転生独立傭兵のわくわく3周クッキング   作:おーるどあっくす

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髪のアンケートは髪色や目の色と比べると結構分かれましたね
1番多かったのはサラサラ長髪ですが、やはりウォルターが梳いてあげているのでしょうか…?
パパぁ…


Chapter -9
幕間/傭兵達の休日


「…これは、ある友人から提供された観測映像だ」

 

 ウォッチポイントから帰投し、ハンドラーに声が見えるという不調の調整を頼んで休息を取った翌日。襲撃の成果をハンドラーがわたしに報告していく。

 

「見ろ、621。逆流から引き起こされたコーラルの局所爆発、その拡散には一定の指向性がある。向かう先は…アーレア海を越え対岸に位置する「中央氷原」。コーラルには鳥や魚の群知能にも似た集まろうとする特性がある…分かるか?中央氷原のどこかに大量のコーラルが眠っているということだ」

 

 やはりウォッチポイントの襲撃はこれらの観測データを得る為だったらしい。ハンドラーの友人もコーラルを求めているのだろう。

 

 

 

「…頭の中で妙な声が聞こえる、ということだったな。その手の症状は旧世代型強化人間にはよくあることだ」

 

 …その幻聴が敵機のデータを調べたり機体の通信を遮断することも、旧世代型強化人間にはよくあることなのだろうか…いや、流石にそんな訳はないだろう。とはいえこれをありのまま伝えた所で…

 

「先の逆流に巻き込まれた影響もあるだろう…気にするな」

 

《…レイヴン》

 

 

 ハンドラーの言葉が終わるや否や、考え込むわたしにエアが語りかける。ハンドラーの調整も、彼女には意味がなかったようだ。

 

 

《今回のコーラル局所爆発により、ベリウス地方 北西ベイエリアが消失しています》

 

 エアが表示した地図を見ると、半島が円形に抉り取られているようだ。

 

《…ですが、それすらも…かつての「アイビスの火」とは比較にならないほど小規模なものです》

 

 

 

《レイヴン》

 

 エアが再びわたしの名前を呼ぶ。

 

《あなたにお願いがあります。集積コーラルに到達するまで、あなたとの交信を続けさせてほしいのです》

 

 ルビコニアンのエア…恐らく彼女は、自分の望みをわたしへ語る。どちらにせよ、わたしにそれを拒む手段は無い。

 

《コーラルを巡るこの戦いがどこに向かうのか、私は見届けなければならない。ひとりのルビコニアンとして》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[強化人間 C4-621 通常モード移行]

 

[新着メッセージ 2件]

 

 

 届いたメッセージはふたつ。ひとつは傭兵支援システムによるアリーナの追加。もうひとつは…

 

「621、俺はこれからしばらく野暮用で外す。中央氷原に向かう件については、企業に情報を売ってパトロンが付いてからだ。戻るまでの指示を出す」

 

 ハンドラーからだ。いつものように仕事を持ってきたのだろう。

 

「しばらく休め。今はそれがお前の仕事だ」

 

 休み…強化人間に?…そういえば、ウォッチポイント襲撃の報酬には、ハンドラーからの特別手当として100,000COAMが加算されていた。道具である強化人間にそこまでする必要はないはずだ。ハンドラーは…わたしを人間として扱おうとしている…?

 

 

「それと…俺が不在の間、お前の世話はオルクスに依頼してある。何かあれば頼れ」

 

 オルクスが?

 

「ルビコンのきな臭い連中と比べれば彼はある程度は信用出来る。仮にもしものことがあったとしても…身体機能があるとはいえお前は強化人間だ。膂力の差で奴に勝ち目はない」

 

 …それで良いのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 拠点の扉が開き、オルクスをわたしの元へ迎え入れる。

 

『やぁ後輩、君のハンドラーからの依頼でしばらくお邪魔する…よ…』

 

 入ってきた男性…オルクスがわたしの顔を見た途端に硬直。なにかあっただろうか?

 

 

『オンナノコ…?』

 

 

 オルクスはおもむろに端末を取り出すと、誰かに通話をかけ始める。

 

 

『…ハンドラー・ウォルター、話が違うんだが?成人男性に女の子の世話をさせるとか正気か?その…なんか…こう…トラブルの元じゃ………』

 

 どうやら通話相手はハンドラーらしい。何か手違いがあったようだ。

 

『え…?レイヴンの方が強いから抵抗されれば勝ち目は無い…あ゛?誰がチビだって?そもそもそんなことしないが?え、信用してるぞ?そういう問題じゃないでしょまってまって切らないで…あぁぁ…!?………ウォルターが良いなら良いか…とりあえず…』

 

 

 

 通話を終えたオルクスが、わたしの方へ向き直る。

 

 

『ACから降りて直接会うのは初めてだな。改めて俺は独立傭兵のオルクスだ。よろしく頼むよ、レイヴン』

 

「よろしく、おるくす…せんぱい?」

 

 自己紹介をしてきたオルクスに対して、わたしも発声装置越しに返事を返す。

 

 

『さて、君の世話を頼まれたのは良いんだが…後輩は何か予定とかはあるのか?』

 

 予定なんて当然無い。そもそもハンドラーの居ない状況におかれるのも休息を命じられるのもこれが初めてなのだ。何か出来ることがあるとすれば…ショップを確認して機体の更新と、アリーナへの参加だろうか?

 

 

《…レイヴン》

 

 …またしてもエアが考え込むわたしの名前を呼ぶ。

 

《あなたのハンドラーは、しばらく不在なのですね》

 

 しばし黙った後に、エアがわたしの視界にデータを表示する。

 

《…レッドガン部隊から貴方にイベントへの招待が届いているようです。大豊の新型パーツも発表されるようなので、オルクスと行ってみてはいかがでしょう》

 

 …なるほど、この休暇を埋めるには丁度良さそうだ。提案してみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …オルクスはイベントへの参加を快諾し、わたしはミッション以外で初めてウォルター不在でガレージの外へ出ることになったのだが…

 

 

 

「なにしてるの?」

 

『せっかく綺麗な髪してるから整えておこうかなって』

 

 オルクスが突然わたしの髪を弄り始めた。

 

「…それ、ひつよう?」

 

『必要ではないけど、そっちの方がきっと良いよ。もちろん、君が嫌ならやめるけど…』

 

 …もともと、保存されていたわたしに頭髪は無かった。脳深部コーラルデバイスを埋め込む為に髪は邪魔だからだ。しかし、わたしを購入したハンドラーはわたしの姿を見た後、決して安くはない金額を払って頭髪の再生治療をさせた。

 

「…つづけていいよ」

 

 まだよく分からないが、ハンドラーとオルクスの行動を考えるときっと髪は大切なのだろう。彼に任せることにした。

 

 

『出来たよ、後輩。どう…かな?』

 

 オルクスはわたしの髪をまっすぐに整えるだけでなく、結うところまでやっていたらしい。鏡を見せてどうかと問われるが、よく分からないというのが本音だ。

 

《似合っていますよ、レイヴン。綺麗です》

 

 …エアには好評らしい。とりあえずエアの言葉を借りて返事を返すことにする。

 

「きれい…です?」

 

『昔妹にやって以来だったから正直不安だったんだが…それなら良かった』

 

 どうやらオルクスには妹が居るらしい。ハンドラーに写真を送る、とよく分からないまま撮影された後イベント会場へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会場へ到着したわたしたちはベイラムと大豊の製品についてオルクスの解説を受けながら展示を見ていたのだが、ベイラム系列のパーツを試す為のシミュレータを発見したオルクスに模擬戦をしないかと提案された。

 

 ここにハンドラーがいれば「上位ランカーの技術を知るいい機会だ」と言うことだろう。説明を聞く中で気になる武装もあったため、彼の提案を受けることにした。

 

 

 わたしの機体はMELANDER C3に、長射程ショットガン2つと4連装ミサイル、パイルバンカーという現在の機体のアップグレード版と言うべきアセンブリ。対するオルクスの機体はMELANDERに火力型アサルトライフル、パイルバンカー、拡散バズーカ、3連装双対ミサイルだ。

 

 流石ランクAと言うべきか、オルクスは強かった。ショットガンの射程外からライフルとミサイルで負荷を蓄積し、接近しても拡散バズーカで間合いを取ることを強制される。強引にブーストキックで攻めに出た所をパイルバンカーに貫かれ、あっさりとわたしは敗北した。

 

 数度繰り返すうちに一方的にやられることはなくなったがアサルトアーマーを後出しで掻き消されるなど、終始あちらに流れを握られていたのは間違いない。

 

 

 ACというのは自分に最適化された一機を組み上げることが出来るのが他の兵器に無い強みだと聞いたことがある。わたしはショットガンで敵機にぴったりと張り付き続けるという乗り慣れた戦闘スタイルの延長線として今回の機体を組んだにも関わらず、ミッション毎に機体を使い分け、それらとも全く異なる機体でわたし圧倒する彼は明らかに異質だ。

 

 わたしには、彼のことが分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一通り会場を回り終えたわたしたちは、拠点まで帰ってきた。シャワーを浴び、点滴で栄養を摂って後は寝るだけなのだが…今日はシミュレータをしただけで仕事をしていないせいかなかなか寝付けない。本来ならば強化人間である以上脳深部コーラルデバイスで休眠モードに入れば済む話なのだが、ハンドラーには強制的に意識を落とす機能は使わないように言われている。

 

『…寝れないのか?』

 

 …どうしたものかと思案していると、近くの椅子に腰掛けていたオルクスから声をかけられた。

 

『眠れない時はホットミルク…は飲めないし、マッサージ…は触覚がないと意味ないし、腹式呼吸とか羊数えるとかあとは子守唄…?』

 

「…こもりうた?」

 

 …聞き慣れない言葉だ。

 

《子守唄とは言葉の通り、親や家族、あるいは子守と呼ばれる人々が子どもを寝かしつける際に歌われていたもので、昨今は衰退しつつある珍しい文化のようです。興味深いですね…レイヴン、聴いてみませんか?》

 

 わたしは正直どうでも良いのだが、エアは興味があるらしい。どうせすることも無いので頼んでみることにした。

 

「…こもりうた、きかせて」

 

『え?あ、分かった。それじゃあ、僭越ながら…』

 

 

 

 咳払いをしてから、わたしの知らない言葉でオルクスは歌い始める。

 

『〜♪』

 

 わたしに歌の善し悪しは分からないが、きれいな声だとは思う。

 

《どうやら地球の東洋…日本と呼ばれた国の言語のようですね。BAWSの製品と同じルーツを持っているようです》

 

 エアが何か言っているが、頭に入ってこない。興味がなかったはずの、優しくて温かい歌声につい集中してしまう。

 

 …温かい?その感覚を感じる神経は既に死んでいるはずだ。いったいどこでそれを…?

 

『〜♪』

 

 頭に浮かんだ疑問について考える暇もなく、あれほど冴えていた目が閉じていく。

 

『〜♪』

 

 どこか心地よい微睡みに包まれ、わたしは眠りについていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寝息を立て始めた少女を見つめる俺は、なんとなく歌うことを止められずにいる。

 

 

 

 …俺は旧世代型強化人間というものの悲惨さを舐めていた。

 

 

 

 今回ウォルターにレイヴンの面倒を見てくれと頼まれた時だって、普通に男が出てくるのが前提で、俺とて転生前はラップ巻き主人公だの生春巻きだのポリコレ配慮万全だの621について好き勝手言っていたのだからどんな見た目をしているのかと物見遊山気分だったんだ。

 

 

 そんな俺の目の前にいたのは立ち上がったり、何かを持てば折れてしまいそうなほど痩せ細った手足を持った車椅子の少女だった。

 

 顔や髪が綺麗な状態だったのは恐らくウォルターの配慮だろう。発声兼呼吸の補助装置が取り付けられた首よりも下は、簡単に裂けてしまうほど脆弱な肌を保護する為の包帯とフィルムに巻かれていて、栄養補給は全て点滴で済ませているそうだ。

 

 「機能以外は死んでいる」その意味を思い知らされた。

 

 

 彼女がこれから歩む物語に、俺の存在は必要ない。今僚機として協力しているのだって、彼女の動向を定期的に確認するためだ。彼女がアイスワームを仕留めて惑星封鎖機構を撤退させた後、俺はルビコンを出るつもりだ。

 

 …本当に、このままで良いのだろうか。俺に何か出来ることは無いのだろうか。…いや、この考えは余計だ。部外者が勝手に動き過ぎるべきじゃない。

 

 

 

 今の俺に出来ることがあるとすれば、彼女が穏やかに明日を迎えられるように歌うことだけだ。

 

 

 …おやすみ、621。

 

 

 

 

 




幕間.独立傭兵オルクスのわくわくな日々
明日を歌う

◯オルクス
どんなACでも戦えるしパーツについて教えてくれるし髪も結ってくれるし子守唄も歌ってくれるし女装もいける(不本意)独立傭兵
ウォルターと結婚して621のママになろうぜ!(錯乱)

◯621
無感情で疑問を持っても投げ出しがちだった初期と比べ、人の考えを理解しようという変化が見られる

621の肉体年齢は…

  • それ以下
  • 10代前半
  • 10代後半
  • 20代前半
  • 20代後半
  • 30代前半
  • 30代後半
  • 40代
  • 50代
  • 60代
  • それ以上
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