「へぇ…コーラルを本来あるべき場所である地中支脈へ還すことで増殖は自然に終息に向かうというのが第三助手…オノデラの言った計画かい?」*1
「はい、こちらはオノデラ先生が残した実験記録です。地中支脈を再現した空間内ではコーラルの増殖が緩やかなものになっています」*2
「オノデラ…あんたはアイビスの火の後も1人でこの問題に向き合ってきたんだね…」*3
「増殖が収まれば、後はミールワームが捕食して均衡を保ってくれるのだとオノデラ先生は言っていました」*4
「前回」の彼女が手に入れた情報を技研の第三助手のものということにしてカーラに開示していくなんてエノメナも随分と思い切ったことをする。*5
「オノデラは…もう死んじまったのかい?」
「はい、観測者達へこの情報を届けるよう私に託して…」*6
「そうかい…彼の遺した情報を無駄にする訳にはいかないね。さあ、次は方法について擦り合わせようじゃないか」
2度目、3度目の機会を得たという点では同じはずなのに、わたしと違って彼女は更に先の未来を知っている。ここまで差があるのはどうしてなんだろう?
…そもそも2度目がある時点で普通からかけ離れているのだから考えても仕方ない、あちらに関してはエノメナに任せよう。きっとうまくやってくれるはず。
〔始めるよビジター!伝えたとおりだが案内は任せな。あんたらには恩を売っておくのも悪くない〕
翌日、この先の計画も固まったわたし達はこれまで通り中央氷原へ渡るためカーゴランチャーを目指すことになった。あの加速力に強化人間でないエノメナが耐えられるのかは心配だけれど…本人が大丈夫だと言っている以上信じるしかない。オルクスは大丈夫だったし。
〔リフトで上った先はグリッドの天辺、外殻に当たる区画だが…残念ながらそこは私らの縄張りじゃない。分かるかい?封鎖機構が衛星軌道から睨んでやがるのさ。ドーザーってのは総じて頭のネジが緩い、度胸試しに向かう奴もいたが…結果はお察しさ〕
そういえば結局確保したイグアスは最後までエアとの交信をすることが出来なかったのでレッドガンに返してしまったが、ドーザーのようにコーラルを摂取させれば可能性があったかもしれない。
…いや、流石にこれは拷問と取られかねないからやらなくて正解だった。このまま心の中にしまっておこう。
〔上層に到達しました、マーカー情報を送信します。カーラの言うとおり…この高度は封鎖衛星の狙撃圏内になっているようです〕
「隠れられる屋根があれば良いんだけど…」
「つうろしってるからだいじょうぶ」
ここを通るのは3回目。わたしはレーザーを回避するタイミングも把握しているけれど、エノメナは初めてだから無理せずに行こう。どうせ中央氷原に着いてもベイラムに提出する為の先行調査くらいしかすることはないのだから急ぐ必要もない。
〔片付いたみたいだね、カーゴランチャーを起動しようか〕
《あれです、コンテナにアクセスしてください》
これといったトラブルもなく封鎖衛星の狙撃地点を突破し、カーゴランチャー手前の警備をしていた
「了か…」
「とまって、エノメナ」
1周目のわたしのように言われるがままコンテナへ近づこうとしたエノメナを引き止める。この後は上からシースパイダーが…
《…待ってください、
周囲に咆哮が響き渡ると同時、上空から雨のように刃が降り注いだ。
「あれは…鳥…?」
刃を回避して見上げた先で、鳥のような機影がこちらを威圧するかのように赫い翼を広げる。
〔あんたら、まずいのに絡まれたよ。C兵器
地面に突き刺さった刃が再び浮かび上がり、フェニクスの翼や尾羽根にあたる部分へ装填されていく。再使用にはジェネレータからの動力供給を必要とするらしい。
《ジェネレータからコーラル反応…確かに通常の機体ではない…レイヴン、エノメナ、注意を》
逆関節の跳躍力を活かし、エノメナが敵機へ肉薄。それを追うように私も飛び上がり同時にそれぞれのブレードを振るうが、フェニクスはそれを翼で受け止めそのままわたし達の機体を弾き返した。滞空しているというのにとんでもない安定感だ…!
〔オノデラから聞いたかもしれないが、そいつはアイビスシリーズ…CELの参考となった機体だ…他のC兵器と一緒にして油断するんじゃないよ!〕
フェニクスの翼から切り離された羽根はこちらに照準を合わせた後、ラスティのニードルミサイルのようにこちらへ高速で特攻。見切りやすい攻撃ではあるが、反応が遅れれば被弾は確実だ。わたしとエノメナのどちらを狙っているのか見極めて冷静に対処し、反撃をしていく。
「さっきよりも効いてる…?」
エノメナの言う通り、攻撃を回避して反撃していく度に少しずつ通りが良くなっているのを感じる。装填されている羽根の推進力が姿勢制御スラスターを兼ねているのかもしれない。
エノメナのチャージリニアライフルが命中し、敵機が悲鳴のような鳴き声を発してACS負荷限界に陥る。なんとなく罪悪感を感じるが、敵機に対してそんなことを考えている場合ではない。地に落ちた敵機へ今度こそ2人同時にブレードを振るって追撃………あれ?
《敵機コーラル反応…停止…?》
いや、いくらなんでも脆過ぎる…この感じはまさか…!
フェニクスが咆哮と共に再び飛び上がり、全身の開口部からコーラルを放出した禍々しい姿となる。
「再起動!?」
アイビスシリーズの参考になった、というのは自律兵器ではなくこれのことだったのか…!
〔オノデラの奴、ジェネレータの暴走だなんて物騒な機能を付けてやがる…ビジター、早く破壊しないと機体が呑み込まれるよ!〕*8
カーラの言う通り、屋外とはいえ時間をかけ過ぎれば周囲がエンゲブレド坑道のようになってしまいかねない。さらに、濃度を増した戦闘領域内のコーラルから供給を受けているのか、敵機の羽根がレーザードローンのようにこちらを追いかけて機体に傷を付けていく。
《2人とも機体が損傷しています!》
「これ以上時間はかけられないね…!」
「いっきにおわらせよう」
敵機の羽根は全てわたし達を攻撃するために射出されている上、フェニクス自身も全身から噴き出すコーラルに振り回されて推力任せの特攻を繰り返してばかり。恐らく姿勢安定性能も低下したままだろう。
わたしはアサルトアーマー、エノメナはレーザーブレードによる回転斬りで纏わりつく羽根を吹き飛ばす。これで攻撃に専念できそうだ。
コーラルから動力供給を得られるのはACも同じ。アサルトブーストを惜しみなく使って突撃後の隙を追い、ショットガンを浴びせていく。
エノメナのプラズマライフルが着弾したことでフェニクスがACS負荷限界。プラズマ爆発がそのまま敵機の装甲を灼き、更にチャージリニアライフルも直撃する。
「とどめ…!」
のたうち回るフェニクスの胸部ジェネレータへ、わたしはパルスブレードを突き立てた。
《敵機システムダウン…敵機、自爆します!》
フェニクスの本体が爆発、それに連鎖するかのように周囲へ撒き散らされた羽根も破裂して破片を撒き散らす。とてつもない執念だった。
《………コーラルを…動力に使うなんて…》
〔ここまで不安定な機体を封鎖機構が投入するものかねぇ…まあいい、本来の目的に戻ろうか。さっさとコンテナに乗り込みな、操作はこっちでやる〕
周囲に撒き散らされたコーラルの影響でカーゴランチャーが異常を起こしていないか心配だったが、問題はないらしい。エノメナと一緒にコンテナへ機体を詰め込めば、カーラはすぐに最終調整を始めた。
〔それにしてもビジター。あんたらはそれぞれウォルターとオノデラに目をつけられた訳だが…2人揃って半世紀前の後始末に巻き込まれるなんて運がないね。まったく…同情するよ〕
「でも、わたしがきめたことだから」
「…私達には守りたいものがあるので」
〔…そうかい。分かってるとは思うけど、こいつから有人で打ち出されるのはあんたらが初めてになるだろうね〕
〔不運なあんたらの、幸運を祈るよ〕
さぁ、ここを耐えればいよいよ中央氷原。
◯ IA-07:PHOE-2-X(フェニクス)
IA-06:LEVIA-3同様、ナガイ教授の第三助手であるオノデラ氏が開発したC兵器。アイビスCELに通ずる要素がいくつか散見される。
翼部コーラルオシレーター、脚部コーラルオシレーター、羽根型遠隔コーラルオシレーターを装備。牽制用の射撃兵装は…?
別にタクティカルアドバンテージはないが[きゅるるおーん!]と鳴くことが出来る。かわいい。
・第一形態
プレイヤーから距離を取るように動き、羽をミサイルのように飛ばして攻撃を行う。
攻撃で羽根が減る度に姿勢安定性能が低下していくため、回避→反撃→回避を繰り返すことを推奨。
羽根を全て撃ち切ると羽根回収行動で隙を晒す代わりに、ACS負荷ゲージを少し回復。
・第二形態
ジェネレータからコーラルを放出することで羽根へのEN供給が不要となり、羽根はレーザードローンのようにプレイヤーを追従して攻撃。
フェニクス本体も積極的に直接攻撃を行う。
敵機の姿勢安定性能は下がったままで、EN消費もエンゲブレド坑道のように半減する為速攻を推奨。