名誉温泉開発部   作:第三のケモナー

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お久しぶりです!

お待たせして申し訳ないです。活動報告にもありましたが、色々とあったもので……
誤字報告、感想等ありがとうございます!


それではどうぞ







カツは小麦粉、卵、パン粉の順に

 

 

 

 

 

取調記録:899

担当者:ヴァルキューレ警察学校 3年 尾刃 カンナ

容疑者:ゲヘナ学園 1年 給食部 纏 イナ

 

 

 

 

『……名前は?』

『あの、これ撮ってるんですか……?』

『質問は許可していない!!』

『はひぃぃい! すみません!』

 

 ヴァルキューレ警察学校の取調室。そこには、強面のヴァルキューレ生徒とイナが机を挟み、向かい合って座っている。ビデオを撮っている事に気が付いて、イナが質問するが、それを許さないカンナ。

 

『もう一度言う……名前は?』

 

 再度イナに向けて質問をし、ややビクビクしながら口を開く。

 

『はぃい! ゲヘナ学園給食部1年、纏 イナです』

『よし、次は……』

 

『年齢は15歳、自宅はゲヘナ自治区の端にあります。

 普段は給食部として働いて、毎日料理を作って提供しています!

 タバコもお酒もやってません! 

 寝る前に暖かいココアを飲んで、動画を見て寝落ちするといい夢が見れます! そして、ストレスなく朝目が覚めます。救急医学部での健康診断で異常なしと言われました!

 自分は常にキヴォトスの平和と平穏を望んでいます。銃で撃ちあったり、頭を抱えたりするようなトラブルを作らないというのが私のモットーです!』

 

『……』

 

 何故か、質問された名前以外の事を話し出す容疑者イナ。カンナは、イナのあまりの唐突さに言葉が出てこず、苦虫を嚙み潰したような表情になってしまう。

 

『何故ここに居るか分かるな?』

『はい! ヴァルキューレから逃げたからです!』

 

 分かっているなら話が早いと、カンナは腕を組む。ここで素直に認めたので、この後は逃げた理由を聞くだけなのだが……

 

『逃げた理由は?』

『そ、それは……ゴニョゴニョ』

 

 明らかに先ほどよりも動揺しているのを見て、同じ質問を強い口調で問い詰める。

 

『はっきり言え!!』

『集合時間に間に合いそうになかったんです!』

 

 逃げた理由が少し分かった所で、次の質問へと移る。

 

『あの格好で、何処に行こうとしてた?』

 

 エプロンで隠そうともしない銃火器の山々、荷台に載せたミサイルと"例の刺激物グレネード”。大規模な戦闘を行うような装備は、明らかに危険性を孕んでいた。

 

『アビドスの砂漠に……』

『アビドス?』

 

 そういえば、アビドスの砂漠地帯でカイザーコーポレーションのPMC基地が崩壊したとの情報があったのを思い出す。詳しい報告では、PMC理事が生徒を監禁したとのことだがそのことだろうか。

 

『カイザーコーポレーションに捕まったアビドスの生徒を助けようと、"シャーレの先生"の所に……』

 

 予想は合ってたが、気になる単語が聞こえてきた。

 シャーレの先生というと、最近連邦生徒会のシャーレに配属となったあの大人の事だろう。それ絡みだと、上に確認を取らなければならない。

 

 それは後で確認するとして、問題は……

 

『理由は分かった……』

『じゃあ!』

 

『ただ、逃げる際にした爆撃行為はどうなんだ?』

『え? 爆撃したのはそっちじゃ……』

 

 ヴァルキューレの車両を含む、26台を巻き込む大事故を引き起こし、刺激物を利用した兵器の使用、こちらの被害は相当なものである。一部の者から『矯正局』行きを望む発言も現れているため、慎重にならなければいけない。

 

『明らかに貴様から爆撃あったが?』

『……もしかして、ミサイルの事じゃ……』

 

 イナは汗をダラダラと流す。報告では、爆発物の中に小型ミサイルの使用もあったので、それの事を言っているのだろう。

 

『それは多分、落ちたときに偶然発射されたんだと思います!』

『偶然でこちらをロックオンして爆撃か。下手な言い訳を……』

『違うんです! 本当に……あ!』

 

 ふと、容疑者が思い付いたように声を上げる。

 

 

『そういえば、自分が発射したかの映像も残っているはずですよね?』

『……』

 

 

 本来ならカンナは、イナの情報から雑談を振っていき、スムーズにボロを出して事情聴取を終えようとした。

 しかし、イナ自らプロフィールをべらべらと話した影響で、調子が崩れてしまったカンナは、早く終わらせようと単刀直入に訊きすぎてしまった。

 

(チッ……急ぎすぎた)

 

 結論から言うと、映像は"残っている"。だがそれらは、イナの言う通り、"偶然落ちて発射" "カバンから偶然こぼれ落ちて爆発"したようにしか見えないのだ。

 

 爆破を意図的にやったのであれば、十分矯正局行きも考えられるが、"偶然"ならば話が違ってくる。

 

(本当に偶然なのか?)

 

 ヴァルキューレ車両の窓をミサイルや爆発物で割り、刺激物で視界と判断力を無力化させて逃走。偶然にしては、余りにも計画的な犯行と思ってしまう。

 映像が映像なので、矯正局行きはないだろう。これ以上続けても無駄だと判断したカンナは、取り調べを終わらせる準備を整える。

 

『……分かった、映像を確認する。』

 

 そう言うとカンナは、取調室の映像を切るのであった。

 

 

 

 

クゥゥゥゥゥ……

 

「……お腹空いてないか?」

「す、空いてません」

 

 取調室に響く、腹の虫は空気を読んでくれなかったようだ。イナから聞こえるその音は、カンナを呆れさせるのには十分だった。

 

「何か頼むか……」

 

 その音を聞くとこっちまでお腹が空いたのを感じたカンナは、思わず口に出してしまう。

 

「え゛? ありがとうございます!」

「違う、独り言だ。というかこの状況でよくそんな……」

 

 独り言から何か頼んでくれるものかと思っていたイナは、俯いて小さくなる。小動物のようになった事に、若干の罪悪感を覚えつつ、イナに声を掛ける。

 

「ハァ、何が食べたい?」

「やっぱりカツ丼でしょ!」

「図々しいなお前……」

 

 食欲を掻き立てて尋問をすることもあるので、一応出前は可能である。イナの容疑が確定すれば、更なる情報を引き出す為にやったかもしれないが、この状況だと出来ない。まあ、カツ丼のお代はイナ持ちになるが。

 

 注文を済ませたカンナは、改めてイナの印象について考える。

 

(見た目や言動と雰囲気は普通の生徒に見えるが、ゲヘナ学園の生徒は油断できないからな……)

 

 『美食研究会』や『温泉開発部』『便利屋68』、過去には『雷帝』といい、問題児が多すぎる。その大部分は風紀委員会が抑制しているとはいえ、キヴォトスの被害は大きい。

 

 ふと、そこである疑問が浮かんでくる。

 

(……待て、風紀委員はなんでこいつをヴァルキューレに引き渡したんだ?)

 

 あまり好ましくない事実だが、普段であれば『自治区内の』や『うちの学校の生徒』という言葉で、ヴァルキューレに引き渡される事はほとんどない。今回が特殊とはいえ、自身の学校の生徒が問題を起こしたのであれば、ゲヘナで罰を受けるはず。

 

(ゲヘナでも手に負えない? あの風紀委員長が?)

 

 有り得ない想像をしたところで、一旦冷静になる。何か目的があるのだろうが、深く考えるのは後でもいい。

 

(それにしても『給食部』か……)

 

 温泉開発部や美食研究会みたいにキヴォトス全域で話題になっていないという事は、ゲヘナ自治区限定で悪名が響いているのだろうか。

 

 

「お、来たかな?」

 

 考えているうちに、注文していたものが届いたのか、取調室ドア外から足音が聞こえてくる。カンナがドアを開けると、足音の主が姿を現した。

 

「お届けに参りまし……」

「やっ……」

 

「……どうした?」

 

 届けに来た角が生えている生徒と、それを見たイナが固まっている。その後に、イナは口をパクパクさせ、もう片方は三角目の呆れ顔を見せている。知り合いと思われるが、どういう繋がりだろうか。

 

「な、何でフウカ先輩が!?」

「いや、こっちのセリフ……というかイナどうしたの!?」

 

 どうやら、ゲヘナ学園の先輩後輩の仲らしい。

 

「えっと、ちょっとやってしまって」

「おい、何処がちょっとなんだ?」

 

 あの大事故を『ちょっと』で済ませるイナにツッコミを入れるカンナ。

 

「だって偶然で勘違いで……」

「それでも、ヴァルキューレ車両26台を破壊したのは事実だろう!」

「ヴァルキューレ車両を破壊……26台!?」

「26台!?」

 

 カンナの言葉に驚きが隠せないフウカと被害を初めて聞いたイナ。フウカはイナがそんな事をする訳が無いとは分かっているが、破壊してしまったのは事実らしい事に混乱してしまう。

 

「フウカ先輩こそどうして出前に?」

「『給食部』として行ったら手伝う事になって……」

 

 この二人は『給食部』の先輩後輩の関係らしく、意図せずたまたま出会ってしまったようだ。

 

「とにかくだ。確認と手続きが終わるまで大人しくするように」

 

 カンナはそう言うと他ヴァルキューレ生徒にこの場を任せて、部屋から退出する。これから『休憩時間』という建前の確認作業と手続きを済ませなければならない。上から何かを言われたにせよ、『偶然の事故』なら矯正局行きも投獄もないだろう。

 

(空崎 ヒナは何を……)

 

 引き渡した目的を考えつつ、カンナは廊下を進んで行くのであった。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 その頃ゲヘナ風紀委員会では、ヒナとアコが執務室で書類仕事を行っていた。

 

「ヒナ委員長」

 

 紙が擦れる音が聞こえなくなり、ひと段落したのかアコが話しかけてくる。ヒナはそれに頷いてコーヒーカップに口を付けた。

 

「そういえば、なんでゲヘナの火薬庫をヴァルキューレに引き渡したのですか?」

 

 アコの疑問は正しい。あの問題児をうちで捕らえるのではなく、ヴァルキューレに渡すということは、ゲヘナの火薬庫の情報を渡す事と同じなのではないかとアコは思ってしまう。

 だが、ヒナが言ったのは反対の答えであった。

 

「イナを守るのと、ゲヘナの火薬庫の情報を渡さない為」

「……詳しく訊いても?」

 

 コーヒーソーサーにカップを置き、アコに説明を始める。

 

「もしこのまま、ゲヘナでイナを捕まえたとするとヴァルキューレでどうなると思う?」

「指名手配とは行かずとも警戒されて……『情報を集めようと』します」

「その通りよ」

 

 イナ周りの調査やイナ自身の情報が調べられ、ゲヘナの火薬庫に近づく可能性が高くなる。

 

「その中で『普段は引き渡しに応じない風紀委員会が応じた』となると、イナではなく私達の行動の意味を探ろうとする」

 

 その過程で、イナについて調べられる事はあっても、風紀委員会の行動に注目を集めて、そう深くは調べられる事は無い。

 

「ただ、これだけだと意外性に欠ける」

「他にも……?」

 

 

「『先生』の存在よ」

 

 あれから先生は、イナの起こしてしまった事件で奔走している。そして実を言うと、あの証拠映像は先生が集めてきたものである。

 

 故意にやったことではなく、あくまで自身が原因を作ってしまったのだと生徒を守るように……

 

「なるほど『先生』が……」

 

 アコが理解したところで、執務室のドアがノックされて風紀委員が入室する。

 

「失礼します! 『温泉開発部』が公園の噴水周辺に集まっているとの情報が!」

 

 どうやら、そう長くは休ませてくれないらしい。

 

「今向かうわ」

 

 ヒナは上着を靡かせて現場へと急行する。

 

 

(どうか『あんな事』にもうならないように)

 

 

 

 









読んでいただきありがとうございます!


まだまだ忙しくなりますが、合間でしっかり続けていきますよ!
余談ですが、届いたゲヘナのキーボード使い始めて少し作業効率上がった気がする? 使い心地は結構良いです。

次回もよろしくお願いします!
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