名誉温泉開発部   作:第三のケモナー

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今日は、少し余裕がありますので2話投稿です!

たくさん見てくださってありがとうございます!
それではどうぞ




野菜を切る時は繊維に合わせて

 

 

 

 

 

「……あの、全部話すので許してください」

 

 風紀委員会本部の取調室で、イナと対峙しているのは、無表情のヒナ、何故か誇らしげな顔のアコ、いつも通りのイオリだ。因みに、チナツは怪我人の対応で席を外している。

 

(圧がスゴい……というか、チナツ以外全員居て大丈夫なの?)

 

 何故か、風紀委員会の幹部が勢揃いしており、その面々の圧に押されているイナ。

 

「それじゃあ、全部話して?」

 

 イナは、アビドスでの宅食をしてから紫関ラーメンでの出来事、戦闘に至った経緯を話していく。話していく中、風紀委員会について行って帰ろうとした話をイオリに呆れられたり、あらぬ疑いを掛けられたことに関して、話をしていた時にアコの顔が少し曇ったりする以外は、特に何も無かった。

 

「そう、じゃあ次は『先生』について。どう感じた?」

 

 首を傾げながら、ヒナに言われた通りに先生の印象について少し考える。

 

 指揮を執らせれば、その生徒の長所を存分に発揮させたり、攻撃タイミングを指示してくれたりするので、非常に戦いやすい。だが、イナに関しては、そもそも撃った銃弾が当たってないと思っている為か、その恩恵を受けているとは思えなかった。

 

(うーん、イメージか……)

 

そういえば、先生に最初に出会った際に、下着を見られた事を思い出した。

 

(後でイオリ先輩の足舐めたり、アコ先輩と首輪お散歩プレイするんだよね……あれはもう立派な)

 

 

「変態だよね……」

 

 思わず出てしまったイナの突然の衝撃発言に、空気が凍ってしまう取調室。

 

 しかも思った事が口に出てしまった事に、本人が気が付いていない。周りの雰囲気とヒナの様子に違和感を覚えるイナだが、質問を思い出して続ける。

 

「個々の(戦術的)特徴を把握して、しっかり(状況を)見ているというか……とにかくスゴいとしか言えないです」

 

 この場にチナツが居たならば、急いで修正するかもしれないが、残念ながらこの場には居ない。

 

 そして、ヒナ達にはイナの発言がこう聞こえてしまった。

 

『個々の(身体的)特徴を把握して、しっかり(体を)見ているというか……とにかくスゴい(意味深)としか言えないです』

 

 イオリは顔を赤らめ、アコは目を開き、ヒナは動揺していた。三人はイナがふざけているのかと思ったが、本人は至って真剣な顔である。もしかして自分らがおかしいのではないかと錯覚しそうになるが、先生に対する印象とチナツの印象が変化する前に、次の話題にすり替える。

 

「そ、そう……次にイナの処罰についてだけど」

「う゛……」

 

 分かってはいたものの、やはり無罪という訳にはいかないようだ。ヒナの口が開き、処罰を伝える。

 

 

「給食部の三日間活動禁止及び、自治区内での謹慎」

「……」

 

 その言葉を聞いて、イナはショックを受けて顔を下に向ける。おそらく、今回の騒動の処罰も入っているのか、やや厳しめの判断だった。

 しかし、ヒナは続けて言う。

 

「……にしようとはしたけど、今回は反省文でいい」

「……!! 反省文……」

 

 すぐに顔を上げて、表情が明るくなったと思えば、反省文と聞いて落ち着きを取り戻す。

 

「あと、ジュリにも反省文と伝えておいて。それで今回の騒動の処罰とする」

「はい……すみませんです」

 

 

 

 

 

 取り調べも終わって退室していくイナを見送り、風紀委員会の三人はそのまま残る。

 

「よかったのですか? ヒナ委員長」

 

 イナの処罰を反省文とする判断に、やや不安を感じるアコ。自身が知る限り、あれだけの建物の被害と、パンデモニウム・ソサエティーを破壊するというのは、今まで見たことがない。

 

「アコ……あくまで、校則違反に対しての処罰、万魔殿のマコトが改めて決める。それとも、なにか不満でも?」

「い、いえ! そんなことは……」

 

(まあ、どうせ全部風紀委員会のせいにするんだけれど……)

 

 あの顔が浮かんできて、ため息を付きそうな所を、ヒナは寸で止める。確かに、処罰は甘く感じるだろう。だが、執行妨害に関しては、こちらの不手際。あのパンちゃんについては、学生の悪意のない不可抗力の事故だと考えると、妥当だとも取れる。

 それに……

 

 

『厳しい抑圧はいずれ、精神を蝕み大きな爆弾へと化す。』

 

 イナに限ってそれは無いとは思うが、ヒナは委員長になる前の情報部で、そういう者を見たことがある。厳しすぎるのも、ましてや排除などの考え方はいずれ反乱が起こってしまう。

 

(ゲヘナにとっても、あの子『達』だけは利用されてはいけない)

 

 今回の件で、より一層近づいて来る者に気を付けなければならない。

 

 

「引き続きイナの監視を。この騒動は恐らく他校に伝わっているから、『ゲヘナの火薬庫』の存在が悟られないようにお願い」

「了解!」

 

 トリニティとの条約も近い。なるべく穏便に済ませたいが、そう簡単に上手くはいかないだろう。

 

 

 

「それはそうと委員長、先生って」

「忘れてたのに思い出させないで……」

 

 先生の印象について、チナツがその話を聞いて修正するまで、固定されてしまうのであった。

 

 

 

 

 第8学生食堂

 

 

「反省文、分かりました……」

 

 場所は変わって、第8学生食堂。食堂の面影は壊れた椅子と机だけとなっており、美食研究会による爆破と黒パンちゃんが暴れた事により、悲惨な状態になっていた。イナが戻って来るまで、フウカとジュリは片付けを行っていた所、イナが帰ってきたので報告も含めて、反省会を開いている。

 

「それで、何を作ろうとしてあんなことに?」

 

 今日の献立は知っているが、改めてフウカは、二人に何を作ろうとしたのか聞いてみる。

 

「唐揚げとパンケーキです……」

「……そういうことね」

 

 あの黒パンちゃんはイナの下ごしらえと、ジュリの調理で生まれてしまった悲しき生物兵器だという事を理解する。二人を見るとしっかり反省しているようで、フウカもこれ以上追及するつもりは無かった。

 

 

「二人とも、料理ってなんの為にするのかな?」

 

 ふと、フウカはイナとジュリに料理について聞いてみる。

 

 今のキヴォトスでは、料理をしなくても普通に冷凍食品やミレニアムの技術でなんとかなる。コンビニで買ったり、レンジで温めたりすれば楽であり、手間を省くことができる。決してそれが悪いという訳ではないが、わざわざ手間のかかる事をする理由とはなんだろうか。

 

「自分が作った料理で、皆が笑顔になって貰えるからですか?」

「その人の健康もお財布も支える事ができるからですか?」

 

 フウカは、二人の回答に満足したように頷く。

 

「二人とも正解よ! でも、一番大事なのはそれを含めて『料理が好き』という気持ちだと思うの」

 

 相手のためでもあり、自分のためでもある。好きという感情は、それだけでも手間をかける理由になり得る。

 フウカは調理場まで二人を連れていき、炊飯器の中を確認する。幸い、炊飯器などの機器は被害を免れて無事だったようで、炊き立てのいい匂いが立ち込める。そしてジュリにお茶碗、イナに箸を三人数分持ってくるように指示する。

 

「ちょっと待っててね」

 

 フウカはそう言うと、お茶碗にご飯を盛り付け、自身が作っていた自前のふりかけを取り出す。それをご飯にふりかけ、それぞれの前へ提供する。ちょうどお腹が空いていた為なのか、その他の理由があったのかは分からないが、とても美味しそうに見える。

 

「「「いただきます」」」

 

 三人はご飯を食べ、その味を五感で感じる。

 

「美味しい! 二人とも水の入れる量も加熱のタイミングも完璧ね!」

「「……」」

 

 フウカに褒められてイナとジュリの中で、何か込み上げてくるものがあるのか、しっかりと味わって食べている。炊飯器で炊いただけなのに、どうしてこんなにもお米もふりかけも美味しいのだろうか。

 

「私も料理失敗するときもあるし、不味いって言われたこともあるけど……好きっていう気持ちは変わらない。二人はどう?」

 

「「変わらないです!」」

 

 目を合わさずに、フウカへ断言する。二人は改めて料理に対する気持ちを再確認した。

 

 

 そこからは、調理場、食堂の片づけと炊いたお米の提供をしていく。当然のことながら、他生徒からの不満などのクレームはあったが、この惨状を見て、それ以上、とやかく言う生徒は居なかった。

 

「これから大変になるわよ!」

 

 

 ゲヘナでのトラブルは絶え間ないが、給食部と彼女らの料理も止まらない。イナとジュリの料理の練習は続く……

 

 

 

 * * *

 

 

 

「万魔殿を爆破した謎の兵器ですか……」

 

 

 トリニティ総合学園某所、報告書に書かれた事項をつぶやく生徒が一人。そこに書かれていたのは、万魔殿の破壊と兵器の詳細についてだった。

 

『ボビン型で転がるように高速で突撃する兵器。動力や詳細は不明であるが、対象に接触すると大きな爆発が発生する』

 

 ゲヘナで起こった大規模な爆発、謎の兵器……それだけを考えると、ゲヘナを狙ったただのテロだとも思ってしまう。しかし、エデン条約が近づいている今、ただのテロだとは到底思えなかった。

 

(ゲヘナで威力を確かめて、トリニティにでも使用する可能性がある)

 

 反対する勢力も居る中、ゲヘナだけ被害を受けるというのは考えにくい。対策を取るためには、まずは『知らなければならない』。

 

「その兵器の『再現』と『対策』、まずは『再現』からですね……」

 

 ボビン型で転がるならば、形だけ再現は可能である。残りは動力についてだが、報告書にもあるように詳細不明とあるため、謎が深まる。

 しかし、動力の種類については限りがあるため、特定は容易だろうと考える。

 

 また、報告書の続きには『その威力で空を飛ぶこともできる』とも書かれており、改めて対策の必要性が高まったように感じた。

 

(あわよくば、こちらが再現したものを『利用する』事も視野に入れておきましょうか)

 

 

 羽のついたその生徒はそう考えると、テーブルの上にあるティーカップを片手で摘まむようにして持ち、紅茶を口に持っていった。

 

 

 

 

 





トリニティも動いているようですね……

少しシリアス調にはなりましたが、ひとまず一区切りです。
次回もよろしくお願いします!
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