名誉温泉開発部   作:第三のケモナー

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感想と見ていただきありがとうございます!
今回、ホンの少しゲテモノ要素ありますので、ご注意ください。

それではどうぞ


肉は叩いて柔らかく

 

 

 

 

 

「単刀直入に言うよ、あなたは『何者』?」

 

 墨で『一日一惡』と書かれた額縁が飾られてる事務所で、ただいまカヨコから尋問を受けている。周りには便利屋のメンバーがいるが、ひと際怖い表情をしているカヨコに質問されてイナは恐怖と困惑で固まっていた。

 

(どういうこと? 戦闘の時になにかやらかしましたか!?)

 

 何者かと問われても、『ゲヘナ給食部一般生徒です。』としか答えられないし、そもそもここに居る理由も分からない。先ほどの戦闘で至らない点があったのだろうか、それともそれ以外の事なのかと考える。

 

「な、何者って言われましても……普通の生徒です」

 

「普通の生徒は風紀委員に追われない」

 

(ご、ごもっともで……)

 

 かといって、下ごしらえの事を言っても信じてもらえないだろうし、絶対引かれるから言いたくない。

 

「カヨコちゃん、それじゃイナちゃんが怖がって固まっちゃうよー?」

 

 イナの様子を見たムツキが雰囲気を軽くしようと発言する。カヨコがため息をついて、尋問者がムツキに変わった。

 

「同じゲヘナ学園でしょ? どこか部活入ってるの?」

 

 アイスブレイクとばかりに、ムツキに部の所属について問われる。

 

「えっと、『給食部』に所属してます……え゛なんですか、その可哀そうなものを見る目は」

 

 給食部と言った瞬間、何故かハルカ以外のみんなから可哀そうな目を向けられている。確かに忙しいで有名かもしれないが、可哀そうに見られるような事はしていない。

 ……そのように見られるような事はされるかもしれないけれど。

 

「あー……気にしないでちょうだい。とりあえず駅の場所教えておくから、もう帰りなさい」

 

 アルの言葉に疑問を持つが、やっと帰れるという現実が嬉しくて、早速駅の場所を教えてもらうイナ。

 

「ありがとうございます!」

 

 結局、何故イナに対して便利屋が質問したかは分からなかったが、フウカやジュリを待たせているため、便利屋にお礼を言って急いで事務所を後にする。

 

 

 * * *

 

 

「……いいの? 社長。あの生徒帰らせて」

 

 カヨコはアルの判断に対して反対はないが、はっきり言って便利屋にとって不安要素にもなりうる存在をこのままにしていいのか、と思っている。

 

それもそのはず

 

『アコに便利屋ではなくイナが爆破させたという可能性が高いと判断させた』

『いち早くハルカの爆破に気が付いた』

『状況の把握と判断が並外れている』

『おそらくイナが風紀委員の監視対象である』

 

挙げればたくさん出てくるが、なにより一番の懸念点は……

 

(ヒナにアコが言いかけた『ゲヘナのか…』というのがどうも気になる)

 

 どこかで聞いたことがあるが、思い出せない。2つ名に『ゲヘナの』という単語が付くということは、良くも悪くもゲヘナ学園での何かしらの筆頭だろう。風紀委員に狙われていたことを考えると後者の悪い意味なんだろうが……

 

「え? 帰らせたら不味かったかしら…?」

 

 アルはイナについては何も違和感を抱いていなかったため、カヨコの発言に戸惑いながら確認する。どうやら、イナと同じく何故尋問されたか分からない様子だった。

 

「くふふ~あの纏 イナって子、私たちよりも相当危険視されているかもねー♪」

 

 カヨコとムツキに詳細を聞くとみるみるうちにアルの目が白目になっていく。

 

な、な……なんですってぇ!?

 

 イナの目の前で『いい度胸ね。』と言ったり、事故とはいえ爆発に巻き込んだりと思い返すアル。しかも、柴大将とのやり取りでイナが常連だという事も分かっており、その店を爆破したとなると報復が怖い。

 

(でも、そんなに危ない様には見えなかったけど……)

 

 直接会ってみて監視対象になるような性格でもなく、危ない気配もない。あと給食部というと、一応同級生のフウカが居るが、フウカからもそんな危険な雰囲気は全く無いと感じた。

 

(こんなことで怖気づいたらアウトローじゃないわ!)

 

 アルは気持ちを切り替えて、風紀委員から逃げるために、事務所からの撤退の準備を進める。途中、ハルカが『私の手で、アル様に危害を加えようとする者は排除しましょう!』とイナのところへ行こうとする騒動があったが、全力で止めて未遂に終わっている。

 

 彼女らのアウトローはとどまることを知らない。

 

 

(そういえばSNSで美食研が発信してたけど、大丈夫かしら……)

 

 

 * * *

 

 

場所が変わってゲヘナ学園――

 

「私は帰ってきた!」

 

 爆発に巻き込まれ、ボロボロの制服のままゲヘナ学園へ帰還する。スマホも壊れてしまったため、今頃、給食部の2人も心配しているかもしれない。

 

 ただ、このままの服装では余計な心配をかけてしまうので、まずは、更衣室へ替えの制服とエプロンへ着替えに向かう。

 

(下着は……大丈夫かな?)

 

 幸い、制服のみの取り換えになりそうだ。下着のストックは学校に持ち込んでいないため、少し安心する。

 制服とエプロンに着替え、三角巾を付けてスカートの下から尻尾を揺らしながら第8学生食堂へと急いだ。

 

(あれ給食部の?)(うん、一番小さい方の)(急いでるってことはやっぱり……)

 

 途中、何故か心配されるような視線と声を感じたが、気にせず通り過ぎる。……いや待て、誰だ一番小さいとか言ったやつ。

 

 

 『すでに開いている』食堂のドアに違和感を感じながらも前に行き、勢いよく挨拶する。

 

 

「すみません! ただいま戻……り、ました?」

 

 そこには、よく見ていたものとはかけ離れた光景が広がっていた。

 

 すべての机と椅子は変な形に曲がっており、調理器具や調味料は散乱、所々に放射状に延びた跡が確認できる。部屋全体が煤がかかった様に黒くなっていた。開いていたと思っていた入口は、ただ単にドアが吹き飛んでいるだけだった。

 

 はじめ見た時は間違いかと思ったが、ドアがあった出口にはちゃんと『第8学生食堂』と書いてある。

 まるで『爆発』があったかのような……

 

「ジュリ!?」

 

 そしてポツンと部屋の端っこで上から宙吊りになっているジュリを発見する。ヘイローが消えているということは、気絶しているのだろうか。縄をほどいて、ゆっくりと地面へ降ろす。本当はベッドに連れていきたいが、イナとジュリの体格差だと、どうしても持ち上がらない。

 

 声をかけ続けるとヘイローが浮かび上がり、ジュリが目を覚ます。

 

「んっ……あれ? イナちゃんですか?」

 

「よかった! 大丈夫?」

 

ジュリはイナの顔を確認すると、ハッとしたようにまわりを見渡す。

 

「フウカ先輩はどこですか!?」

 

 そういえば、フウカ先輩の姿がみえない。イナもここへ来る途中はすれ違っていないため、行方は分からない。とりあえず、この状況は説明してもらわないと対処のしようがない。

 

「一体、何があったの?」

 

 

 

 

 イナがキヴォトスで風紀委員と戦闘をしていた時、給食部では……

 

 

『どうしちゃったんでしょうか、イナちゃん』

 

『電話も繋がらないし、なにか巻き込まれたんじゃ……』

 

 すでに食堂で調理の準備をしていた2人は、アビドスへ宅食に行ったきり音信不通のイナを心配していた。風紀委員会に相談し、ちょうどアビドスに風紀委員が居るとのことで、任せてはいる。

 まさかその風紀委員と銃撃戦を行っているとは、到底思わない二人。

 

 これからどうしようかと、話し合ってた際、いきなり食堂のドアが開く。一瞬、イナが帰ってきたと思ったが、『美食研究会』の4人が入ってきた。

 

『失礼いたしますわ。給食部の皆さま』

 

 ハルナが丁寧にあいさつしたかと思えば、いきなりジュリを気絶しにかかったという。そこからはジュリも分からず、何故食堂がこんな悲惨なことになっているかも、フウカ先輩が居ないことも知らないようだ。

 

 

 

 

「美食研が…? ジュリ、ちょっと美食研究会のSNSアカウント検索してみて」

 

 イナに言われた通りにジュリがスマホで検索を始める。こういう時、SNSで律儀に活動報告を更新している美食研究会の記事を見た方が早いと判断する。

 

「あ、ありました!」

 

 ジュリがスマホの画面をイナに見せる。そこには、

 

【学生食の揚げ物の衣が厚いので爆破しに行きます。】

 

 やはり、爆破予告をしている美食研究会。だが、肝心のフウカ先輩の記載がないのはどういう事だろうか。

 すると、SNSが更新されて次の写真付きの記事が表示される。

 

【行きたいところがありますので、給食部の部長も一緒に行きます。】

 

 給食部の車と荷台に縄で縛られているフウカ先輩が、美食研究会と一緒に写っている写真が添付されていた。

 

(いやそれ一緒に行くんじゃなくて、無理やりというか誘拐って言うんじゃ……)

 

 追いかけようにも、場所も分からないし、肝心の原付バイクも便利屋に爆破されている。いつもなら、風紀委員会に頼む形にはなっている。しかし、頼みの綱である風紀委員会は、部隊の主力がアビドスへ行っていたため、対応が遅れる可能性が高い。このままでは調理もできず、料理も提供できない。

 

(こうなったら……)

 

 すると、ジュリからイナへ声がかかる。

 

「イナちゃん、これはやるしかないです」

 

 ジュリは覚悟の決まった目で見つめてくる。珍しい表情に驚くが、どうやらイナと同じ事を考えていたようだ。

 

「ジュリ、同じこと考えてた」

 

 給食部として、そしてフウカ先輩と待っている生徒のため、期待を裏切るような事はしてはいけない。そうすると、イナとジュリが導き出した答えと決断は『一つ』。

 

 

 

 

「「二人で協力して作る!」」

 

 

 

 

 かくして……現場監督不在の中、『下ごしらえ担当』と『調理担当』のみでの初めての料理が始まるーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーそして、その現場監督は

 

 

「うぅ、なんか寒気が……」

 

 給食部の専用車両の荷台で、何かを感じとるフウカ。

 

「そう? 涼しいくらいだけど。お腹が空いたんじゃないの?」

 

 イズミがそう言うと、手に持っている『カスタードとマヨネーズとイチゴ入りホットドッグ』という食べ物?をフウカへ渡してくる。

 

(눈_눈)「……遠慮しとくわ」

 

「そう?美味しいのにー」

 

 

 髪の毛を風になびかせながら、今は自分の事よりもイナやジュリの事を心配する。

 イナは、入学当初から巻き込まれる事が多く、本人に話を聞く限り、『入学前』も同じように巻き込まれていたらしい。

 

 気になったのでついでに、何故給食部に入ったのかも聞いてみた。

 

『なぜ自分が給食部に入ったか、ですか? それはもちろんフウカ先輩が居たからですよ! まあ、もちろん自分の作った料理で笑顔になってくれるのも理由ですが』

 

 続けてイナは、

 

『それに……この卵焼き器の持ち主にふさわしくならないと!』

 

 イナが愛用している『卵焼き器』を持ち上げて、半袖を何故か捲っている姿を思い出す。

 

 

 

(あの二人大丈夫かな……)

 

 

 

 

 




一難去ってまた一難……キヴォトス(ゲヘナ)では日常茶飯事です。ゲテモノ表現大丈夫でしたか…?

少しずつ古いコメントから返信していこうと思います。

次回もよろしくお願いします!
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