

 

 インビンシブル・ラミー系くっころ女武士だったのか…

 

「とはいえ、ああもあっさり切り捨てられるのはリーダーとして堪えるものがあるな…いい加減あいつらにはキツく言っておくとしよう」

 

 少なくとも部下が一切の躊躇いなく逃走を選択できるレベルである以上、彼女の言う通りとてつもなく運が良いかよほど人望がないかの2択だろう。実際彼女はオールマインド無人ACからの横槍でエロ同人みたいになる危機が有耶無耶になった上で無人ACからトドメを刺されることなく生き残り、通りすがりの俺に救助されて上位ランカーの助力を得られるチャンスを得た。ここまで幸運が収束するのならそれはまぐれ当たりの偶然ではなく必然と言えるのかもしれない。

 

『まぁ、その提案が俺にとって都合が良いものであることは事実だ。これから世話になる、ヒビキ』

「受けてくれるか…!よろしく頼む、オル…いや、そのコールサインで呼ぶべきではないのか?」

『そうして貰えると助かるな…もうナナシとかじゃダメか?』

「…もう少し身分を隠す努力をした方が良い」

『じゃあとりあえずシンシアで…』

「分かった。よろしく頼むぞ、シンシア」

 

 パッと頭に浮かんだ女っぽい名前だから特に深い意味はないが、その分下手に理由付けするよりも正体はバレにくいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒビキの姉御…オイラたちを庇ったせいで…ううっ…」

「あんな結末、あんまりなのだわ…」

「ダッフォン…今頃、ワシらに手を出させまいと奴らに身体を差し出しておるのじゃろう…興奮してきたのう…」

 

 な、何やってるんだ“ストークス”構成員(あいつら)

 

「ううっ…ストークスボス、ゲボック…悪くない響きでやんす…」

「ボス…貴方のことは忘れないのだわ…」

「うっ…ふぅ…すっきりしたのう…」

 

 エアプペイターみたいな奴が…ヒビキが構成員を逃してから戻ってくるのがいつものことなら茶番でしかないだろう。最後については何も言うまい。

 

「………お前たち、随分と弛んでいるようだな」

「!?ぼ、ボス…無事でなによりでやんす…」

「まったく…いつになったら学習するんだ、お前達は?今月もコーラルは抜きだぞ」

「そ、そんなでやんす…」

 

 おやつ抜きのノリでドラッグを抜くな。そもそも資金難でコーラルドラッグを買う余裕がないのを誤魔化してるだけだろ。実際それで薬物が抜けるならこのままの方がいいのでは…?

 

 

 

「ところでボス、そちら様はどちら様なのだわ?」

 

 おっと…話題が俺の方に移ったか。自己紹介タイムって訳だな。ヒビキにはもうバレてしまったが今度はちゃんと身分を隠さないと…

 

「紹介しよう、彼女は私を救助してくれた通りすがりのAC乗り、シンシアだ。しばらく私達の一員として滞在することになる」

『シンシアです、よろしくお願いします』

「なるほど、オイラ達と同じでボスの運にあやかろうって訳で…「ゲボック。」いや、なんでもないでやんすよ。」

 

 一人称も語尾も言動も全部が小物臭いヤツだな…他の構成員より立場は高そうだが、なんでこんなのが?

 

「オイラはゲボックでやんす!よろしく頼むでやんすよ…シンシアさん」

「ゲボックはウチの中で1番MTの操縦が上手いんだ。調子に乗ってるからあとで叩き潰しておいてくれ」

『あぁ…うん…分かりました…』

 

 なるほど、武力か。あの微妙な顔を見るに実力だけは確かなんだろうな…恐らくヒビキよりも。

 

 

「私はメルセリーナなのだわ!長いからリーナと呼んで欲しいのだわ!」

「ここでの生活で困ったことがあればリーナを頼ると良いだろう」

 

 リーナはドーザー集団の一員にしてはまともそうだな…あれ?メルセリーナ…メルセリーナねぇ…メ(ルセ)リ(ー)ナ?

 

『分かりました、メリナさん。語尾はなのだわよりもメリにした方が似合うと思いますよ』

「わ、分かってないのだわ!?」

 

 その恵まれた名前で語尾がメリじゃないのはメリニットに謝った方が良い。彼女をACに乗せる日が来たら4脚Wイヤショで砲撃支援をしてもらおう。

 

「ダッフォン…儂は王大豊(ワンダーフォン)じゃ。お主…」

『な、なんですか…』

 

 謎のジジイが俺の体を舐め回すように見つめる。大豊に関係ありそうな名前からして樹大枝細にこだわりがありそうだし、俺の偽乳がバレたか…?

 

「お主、良い身体をしておるな…今夜、儂とどぶぇっ!?」

「初対面で何を言っているんだエロジジイ…!セクハラだぞ!」

「それもまたご褒美じゃっ!?」

 

 王大豊の顔面にヒビキの拳が繰り返し突き刺さる。なんだただのエロジジイか…俺の女装も見抜けないクセに「良い目をしている」のノリで熟練者気取りなんて笑えるな。雑魚オスが。

 

「まぁ、ここに居る連中は幹部の彼らだけ覚えておけば十分だ」

『…こいつらが幹部なの人選ミスでは?』

「まともに会話が成立するだけの学があるのはこいつらとメカニックだけだからな。メカニックの方はACの用意が整ったら紹介しよう」

『えぇ………』

 

 こ、これがドーザー…(戦慄)

 この先ここでやっていけるのか不安になってきたぞ…!

 

*1
(笑)




◯フルーク・ヒビキ
まぐれ当たりのヒビキ。
ACの操作技術と引き換えに、(ドーザー基準で)まともな理性と異常な運命力を手に入れた都合の良い(ことが起きる)女。

⬛︎ストークス
RaD、コヨーテスとは月とすっぽんほどの差がある小規模ドーザー集団。本拠地はシシル旧軍港で、頭目はヒビキ。
エリートドーザーともいえるRaDや過激派過ぎるコヨーテスに馴染めないありふれたドーザー達の集まりのひとつ。封鎖機構の施設を利用している為まともな生活環境があるのが売り。
ACはヒビキのみ所持しており、その他構成員はMTを使用。ジャンク拾いや戦闘の少ない仕事でなんとか食い繋いでいる。

◯オルクス→シンシア/ヒビキ
ACVIハッピーエンド√開拓ガバチャー走者。
しばらくの間ストークスでヒビキの影武者としてACでの戦闘を担当することになった。
尚、偽名をシンシアにしたせいでこの後ガバが発生する。

◯ゲボック
語尾がやんすのエアプペイター。
ボスの座を虎視眈々と狙っている小物。

◯メ(ルセ)リ(ー)ナ
語尾がなのだわのルビコニアンふつうガール(真)
なのだわって言え。

◯王大豊(わんだーふぉん)
エロジジイ。
大豊とは一切関係がない。
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