名誉温泉開発部   作:第三のケモナー

24 / 26
感想等ありがとうございます!

それではどうぞ


時計じかけの花のパヴァーヌ編
魚のあらはお湯を通してから


 

 

 

 

 

「本当にすみませんでした!」

 

 ヴァルキューレから解放され、フウカと共にゲヘナ学園に帰ることになったイナ。色々と迷惑をかけてしまった事を謝罪し、給食部の車両で帰路につく。

 

「フウカ先輩ありがとうございます……わざわざ車まで」

「いいのよ、どっちみち用事は済ませてあるから大丈夫。そういえば、救出作戦どうだった?」

 

 フウカが運転する車両の助手席に乗って、アビドスでの出来事を伝える。先生や便利屋、アビドスの面々、カイザーPMC理事、そしてホシノ先輩の事も。

 

「行って良かったみたいで安心」

 

 一先ずイナが無事だったこととイナの友達が助かった事に安堵したフウカは、給食部の車のスピードを上げる。だが、安心と言っていたフウカの表情は浮かばない。

 

「だけど、イナが『一時外出禁止』になるなんて……」

 

 

 そう……この度、纏 イナは『外出禁止』となってしまったのだ。

 

 

 一時と付くように期間は決まっているものの、一人の戦力が貴重な給食部にとって途轍もなく大きい痛手である。イナとしても処罰を受けたくなかったが、もしも冒頭のように謝って許されて解放されるようなら、ヴァルキューレの存在意義がなくなってしまう。

 

「逃げた自分も悪いですけど、なんか納得いきません!」

 

 イナはこの処罰に対して自業自得な面を認めてはいるが、ほんの少し納得がいってない。それもそのはず、自身が知らぬ間に車両破壊の犯人になったからである。

 

「気持ちは分からないでもないけど、もし給食部で食中毒が起きた時、罪悪感が無かったとして『料理で知らず知らずのうちに食中毒になる食材が入っていたので仕方ないです』なんて言えないでしょ?」

「う゛、その通りです……」

 

 フウカに言われて完全に反省するイナ。元をたどればミサイルの整備を怠る、チャックをしっかり閉めない、ヴァルキューレの取り調べに応じないなどのヒヤリハットやミスから始まったものである。

 

「まあ、完全な人なんていないから大丈夫よ! さて、せっかくだからこの間にしっかり体を休ませなさい!」

「フウカ先輩!!」

 

 幸い、食事の配達と食材も買い込んでいるため餓死することは無いだろう。

 ただ一つ心配なのが……

 

(フウカ先輩とジュリだけで大丈夫かな)

 

 原作は二人だけで給食部を回せてはいたとはいえ、心配になってくる。

 

(かといって料理の練習すると自宅が爆発しかねないし……)

 

 外出禁止となると、一人で過ごすのにも限界がある。下ごしらえで兵器に変わってしまうと外出する家さえも無くなってしまう恐れがある。

 

(一応聞いておきますか)

 

「フウカ先輩、ちなみに自宅で料理の練習なんかは……?」

「絶対とは言わないけど……やるの?」

「いや! 大人しくしときます!」

 

 やるの? と言われた際に、イナの目にはフウカの例の顔が映った様に見えた。実際にはそんな顔はしていないのだが、疲労と度重なるトラブルを起こしたイナは何かを感じ取っていたのであった。

 

 

 

 

 【イナの自宅】

 

 

「それじゃあイナ、ジュリと第8食堂で待ってるから! 困ったら連絡してね?」

「分かりました!」

 

 

 送ってくれたお礼をし、給食部の車が見えなくなるとイナは自宅のドアを開けて中に入る。

 

「ただいまー」

 

 独り言で帰宅を知らせるが、当たり前なことに中に誰も居ないため返事は帰ってこない。靴を脱いで奥へ進んでいき、自室のベッドにボフッと音を立ててダイブする。

 

「疲れたー!」

 

 今日は出来事が色々と起きすぎて精神的にも身体的にも疲労感を感じているのか、いつもよりベッドが気持ちいいと感じるイナ。

 

(これからどうしよう……)

 

 外出禁止ということでできる事が限られてくる。給食部が忙しすぎたのか、家でやる事といえば家事と動画鑑賞、ゲームしかない。

 

「ゲームか……」

 

 ふとモニターの横を見るとやっていないゲームが積まれている状態、つまり『積みゲー』がある。このゲーム達は給食部の活動が始まって一度も手を付けていなかった代物である。

 イナはベッドから起き上がって、モニターとゲーム機兼パソコンの電源を付ける。

 

「どのゲームにしようかな」

 

『ゼルナの伝説』『聖槍伝説』『ブリザードエムブレム』『ドラゴンテスト』『クッキング海女』と積みゲーの中からゲームソフトを選んでいく。すると、その中から気になるタイトルを発見する。

 

「『テイルズ・サガ・クロニクル』?」

 

 他タイトルとは違って聞いたことのないタイトルで、どうやらジャンルはRPGらしい。

 

(せっかくだから、私はこのゲームを選ぶぜ!)

 

 セッティングし、ゲームを開始する。

 

 

〔コスモス世紀2354年、人類は劫火の炎に包まれた……〕

 

「……ファンタジーの雰囲気とかっていうより、なんか現代がモチーフ?」

 

 始まりからやや不穏な空気を見せるが、こういうゲームは世界観をプレイヤーに説明するために必要なので、一旦はきちんと見ていく。

 

〔チュートリアルを開始します。まずはBボタンを押して、目の前の武器を装着してみてください。〕

 

「お! ご丁寧にチュートリアルありがたい。えっと……」ポチッ

 

 

ドカーーーーーーン!!

<GAME OVER>

 

 

「……なんじゃこりゃぁ!!?」

 

 突然のゲームオーバー画面に困惑してしまうイナ。一瞬ボタンを押し間違えたのかと思ったが、2回、3回とリスタート及びコンテニューを繰り返しても結果は同じである。

 色々と試して、Aボタンを押してみると次に進んだ。これだけならテキスト記入ミスだと考えるのが普通なのだが、チュートリアルでボタンを押し間違えるとゲームオーバーになる時点で嫌な予感がする。

 

「装備してと……ドット絵とかデザインかわいいし、システムも良さそう」

 

 やはりチュートリアルのあれはミスなのだと判断して先に進める。

 

〔エンカウントが発生しました! 野生のプニプニが現れた!〕

 

「一気にRPG感が来た!」

 

 ランダムエンカウントによって、敵のプニプニが行く手を阻む。こちらは剣を装備している為、剣で攻撃するためにAボタン〔秘剣つばめ返し〕を押す。

 

 

〔ッダーン! 攻撃が命中、即死しました〕

 

「おお! 強……」

 

<GAME OVER>

 

 

「って自分がやられたのか」

 

 何故ゲームオーバーになったのか理解できないイナだったが、ゲームオーバー画面に追加のメッセージが表示された。

 

〔プニプニ:どれだけ剣術を鍛えたところで、我が銃の前では無力……ふっ。〕

 

「……」

 

 銃弾も見えなかったし、プニプニが銃を構えている様子もなかった。色々とツッコミ所はあるが、一つだけ分かったことがある。

 

「これ『質の良いバカゲー』だ……」

 

 フリーRPGにあるような、ギャグやクソゲー感を出そうとしてるやつではなく、なるべくしてなったようなゲーム。

 次は間合いをとって攻略し、無事に撃破することができた。ちゃんと試行錯誤を前提に考えたゲーム攻略、理不尽さはあるものの絶対にクリアできるようになっている仕様はとても良い。

 

「でもこれ、ぐっ……」

 

<GAME OVER>

 

「よし! え?」

 

<GAME OVER>

 

「コ゜」

 

<GAME OVER>

<GAME OVER>

<GAME OVER>

<GAME OVER>

 

「弱すぎなんだけどマジで!」

 

 

 自身のプレイスキルも相まって、先ほどから死にまくっている。バカゲーとはいえ、この難易度設定はおかしいのではないだろうか。

 

「これ所々日本語おかしいし、ちゃんとテストプレイとかデバッグとかしたのだろうか」

 

 ゲームのテキストには普通の会話に『植物人間』だの『腹違いの友人』だの、笑いという概念を通り越して理解が出来なかった。というか後者に関しては友人で良かったのではないか。

 

「ストーリーは予想出来なくて面白い……?」

 

 予想出来ないストーリーは良いのだが、気になるのは、ヒロインが前世の妻とはいえ今の母親なのは勘弁して欲しい。下手すると誰かの脳が破壊されかねない。

 

「もし主人公とヒロインとくっ付くとなるともう……ね?」

 

 そう考えると続きが気になってくるものだ。

 そしてゲームを続けていくイナだったが……

 

 

<GAME OVER>

〔越後:人間、辛抱だぜぇ!〕

 

<GAME OVER>

〔越後:気を確かに持てよぉ~〕

 

<GAME OVER>

〔越後:狂気の世界の、始まりだぜぇ?〕

 

<GAME OVER>

〔越後:情けない姿を、晒しているじゃないかァ~〕

 

 

「おまえ なんなんだよ!!」

 

 やけに煽って来る敵に思わず腹を立ててしまう。何故かこの敵だけテキストのテイストが違うのだ。

 ふと、イナが時計を見るとこのゲームを始めて3時間以上経っている。

 

「……お腹空いたし、一旦休憩しますか」

 

 イナは台所の方へ行き、冷凍庫を開ける。

 その中には冷凍食品ばかりだ。理由としては単純に早く食べられるためもあるが、一番の目的は下ごしらえを防ぐためである。

 

「ん? これ……」

 

 イナは、冷凍庫の中に冷凍食品と違った食材が入っているの発見した。

 

「あ、これ早めに食べて処理しないとまずい?」

 

 そう言って冷蔵庫から取り出したのは捌いた後の冷凍された魚。

 これは、弁当を作るために昨日フウカ先輩から貰ったものである。結局、外出禁止によって弁当を作る必要は無くなったのだが、このままだと腐らせてしまって勿体ない。

 

「下ごしらえして焼くの怖いから煮物にしよ」

 

 魚が入った袋ごと流水にさらして解凍し、その間にお湯を沸かす準備を始める。

 

(『混ぜる』『焼く』『盛り付ける』『煮る』『蒸す』『揚げる』『茹でる』……)

 

 幸い、切るなどはしなくて済むようにはなっているが、念には念を入れていつもの言葉を心の中で唱える。ある程度解凍できた魚をボウルの中に入れ、加熱しておいたお湯を準備した。

 

 

 だがここでイナは、ある重大なミスを犯してしまう。

 

 

「魚にお湯を掛けて……と」

 

 お湯を沸かすまでは良かったのだが、それをあろうことかボウルの中の魚に『直接』掛けてしまった。

 『霜降り』と呼ばれるこの作業は、魚から臭みやぬめりを取ったり、煮崩れしたりしないようにする『下ごしらえ』である。

 

(というかあのゲームの越後っていうキャラ誰だろう……)

 

 肝心な所でイナはゲームの事を考えて、魚の変化には気が付かない。

 みるみるうちに、白くなって身が引き締まるはずの魚が黒く染まってしまう。それは『魚型水雷』というよりも『魚水雷』と言ってもいいだろう。魚は捌かれているので分解された姿だが。

 

「ん? ナニコレ!!?」

 

 やっと変化に気が付くイナ、黒くなっている事にパニックを起こす。

 

「焦げた……? いや、これ魚雷!?」

 

 さらに、微かに匂うの魚の香り以外にも『知っている臭い』がイナの鼻を刺激する。

 

「あれ、ガス? 換気してなかったっけ?」

 

 ミレニアム郊外でネルと対峙した(というより逃げていただけの)時に嗅いだ臭いと同じだった。恐る恐るコンロを見ると火が消えたと思っていたそれは、ガスを放出していた。

 

「待て、まだ慌てるじゅか……時間じゃない」

 

 まずはガスを止めて換気を行うのだが、イナは魚雷をなんとかしようとして、素手で持ち上げる。

 

「アッツ!!」

 

 物を持った際に、飛び散ったお湯と素手の熱さで思わず落としてしまう。

 刺激で魚雷の推進機構が作動し、弾頭の衝撃によってバブルパルスが発生。そして、ガスが充満している所で……

 

 

 

ドオオオオオオオオオン!!!!!

 

 

 

 なんとか爆発に耐えたイナだったが、ここで深刻な問題が浮上する。

 

「外出する家無いなった……」

 

 

 

 外出禁止なのに外出する家が無くなった時、どうすれば良いのでしょうか?

 

 

 

 

 





読んでいただきありがとうございます!

皆さんのおかげで今年も頑張れました。来年もよろしければ、イナの事をよろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。