名誉温泉開発部   作:第三のケモナー

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それではどうぞ





豚肉は筋切りで柔らかく

 

 

 

 

 

「さあ、始めるわよ」

 

 アルの掛け声により、カイザーPMC理事との戦闘が開始された。

 便利屋は、すぐさま各々の配置へと移動し、パワーローダーに照準を合わせる。グループで戦闘を行う事が多いため、誰も指示を出さなくても普段ならば良いのだが、ここに一人加わるとなると、そうはいかない。

 

 カヨコが気になってイナの方を見ると、なんと前衛のハルカの近くに居た。

 

(……! 何故前衛に!?)

 

 以前、アビドスと共闘した際は、先生の指示で後衛に移動していたはず。しかし、今は前衛……しかも、その中でも割りと前に居る。

 

「アル様の邪魔をするなら死んでください!」

 

 そんな事などお構いなしに、ハルカが理事に向けて攻撃を開始する。近距離でショットガンの弾が当たるも、並みの威力ではパワーローダーは怯むことはない。攻撃を受けながらハルカに向かって上からパワーローダ―の右腕と銃弾が襲い掛かって来る。

 

「ハルカ!」

 

 アルが声を掛けて発砲したたが、間に合いそうにない。銃弾を当てて防ごうとしても、ショットガンの威力でも怯まなかったパワーローダーが、スナイパーやアサルトライフルの銃弾、ましてやハンドガンで防げるとは思えない。

 実際、アルが銃弾をパワーローダーの腕に当ててダメージを与えてはいるが、標的が逸れることはなかった。

 

「うっ……!」

 

 すると、左から一発の銃弾がハルカの頭に直撃し、その体を右側へと移動させる。パワーローダーの腕がハルカのすぐ左側にあり、紙一重で上からの攻撃を躱すことが出来た。

 

(今のはまさか……!?)

 

 発砲音は軽いハンドガンの音。撃ったのはアルでも、ムツキでもカヨコでもない。すると残るは一人、あの『纏 イナ』しか居ない。

 

(相手を撃っても怯まないのなら、相手の攻撃対象自体を攻撃してでも守る……)

 

 一見すると裏切り行為とも捉えられるが、一発の銃弾とパワーローダーの重い攻撃ならば、ハルカにとって気絶の可能性が最も低い前者の方が被害は少ないだろう。

 

(アビドスでハルカの頑丈さを知っていたからこそ出来た事……)

 

 あの一瞬でそれを考えて実行する。アビドスでも感じ取ったが、ムツキの投げたバッグを撃ち抜いて爆発させる、的確に相手の行動を制限させるなど、状況判断からの実行が早い。

 

(あの時、てっきり先生の指示かと思ったけど、『纏 イナ』……風紀委員会に監視されるもの分かった気がする)

 

 そして、パワーローダーを牽制しつつ、イナは後衛へと引き下がっていく。その顔はどこか気まずそうな表情をしており、守る為だとはいえ、味方を撃ってしまった事に変わりはない事に対してだろう。

 

「……イナありがとう」

 

 すれ違いざまにアルがお礼を言うが、まだ戦闘が終わってないと言わんばかりか、イナは頷くだけであった。

 

「運のいい奴め……だが、次は外さん!!」

 

 カイザーPMC理事は、たまたまハルカがよろめいたからだと結論付ける。次の攻撃が便利屋達が襲うも、ムツキがそれを許さない。

 

「させると思ってるのっ?」

 

 ムツキの爆破によってパワーローダーの攻撃が止まる。

 

「……社長、普通の銃弾よりも爆発の方が有効かも」

 

 カヨコの言っている通り、あのパワーローダーは爆発によって一部分損傷しており、攻撃を止めていた。

 

「分かったわ。ムツキお願い」

「任せてーアルちゃん」

 

 

 ムツキとハルカを援護しつつ、銃撃戦が続く。

 

 しかし、カイザーPMC理事も爆発に対して警戒しているのか、なかなか爆発がクリーンヒットすることは無かった。

 

 このままジリ貧かと思った時、イナが持っていたグレネードをパワーローダーとは少しズレた方向に投擲する。

 

(何をやってるの……? それにグレネードのピンを抜いてすぐに投擲したら……)

 

 見当違いな方向への投擲、グレネードの爆破時間を考えていないような投げ方は、まるで、初心者かのように思ってしまう。

 

「フン、下手くそめ。どこに投げてるんだ悪魔」

 

 理事もそう思っていたようで、グレネードから少し離れてイナの事を貶すような言い方で煽っていく。

 

 

 

 それが間違いだったとも知らずに。

 

 

「うおっ!? な、なんだ?」

 

 グレネードが爆発した瞬間、パワーローダーの下の地面が不安定となる。そこから抜け出そうと模索するが、砂に脚を取られてしまい上手くいかない。

 

 あっという間に体半分以上が埋まり、その場から身動きが取れない状態になっていた。

 

(……なるほど、その機会を伺ってわざとすぐに投げて……)

 

 度重なる爆発により、元々水が通ってたであろう空洞にヒビが入る。それを感じ取ったイナが、グレネードで穴まで誘導し、爆発したという事を意味していた。

 

 すぐ投げたのは初心者だからではなく、誘導までの時間稼ぎだった。

 

(どこまで状況を把握してるのか……)

 

 味方で良かったと思うカヨコ。便利屋がパワーローダーに近づいて、見下ろす形となる。

 

「ここまでのようね」

「ぐっ……こうなったら」

 

 追い込まれたカイザーPMC理事は、最後の手段と言わんばかりに、起爆スイッチを取り出す。それは、ホシノが捕まっている場所を爆破させるものだった。

 

「それはさせない!」

 

 イナが理事に向けて銃口を向けて、発砲。銃弾はカイザーPMC理事の頭を撃ち抜き、理事の手から起爆スイッチが零れ落ちて、最後の悪あがきは未然に防がれた。そのことに気が付いた理事はイナの方を向き、恨みの籠った声で言い放つ。

 

「うぐぅ……何回も何回も邪魔しおって!! 悪魔……いや『纏 イナ』! 貴様さえ居なければ、今頃、本部で……」

「はいはい、話長いんだからさっさと眠っといてね!」

 

 ムツキが理事にトドメを指して、戦闘は終了する。

 

 

「私たちの手助けは必要ないみたいね」

「ヒッ」

 

 すると、便利屋の後ろからヒナ委員長をはじめ、風紀委員会幹部とトリニティのヒフミが近づいてくる。アルは変な声を出し、アコの顔を見たカヨコはあからさまに顔を変える。

 

「なんですか? カヨコさん、その表情は」

「別に」

 

 

 

 * * *

 

 

 

「ヒナ委員長?」

「来て正解だったわね」

 

 あらかじめ、ヒナ委員長に連絡しておいて良かったと思うイナ。

 

(風紀委員会とヒフミが居なくてどうなるかと思ったけど、なんとかなって良かった……)

 

 先ほどの戦闘は、お察しの通り状況を判断して実行に移した訳ではない。

 

(フレンドリーファイア大丈夫かな? 怒ってない?)

 

 

――

 

 

 少し時間を遡って――カイザーPMC理事との戦闘中

 

 

(どうしようどうしよう、アタフタしてたら前衛残っちゃった……今更戻るのもなぁ)

 

 便利屋と一緒に戦う事になって、心配が膨らんでいくイナは、後衛に引き下がらずに前衛に残ってしまう。気付いた時には遅く、ハルカに近い位置で銃撃戦をしていく事になった。

 

(ハルカが危ない!)

 

 ショットガンを連射しているハルカに向かって、パワーローダーの攻撃が迫る。避ける気配がないため、イナは、パワーローダーの腕に向けて発砲するが……

 

「うっ……!」

 

(や、やっちゃったー!!)

 

 銃弾がハルカの頭に直撃してしまった。そのまま、体を右側へふらつかせ、攻撃を避けることができたが、それどころじゃないイナ。

 

(おとなしく後ろ下がっときます……)

 

「……イナありがとう」

 

(!!??)

 

 後衛に下がる途中、アルと目が合って何故かお礼を言われる始末である。

 

(取り敢えず頷いたけど、怖いから声出なかった……)

 

 自分の中で、紫関ラーメンを爆破した仕返しと自分を正当化しつつ、いつ謝ろうか考える。

 

(……気持ちを切り替えよう)

 

 銃が使えない……というより自身の射撃精度が良くないとなると、残るはグレネード類しか攻撃方法がない。幸い、グレネードは沢山持ってきてはいるので、困ることはない。

 

(……ここだ!)

 

 タイミングを見計らって、グレネードのピンを抜いてすぐに投擲するが、パワーローダーの横に転がっていき、爆破時間も考えていなかったので、すぐには爆発しない。

 

「フン、下手くそめ。どこに投げてるんだ悪魔」

 

(く゛や゛し゛い゛!)

 

 理事に嫌味を言われてしまい、イナは悔しくて奥歯を強く噛む。

 

 しかし、偶然にもイナが放ったグレネードが炸裂し、結果的にカイザーPMC理事を追い詰める事に成功した。イナは自分の投げたグレネードによって、地面が崩落したとは思っておらず、嫌味を言った理事に罰が当たったのだと鼻で笑う。

 

(カイザーPMC理事はドジっ子だったのか……ん? あれは……)

 

 便利屋と一緒にパワーローダーに近づいたイナは、理事の手にある起爆スイッチを発見し、ハンドガンの照準をそれに合わせる。しかし、またもや外れて銃弾は理事の頭に直撃してしまった。

 

(あ、ヤバ……)

 

「うぐぅ……何回も何回も邪魔しおって!! 悪魔……いや『纏 イナ』! 貴様さえ居なければ、今頃、本部で……」

 

 今まで『悪魔』としか呼ばれなかったが、今回改めてフルネームで呼ばれてしまう。

 

(違うんです! というか、面識ないはずなのに名前覚えられてるし?!)

 

 面識ない相手に恨まれているような発言が一番恐怖を感じるイナ。その恐怖を吹き飛ばすようなムツキの銃声が、砂漠に響き渡ったのであった。

 

 

 

――

 

 しばらくして、アビドスと先生が気絶したホシノを連れて戻って来た。

 

「"みんなありがとう!"」

「皆さんが居なければどうなっていたか……本当にありがとうございます!」

「ん、ありがとう。でも私たちだけでも……」

「シロコ先輩! ……みんな、あ、ありがとう」

「助かりましたーありがとうございます! このご恩は必ずー」

 

 アビドスの面々はお礼を言って、その場を後にする。

 

「さて、我々も戻りましょうか」

 

 チナツがゲヘナ学園に戻ろうと皆に声をかける。

 

(自分も便利屋と一緒に……ってあれ!?)

 

 イナも便利屋と帰ろうとしたが、アル達はもう居ない。遠くをよく見ると、カイザーPMCの軍用車に乗って砂漠を走っているのが見えた。

 相変わらず、逃げ足が速い連中である。

 

「纏 イナ、あなたはこっちよ」

「ヒナ委員長……!!」

 

 置いて行かれたと思ったが、そこに救いの手が差し伸ばされる。

 

(天使だ!)

 

 

 そして、ヒナ、アコ、チナツ、イオリ、イナを乗せた車が、ゲヘナ学園に向かって走り出す。

 車内はいつも通りのヒナ、何故かホクホク顔のアコ、イナを見てため息をつくチナツ、頬杖をついて窓の外を見ているイオリ、そして緊張しているイナという、誰も喋らない状態であった。

 

(き、気まずい……)

 

 喋らないと、気まずい状態が続くものだと思い、イナは口を開く。

 

「あ、あの……こうして風紀委員の車両に乗ると、連行されてるみたいに見えますね」

 

「あら、その通りよ」

 

 すると、ヒナが反応する。

 ヒナの『その通り』というのは、一体何の事を言っているのか、イナは理解できていない。

 

 

「……ゑ?」

「ヴァルキューレから協力要請が来まして。イナ、あなたは本当に……」

 

(ヴァルキューレ? ……ハッ!?)

 

 アビドスに来る前にしつこく追いかけてきたヴァルキューレの事を思い出す。いや、まさか……

 

 

「ひ、人違いなのでは?」

「纏 イナって名乗ってたそうです」

 

「偽名とか、なりすましとか……」

「このツノと服装はお前だろ」

 

「……変装してたのかも」

「この原付バイク、あなたのですよね?」

 

「ヒ、ヒナ委員長……」

「……はぁ、おとなしくしなさい」

 

 風紀委員の全員から、あの時のガスマスクの写真を基に、イナの言い訳がことごとく言い負かされてしまう。

 

 

「それは本当です?」

 

 その言葉に対して全員がうなづく。

 数十秒ほど、頭の整理を行って結論が付いた。

 

(悪魔だ!)

 

 

 

 

「急用を思い出したので、帰ります! お疲れ様でした!!」

 

 勿論勝てるはずもなく、文字通り大人しくなり、ヴァルキューレへと連行されるイナであった。

 

 

 

 

 






見てくださってありがとうございます!

3.5周年始まりましたね! ガチャについては、アロナ先輩の機嫌良かったとだけ……

次回もよろしくお願いします!

閑話として掲示板形式は?(全部の閑話が掲示板形式という訳ではありません)

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