魔族に魔法を教えてもらおう!   作:PSコン

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27.一級魔法使い試験(3)

 メディカ達は当初の予定通り後半まで息を潜めていた。

 途中フリーレン達が水に魔力を流し、シュティレが警戒しない水場を制限したが、これは逆にメディカ達には有利に働いた。

 

 リーニエがすぐに水場への魔力に感づいたため早期に目的を把握。メディカは家系上水の探査が得意であったため、フリーレンらに先んじて水場の確保に成功したのだ。

 

 フリーレン達も全ての水場を封鎖する必要は無かったため、お互いに干渉することなく、制限した水場を利用できた。

 

 メディカ達は制限時間ギリギリでシュティレを捕獲。

 一次試験を通過した。

 

 

 

 *

 

 

 

 所は変わりオイサーストの都市内部。

 

チーフも通過したのですね、良かったです」

「フェルンもね」

 

 宿屋の前で待ち合わせをしていたフェルンとリーニエ。

 彼女達のお出かけに、フリーレンとメディカも同席していた。

 

 フリーレンは魔族を警戒しているためだ。

 フェルンは完全に気を許しているので、彼女が気を張る必要があった。

 

 メディカはやる事もないので、元チームメンバーと交友関係を深めようと思っていただけだったのだが――――

 

 メディカはじっとフリーレンを見つめていた。

 

「な、何……?」

「貴女……エルフですよね?」

 

 昨今エルフが希少とはいえ、じっとりと見つめられる経験は無かったのだろう。フリーレンは上ずった声で「う、うん」と答えた。

 

「やはりそうでしたか。迂闊でしたわ」

「そ、そう?」

 

 やれやれと微笑むメディカに、何がなんやら分からないフリーレンは警戒を強めたが、メディカは気がついていないのか、にこやかに笑った。

 

「お名前を伺っても? あ、私はメディカと言います」

「う、うぅん……」

 

 フリーレンは答えてもいいか悩んだが、自己紹介すらしないのは不自然かと名前を言った。

 

「フリーレンだけど……」

「フリーレン……?」

 

 メディカの顔が、名前を聞いた途端苦そうな顔に変わった。フリーレンはビクリと震える。

 ややトーンの下がった声でメディカが言った。

 

「貴女、人を殺す魔法ゾルトラークの開発に携わっていましたか?」

「開発というか、解析には携わってたけど……」

 

 暫しの沈黙。その間にメディカは百面相を展開していた。目元をひくひくさせたり、眉を上下左右に器用に動かしたり。そんな様子をおっかなビックリ眺めていたフリーレンだったが、突如ニコリとした微笑みで固定したメディカに、いっそう肩を揺らした。

 

「私、貴女とお友達になりたいですわ!」

「そ、そう……?」

 

 フリーレンは可能な限り距離を置きたかったが、刺激するべきではないと踏み、曖昧な返事をした。

 だがそれは過ちである。こういう時は何時でも逃げられるようにしつつ、はっきりと言った方が良い。可能であれば後ろ手に杖を握りしめて。

 

 果たしてメディカはグイと顔を寄せた。

 

「ええ! つきましてはフリーレンさん。試験が終わったら我が家まで来ていただけませんか?」

 

 フリーレンはこの時初めてザインの言っていた"他人との距離感"というものを知覚しただろう。

 てれれれってってってー♪ フリーレンは レベルが あがった!

 

 それはさておきフリーレンは一歩引いた。

 フェルンに助けを求めようと視線を向けたが、いつの間にか居なくなっていた。この状況は自力で打破する必要がありそうだと肩を震わせる。

 

「い、いやぁ。私、行かなきゃいけないとこあるし」

「どこですか?」

「エ、エンデ……」

「旧魔王城ですよね? 何をしに行くのですか?」

「オ、オレオールに、知り合いが……」

「そうですか」

 

 そこでメディカは考え込むように顎に手を当てた。しかし視線はフリーレンに向けられたままで、逃げるのは困難に思われた。

 

「では船を用意しましょう。海路ならそれほど時間は掛からないでしょうし」

 

 彼女は何としてもフリーレンを手に入れるつもりのようだった。

 元々メディカのエルフ探しはフリーレンを見つけるためである。ここで逃がす訳が無かった。

 

 そして彼女の提案は、オレオールを目指すだけならベストではある。

 しかし――――

 

「ごめん。陸路で行きたいんだ」

 

 それだけはキッパリと、フリーレンは断った。

 そして自分自身不思議だったが、騒めいてた心がスッと落ち着いたのである。

 

 フリーレンの変化に、メディカは少し顔をしかめた。何やら地雷を踏んだらしいことが知れたからだ。

 

「そうですか。陸路では、あまり役には立てなさそうです」

「いや、良いよ」

 

 話は終わった――と思いきや、メディカが突如としてフリーレンの手を握った。

 心の内を表したようにフリーレンのツインテールが跳ねた。

 

「では是非、用事が終わり次第、我がトロイエ家にお越しくださいね!」

「う、うぅん……」

 

 フリーレンは曖昧な返事をした。

 

 

 

 *

 

 

 

 フリーレンが人知れずボス戦を終えた後、様子を見にフェルンとリーニエが帰ってきた。

 それと同時に、カンネとラヴィーネが遊びに来たのである。

 

 女子6名が集まった。シュタルクは修行のため出掛けている。幸運だったに違いない。

 

 ひとしきり自己紹介を終えた後、宿は狭いので適当なカフェで落ち着くことになった。

 

 全員が席に着いたところで、皆の前でメディカが言った。

 

「今日は私が待ちますので、皆さんお好きな物をお頼みください」

「お、太っ腹! 流石はお金持ちだねラヴィーネ!」

「あ? なんだその目は。やんのか?」

 

 あまり借りを作るべきではないが――。

 ラヴィーネは逡巡したが、まあ南の貴族だし気にしなくて良いかと考え直しメニューを手に取った。

 この店はデザート類が豊富だ。お値段それなりに張るのであまり訪れる機会のない店である。こういう機会に目一杯堪能しておこうとラヴィーネは決めた。

 

「ラヴィーネどうする?」

「まずはチーズケーキだな」

 

「チーフは何にしますか? あ、あのパフェ美味しそう……」

「私は……このパンケーキリンゴ入ってるんだ。これにしよ」

 

「フリーレンさんは何にしますか?」

「私はコーヒーで良いかな……」

「遠慮しなくて良いのですよ?」

「いやぁ……」

 

 ガヤガヤと、姦しく。甘味を楽しみつつお喋りが続いていた。そんな中、ふとカンネがリーニエに言った。

 

「リーニエさんって好きな人いるの?」

 

 まさかの恋バナだった。

 ラヴィーネは若干引いたが、気になる話題でもあったので口を挟まなかった。果たして魔族は人間に恋をするのか。

 

 リーニエが口を開いた。

 

「いやいないけど」

 

 取り付く島もない否定の言葉。カンネは「えー」と残念そうな悲鳴を上げたが、そんなものだろう。

 だがカンネは諦めが悪かった。

 

「でもでも、カッコいいなーとか、イケてるなーとか、そういう感じの人は?」

「いないけど」

 

 リーニエとしては思う所は無いが、そういった表現で表すだろう人間には心当たりがあった。

 彼女の主である、リープという大魔族が執着している――

 

「おっとデッドエンドの予感」

「え、なんて?」

 

 まだ何か言いたげなカンネの髪を引っ張り、ラヴィーネが制止した。

 

 恋バナでは無いにしろ、魔族については気になっていたのかメディカが口を開いた。

 

「私は魔族の魔法が気になりますね。リーニエさんの術式は大変興味深かったですし」

 

 魔族の魔法は体系からして現在の魔法と異なる。

 魔族は脳の構造から異なるようなので、それは当然かもしれないが。それでも取り込めれば革新になる。かつてゾルトラークが魔法界を一新したように。

 

 フリーレンはやや躊躇していたようだが、その話題に入ってきた。

 

「……現人類の魔法術式はフランメ式が制圧したからね。昔はもう少し魔族に近い術式も使われてたよ」

「フランメ式ですか?」

 

 フェルンが相槌を打つ。

 フリーレンは続けた。

 

「そう。簡素な術式で、運用に魔法知識が少なくて済むんだ。代わりにイメージがより重要になってくるけどね」

 

 敷居が低いからこそフランメ式が人類に普及したと云えよう。

 メディカが頷いた。

 

「聞いたことがありますわ。我がトロイエ家はフランメ以前からの魔法使いなので、術式が大きく異なるのだと」

「そうだね。大元は変わらないと思うけど」

 

 フリーレンもトロイエ家の事は知っている。

 彼女達の術式は複雑で、多くの魔法を操る余裕はないだろう。だから使う魔法は1つに絞っているという。

 

 たった1つの魔法を極める。そんな在り方はどちらかというと――

 

「メディカの魔法はリープ様のに似てるよね」

 

 リーニエの言葉に、フリーレンの思考はシャットダウンした。具体的にはから始まる言葉で。

 

 フェルンが反応を示した。

 

「リープ様の魔法ですか? どんな魔法なのですか?」

 

 リーニエは言って良いものか悩んだ。だがスープ作りに使っていたのを思い出し、じゃあ別に良いかと口にした。

 

「液体を生み出して、操作も出来るのかな。そんな魔法」

「確かに近いですわね。拝見したくなりましたわ」

「良いんじゃない? イチャついてるだけだろうし」

イチャ!? そこ詳しく!!!」

「おいコラ」

 

 その後もダラダラと話していると、カラスが次の試験を知らせる紙を持ってきた。飲食店に?

 

 兎にも角にも。

 二次試験が始まるのである。

 

 続く。

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