深夜テンションで書き上げてしまいました。
[企業内部に潜伏する我々の賛同者を通して依頼を回しエノメナにオルクスをけしかけ共倒れさせる…完璧な作戦でしょう?オルクス]
『…報酬を全額前払いにする必要はあったか?そこまでしなくても今のあの子なら食いつくだろう』
[前払いの報酬は金銭だけではありませんから]
『………そうか。まぁ、それなら良いんだが』
[エノメナはオルクスを殺し、その事実にエノメナは耐えられないでしょう…]
…随分と悪趣味な計画を立てたものだ。この計画において、
この状況を作った俺が言うのもなんだが、そうはならないだろう。彼らはこの程度で止まらない。
作戦領域に私の機体が降り立った。
機体のメンテナンスは万全、奴への対策に新調した武装の慣らしもレイヴンさんに手伝ってもらった。第10世代強化人間だった
ヒアルマー採掘場。あのHCと初めて交戦したこの場所で決着を迎えることになるなんて奇遇なものだと思う。けれど、何処であろうとやるべきことは変わらない。
「…大丈夫、私ならやれる」
レイヴンさんのお陰で、死に損なってしまった場合について悩む必要も無い。
後は、刺し違えてでも奴を殺すだけ。
『HC-S、かぁ…随分と強化が入るの早くない?』
[強化というより、本来この機体の完成形がSERAPHとなるはずだったのです。しかしHC本体が私という欠陥品のせいで凍結されてしまい…]
『あー…なんかごめん』
現在俺は拡張型HC改修のため、ヒアルマー採掘場に滞在している。まぁ、換装と試験の前に元々の設計図からの近代化改修に伴う最終動作確認が必要ということで今はコックピットでイアと駄弁りつつ資料を読んで待つしかない状況なんだが。
AA22EX: HEAVY CAVALRY-SERAPHというのが改修型の名称らしいが、まさか自分がACにおける管理体制の代表格の名前を冠する機体を操縦することになるとは。まぁ俺はそもそもAC6新規プレイヤーでこれといって因縁もないからいまいち重くは感じられないけど。なんにせよ名前だけで戦えるなら苦労はない、だ。これまで通り真面目にやっていこう。
[…日の目を浴びる事なく埋もれてしまいそうだった私とこの機体が、こうして役割を果たす時が来た…貴方にはどれほど感謝しても足りませんね]
『力になれているみたいで良かったよ』
[だと言うのに、私には何も差し出せるものがありません…せめて肉体があれば奉仕を…]
『いやいや、俺だってイアには助けられたから。これからもサポートをしてくれるだけで十分過ぎるくらいだ』
初対面の印象は最悪だったし思想の強さとか正直引く部分もあるけれど、随分と打ち解けたものだ。きっと今なら…
『ッ………!』
ブースターを最大出力で噴射し、機体を懸架していたハンガーを引きちぎるようにしてその場を離れる。ほとんど無意識での行動だった。
[オリト准尉!?]
イアが俺に質問するよりも早く、先程まで俺がいた地点にレーザーブレードが突き立てられた。あと少し感づくのが遅れれば、強引な離脱を躊躇っていれば串刺しにされていただろうと背筋が凍る。
[敵襲…!巡回のLCは何を…!?]
…俺はそれほど嗅覚が鋭い訳ではないけれど、それでも分かる。
それを放っている君は、本当に…
『エノメナ…なのか…?』
…武装は前のめりなものに様変わりしているけれど、機体のフレーム構成はエノメナのネクタルそのものだ。だけど、一般的な頭部のような“眼”を持たないMIND ALPHAから射殺すような視線を感じる。
…今は封鎖機構所属だが、傭兵稼業をしている以上俺も恨みを買ったり復讐者とぶつかったことはある。けれど彼女から向けられるモノは、これまでと明らかに格が違う。
俺が彼女と過ごした時間はそう長くないけれど、彼女はそんな雰囲気を纏うような子には到底思えなかった。なのに、彼女を庇った俺を殺した俺の駆るこのHCへこれほどの殺意を向けている。
『………イア、やっぱり誤解は解くべきだ。回線を開いて…』
[それは…私にも分かります。それでもまだ、許可できません]
『ッ…そうか』
AIですら察することが出来る程の圧力。しかし、緊急の判断権を持つ彼女だってシステムに従う身だ。前に話していたように、ここで俺達が話しては計画の支障となるのだろう。
『分かった…彼女を、無力化させてもらう』
[私が…サポートします…!]
彼女の武装構成はシュナイダーのレーザーショットガン、レーザーブレード、2連6分裂ミサイル、レーザーオービット。重リニアとプラズマライフルのダブルトリガーで中距離射撃戦を得意としていたこれまでとは様変わりしている。元々軽逆関節を扱えていたとはいえ、純人間の彼女がここまで戦闘スタイルを変えて大丈夫なのか?
…考え無しとは思えないが、ここは様子見として無難にガン盾引き撃ちを選択させてもらおう。後方へ跳躍し、盾を構えつつ後方へブースト。中距離用のバースト射撃でレーザーライフルの狙いを定めて…
「───!」
『…は?』
狙撃サイトの中心に、既に彼女がいる。薙ぎ払われたレーザーブレードが、パルスシールドを弾いて俺のガードを崩した。ブーストを切って自由落下し、なんとかレーザーショットガンのチャージ刺突を回避する。
[速い…!]
…ルビコニアン縮地か!確かに見せたことはあるような気がするけれど…身体への負荷が大きいあの高速移動をいきなり振ってくるとは思わなかった。
分裂ミサイルとオービットで牽制、ブレードホーミングで喰らい付き刺突レーザーでぶち抜く一撃離脱戦術。これこそが遠近を問わない攻撃手段と高い回避性能に加えて直撃が狙えないこの機体に対する彼女の答えなのだろう。
…これは、俺の慢心だな。機体性能に胡座をかいて、何度も完封したからと油断していた。彼女を傷つけないように、と上から見ていたんだ。
もう後手には回らない。今度はこちらから行かせて貰う。最大推力で接近し、ライフルの先端から形成されたブレードで薙ぎ払う。彼女は跳躍して回避したようだ。これなら逆関節の跳躍性能は活かせないし、ルビコニアン縮地にも派生出来ない。
即座にクイックブーストで彼女を追って空中へ飛び上がり、ブレードによる刺突攻撃で接近。ENを回復する暇を与えないようブレードで連撃を浴びせていく。苦し紛れに放たれるレーザーショットガンなんかはイアがシールドで受け流してくれるお陰で、俺は攻撃に集中するだけで十分だ。
「───ッ!」
スタッガーに追い込んだ。シールドバッシュで崖に叩き付け、チャージしたレーザーライフルの狙いを…
『……しまった』
彼女の機体は崖と垂直になるほど傾けられ、既にその脚部が壁を踏み締めた。彼女を壁に近づけるべきではなかった。彼女の十八番、壁蹴りが………もう、来ている。
レーザーブレードによる回転攻撃は辛うじて受け止めたが、続く刺突レーザーで限界を迎えパルスシールドが貫かれた。
[シールドを破棄します!]
イアの咄嗟の判断で投擲されたシールドがチャージ攻撃後で硬直中だったエノメナに着弾し、爆散している。危ないところだった…
…ACがあそこまで傾くのは、普通ならばブレードが追従する時くらいだ。彼女はACSが負荷限界に陥った瞬間にそれを切り、手動でこちらに突撃してきたのだろう。イアがACSを代行して防御に徹するのとは真逆の、狂気的な操縦だ。
彼女が連続で2つリペアキットを使用する。シールドを失った以外はオービットとミサイルが掠った程度のHCと、ブレードによる傷だらけのAC。それなのに、損傷と優勢具合が全く釣り合っていない。俺は初見ですらない攻撃に出し抜かれ続けている。
『次は…どう来るんだ……!』
彼女の攻撃はルビコニアン縮地一辺倒。だというのに、動き出しが読めない上に見えてからでは遅過ぎる。イアがいなければ、ミサイルとオービットに気を取られた瞬間刈り取られているだろう。
[SERAPHへの換装が完了していれば…]
…無いものねだりをしても仕方ないのは分かっている。けれど…俺の実力が、彼女のそれに届いていない。それを理解してしまった今、スペックしか縋れるものがない…
『…来るぞ』
イアに向かって警戒を口にした時には、もう彼女は動き出している。もう盾は無いから、真っ向からブレードで打ち合うしかない。
[届き…ました!]
イアによって修正された軌道により、銃身がエノメナの腕を受け止める。俺の目の前で動きを止めた彼女へ、両肩のパルスキャノンを斉射して一度仕切り直しを…
…ここでアサルトアーマーか!いや、HCにアサルトアーマーは無いのだから先出しでも何も問題ない…こちらに対抗札は無いし、この零距離では撤退も無理だ。
『イア、頼む!』
[復旧、間に合わせます!]
イアがACSを代行するため、戦闘補助を一時中断する。つまり、既にエノメナが構えているレーザーブレードは俺一人で対処するしかない。きっと、彼女はそこまで勘付いていた。
少なくとも、刀身の射程ならばこちらが上だ、先に届かせる!
『やるしか、ない!』
結果から言えば…俺のブレードは、確かに届いた。先んじて命中した袈裟斬りがブレードを装備した左腕を斬り落とし、彼女の機体のAPも削り切った。それなのに…
『さっき、アサルトアーマー使ってたじゃん…』
ターミナルアーマーを展開した彼女のブーストキックで俺は地面に叩き付けられる。
『…眩しいな、まるで…』
朦朧とする意識の中で、俺は彼女に手を伸ばす。
エアとの決着みたいだ、なんてのは自惚れ過ぎか。
『星、みたいだ』
そして、蒼い光が機体を貫いた。
仇を、討てた。
ずっと真っ赤だった視界が澄み渡るようで、気分が良い。
私はまだ生きている。
レイヴンさんを悲しませずに済みそうだ。
「…ちょっと、ずれちゃったな」
最後の刺突レーザーが当たったのは肩の辺り。
爆発してないし、もしかしたら死んでないかも。
さっきの一撃の為に両肩はパージしたし、レーザーショットガンは壊れてるし、ブレードは切り落とされたから、武器がない。
どうせなら、お兄さんが自衛用に持っていた拳銃でとどめを刺そう。
刺突レーザーで抉れた部分に右腕を突っ込んで、コックピットをこじ開けて…
「───ぇ?」
「おにい…さん…?」
そこには、こいつに殺されたはずの、お兄さんがいた。
「うそ」
お兄さんが、頭から血を流して、ぐったりとしている。
でも、胸元は動いてる。
「にせもの?」
そうだ…お兄さんは、オールマインドと封鎖機構が繋がっていると言っていた。だからこれは、お兄さんのデッドコピー、悪趣味な偽物だ。それなら…でも…
[や、やめてください…!]
…女の声。
[彼を…殺さないでください…!]
画面の中から、私に話しかけてる。オペレーター?
[私には、もう彼しかいないのです…]
私と、同じ………
[私に出来ることなら、なんでもしますから…]
自分のACに戻って応急処置キットを取り出し、お兄さんの頭の止血をする。
[あ…ありがとうございます!]
こいつは…私と同じ。彼が好きで…
「…何を勘違いしてたのか知らないけど、私がお兄さんを殺す訳ないよ」
彼の危機を、見てるだけ。
「私はただ、私のものを返して貰うだけ」
お兄さんを抱えて、ACに戻る。
[え…ま、待って…ください…とらないで…]
…帰ろう。
『俺はもう、とっくに終わった人間だから』
(Chapter4より)
という訳で次回から、
独立傭兵オルクスの3周クッキングChapter4
開幕となります。
オルクスもエノメナも無事に済んで良かったなー(目逸らし)