紅茶を片手にIS学園でマッ道徳を教える 作:ラウラペロペロ部部長
両腕でレーゲンの装甲を剥がし、4つのサブアームで露出した各種武装や関節をバラしていく。それらと並行して起動した
やはり生体融合型のISという選択は間違いでは無かったな。今までに比べて344%ほど仕事の効率が上がっている。
「これなら……放課後までにはこの作業を終わらせて、のんびりとゲームでもしながらラウラを待つくらいの余裕はありそうです」
16にまで分割された並列思考の1つでそんなことを呟きながら、しっかりとレーゲンの整備を進めていく。
「左腕部にはパッと見の問題はナシで背部スラスターも想定通りの損耗」
「右腕部及び右脚部は損耗が激しい、徒手格闘を行った結果か?」
「左脚部とワイヤーブレードは想定より損耗が少ないな。ラウラめ、機体との付き合い方が上手くなったな」
「AIC発生装置は正常に動作してるな」
「各種装甲及び関節部のチェック終了。どれもISの自己修復機能で十分修復できる範囲だ」
「ISコアの方も特段問題は見られない。健全な成長と学習をしている」
16の思考があっても俺の口は1つ。その為確認のために口を動かしているとどうしても矢継ぎ早に独り言が出てくる狂人みたいになる。
まぁ、今の時間こんな場所には俺以外居ない訳だから特段配慮を気にすることは無いだろう。
「OS関連の異常も無し、正常動作を確認」
「全パーツのチェック終了を確認、必要交換パーツ無し。これより再組立てだ」
16の並列思考の内暇になった4つの思考と元々余らせていた1つの思考を統合し、さて今の時間はどんなもんだろうとISコアを通じて今の時刻を確認する。見れば作業開始から50分程度、組み立て終わりまでの想定時間を考えれば大体1時間で終わることになるだろう。
殆どオーバーホールの整備でも1人で1時間で終わらせられるという事実に心が躍る。本当に、篠ノ之は良い物を発明してくれやがった。
「愛してるぜ、ドーキューセイ」
ああダメだ、これは俺の悪い癖。良い事があるとなんにでも想っても無い愛を吐いてしまう。こんなんだからラウラに言葉に重みが無いとか言われてしまうんだ。
ただでさえ普段から猫被ってんだから、言葉くらいは重くて想くなけりゃ愛想をつかされてしまう。
「……あ?」
そんなくだらないことを考えていた時だった。最終チェックとして再度ISコアとOS関連をチェックしていた1つの並列思考が僅かな違和感を覚えた。こういう違和感ってのは大抵何か大きなヤバい事に繋がるので暇にして居た並列思考の内から1つ分けて4つ分回す。
俺の思考4つ分が別角度でその違和感の正体を捜索及び考察したんだから、当然20秒もしない内に違和感の正体は判明した。
「バックドアか」
巧妙に艤装されていたがOSとISコア両方にバックドアが仕掛けられていた。この感じからしてウチの奴らじゃなくてドイツの方の誰かが仕掛けた物だろう。
とはいえ周辺を捜索してもバックドアのみしか見つからないために少々対処に悩む。バックドアを消してしまうのは簡単だがそれではこれを仕掛けたバカを特定できない。それは色々と気に食わない訳だ。
「となれば、ラウラには悪いが放置……かね」
ちょっとした仕掛けをパッと作って仕掛けつつ、バックドアをそのままにコア間の接続を切る。すでにレーゲンの組み立ては完了しているからこれにて仕事は終わりと言う訳だな。
「そんじゃあゲームするとしますかね!」
拡張領域に工具類をぶん投げサブアームを収納し、並列思考を全て統合し完全オフモードに脳を切り替える。てなわけで拡張領域からシャチョーから貰ったノートPCを取り出して起動する。
OSからシャチョーの手作りらしいコイツは、いつも通り起動時に我らが”ラディクルラビット社”のロゴが画面に表示される。シャチョーのこういうこだわりポイント好きよ。
相も変わらずの処理速度で爆速で起動し、すぐさまゲームプラットフォームまで自動で立ち上げが終わる。そしたら半年経っても味がする神ゲーであるAC6を起動してランクマへと身を投じるのだ。
レートポイントを増やしたり減らしたりを繰り返して大体200位くらいの所を彷徨う。上手い自覚はそこそこあるがやはり使う機体の関係上、たまにトンデモないトンチキ機体に殺されるためにこの辺が俺の適性レートとなっている。
「うーむ……やっぱり機体を変えるべきなのでしょうかね」
いや、やっぱり俺はこの機体が好きだからこの機体を使い続ける! 好きな機体で遊んでこそのゲームだからな。
「You Only Live onceってな」
我が社の社是であり俺の座右の銘でもある素晴らしき言葉を呟きながら、さて再びゲームを再開しようか……そう思った時だった。
「あっ……」
「――ん?」
俺が居座る格納庫内に俺以外の声が小さく響いた。その声の方向に目を向ければ青髪の少女と目が合った。時計を確認すれば――6限目が始まって少しくらい。一応、俺もこのIS学園の教師ではあるためにおそらくサボりであろう彼女のことは注意せねばならないのだろうか?
まぁ、面倒だしそこら辺は適当で良いか。
「入学して早々サボりとは、良い趣味してるな?」
「サ、サボりじゃない! です……」
「ならどうしてこの時間に、この格納庫に来てるんだ? 確か今の時間だと3年の2組が第1の方でやってる以外は格納庫を使う予定は無かったはずだが」
「それは……」
俺の言葉に青髪の少女は一瞬目を逸らしたかと思えば俯く。これ多分地雷踏んだな俺。
しゃあない、ちょっとだけズルして今からでも入れる保険を探るとしよう
ISコアと接続して少々目の前の少女について探りを入れる。なるほど、ちょうど良く彼女もISを所持しているようだしそこ経由で行けそうだ。
さぁてどんなもんか……ほぉ!!
「え、えっとその……ここにはサボりに来たわけじゃ――」
「作ろうというのですか、ISを――!!」
「ひゥッ!?」
思わず青髪の少女――更識簪の手を取っていた。倉持技研で作られていたがに半ば凍結されたと記述のある第三世代IS打鉄弐型、未完成ではあるがソレがいま彼女の手にあるのだ!!
断言するが未知のISの存在に滾らないIS技術者は存在しない!!
「そうだろう!? 何せ君のクラスは今の時間ISを用いた訓練中のはず! しかし君がその子を持ってここに来ているということからこの時間すら制作に回そうと思っているのだろう!?」
「は、はい……」
「素晴らしい!!!!」
良いねぇワクワクする!! やっぱり来てよかったなIS学園!!!!
「そ、その……離してください……!」
「っと、ああすまないね。アツくなると自制が効かなくなる……俺達の悪い癖です」
更識簪に言われて握っていた手を離し距離も離す。
さて、この未知のISの開発に俺も携われるように交渉するとするか。意地でも関わってやるぞ、俺が21世紀の死の商人と呼ばれている由縁を見せてやるぜ舐めんじゃねぇ。
ラディクルラビット社:5年前に突如設立、その後即IS業界へと殴り込みをかけた新鋭企業。本社をシンガポールに置き各国のISに携わっている。偶然か必然か、”ジョン・ウェイン・ウェスト”が学校を卒業してすぐに設立され無名だった彼を雇っている。