褪せ人は触れたら壊れるオブジェクトの上にメッセージを残すのが好きな生き物なのですね
『えっと…こんな辺鄙なグリッドへお越し下さりありがとうございます、惑星封鎖機構の皆様』
「…貴様らのような不法滞在者共とこうして対面で交渉するなど本来ならあり得ないのだが…システムからの命令だ。話は聞いてやろう」
『寛大な処置に感謝します』
わぁ高圧的。いやコーラルをキメてパチパチしてるドーザー共にわざわざ丁寧な対応するだけ無駄ってのは俺としても封鎖機構と同感なんだが。
「それで?オーネスト・ブルートゥとやらはまだ来ないのか?交渉を持ちかけておいて遅刻とは…」
『ボスはつい先程独立傭兵によって暗殺されたため、私、
ひとまず今回の交渉では前世の苗字をそのまま使うことにした。当然オルクスと名乗る訳にはいかないし、アクスを名乗ればルビコン解放戦線に飛び火しかねない。ここで明らかな偽名を使うよりは普通の名前を使う方がまだマシな印象になるだろう。
「………?そうか…だがオーネスト・ブルートゥが重度の虚言癖を備えた人格破綻者であるということはこちらでも把握している。その点貴様は多少マシなようだ」
封鎖機構さんめちゃくちゃ困惑してるな…ひとまず俺と会話をするつもりはあるようでよかったが。ボスを殺害した俺に交渉させるほどコヨーテスには余裕がないみたいだし、俺としても任された以上は真面目にやるつもりだ。正直いける気がしないんだが…
『私たちのボスは貴方達惑星封鎖機構の下で微力ながらもお手伝いが出来ればとお考えでした。勿論、全てが終わった暁には私たちもコーラルを悪用することのないようにこの惑星から退去しましょう』
そもそもコヨーテスは封鎖機構を恐れて軍門に下ったとカーラに言われているだけでその対価として何を条件にしたのか、なぜ封鎖機構はそれに応じたのかは全くもって意味不明な状態だ。俺から出せるのは封鎖機構の活動に助力して全てが片付いたら退去するという無難な案しか無いんだけど…
「フン…貴様らの支援などなくとも有象無象の企業や原住民共をこの惑星から追い出すには充分だ」
でしょうね!LCHCのような高性能機体は通常の兵器とは次元が違うわけで、それをちょっとしたエリートエネミーとして対処できる621達がおかしいだけなんだよ…
「…だが我々としても強制執行は本意ではない。貴様らに抵抗の意思が無い以上システムも…なっ…!?」
『…?システムがどうかされましたか?』
この交渉担当さんは態度が高圧的なだけで結構穏便派なようだが、どうにもシステム側が何か不穏な気配を漂わせている。
「…システムは貴様らが軍門に下ることを許可した」
『感謝しま…』
「だが、システムは一つ条件を提示した」
『条件…ですか…?』
「…オリトヒサシ、貴様には支援物資として執行機体AA22EXPANCION:HEAVY CAVALRYを貸与し封鎖機構の指揮下に入って貰う、とのことだ………」
『…なんて?????』
「…私としても貴様にHCを貸与するなど理解できないが、これがシステムの判断だ」
封鎖機構のエリートも苦労しているようだな。それにしてもえきすばんしょん…拡張型ってことか?なんでそんなものを…
「…貴様には明日、我々と共に拠点へ来て貰う。荷物を纏めておけ」
なんというか…下手すりゃブランチバレするよりも面倒なことになってないか…?621達の元へ合流できるのはいつになるやら…
『えーっと…これに乗れと?本当に?』
「…私にも真意は分からないが、システムからの指令だ」
翌日。封鎖機構の拠点へと連れて来られた俺は申し訳程度に取り調べを受けた後HCの前に立たされた。騙して悪いがでもなんでもなく本当にシステムは俺をHCに載せるつもりらしい。
HCの見た目は多少重装化された程度で元々とそれほど差はないように思える。拡張型というからにはどこかしら変わっているはずなんだが…まぁ拡張って言葉は幅が広すぎるし乗ってみないことには分からないか。どうせ乗る以外の選択肢は無いからな。ここはポジティブにゲームをプレイしていた頃から考えていたHCを操作する夢が叶った!ということにしておこう。
[…搭乗者:オリトヒサシを確認。AA22EX:HC制御AIの稼働を再開します]
モニター類が起動すると同時に、少女の合成音声がコックピット内に響く。
[システム異常無し。これよりテスト稼働を開始します………]
音声に言われるがままに歩行、飛行、戦闘機動、攻撃やらなんやらの提示された課題を熟していく。なるほど、これはACが寄せ集めなんて言われる訳だ。ACと違いバラして組み合わせることを想定していないからか、単純な機体スペック以前に操縦の反応が恐ろしく良い。思った通りに機体が動くどころか、ちょっとバランスやエイムの甘い部分があればAIが補正をかけてくれるらしい。他のHCを知らないからアレだが、自分の認識をAIで拡張するとかそういう意味での拡張型HCなんだろうか?唯一気になることがあるとすれば…
[…ありえません]
『………?何が?』
さっきから課題を熟す度に困惑したような声を出している恐らく制御AIの存在だ。なんか機体搭載のシステムにしては感情豊かじゃない?
[…テスト稼働データをシステムに送信し判断を待機します。パイロットは当機から降り、端末より資料を確認して下さい]
『了解?』
AIの指示通りにHCから降り、渡された端末に表示された資料を読み進めていくと…なるほど。この機体はLCの強襲性能とHCの防衛性能の良いとこ取りをするため拡張性を伸ばし、多機能化による操縦の忙しさをAIによるサポートで補っていくというのがコンセプトの試験機らしい。これだけ機体への負荷が上がっているのにHCとのカタログスペックが1つも一切劣ってないとかどんなジェネレーター積んでるんだよ…技術の次元が違い過ぎる。
それで、そんな機体になんで俺が乗ることになったのやら…稼働データのログを漁れば何かわかるか?どれどれ…って!?
『起動時にテストパイロットが死亡ってちっちゃく書いてある!?支援物資じゃなくて厄介払いじゃねーか封鎖機構!?』
絶妙に姑息!そんな書き方するくらいなら最初から[権限不足]とかで俺に見せないようにしとけよ…あれか?乗せればどうせ死ぬからこれを見るのは乗って生きてた奴だけだしってことなのか…?
死亡の原因はAI側の演算データの逆流で脳がぽん!したと…よく見たらその下にもちっちゃく植物状態だの意識不明だの色々ちっちゃくログが残ってるわ…もうあの機体は電気椅子通り越して棺桶なのでは?
なんで俺が生きてるのかは…まぁ、井戸ポチャして身体に行き渡ったコーラルの情報伝達がなんか…こうして…こう…なんやかんやで働いてくれたんだろう。
[システムの判断を通達します]
『うぉ!?』
突然端末の画面に美少女モデルが表示され、驚きのあまり端末を取り落としかける。突然スマホに電話が掛かってくるやつって心臓に悪いよね。というかなんで封鎖機構はAIのために美少女のモデリングしてるんだよ…取り調べの時にカツ丼出したりとかなんか変だよこの組織。
[…この端末は封鎖機構内における貴方の身分証兼通信機兼HCのキーといった機能を備えています。丁寧に扱い、くれぐれも紛失しないように]
便利だからって重要なものをひとまとめにするのやめない?マイナンバーカードと保険証と運転免許とクレジットカードとキャッシュカードと学生証の入った財布失くした大学の友人Bみたいになりかねんぞ。
[改めて、システムの判断を通達します。オリトヒサシ、貴方にはAA22EX:HCの臨時パイロットとして執行准尉の立場が与えられます]
『…!?』
封鎖システムさんはご乱心かな?俺を排除するためにあのHCに乗せたとかではなく、あの動くことすら叶わなかった棺桶を運用するため本気で俺を利用するつもりらしい。
[そして私は…貴方の監視及び任務の補佐を行う執行支援AIです。よろしくお願いします、オリト少尉]
俺のような余所者がHCを運用するのが気に食わないと言いたげなむすっとした表情の少女モデルを見るに、本当にシステムの独断でここまで話が進んでいるらしい。
だが、これはチャンスかもしれない。本来なら対話の余地もなく敵対するしかない立場の封鎖機構に入り込めた以上、コーラルの潜在的な危険性を伝えられれば解決の為に手を取り合える余地はある。もちろん下手な伝え方をすればオーバーシアーと同じく焼却!廃星!永久的封鎖!になりかねないけど。
『よろしく頼む…えっと…君のことはなんて呼べば良い?』
そうと決まればまずはこのAIと交友を深めて信頼を得るとしよう。
[私に識別名は不要です]
既にダメそう。しゃーないここは強引に…
『…じゃあ、とりあえずイアで』
[………は?]
非実体系女子というエア似の性質なAIなのでイア!シンプル!分かりやすい!
[話を…聞いていましたか…?]
『いや…名前ないと呼びづらいし、道具扱いもなんとなく嫌だし』
[理解…出来ません…]
お、琴線に触れたか?
[私に…識別名は必要ありません]
声低い!ダメそう!
独立傭兵オルクスの3周クッキングChapter3
ルビコンわくわく傭兵?ライフ:惑星封鎖機構√編
◯臨時執行准尉オルクス
いよいよ人生経験が大変なことになってきた
クソボケ
◯イア
超高性能有能戦闘補助AI
チョロイン
◯オルクス
なんで封鎖機構にいるはずのオルクスが621とエノメナに合流してるんですかね…?