名誉温泉開発部   作:第三のケモナー

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対策委員会編の内容含みます。
アニメや原作から見たい!という方はそちらから


アビドス対策委員会編
らっきょうの薄皮剥きはもみ洗いから


 

 

 

 

 

「ぶえっくしょん!」

 

 砂が鼻をくすぐり、女の子らしくないくしゃみをしているイナ。

 

 周りは砂漠化が進んでおり、遠くには崩れて廃れているビルが見える。原付バイクの後ろにある荷台の中の給食を気にしながら走らせており、道路はあるとはいえ砂が多いこの地域は結構揺れる。

 

 ただ、他の自治区とは違って戦闘による渋滞や封鎖が少ないため、その点でいえば快適なのかもしれない。

 

(切実にフェイスガード欲しすぎる)

 

 ちなみにヘルメットはツノで入らないので、ノーヘルである。

 

 

 現在位置はゲヘナ自治区を離れて、『アビドス高等学校』近くに来ている。

 

目的は……

 

 

「ちわー! 給食部の宅食でーす!」

 

「あら~いつもありがとう」

 

 

 給食部として行っている宅食である。

 

 嵐や砂漠化により足元がおぼつかず、外出を控える住民も多い。なので、足腰が悪い者や不自由な者に向けて宅食をしようとしたのがきっかけで始めたもの。

 完全ボランティアではなくお金がかかるものの、意外と人気らしい。

 

「こちらこそお世話になってます!」

 

 最後の家を訪ねて今日の宅食は終了になる。

 

 

(まだ時間あるし、久しぶりに『あそこ』行っちゃおうかなー)

 

 ゲヘナへ戻る道とは違う道を原付で走り、丁度お腹も空いていたのでついでにあの店へ行く。

 

(しーばしーば~)

 

 

 着いたのは『紫関ラーメン』というラーメン店

 

 580円といった破格の値段なのにも関わらず、とても美味しい。余裕がある時はこうして食べに来ているほど。

 アニメやゲーム本編にも出てきており、感覚としては聖地巡りに近いのかもしれない。

 

(関わるつもりはないけど、まだあるうちは行きたい)

 

 

 紫関ラーメンの戸を開けると柴犬の店主が迎えてくれる。

 

「へい、らっしゃい! お? 久しぶりじゃねぇか!」

 

「久しぶりです、大将!」

 

 幸いにもイナの顔を覚えてくれてたようで嬉しくなる。カウンターに座ってメニューを見て、注文する。

 

「紫関チャーシューメン大盛の海苔トッピングで」

 

「あいよ! 今日はスープの濃さどうする?」

 

「濃いめで!」

 

 同じように料理を提供する者としては、柴大将のラーメンやお客さんに対する姿勢はとても参考になるし勉強にもなる。こだわってるといって驕るわけでも、その自信をお客さんに押し付けるわけでもなく、柔軟に対応しているその姿はフウカ先輩と同じように尊敬している。

 

 だが……

 いつ見ても大将をモフりたいと思うのは自分だけだろうか。

 

(というか柴大将その恰好下穿いてないよね…)

 

 今カウンター席で見えないが、一度だけ全身を見たことがある。それは、イナが忘れ物をしてわざわざ外まで出てきてくれた時に偶然見てしまったもの。その時は感謝の気持ちでいっぱいだったのだが、部屋に戻ったらふと疑問に思ってしまった。

 

(柴大将の服、何か変……どこが変なのかな…?)

 

 おそらく、他のキヴォトス人も違和感を感じていなかったので『そういうもの』と判断した。

 

 現に風紀委員会No2の行政官も首輪とカウベル、手枷のアクセサリー?を身に着けている。さらに胸の横乳が丸見えになっている服を着ているが、他の風紀委員どころかヒナ委員長に注意されていなかったり、改善がされてなかったりする所を見るとやっぱり『そういうもの』なのだろうか。

 

 

 イナは今大将の下はどうなっているのか気になってカウンター越しに厨房を覗こうと前のめりになる。

 

(あともうちょっと……)

 

 背が低いのもあってなかなか見えない。

 

 ふと店外の引き戸の方から気配が近づいてくるのを感じる。

 

「?」

 

 イナが横を見ると4人の人影と、それぞれにヘイローが浮かんでいるのが見える。

 

「ああイナちゃん気にしなくてもいいよ。(調理してる様子を)見たい気持ちは分かるしな」

 

 大将はイナが覗いていたことがバレて横を向いたのだと勘違いし、そう声をかける。

 

 イナが忘れていた学生証をすぐさま届けたこともあり、チラッと見えた給食部という文字で料理関係者だと、大将は知っていた。

 

(見たい気持ちは分かる……? 服装を!?)

 

 そして、まさかの衝撃発言に固まるイナ。

 

 一瞬キヴォトスの謎が解けると思ったが、流石にそのまま見ようとする度胸はイナには持ち合わせていないのでちゃんとカウンター席に座り直す。

 

 

 店の引き戸が開き、4人の生徒が入店してくる。

 

 

「あれ~? ゲヘナの生徒?」

 

 服装に統一感はないが、黒や赤の装いとツノを見るとイナと同じゲヘナ学園の生徒に見える。だが、イナは直接会ったことがないにもかかわらずこのゲヘナ学園の『4人』を知っている。

 

(Popsicle!? 便利屋68! ナンデ?)

 

 

『便利屋68』

 ゲヘナ学園生徒4人で構成される企業(非公認and違法)のこと。

 メンバーは社長『陸八魔(りくはちま) アル』、課長『鬼方(おにかた) カヨコ』、室長『浅黄(あさぎ) ムツキ』、平社員『伊草(いぐさ) ハルカ』であり、現在は風紀委員会に目を付けられているのか自治区外で活動している。

 

『真のアウトロー』を目指している、これまたある意味ヤバイ集団である。

 

 

「どうするーアルちゃん、別のところにする?」

 

 室長であるムツキが社長のアルに提案する。

 

「私は別に構わないのだけど……」

 

 そう言うとアルは平社員のハルカを見る。

 

「あ、アル様が行くところなら何処へでも……」

 

「じゃー決定ね! 紫関ラーメン1つ!」

 

「あいよ!」

 

 便利屋の4人はイナの奥のボックス席へと座る。これだけならば、たまたま同じ学園が居合わせただけでこれ以上の進展はないのだが……

 

(めっちゃこっち見てるぅ)

 

 何故か課長のカヨコがイナの方をじっと見ており、イナもその視線を感じている。

 イナは知っていたとはいえ、会ったこともないし見たこともない。ましてやゲヘナ学園はマンモス校、よっぽどの校則違反や目立つことをしていないと知られることはない。

 

「へい、お待ち! 紫関チャーシューメン大盛の海苔トッピングスープ濃いめね!」

 

(うっひょー!)

 

 ここで頼んだラーメンがイナの目の前に出される。見られていることを頭の隅に追いやり、目の前のラーメンに釘付けになる。

 

 基本の柴崎ラーメンにチャーシューが4つ追加して豪華な見た目、スープとトッピングした海苔の香り……

 そして、サービスしたのかもう一つ卵の追加トッピングを付けていても違和感がない魅せる盛り付け。見るだけでも美味しい。

 

「大将、まさかこの卵って!」

 

 イナがすぐさまラーメンに入っている卵に気がつく。

 

「おう! 久しぶりに元気な顔見れたから嬉しくってよぉ、卵が自分から入っちまったんじゃないか?」

 

 この柴大将、粋である。

 

「いただきます」

 

 麺をすすり、スープも同時に味わう。

(美味すぎる!)

 某伝説の工作員の如く簡素な感想だが、この安さでこれだけのクオリティだと語彙力も失ってしまう。是非ともジュリやフウカ先輩に食べてもらいたい。

 

 すっかり便利屋68と会ったことさえも忘れるイナであった。

 

 

 * * *

 

 

「カヨコちゃんあの子と知り合い?」

 

 カヨコがイナの事を見ていたため、ムツキがその事について質問する。

 

「いや、知り合いじゃないよ。人違いだった」

 

 誤魔化してそう答えた。

 別に他人の空似で見ていたわけではなく、警戒心をもって注視していた。

 

 カヨコはカウンターに座ってラーメンを食べている生徒から視線を外し、気になっている原因を探る。

 

 ここへ来る前、『風紀委員』の姿を見かけており、幸いこちらに気が付くことなく『誰かを探している』のか、どこかへ行ってしまった。

 

 ゲヘナ自治区外での活動はあるかもしれないが、あれではまるで…

 

(監視対象を見失ったような様子だった)

 

 そして、そのゲヘナ自治区外でわざわざ遠い所からラーメンを食べているこの生徒は、リアクションを見るに自分たちを『知っている』。

 

(この生徒は一体……)

 

 ゲヘナで監視対象や捕縛対象は珍しいことはない。便利屋68も風紀委員会から追われている身であるため、アビドスに他の監視対象でも居たのだろうと考える。

 

(杞憂だといいけど)

 

 大将とのやり取りを見るに常連らしいという情報しか得られない。

 あの生徒の情報を持っているであろう青髪の風紀委員に心の中で舌打ちをする。

 

 

「おまちどぉ! 紫関ラーメン4つ!」

 

 便利屋の元にラーメンが置かれていく。

 

「きた~! いただきまーす!」

 

 頼んだ個数とは違うラーメンが来るが、すぐさまムツキは笑顔で食べていく。

 

「い、良いんですか? こんなに……」

 

「良いってことよ! うちのラーメンをわざわざ食べに来てくれてるんだ。腹いっぱい食べてってくれよ」

 

 ハルカがそう言うと、柴大将が暖かくて優しい返事をする。便利屋68はそのサービス精神を受け止めるようにラーメンに手をつけていく。

 

「んーおいしー!」

 

「そりゃ良かった! サービスするから、なんてったって

 

『セリカちゃんのお友達だから』な!」

 

 

 大将のその言葉に反応し箸が止まるアル。

 

 本来ならば便利屋68は『真のアウトロー』を目指す(アル社長曰く)企業である。金さえ貰えればなんだってする……例え恩義があろうとも無慈悲に始末する。

 

 だが、今の状況を見ると『お友達』だったり『優しさ』だったりと、アルの思うアウトローとはかけはなれていた。

 

 

「友達なんかじゃないわよ!」

 

 

 アルが大声を出し、カヨコが制するが止まらない。

 

「このお店が問題なのよ! 便利屋68は…私はこんなほっこりしたような所に浸ってちゃ駄目なのよ!」

 

「……ちょっとどういう事か分からない」

 

 カヨコがアルに詳細を求める。

 そして横目で見ると例の生徒も大声に反応している。

 

(……いやこれは『焦り』、しかも目線はハルカに? 何故?)

 

 カヨコは大声を出したアルではなく、ハルカに目線が行っていることに違和感を覚える。

すると、ハルカから

 

「……分かりました。つまりこんなお店は壊しちゃった方が良いってことですね」

 

 ハルカの発言に困惑する他メンバー。

 

「こ、壊すってどういう事?」

 

 最初は良き理解者だとアルは思ったが、『壊す』というワードが引っ掛かる。

 

「文字通りの意味です。……いきます」

 

 すると起爆スイッチのようなものを取り出すハルカ。

 

「ちょっとハルk…

 

 

 

 

ドガアアアアアン

 

 

 

 

 大きな爆発により、無慈悲にも紫関ラーメンは吹き飛んだ。

 

 

 

 

 





お待たせしました!

一体誰が監視対象なんですかね()


コメント読ませて頂いてます!次回もよろしくお願いします!

イナのプロフィールは?

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