お待たせしました。
たくさん見てくださってありがとうございます!いつも大丈夫かな……と思いながら投稿しております。
それではどうぞ
ミレニアム郊外のメイド喫茶にて、独特な空気の中でゲヘナ学園給食部のイナとミレニアムサイエンススクールC&Cのアスナが、テーブル越しに対峙していた。
「さっきぶりだね! 名前聞いてもいい?」
目の前には、眩しいような表情でこちらを向いているメイドさん。始めてのメイド喫茶で、何をすればいいのか分からない事に加え、C&Cのメンバーと対峙している時点でもう意味が分からない。
(一体どうしろと?!)
アスナに名前を聞かれた以上、こちらが名乗らなければ無作法というもの。意を決して、イナは自己紹介をする。
「えっと、ゲヘナ学園給食部の纒イナです」
「私はアスナ! ミレニアムC&Cの一之瀬アスナ! よろしくね、イナちゃん!」
いやC&Cって言っちゃうのか、というツッコミを飲み込むイナ。C&Cは所謂、エージェントという存在であり、公然の秘密になっている所がある。恐らく、向こうはこちらの事をただのゲヘナ一般生徒だと思っていると推定する。もし、ここでC&Cを知っているとバレたら、怪しまれる可能性があり、ややこしいことになりそうである。
そして、アスナにロックオンされている(かもしれない)状況は、非常に『不味い』。
(もう逃げられない……)
もう一人のC&Cであるカリンから奇跡的に逃げたとしても、アスナがそれを超えるような偶然で待ち伏せしている可能性が高い。というか、ほぼ確実だろう。こちらがミレニアムで何か事件を起こした訳では無いが、C&Cの目的が分からない以上、下手な事は言えない。
自己紹介も終わり、アスナがイナの荷物を見て、話題を切り出す。
「それって調理器具だよね? おままごと?」
「いや違……おままごと!?」
アスナは、購入した調理器具とイナの身長を見て、おままごとをするために買った物だと、思った事をそのまま口にしてしまう。
「給食部で生徒達に給食を作る為に買ったんです! というか、おままごとってなんですか!?」
「ちょっと気になっちゃって!」
おままごとと言われたイナは、少々不機嫌になりつつ、座りながら骨盤を前傾させて背伸びをする。
「で、それとゲヘナの爆発って何か関係あるの?」
「いやそれは!……カンケイナイデス」
(びっくりしたぁ……)
無意識であろうアスナの誘導尋問?に勢いで引っ掛かりそうになる。
そして、話は部活の話になっていく。給食部の活動について、改めて説明を行う。給食部三人で数千人の給食を作っている事、ゲヘナ学園の事など、爆発の話題を避けつつ言っていく。
「そうなんだ! という事は何か料理作れるの?」
「勿論……一通りなら大丈夫ですけど……」
そう答えると、アスナはメイド喫茶の裏手に行き、他のメイドさん達と何かを話したかと思ったら、こちらに戻ってくる。その期待を含んだ姿に、何故か嫌な予感がするイナ。
「パンケーキ作ってみて!」
「……へ?」
初めてのメイド喫茶に入ったと思ったら、パンケーキを作ってと言われた件について。
「いやいや! そもそも自分メイドじゃないですし……」
「大丈夫、メイド服ならあるよ!」
イナがメイドでは無い事を理由に、なんとか回避しようとする。しかし、何処から取り出したか分からないが、小さいメイド服を持って着させて来ようとするアスナ。
(いやそういう事じゃなくて!?)
別にメイド服が無いから出来ないのではなく、ボロが出るかもしれないから出来ないだけである。
ここのメイドとして料理を作って良いのか心配になるも、先ほど裏手に行ったのは許可を貰う為に行ったのだと察する。
(もしかして、自分が知らないだけでメイド喫茶ってこういう場所なのか)
メイド喫茶というのは、メイド体験というコンセプトでやる飲食店なのだと、イナは思った。それにしては、他のお客さんの格好はメイド服ではないが……
(よりによってパンケーキ……)
先日のトラブルを思い出させる食べ物であるが故に、イナの中で緊張が走った。
そして、イナはアスナから借りたメイド服を着る。前にジュリが持ってきた防護服を着ていた事があるが、言われるがまま着てしまうのは悪い癖である。
着て鏡を見ると、ツノの生えたゲヘナ生徒がコスプレでメイド服を着ているようにしか見えない。似合っているのか分からないし、ちょっと恥ずかしい。
(少し上半身窮屈だけど、ほぼサイズピッタリだ……)
殆ど、服がピッタリな事を不思議に思いつつ、厨房へ向かう。
基本的な調理器具は揃っており、パンケーキ以外にもスイーツは作れそうだ。
「アスナ先輩達、ひ、一人で作るのは大変なので手伝って貰っても良いですか?」
「何手伝うの?」
同じ轍は踏まないように、ふるいにかけたりなどの下ごしらえは他の人に任せる。(災害級の)失敗を糧にイナは成長するのだ。
「まずはこれとこれを、ふるいにかけて……貰っても?」
「え? イナちゃんはやらないの?」
「ふ、フライパンを温めないといけないですから、やって貰ったら助かるなーっと……」
「分かったよ!」
危ない場面はあったが、火薬の匂いも爆発もしないパンケーキが完成した。
以前、フウカ先輩に教えて貰ったのもあって、とても上手に焼き上がっており、美味しそうだ。
『おー!』
メイド喫茶のスタッフ達が、ホットケーキを見て感銘を受けたかのように声が上がる。皆が一口サイズに切り分け、それぞれ食べていく。
「うま」「美味しい!」「!!」
「どうやってこのフワフワ感を……」
(やっぱりフウカ先輩凄い)
どうやら大好評だったようで、自然と口角が上がり、どや顔を見せているイナ。すっかりC&Cの事は忘れて、作り方を皆へ伝授していく。
「あのーすみません」
途中、表のホールの方からメイドさんが声をかけてくる。他の人達もどうしたのかと話を聞くと、どうやらお客さんもとい、ご主人様が忘れ物をしていったという。
「ゲヘナの生徒というのは分かるんですけど……」
そう言うと、黒い鞄をこちらに見せてくる。
「どういう人だったんですか?」
同じゲヘナ生徒という事で、もしかしたら心当たりあるかもしれないので、イナは容姿などを聞いてみる。
「いかにもお嬢様って感じで、綺麗な銀髪と赤い目をしてました」
ん?
「一人で初めて来られた方なんですけど、『わたくし、美味しいものを探しておりますの』って言ってまして……」
何故か、そのお客さんの姿を見ていないはずなのに、『あの声』に脳内変換される。あくまで予想なので、間違っている可能性に賭けて聞いてみる。
「もしかして、左側の羽と尻尾があって、三つ編みと帽子被って、制服を羽織っていたりしてました?」
「そうです! お知り合いですか?」
イナの冷や汗が止まらない。
その容姿は、給食部にとってある意味よく知っている。
(美食研究会のハルナ先輩だ……)
あの事件の前にも食堂を爆破したように、自治区内外を問わず、キヴォトスの飲食店も爆破している。理由としては、値段や素材と味、接客を考慮して基準値に満たないからだという。
「今すぐその荷物から離れて! お、お願いします!」
いきなりそんな事を言われても、反応出来ないメイドさん。イナは鞄を受け取って取り敢えず、店の裏手へ投げる。
(ヤバいヤバいヤバい!)
「用事を思い出したので、それでは!」
「あ、待ってイナちゃん!」
アスナの声かけに耳を貸さず、荷物を持ってメイド姿のまま、パニックになって外に出てしまうイナ。その瞬間……
ドオオオオオオオオオン!!!!!
爆音とともに、店の裏手から煙が上がる。その音は周りの住民や通行人にも聞こえており、野次馬が集まってきていた。
(もうゲヘナへ帰ろう)
寄り道してしまった事を後悔しつつ、ゲヘナ学園へ急いで帰ろうと走る。
「こっちが近道だから……」
イナは路地裏を見つけて、駅への近道を通っていく。進んでしばらくすると、路地裏の出口となるが、そこで自分と同じくらいの身長の人影が現れる。
「あぁン? どうして見覚えねぇ奴が、
イナと同じか少し小さい身長、メイド服にスカジャンを羽織っており、鎖で繋がれている2丁のサブマシンガンを所持している。見た目ヤンキースタイルの彼女は、イナの事を睨んでいた。
(こわぁ……)
コールサイン『ダブルオー』の『
C&Cの部長であり、本人がキヴォトスで近接戦で勝てる者は居ないと豪語する程の実力者である。実際、依頼やミッションでの成功率は脅威の100%、ミレニアム最強といっても過言ではない。
そんなキヴォトスきっての実力者がイナの目の前に居る。
(このメイド服って……まさか)
アスナから借りたこのメイド服、よく見るとミレニアムの校章が描かれている。
ネルからすれば、爆発音があった後にC&Cのメイド服を着たツノと尻尾がある怪しい人物が、急いで路地裏を抜けているようにしか見えない。
「どっから手に入れたんだそれ」
イナは、何も悪い事はしていないが、ネルに謝ろうと頭を少し下げた時に銃弾を掠める音が聞こえてきた。目の前の人物から撃たれた訳では無く、遠方から撃たれたのは分かった。
(い、今とんでもない音が聞こえた……)
恐怖で固まってしまい、言葉が出てこない。
「ほーん、そういう事か」
銃弾を見て、何となく察したネルは、イナが避けた事に感心しつつ、目の前の人物が『対象』であるという事を認識する。
(もうおうち帰りたい)
そう思うのも無理のない話である。
* * *
「アスナ先輩? アスナ先輩! ……繋がらない」
カリンは、ゲヘナ風紀委員会からの聴取から解放されて、遠方のビルの屋上から様子を窺っていた。すると、二人が入ったメイド喫茶から爆発があり、アスナへ連絡を入れていた。
「……ッ!」
繋がらない事に最悪な状況を考えるが、見覚えのある人物がメイド服姿に変装して逃走を図っている姿が見えて、切り替えた。変装すれば見つからないと思っているのか、路地裏へ入ってやり過ごそうとしている。
(特徴的なツノ、間違いない)
カリンはスナイパーライフルを構えて、出口を探す。あの路地裏の近道は有名であり、駅へ繋がる逃走経路としてはありきたりであった。
(狙うは出口の最後の直進……あれはネル先輩!)
対象の目の前には、メンバーの一人であるネルが居た。
(これは狙いやすい)
対象がネルの姿を見て硬直しており、その硬直はスナイパーにとってはカモである。頭に狙いを定めて銃弾を撃ち込むが、自分の方を見ずに『避けた』。
(完全に気が付いていなかったのに、どうやって)
見たことない状況に戸惑うが、ここでメンバーのアカネから通信が入る。
『カリン、どうやら目的の人物は見つかったようです』
「ああ、分かってる。万魔殿の爆発はやっぱり……」
『いえそちらではなく』
「?」
てっきり、万魔殿の爆発についてかと思いきや、別の目的だったようだ。しかし、別の目的というのは『あれ』しかない事に疑問を持つ。
「まさか……」
カリンは、ある可能性について考えた。どうやら、物だと思っていたのが間違いだったようだ。
『そう、あの生徒がゲヘナの火薬庫です』
やっぱり、ミレニアムでも巻き込まれるイナ……
ここすき、感想等とても嬉しいです。ありがとうございます!
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