名誉温泉開発部   作:第三のケモナー

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改めて生徒の苗字を見ると、初見では読めないの多いですね……ユカリの苗字見た時びっくりしました。

引き続き対策委員会編ネタバレ含みます。




調味料はまず砂糖から

 

 

 

 

 

「ぷは~おいしい!」

 

 

 時は少しだけさかのぼり、紫関ラーメン爆破前……

 

 イナはラーメンのスープを堪能していた。

 カヨコからの視線も外れ、安心したイナは便利屋68について考える。

 

(何か自分がやらかしたのだろうか……)

 

 便利屋の頭脳であるカヨコからあの怖い視線を受け、自らの行いを省みてみた。

 

 下ごしらえの失敗はあるが、何かしらの邪魔や悪意のある行動はなかったはず。直近だと美食研究会が取引先や生産者を荒らしていたから、その類いなのだろうか。

 

(でも便利屋だったら直接美食研究会にヘイトが向くだろうし、なにより……)

 

 

 便利屋のメンバーとアル社長はそんなに理不尽じゃない。

 

 人柄から分かるように、根っこは優しいのである。

 

 

 残りは『依頼』によって自身がターゲットなのかと思ったが、メンバーの一人であるムツキは自分の事を知らなかった。また、そのような仕草や絡み方はしてこない。

 

(そもそも今はカイザーコーポレーションの依頼受けているだろうし)

 

「おまちどぉ! 柴関ラーメン4つ!」

 

 大将が便利屋のボックス席までラーメンを運ぶ。

 そして、イナは気になっていた大将の下を見ると、あの時忘れ物を届けてくれた恰好と同じだったことに安心する。どうやらあの時だけではなかったらしい。

 

(安心しちゃったよ、穿いてないのに)

 

 柴大将が尻尾を振って便利屋にたくさんサービスしているのと会話しているのを見ると、だいぶあの4人も常連になったなと思うイナ。

 便利屋がこちらを攻撃する様子も視線もない。

 

 イナは大将からサービスしてもらった卵を最後に食べようと箸を伸ばした時

 

 

「友達なんかじゃないわよ!」

 

 

 突然、横から聞こえてきたアルの大きな声に反応し、箸が止まってしまう。

 

 

 いや……イナは大きな声に反応したわけではなく、アルが『言った言葉』に反応した。

 

(あれ? もしかして爆破されるのって今日…?)

 

 この流れは既視感を覚える。

 それはそのはず、この後に原作でアルの言葉を自身で勝手に解釈したハルカによって柴関ラーメンは爆破される。

『爆破される』

 

 爆破されるのか

 

 ほお(吟味)、ふぅん(理解)、へぇー(他人事)……

 

 

(エエエエエエェェェェェェ!!)

 

 すぐさまハルカを見るが、すでに準備は整っているようでこの距離から間に合いそうにない。銃で攻撃も考えたが、当たらなければ意味がない。しかも、相手はハルカでありそんなことでは止まるはずがない。

 

「文字通りの意味です。……いきます」

 

(いや判断が早すぎるぅ! いかないで!)

 

 イナはカウンター席を飛び出し、柴大将にかぶさるようにして守る。原作では軽傷みたいだったが、この人にはケガを負わせるようなことをさせたくない。

 

 

「マ゜!」

 

 周りは爆音と爆発に包まれる。

 いくらキヴォトス人が頑丈だからといって爆発は普通にダメージを受ける。もちろん、気絶もしてしまう。

 

 イナは視界が暗くなっていくのを感じ、眼を閉じる。

 黄色いヘイローが電源が切れるように消えていくのであった。

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

「ッ!? はい……それはっ! ……はい、わかりました」

 

 ゲヘナ学園風紀委員会は現在、アビドス自治区内近くまで進攻。その先頭にいるのは風紀委員の2人『火宮(ひのみや) チナツ』と『銀鏡(しろみ) イオリ』だ。

 

 チナツは風紀委員No.2である『天雨(あまう) アコ』から連絡を受ける。どこか信じられないといった様子だったが、落ち着きを取り戻す。

 

「どんな連絡だった?」

 

 チナツの反応が少し気になったイオリは内容について聞き出した。

 

「『ゲヘナの火薬庫』が見つかったみたいです」

 

「ふーん……それだけ?」

 

 監視対象である『ゲヘナの火薬庫』が、突如出現した砂嵐によりロストしたことは、イオリも把握していた。

 

 確かにチナツとの親交はあったが、それだけでこのようなリアクションになるはずがない。

 それに答えるようにチナツは続けて

 

 

「対象は便利屋68とアビドスの飲食店を爆破。校則違反及び情報漏えい防止のため、直ちに捕縛せよ……とのことです」

 

 

 便利屋68がアビドスで動きがあるのは、事前情報で知っていた。それを見越してこうして風紀委員会が進攻しているのだが、思わぬ報告にチナツは動揺する。

 

(イナはどうして……)

 

 動揺をよそにイオリは発言する。

 

「まあ、本性を現したんでしょ。あの『例のニンジン』とか『例のフレンチトースト』にしろ最近の動きは怪しかったし」

 

 それに続けて

 

「しかも、『ゲヘナの火薬庫』の存在が本当にあるとアビドスとトリニティに知られたら混乱になるだけだからちょうど良い」

 

 イオリとチナツは対象が及ぼす影響は計り知れないことを知っている。

 

 

 他校との勢力図変化、偽装が簡単になり複雑化するテロ、それに伴ってブラックマーケットに流れて市場は混乱、偽物の横行など与える影響は様々だ。

 

 

 なにより懸念しているのは

『トリニティとの全面戦争』

 

 食材さえあれば、簡単に兵器ができる。ただでさえゲヘナ周囲は火山があり、良い農場も沢山ある。

 

 イナが改良を重ねることによってロケット弾も迫撃砲もはたまた弾道ミサイルだってできてしまうかもしれない。

 

 

 不平等というのは争いを生む種である。

 あっちが持っていないのであればこっちも、とトリニティ以外にも技術力が優秀な『ミレニアム』も敵に回してしまうかもしれない。

 

 

 そして、連邦生徒会連邦捜査部シャーレの先生も……

 

 

「はぁ」

 

 イオリの言葉を聞いたチナツは便利屋68及び『ゲヘナの火薬庫』の捕縛のために進軍を続ける。

 

 

 

 

風紀委員会本部にて――

 

 

「……まったく、私の策が台無しになる所でした」

 

 チナツの通信相手であるアコは、思わぬ介入者によって自身の策が潰れそうになったことを呟く。

 

 アコの本当の目的は『シャーレの先生』であり、彼女らをアビドスへ進軍させたのは先生を確認し、ゲヘナへ引き抜くためである。

 アビドス付近をうろついていた便利屋を捕まえるという建前で当初は考えていたが…

 

(報告を受けた時から嫌な予感はしていましたが、運がいいのか悪いのやら)

 

 『ゲヘナの火薬庫のロスト』『飲食店で便利屋と一緒に居て爆破』

 この二つから考えられるに…彼女が便利屋を利用して、飲食物に偽装した爆弾で店を爆発した。という予想が立てられる。

 

(美食研究会に影響でもされたんですかね)

 

 ゲヘナで店を爆破するというのはあの集団が有名である。最近の報告にもイナと接触したとあり、それでこの犯行を考えてたのだろう。

 

 

 筋書きはこうだ

合法的に自分の力を試すために給食部へ、防護服を着て十分な威力を確認。

美食研究会との関わりで実験的に店を爆破させるのを思いつく。

便利屋68で偽装の効果と威力確認。

 

 

便利屋が爆発させた。ということも考えたが、状況的にこちらの方が可能性が高い。

 

 

……印象が悪くならないように補足を入れるが

 アコの脳内は度重なるいやがらせ(パンデモニウム・ソサエティー)やトリニティとの情報戦、想像を絶する校則違反者を相手にしている。イナをそれらと同等と考えているため、そう考えるのは仕方ない。

 

(ヒナ委員長に気に入られて調子に乗ってたのが運の尽きですね!)

 

……訂正が必要かもしれない。

 

 

 ちなみにこの進軍は行政官アコの独断であり、ヒナ委員長は指示を出した訳でもなく、ましてや関わってもいない。

 

 そして以前、ヒナ委員長がアコに言った『引き続き監視をお願い。』というのは行動を縛るためのものではなく、『イナの力を悪用する者』からイナを守る……というニュアンスで言ったものである。

 アコはそれを『イナが悪用する』のを防ぐ、という風に解釈してしまった。

 

 

 余談だが、ヒナも弁当を作るために料理をしている。同じ料理をする者として、イナが悪用しないという事は十分に理解していた。

 

 

「さあ、私も準備しましょうか」

 

 アコは風紀委員会がアビドス付近へ近づいているのを確認し、準備を始める。

 

 

 対策委員会との衝突は近い――

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

「……っいててぇ」

 

 

 イナの頭の上に黄色いヘイローが出現し、意識を取り戻す。まわりを見渡すと、爆発を目撃した通行人や野次馬がおり、建物と道を見るに柴関ラーメンの近くだということは分かる。

 

「そうだ! 柴大将は!?」

 

 柴大将を身を挺して爆風から守ったが、その対象である大将の姿が見当たらない。

 もしかすると、瓦礫に埋もれているかもしれないとイナは危惧し、柴関ラーメンがあった場所へ急ごうとしたとき…

 

「イナちゃん! 大丈夫か!」

 

 大将がこっちに向かってくるのを確認した。

 大けがを負っているのではないかとイナは肝を冷やしていた。安心からか脚の力が抜けてその場に座り込む。

 

(よかった……)

 

 大将の怪我の状態は擦り傷とやや出血は見られるが、動けないわけではなかった。

 

「大将、すぐに病院へ行って検査受けてください」

 

「いや、この通り動けているし、病院はイナちゃんの方が……」

 

 イナを見つけた際に座り込んでいたの見ていたので、大将の言っていることは正しい。だが、イナはそれに反対するように口を開く。

 

「ちょっと擦り傷があるだけです。こう見えても『爆発には慣れてる』んですよ? ちょっと安心して力が抜けただけです」

 

 爆発に慣れているという言葉に少し不安に思う大将。

 

「そ、そうか。でも俺は病院は……」

 

「頭打ったかもしれないんですよ! いいですね(・・・・・)!」

 

 イナに念押しされる大将。その勢いに負けて頷く。

 

「あ、ああ分かったよ。イナちゃんも病院行くんだよ?」

 

「……はい」

 

 

 

 

(おのれ、陸八魔アル)

 

 柴大将と別れて、このあとどうするか考える。

 

 これから便利屋を捕まえるために風紀委員会が進攻し、アビドスの対策委員会と対立する。そのいざこざに関してはあいまいだが、ヒナ委員長とホシノ先輩と先生がどうにかしてくれてたような気がする。

 

 部外者の自分はさっさと原付でゲヘナ自治区へ帰れば大丈夫……だったのだが……

 

 

「うそぉ……」

 

 原付を停めていた場所へ行くと、ものの見事に爆発に巻き込まれてとてもじゃないが走れる状態ではない。

 

(おのれ、陸八魔アル)

 

 他の交通手段はバスか電車と考え、スマホを取り出すが、電源が付かない。充電は十分だったので、おそらく爆発の熱か衝撃で壊れてしまったのだろう。

 

(おのれ、陸八魔アル)

 

 アビドスに関しては土地勘もないので地図を見ないと帰れない。周りの住民や柴大将に聞こうとしたとき、イナは気が付いてしまった。

 

(おのれ、陸八m……あれ? 誰もいない?)

 

 忽然と姿を消した通行人に違和感を感じる。

 まるで『いまからここが銃撃戦になる』かのような……

 

 

 すると遠くから大量の人影と足音が聞こえてくる。その黒い集団は『ゲヘナ風紀委員会』であり、それと同時にこの周囲は包囲されているということを意味していた。

 

(とにかくここから離れなくちゃ……いや、ちょっと待って)

 

「風紀委員会についていけば帰れるのでは?」

 

 某研究会や某開発部みたいに指名手配されている訳でも校則違反を犯している訳でもない。風紀委員会とは険悪な関係でもなし。

 

 そうと決まれば早速風紀委員会の集団に声をかけようと、一番早く着きそうな集団へ向かう。

 

 

 

 

 その場所へ移動すると、まさに一触即発といったようでゲヘナ風紀委員会とアビドス対策委員が向き合っていた。

 

(あれ、これって不味いのでは?)

 

 意図せず戦いのど真ん中まで来てしまったようだ。

 

(あ、先生だ)

 

 存在は知っていたが、この目で見るのは初めてだ。

 どうやら大人の男性らしく、頭にはヘイローは浮かんでいない所と動物やロボットの姿ではないを見るとキヴォトス人ではなさそうだ。

 後ろ姿でしか判断できないため、確証はない。

 

(とりあえず隠れないと巻き込まれる。)

 

 イナは射線を外すのと、気付かれないように影を縫うように対策委員会の後方へ隠れる。

 

(やっぱり近くで見たいよねこの戦闘)

 

 せっかくだからと車を遮蔽物として確保する。

 状況は風紀委員会側のチナツとイオリ、対策委員会側のセリカ、ノノミ、アヤネ、シロコそして先生が対面中。

 

 

 イナは気付いていない。風紀委員会の目的が便利屋と先生以外にも自分自身にもかかっていることを。

 

 

 

 

 * * * 

 

 

 

 

「先生、当たらないように後ろに隠れてて」

 

 アビドス高等学校2年『砂狼(すなおおかみ) シロコ』は、流れ弾が当たらないように先生へ後ろに隠れるように言う。

 

「"わかった。みんな気を付けて"」

 

「ん」

 

 そう言うと先生は、状況が把握しやすそうな後方の車を目指して動き出す。

 対策委員会のみんなは強いが、ゲヘナ風紀委員会の実力がどのくらいなのか分からない。アビドス高等学校1年『奥空(おくそら) アヤネ』が言うにはキヴォトスきっての最強部隊らしい。

 

(もし負けるような……いや、私が弱気でどうするんだ)

 

 生徒が先生を信じるように、先生も『生徒たちを信じる』。

 状況を見て的確な判断をできるよう準備を始めようと車の裏に隠れようとしたときーー

 

「へ? せせ、先生!?」

 

 どうやら先客が居たようだ。ツノや尻尾と制服を見るに、風紀委員会ではないがゲヘナの生徒だろうか。幸い、不審者ではなく自分が先生だということを分かっているらしい。

 右手を動かして声をかけようとしたとき、その生徒はおもむろに腰のハンドガンを取り出して銃口をこちらへ向けてきた。

 

「"ちょちょっと待った!"」

 

「あ、すすすみません! つい癖で……」

 

 どうやら攻撃の意思はないらしく、銃を降ろす。

 この子も爆発に巻き込まれたのか、所々服が破けている。そしてスカートの方を見ると破けているところから下着が……

 

「ちょっとどこ見てるんですか!」

 

 それに気が付いた様子で、隠すように両手で塞ぐ。急いで目線を逸らしたが、遅かった。

 目線がそこに向いてしまうのは仕方ないと思うんだ。

 

「"ち、違うんだ! つい癖で……"」

 

「癖でって……まあこちらも悪かったです」

 

 彼女も思い当たる節があるようで、この場は一度収まる。

 そういえば、彼女は何故このような場所に隠れていたのだろうか。ケガをしたのであれば病院か避難するはず、何か目的がないと銃撃戦の中に入りたいなんて思わない。

 

「"君はどうしてこんな場所に?"」

 

 彼女は考えたように間を開けて口を開く。

 

 

 

 

「えっと、風紀委員会に『個人的な』用事があるので」

 

 そう言う生徒の表情は、苦笑いしたように風紀委員会の方向へ向く。

 

 

 まるで、風紀委員会と対立しているような意味合いで言ったのであろうその言葉は、どこか不安さが残るのであった。

 

 

 

 

 




先生との初対面です。
次回もよろしくお願いします!



早くイナに料理させてあげたい……おのれ陸八魔アル
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