名誉温泉開発部   作:第三のケモナー

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誤字報告とたくさん見てくださってありがとうございます!

それではどうぞ




味付けはまず下味から

 

 

 

 

 

「やってきました、ミレニアム! ……の郊外」

 

 

 イナは現在、ミレニアムサイエンススクールという学校の郊外に居る。来た目的は、あの事件でダメになってしまった給食部の調理器具を購入する為である。

 

(目的は調理器具だけじゃないけどね)

 

 調理器具を買うだけならば、ゲヘナでも購入は出来る。なぜ、わざわざミレニアム近くに行ったのかというと……

 

 

(『スマホ』がない!)

 

 そう、紫関ラーメンでの出来事で、イナのスマホは壊れてしまっていた。

 

(ミレニアムなら性能が良いのが揃ってるでしょ)

 

 やはり、最先端の技術を扱っているだけあって、スマホやパソコンなどの機器が揃っている。イナはこういうのを見るのも好きであり、時々この辺りに出没していた。

 

(やっぱり『郊外』が一番よね……)

 

 何故ミレニアム郊外なのかは、イナが求めている機能と郊外で売っている機能が一致するからである。そして、ミレニアムに近付けば近付くほど、おかしい機能が無駄に搭載されたスマホが多くなる。

 例えば、

『電話の相手の声がノータイムで全部小鳥の鳴き声に翻訳される機能』

『ホログラムで出来ているそもそも触れないスマホ』

『入れたソシャゲのガチャが勝手に引かれる機能』など……

 

 その技術を別の所で生かせばいい機能ばかりである。しかもその多くは、任意でオフに出来ない仕様になっている。切実に普通(キヴォトス基準)のスマホが欲しい。

 

(頼まれてた買い物も終わったし、行きますか)

 

 

 モモトークで会話出来ない他、ミレニアムで絶賛絶滅危惧種の公衆電話を見つけるのも大変で、実際死活問題である。なので、スマホをすぐにでも買いたいのだが、イナに向けて声を掛ける人物が近づいて来る。

 

「あっ、そこのゲヘナの子!」

 

 声がした方向にイナが向くと、ミレニアムのものと思われる制服を着た2人組が見えた。

 

「な、何の用事でしょうか?」

(デッッ……何処かで見たことあるような……)

 

 一人は蒼眼の髪の長い生徒、もう一人は身長もデカくて肌が褐色の生徒。見た瞬間、既視感を覚えるが、知らない人物に声を掛けられたとなると、それ以上思い出すような事はしなかった。

 学園以外であまり声を掛けられる事はない。イナが道端で声を掛けられるのは大抵、カツアゲか部活の勧誘なので、イナは警戒する。

 

「わあ! うちの部長と身長同じくらいじゃない?」

「……」

 

 その言葉を聞いて、カツアゲではなさそうと判断するものの、身長というワードにイナは反応してしまう。

 するともう一人が「ちょっとアスナ先輩……」と声をかけて二人とも後ろを向く。そして前を向いて、用事と思われる話題を切り出した。

 

「実は私たち、ゲヘナに編入予定なんだけど……ゲヘナについて教えて貰いたくて!」

 

(あ、怪しい……)

 

 ミレニアムからゲヘナに編入するという事は、わざわざ治安の悪い所に行くようなものである。ミレニアムもミレニアムで治安が良いとは言えないが、それでもゲヘナとミレニアムを比べたら事件の多さは、半端ないくらいゲヘナの方が多い。

 

(なぜゲヘナに!?)

 

 そう思うのも無理がない。もう一人の生徒から詳細を聞いていく。

 

「ゲヘナについてある程度は知ってるんだが、ある事を耳に挟んでね」

「ある事……?」

 

 頼まれると断れないイナは、質問に答えようとその言葉に耳を傾ける。

 

「『ゲヘナの火薬庫』って知ってる?」

「『ゲヘナの火薬庫』?」

 

 聞き覚えのない言葉に、考えながら首を傾げる。

 

「聞いたこと無いです。というか、何ですかその怖い名前……」

 

 物騒な名前に、イナは恐れる。おそらく、火薬庫と言うのならばオーパーツのような物なのだろうが、一般生徒である(と思っている)イナにとっては知るよしもない。

 

「なんでも、『無限の武器を調達できる』とか『争いにおいて有利になる』とか言われてるらしいよ!」

 

(うへーそんな物がゲヘナにあるんだ……そうなると、前に万魔殿が撃ったものも、その火薬庫から調達したんだろうか)

 

 

 すると、ついでと言わんばかりに褐色の生徒から、次の質問が出てくる。

 

「あと、この前ゲヘナ学園で大規模な『爆発』があったらしくて……」

「し、知らないです!」

 

 爆発と聞いた瞬間、あの事件関連だと察したイナは、話の途中にも関わらず、答えてしまう。大規模な爆発というのは多分黒パンちゃんが爆発した事だろう。

 

(これ以上フウカ先輩とか給食部のイメージを悪くする訳にはいかない)

 

 因みに余談だが、黒パンちゃんが暴れた事件は『給食部ゲヘナ事変』と名付けられ、給食部という名前が付いてしまったことにフウカ先輩は嘆いていた。

 ここで、爆発の詳細をこの二人に言ってしまえば、給食部の噂とともに、その部長であるフウカがお労しい事になってしまう。

 

「とにかく、ゲヘナに編入するなら治安とか気を付けた方が良いです! それでは忙しいので!」

 

 イナは、二人を置いてそそくさとその場を後にする。二人の目線はイナに照準を合わせている事に気が付かずに……

 

 

 

 * * *

 

 

 

『C&C』

 正式名称は『Cleaning&Clearing』。ミレニアムサイエンススクールのエージェントであり、メイドでもある。普段はメイド服での任務活動を行っており、ミレニアムで屈指の実力を持つメンバーで構成されている。

 

 

「……あの生徒だな」

 

 その一人、コールサイン『ゼロツー』の『角楯(かくだて) カリン』は、先ほどここに居た生徒に目を付けていた。

 

 ゲヘナの火薬庫については、知らなかったようだが、『万魔殿』の爆発については知っているようだった。他のゲヘナ生徒に同じ事を聞いて回っているが、あのリアクションは初めてだ。いつもなら

 

『あー知ってる、なんかボロボロなってたね』

と、殆どそれだけである。

 

「良い子そうではあるけどね! それに、お友達も居るみたいだし」

 

 コールサイン『ゼロワン』の『一之瀬(いちのせ) アスナ』は、イナをそのように評価する。そして、アスナがお友達と言っているのは、イナを監視しているゲヘナ生徒もとい風紀委員のこと。本来だったら、その監視している生徒に話を聞きたいが、ゲヘナに任務だと悟られてはいけない。

 

(まずは、アカネに報告だな)

 

 カリンはコールサイン『ゼロスリー』の『室笠(むろかさ) アカネ』に報告する。

 

『了解しました。取り敢えず、監視とその生徒を追跡して情報を入手しましょうか』

 

 これからの動きを確認し、カリンはアスナへ伝えようとするが、周りを見渡してもアスナの姿が見えない。

 

(まあ、『いつもの』ことか)

 

 慌てる事はなく、慣れているのか『いつもの』ことと納得するカリン。最終的に任務を遂行するという点においても、アスナの事は信頼している。対象を見失う前に行動に移していく。

 

 

 

 かくして、C&Cと風紀委員によるイナの追跡が始まった。

 

 

(まずは電化製品のお店……郊外で珍しいな)

 

 ミレニアムといえば、最先端技術を扱っている事で有名である。わざわざゲヘナからこちらまで来るのにも関わらず、郊外で電化製品を買うとなると、相当な変わり者とも捉えられる。時代遅れのゲームやスマホしか売っていないというのに、妙な行動をしている。

 

(まさか……起爆のために?)

 

 C4の起爆スイッチの為の配線やらを合法的に入手し、それらを利用するのではないかと推測する。ゲヘナで買うと足が付くので、違和感の無いミレニアムで購入したとなれば、この行動に辻褄が合う。

 

(出てきた)

 

 しばらくすると、追跡対象の生徒がホクホク顔の満足した様子で出てきた。よっぽど嬉しかったのか、仲間と思われる者に連絡している。

 

『……! やっと………買えて……できる……になった…』

 

 周りに人が居て聞き取れるのはこれだけだが、おそらく

 

『(相手の名前)! やっと配線を買えて爆破できるようになった』

と、こんな感じだろうか。

 

 次に向かった所は、ラーメン屋。特に何事も無く、食事を済ませるのみであり普通の行動である。ただ、入店する前にお店の周りや、テーブルの下を確認する意味不明な行動に首を傾げてしまう。

 

(何かの確認か? それとも爆破関係で?)

 

 見当もつかない行動に、困惑するカリン。

 

 次に、近くのコンビニに入って何かを購入する様子を見せる。外に出て自らのハンドガンを取り出し、弾を装填していく。どうやら、コンビニに寄ったのは弾の補充の為であったようだ。ここは何ら問題はない当たり前の行動だ。

 

 また次に対象が向かったのは、メイド喫茶街である。歩き回って店を見渡しており、店に入る様子は一切ない。何らかの下見のように思えるが、爆破の為の下見だと考えると、油断出来ない。

 すると、客引きと思われるメイドが対象に話かける。それだけなら良いが、見覚えのあるメイド姿にカリンは驚いてしまう。

 

(アスナ先輩?! どうしてこんな所に?)

 

 仲間の一人であるアスナが、何故かメイド姿で対象と接触している。そして、一緒にメイド喫茶へ入っていく二人。対象も驚いているのか、半ば連れて行かれるような形である。戸惑う暇もなく、カリンも追って近づこうとしたが、その際に邪魔が入ってしまう。

 

「さっきから何の用だ」

 

 同じく、追跡しているゲヘナの生徒二人から銃口を突きつけられる。褐色の肌と170㎝もある身長は、追跡をするにあたってあまりにも目立ちすぎた。

 

(これは……仕方ないか)

 

 ここでこの二人を引き付けておき、情報収集はアスナに任せようと判断する。

 

「実は……」

(アスナ先輩大丈夫だろうか)

 

 あらかじめ考えておいた言い訳を長々と話して、時間稼ぎしていく。

 

 

 

 

 一方、イナはというと……

 

 

「あはは……」

 

 イナは今、目の前にいる人物を思い出してしまった。制服姿では分からなかったが、見覚えのあるメイド姿を見た瞬間に思い出した。

 

(アイエエエ!? アスナ!? アスナナンデ!?)

 

 アニメ1期のアビドス編とイベントしか知らないイナにとって、C&Cの姿はメイド服とバニー服しか知らない。さきほどまで、制服で会ったはずなのに、いつの間にかメイド喫茶に居るというあり得ない状況に混乱する。

 

(という事は、もう一人は同じC&Cの……)

 

 部長と同じくらいの身長と言われた時点で、気付くべきだった。驚きのあまり、成されるがまま一緒にメイド喫茶に入ってしまった。

 

(フウカ先輩! 助けてください!)

 

 

 

 イナの災難は続く……

 

 

 

 

 






パンちゃんドラム想像以上に反応あって驚いております。作ってみたい気持ちはありますが、如何せん作成技術が……

いかがだったでしょうか。
C&Cに目を付けられてしまったイナはどう動くのか……
次回もよろしくお願いします!
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