──頭文字U 峠最速のウマ娘──   作:フロムトーキョー

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次回中里戦に入っていきます。

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ACT.8 走ることが好きならば。

 

 

「痛っ…痛いです…離してくださいよ‼︎」

 

人気の無い校舎裏、"7"を模した耳飾りを付けたウマ娘がトレノの後ろ襟を掴みながら引っ張る、ようやく解放されたトレノは若干の苛立ちを含んだ声で文句を言う。

 

「いきなり何するんですか!"アンフィニイエロー"さん!」

 

「…」

 

トレノを人混みから連れ出した犯人はイエローだった、トレノにそう言われたイエローだが何も言わず黙っている、しかし彼女の顔は明らかに怒りを表していた。

 

「…な、なんすか」

 

「…さっきのこと、本気で言ってんのか?」

 

「…はぁ?」

 

「チッ…あのレーサー気取りの野郎のことだ、アイツとのバトル、なんで断ったんだよ」

 

先程アールスカイラインから宣戦布告された挑戦状、それを断ったことをイエローは問い詰めた、静かに、それでいて低く怒気が混じった声で、トレノを真っ直ぐと睨む。

 

「…別に断ったっていいじゃないすか、誰に言われたってやる気は全く無いし」

 

「やる気が無いってどういうことだよ、あのナイトキッズのリーダー、アールの奴がお前を名指しで挑戦したんだぞ?受けてたちゃいいじゃねぇか!なんで断るんだよ…!」

 

「…なんでって言われても」

 

「アイツをぶっちぎってみろよ!お前になら出来るはずだ!」

 

「…なんでそこまで固執するんだよ、アンタには関係無いだろ」

 

「関係なくは無ぇ!お前はこのオレに勝ったんだからな…!」

 

自分を負かしたウマ娘、それが他のウマ娘に負けることをイエローは許さなかった、ましてやそれがライバルチームの奴になどもってのほかだ。

 

「お前を負かすのはこのオレ達レッドサンズの姉妹しか居ないってことだ、それまで誰にも負けんじゃねえぞ、例えあのレーサー野郎でもな…‼︎」

 

「私はやらないって言ってるだろ…第一、私にはやる理由が無い」

 

「理由?なんだそりゃ、走り屋が走るのに理由なんているのかよ!」

 

「だから言ってるだろ!私は走り屋なんかじゃない…」

 

段々と口調が激しくなっていくトレノ、周りから勝手に走り屋ウマ娘扱いされそれが原因で妙な事に巻き込まれてしまっている、沸々と彼女の中で怒りが込み上げてきた、しかしそれより先にイエローの方がはち切れた。

 

「ふざけんなよテメェ‼︎そりゃ嫌味で言ってんのか⁉︎」

 

「あんだけのテク、余程の走り込みをしてなきゃ身につかない、走り屋じゃねえ奴がなんで走り込みなんかやるんだ…‼︎」

 

「好きでやってる訳じゃない、家の手伝いでしょうがなしにやってるだけだし…」

 

「ホラ吹くんじゃねぇ!嫌々やっててあんな走りをできる腕になる訳ねぇだろ!」

 

「そうじゃない!…とにかく、幾らアンタらに説明したところで分かる訳無いよ、私の気持ちは…」

 

「分かってないのはお前だ!走ることが嫌いな奴がドリフトなんかマスターするかよ!」

 

指を差しトレノに叫ぶ、走ることが好きじゃない、自分は走り屋じゃない、バカげたことを言う、()()()()()()()()()()()()目の前の芦毛にイエローは必死に訴えた。

 

「走りが好きじゃなきゃドリフトなんて身につかない技だ!お前は自分でも気付いてないかも知れないけど、本心は走ることが好きに決まってんだよ‼︎」

 

「自分は走り屋なんかじゃねぇとか言ってたけどな…走ることが好きなら、それで十分走り屋なんだよ!走り屋なら、自分が走り込んで掴んだ技術にプライド待てよな‼︎

 

「ッ⁉︎ ───」

 

イエローのその言葉にトレノは目を見開く、次の瞬間彼女の脳裏に映し出された、記憶になく、しかしどこか懐かしい見覚えのある風景。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『車を走らせることが好きなら、それだけで十分走り屋なんだよ…‼︎』

 

真夜中の山道、2台の旧車に挟まれるようにして向かい合う2人の人影、黄色い車の方に居る人物が道の真ん中で何かを叫んでいる、そしてその先には茶髪の青年と、白黒の車。

 

「(なんだ…これ?あの人達は…誰だろう?)」

 

「(あの黄色いスポーツカー…何処かで見たことが…)」

 

「(それに…あれは…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…わた…し…?」

 

 

 

 

 

「…!…い!…おい!」

 

「おい!聞いてんのかよ!ボーッとしてんじゃねえ!」

 

「…ッ‼︎ご、ごめん…」

 

いきなり上の空になってしまっていたトレノにイエローはまたも苛立ちを覚え、呆れてため息を出した。

 

「ふざけんじゃねえ…こんな奴にオレは負けたのかよ…」

 

「別にアンタに勝っただなんて思ってないよ…秋名だからたまたま速かっただけで、他の場所だったら間違いなく負けてるし」

 

「そうだとしてもオレに勝ったのは事実だろうが!とにかく、あの野郎とのバトル、絶対に受けろよ、じゃなかったらオレが首根っこ引っ張ってでも引き摺り出してやる…いいな!」

 

「…」

 

イエローはトレノに向かってそう叫んだ、2人だけの校舎裏、彼女のその言葉に、トレノは最後まで何も返さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トレノー?トレノー!どこ行っちまったんだよー!」

 

レビンはいきなり姿を消した友人を探す為、グラウンド中を練り歩いていた、そんな彼女の元に2人のウマ娘がやってくる。

 

「トレノー?おーい!」

 

「おい」

 

「はい?うぉ⁉︎アンフィニイエロー⁉︎…とトレノ?お前、なんでその人と一緒に…」

 

いきなり後ろから声をかけられ振り向いたレビンの尻尾が逆上がりする、目の前にはレッドサンズのアンフィニイエロー、そしてその横に探していたトレノが立っていた。

 

「ご、ごめんレビン、ちょっとこの人と話してたんだ…」

 

「お前の連れを借りていた、返すぜ」

 

レビンへとトレノを預けイエローは立ち去ろうとした、その途中で彼女は立ち止まり振り返って2人の方へと向いたと思えばレビンへと話しかけた。

 

「おい」

 

「は、はい⁉︎何でしょうか…?」

 

「…お前からもソイツに言っておけ、来週のバトル、必ず来いってな…!」

 

そう言った後、人混みに消えていくイエローの背中を2人は呆然と見つめていた、そしてレビンはハッとして思い出したかのように何故トレノが彼女と居たのかを聞いた。

 

 

「お前、なんであの人と一緒にいたんだ…?」

 

「…別に大したことないよ、ちょっと話してただけだ」

 

「た、大したことないって…本当かよ」

 

「本当だよ…とにかく、もうこの話は終わりにしよう、とうかいていおう…だっけ?そのレース観に行くんだろ?」

 

「お、おう、そうだな!」

 

その後レビン達は学園内を周り、夕方になるまでイベント祭を満喫していた、しかしトレノはその日はずっと、トレセンの中でも学園を出た後も、帰りの新幹線に乗っても、どこか上の空であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか…あのアールスカイラインがトレノに挑戦状とはな…」

 

「あぁとんでもない事態になっちまったな…」

 

週が明けた平日、学校帰りのライムとエイティ達はいつも通りバイト先のスポーツ用品店に居た、そしてそこでレビンから先週の土曜日に会ったことを聞き、事の重大さに深く考え込んでいた。

 

「もしこれでバトルを受けなかったら、トレノに批判が集中しちまうだろうな…」

 

「アタシ達が調子乗ってあんなこと言ってたせいだ、アイツには悪いことしちまった…」

 

ライム達が流した『トレノはスピードスターズのエースだ』という話、それは予想外に広まってしまい、トレノはまだ正式なメンバーでは無いにも関わらず、周りの認識では既にスピードスターズに所属する"走り屋ウマ娘"ということになっていた、そして走り屋なのに何故挑戦を受けないのか、という意見が目立つようになってきていた。

 

自分達が流した噂でトレノが無駄に叩かれてしまっている、ライムはそのことに負い目を感じていた、自分の後輩が自分のせいで迷惑してしまっているのだ。

 

「…どうにかしてトレノを説得するしか無い…それでも駄目だったら、アタシが土下座してナイトキッズの奴らに謝る」

 

「だ、大丈夫かよライム、ナイトキッズって言ったら中央でも素行の悪い奴らで有名だろ…何されるか分かったもんじゃ無いぞ?」

 

「それでも、アタシのせいで後輩が迷惑してるんだ!何もしないって訳には行かないだろ!」

 

「…ライム先輩、私がトレノの奴を説得してみます」

 

「…レビン?」

 

ライム達の話を聞いていたレビンはそう名乗り出た、どうやら彼女の中でも今回のの事に責任を感じていたようだ、続けてレビンは話をする。

 

「私がチームに入りたいからって、アイツに無理言ったこともあるんです、そのせいでトレノは…アイツがこれ以上関係無い奴らに何も言われないよう、あのアールスカイラインとバトルするように言ってみます、それでもダメなら、私がナイトキッズに詫びでもなんでも入れますよ…‼︎」

 

そう宣言したレビン、彼女の目はいつもと違い覚悟がすわった目つきをしていた、レビンの誠意を見たライムは暫く考え込んだ後、ゆっくりと頷き彼女の提案を受け入れた。

 

「分かった…だけどもしトレノがバトルを受け入れなかったら、アタシ達も一緒に謝る…それでいいな」

 

「はい…ありがとうございます、ライム先輩!」

 

カランカラン

 

「お客さんだ…いらっしゃいませー!」

 

来客によりライム達は仕事に戻る、彼女達の話をカウンターで聞いていた店長の結衣は事務所へと入り、懐から電子タバコを取り出す、自分が吐き出した煙をじっと見つめながら、ライム達の話を思い出していた。

 

「(アールスカイライン…あのGT-Rのエースか、それがトレノに挑戦状とはな…)」

 

「(フミ、お前の娘、今度はとんでもねぇ奴が相手だぞ…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほらよ」

 

早朝、中に()()()()と豆腐が入ったトレーを入れた配達バッグをフミから受け取りトレノはそれを背負う、テールランプとヘッドライトを起動したトレノは出発する前、フミへと話しかけた。

 

「…あのさ母さん」

 

「んあ、なんだ」

 

「…ジーティーレーシング…?って知ってる?」

 

「おう、ウマ娘のプロチームのことだろ?」

 

「そこに居るウマ娘って、速いの?」

 

「そりゃ、一応はプロだからな」

 

「…母さんなら、勝てる?秋名の下りで」

 

その質問にフミは吸っていた煙草を手に取り、煙を吐きながら答える。

 

「…勝つね、GT-Racingだろうがなんだろうが、私の敵じゃねえさ」

 

「…私なら、私だったら…ソイツに勝てるかな」

 

「どうだろうな、まぁギリギリ勝てるかどうかだろ…なんでそんなこと聞くんだ…やるのか?GT-Racingの奴と」

 

「べ、別に…ただレビン達が話してたから聞いてみただけ…行ってくる」

 

そう言いトレノは足早に駆け出して行った、娘のテールランプが消えるまで見送っていたフミは、姿が見えなくなったところでタバコを灰皿へと捨て店の中へと戻って行った。

 

「今度の相手はGT-Rか、アイツの蹄鉄のセッティング、ちょっと弄るかな」

 

 

 

「ふわぁ…」

 

「眠そうだな、今日も配達行ったのか?」

 

「そりゃ、仕事だし…」

 

1週間も後半、2人はいつものように登校していた、あくびをするトレノにレビンは今週の土曜日のことを聞く。

 

「…なぁトレノ、アールスカイラインとのバトル…どうするんだ?」

 

「…私、一応先輩っちチームに入ってるんだろ?ライム先輩に迷惑かけたくないし、走るしか…」

 

「そうなんだけどそうじゃない!」

 

「…?じゃあ何だよ」

 

「…お前は、お前個人としては、走りたいのか?走りたくないのか?」

 

「それは…分からないよ」

 

「分からない?」

 

「自分でも走りたいのかよく分からない…というか、私が走り屋って実感がないんだよ…ライム先輩やお前みたいに、峠を走っても楽しいって感じられないし…」

 

「何言ってんだよお前!」

 

レビンはトレノの前に立ちはだかる、周りの視線などお構いなしに彼女は涙ぐみながら叫び続けた。

 

「お前が走り屋じゃなかったら誰が走り屋なんだよ!お前は秋名最速の芦毛、スプリンタートレノなんだぞ!もう立派な走り屋なんだよ!」

 

「それに、お前は気づいてないかも知れないけど、秋名を走ってる時のお前、すげぇ楽しそうな顔してんだよ!峠を走ったって楽しくないなんて言ってたけどな、お前の中ではもう十分楽しいんだ!走って楽しけりゃ走り屋名乗ったっていいんだ!」

 

「ッ‼︎───」

 

 

『走ることが好きなら、それで十分走り屋なんだよ!』

 

レビンの言葉とあの時言われたことがトレノの中で重なる、自分は走り屋じゃない、走っても楽しくない、ずっとそう考えていたトレノ、その考えが彼女の中でだんだんと崩れていく、峠を走るのが好きな立派な走り屋…自分は自分が知らない内に走り屋ウマ娘へと成長していたのだ。

 

「明日、バトルする理由がチームの為だとか、そんな考えだったら来るなよ!自分の中で行きたいと思うまで!自分は走り屋だと認めるまでな!」

 

「ちょっ…レビン!」

 

泣きながらそのまま走り去ってしまったレビンに手を伸ばしかける、追いかけようとしたトレノは自分が伸ばした手のひらを見つめ、強く握りしめた。

 

「(私は…走ることが…好き…?けど、そうだとしても、売られたバトルを買う理由にはならないだろうが…やっぱり納得いかねぇよ…!)」

 

 

 

 

 

 

「ひっぐ…すんませんライム先輩、エイティ先輩…私、トレノを説得するどころかつい勢い余ってアイツにやる気が無いなら来んなって言っちまったっす…もう切腹でもなんでもして私がナイトキッズに謝ってくるっす…」

 

そしてその日の夕方、レビンはライム達に今朝のことを話した、明日のバトル、自分を走り屋として認めないのなら来るなとトレノを突っぱねたこと、レビンは泣きヘロヘロになりながら2人に平謝りする、エイティはこのことに頭を抱えてしまっていた。

 

「うぅ…ど、どうするよライム…これで本当にトレノが来なかったら…」

 

「…いや、いい、レビンは間違ってねぇ、アタシとしてもトレノに無理に走って欲しくなんかないからな、もしアイツが来なかったとしてもチームのみんなで謝ればいいさ」

 

「…まぁ、しょうがねぇか」

 

「ラ、ライム先輩、エイティ先輩…私一生ついていくっす…!」

 

「ほら、分かったらもう泣くな、みっともないぞ」

 

「…あれ、そういえばそのトレノは」

 

「あぁ、なんか店長がトレノに話があるって言って事務所に連れてったぞ」

 

ライムは事務所の方へ指を差してエイティへそう答えた、事務所の扉には鍵がかけられており中はトレノと結衣の2人きりの空間となっていた。

 

 

「…それで店長、話ってなんすか?」

 

「…トレノ、お前、あのアールスカイラインとバトルするんだってな」

 

「うぇ?まぁ…でも」

 

「やめときな…あのウマ娘じゃ相手が悪すぎるぞ」

 

「いや、だからそのことなんですけど…」

 

「言わなくてもいい、私は分かってるさ…自分がやりたくて引き受けたバトルじゃないってこともな」

 

トレノの言葉を遮りながら電子タバコを片手に結衣は語りかける、結衣に押し負けたトレノは諦めて彼女の言葉に耳を貸す。

 

「ライムやレビンの奴が、まだお前がチームに入るって言う前からエースだってふき回してたんだろ?それで挑戦状が飛び込んで来ちまったって訳だ…だけどお前もウマが良すぎる…いくら先輩や友達の顔を立てるにしても限度ってもんがあるんだ」

 

「はぁ…」

 

「悪いことは言わない、あのウマ娘だけはやめとけ…いくらお前でも絶対勝てないだろうからな…」

 

ピクンと耳が跳ねたトレノの目つきが変わる、吸っていた電子タバコをしまい結衣は変わらず話し続ける。

 

「お前、レースにあんま興味ないから知らないだろうけどな、あのウマ娘はGT-Rのエースらしいじゃねえか、いくらお前でもプロ相手じゃ無理だよ…」

 

「…そのGT-Rって、そんなに凄いんですか」

 

「(…しめた、食いついてきたな)」

 

低くなったトレノの声、彼女の顔からいつものぼけっとした表情が消える、()()()()()()()()()()()のように内心そう呟いた結衣はチラッとトレノの表情を見た後更に話を続けた。

 

「凄いなんてもんじゃ無い、GT-Racingはプロが集まるとんでもなく速いチームだ」

 

「車なんかのレースで使うサーキットをウマ娘が走るグループA(Gr.A)って言うレース種目があってな、なんとそこで、アイツらGT-Rは29連勝というすげえ記録を叩き出したんだ、レースを見に行きゃいつも先頭はGT-Rのウマ娘が走ってる…なんてこともあったもんだ」

 

「プロの中から選ばれた精鋭中の精鋭が集まるチーム、大手自動車メーカーがスポンサーについてるから資金力もある、専用のトレーニングセンターもあって普段からのトレーニングの質も高い、田舎のウマ娘が勝てる相手じゃ無いって訳さ…」

 

「ッ…‼︎」

 

"田舎のウマ娘"、そのワードにトレノは耳を深く絞る、その後もダメ押しのごとく結衣はGT-Rのことを褒めちぎった。

 

「お前がやろうとしてる相手はそのチームのエース、まだ現役のトレセン生なのにエースになるなんてのは前代未聞だ、よっぽど強い奴なんだろう、いくらトレノが秋名で最速だからって、プロレーサーの前じゃ手も足も出ないに決まってる…やるだけ無駄だよ」

 

「せっかくあのレッドサンズのNo.2に勝って名を上げたんだ、もっと大事にすることだぜ、勝ち目の無い相手とやり合うのはあまり良い選択肢じゃない…なぁトレノ、相手はプロチームのエースな訳だし、別にバトルを受けなくたって誰も逃げたとなんか思わないだろうさ」

 

「(…逃げる…?)」

 

 

 

「…店長、止めてくれてるのに申し訳ないんですけど」

 

「私、別に走り屋として名前を売ろうだなんて考えてませんから」

 

立ち上がったトレノは事務所から出ようとした去り際、扉の前で結衣にそう言い放った、結衣はわざとらしいため息をはいてトレノに再度質問を投げかける。

 

「はぁ…どうしてもやめない気か?」

 

「やめないっすよ…そこまで凄い凄い言われると、どれだけ凄いか確かめたくなるんです」

 

 

「店長、私はGT-Rなんて怖くないですよ…失礼します」

 

 

バタン…

 

鍵を開け出て行ったトレノ、事務所に残された結衣は腕を組んで目を瞑り、そして暫くした後、突然プッと吹き出したのであった。

 

「(ひ、引っかかった〜!)」

 

 

 

 

続く。

 






紙コップのくだりは中里戦が終わってからちょろっとやろうかなと思ってます。
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