俺は、夏目 哉太[なつめ かなた]。都内の大学に通う、ごくごく普通の大学生だ。親元を離れ、小さなアパートに住みながらコンビニでアルバイトして生活している。
そんなある日、コンビニバイトを終えスーパーで買い物を済ませ家路につくと、道端で倒れている女の子を見つけた。小悪魔のコスプレ?をした女の子だった。見たところ行き倒れみたいだ……。
「おい君!大丈夫か?」
俺は慌てて駆け寄り声をかけたが返事はない。ただ息はしているのでちょっと安心だった。
「参ったなぁ……。このまま放っておくわけにもいかないし……」
こんな小さな女の子を見捨てる訳にもいかないので、急いでその子を抱き抱えアパートに帰った。部屋に着くなりベッドに寝かせて様子を伺う。呼吸は安定しているが意識はまだ戻らないようだ。とりあえず、目が覚めるまで看病することにした。
(まだ子供なのに一体何があったんだろうか?この子……)
しばらくすると、その子は目を覚ました。
「あれっ……ここは……どこですか?」
見知らぬ場所に戸惑いながらも、辺りを見渡していた。
「気がついたかい?ここは俺の部屋だよ」
「あっ……あなたは誰ですか?」
「俺は夏目哉太。君の名前は?」
「……私はイヴ。イヴァーノ・ルシフェールって言います。」
「イヴァーノちゃんか、よろしくね」
俺は笑顔で挨拶をするが、彼女は暗い表情のままだった。
「ところで、なんであんな所にいたの?」
「……信じて貰えないかもしれませんが、私は異世界から来ました」
「え!?じゃあその背中の翼って本物なの?」
「はい、本物です……」
と、彼女は自身の翼をお腹の前に持ってくる。
自宅に連れて帰る時にも気になっていたのだが、まさか本物だったとはコスプレにしては作りが良すぎると思っていた。
「私は天使と悪魔のハーフなんです。父が悪魔で母が天使……」
彼女は続けて。
「私が元いた世界では、天使と悪魔が共存する世界なんですが天使と悪魔のハーフなんて珍しくて……」
「……どうやら私は父の血を色濃く受け継いでしまったようで……ぐすっ……この容姿のせいで……ぐすっぐすっ……」
彼女は目に大粒の涙を貯めて、白い薄手のワンピースの端を握りしめる。
「……通っている……学校で、いじめを……うぅ……受けていて……ぐすっ……父や母にも……相談出来なくて……」
そういうと彼女は目から大粒の涙が零れ始める。
俺はそんな彼女を慰めようと必死に言葉を探したが、ただただ彼女を抱き締める事しか出来なかった。
しばらくして、少し落ち着いたのか、話し始める。
「それで……私は元いた世界から逃げて来ちゃいました……」
「そっか……。ところで君は何歳なの?」
「15歳です。今年で16になります……」
どう見ても小学生くらいにしか見えないんだけど、やっぱり成長期なのかな?それとも種族的な問題だろうか……。
「俺は21歳の大学生だけど、このままには出来ないし、君が帰れるようになるまで面倒見てあげるよ」
「ほ、本当に良いんですか?」
「もちろん!困った時はお互い様だよ」
「ありがとうございます……。ぐすっ……。こんな優しい人に会えて良かった……。私、これからどうすればいいのか分からなくって……。ぐすっ、お腹も空いてたし、このまま死んじゃうのかなって……うぅ、うわーん!」
再び大粒の涙を流す彼女に俺は優しく頭を撫でた。
「大丈夫……。俺が付いててあげるから心配しないで……」
こうして俺は、彼女と生活を共にすることになった。
「そうだ!君の口に合うか分からないけど、ご飯一緒に食べよう?」
「はい!いただきます!私、今まで何も口に入れてなかったので、凄く嬉しいです」
笑顔を見せる彼女を見ているとほっとする。
「今日は簡単なものしかないけど我慢してね」
「いえ、とっても美味しそうです。私、初めて見る料理ばかりで……」
「そういえば、これから君の事なんて呼んだらいいかな?イヴァーノちゃんだと、ちょっと長いかなって……」
「い、イヴって呼んでください……///」
「うん!わかった。俺の事は哉太でいいから。あと敬語も使わなくてもいいよ」
「はい……じゃなかった。う、うん。分かった」
「ふふっ、さあ冷めないうちに召し上がれ」
「はい。いただきます!」
そう言うと、イヴはスプーンを手に取りスープを一口飲む。すると彼女の目が輝いたように見えた。
「こ、これ凄くおいしい!何だろう……。すごく懐かしい味がする」
「それはよかった。気に入ってくれたみたいで安心したよ」
それから俺たちは他愛もない会話をしながら食事を済ませた。
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「ごちそうさまでした。とてもおいしかったです」
「はい、お粗末様でした。さて、次は風呂に入ろうか?」
「えぇ!?いや、その……あの……//」
「どうしたんだい?遠慮はいらないよ?」
イヴは顔を真っ赤にしながら俯いている。
「あ、あの……。その……///////」
「あ、ごめん!そういう意味じゃなくて、お風呂先に使っていいよって言うか……////」
「は、はい……///分かりました。では、先に入らせて頂きます……///」
「う、うん……///」
(これからは気をつけないと)
と思いながら食器を片付けていると、彼女は脱衣所へ向かった。
しばらくして、浴室の方からシャワーの音と鼻歌が聞こえてきた。
「♪~♪~♪」
どうやら機嫌が良いようだ。
しばらくすると彼女が出てきてタオルで髪を拭いていた。
「気持ち良かったです。ありがとうございます」
「どう致しまして。じゃあ俺も入ってくるから」
「えーと、哉太さん」
「なに?」
「あ、あの……私、着替え持って無いですけど……?このままだと風邪引いちゃいます……」
「あっ!そっか……。ちょっと待っていて」
俺は自分の部屋に戻りクローゼットを開ける。
「うーん……。俺の服でサイズ合いそうないなぁ……」
とりあえずシャツを取り出し、洗面所に持っていく。
「これを着てくれるかい?」
「はい……。わかりました。でも、下着が無くて……」
「そっか……。それもそうだよね。まあ、取り敢えず下着は今日着てたので我慢してくれないか?」
「はい……。仕方ないですよね……。分かりました……」
「ごめんね。明日一緒に買いに行こう」
「はい!」
俺がそう言うと、イヴはぱぁっと笑顔になった。
「じゃあ、俺もお風呂入るからゆっくりしてて」
「はい!分かりました、じゃなかった、わかった!」
「無理しなくてもいいよ?話しづらいなら、敬語のままでもいいよ?」
「あ、はい。分かりました」
「じゃあ、お風呂入ってくるね!」
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俺は浴槽に浸かりながら考える。これからどうするかだ……。
イヴを帰すと言っても、異世界に行く方法なんてわからないし……。そもそもどうやって来たかも分からない……。それに彼女を一日中家に居させても可哀想だし……。やっぱり、学校とかに行かせた方がいいよな……。お金はあるし何とかなるか。
そんなことを考えていたら、いつの間にかのぼせてしまった。
「ふぅ……。上がったよー」
「すぅ……すぅ……」
「寝ちゃったか……。いろいろあって疲れてたんだな……」
イヴはソファーで横になり眠っていた。俺は彼女を自分のベットに寝かせ、自分も床についた。
そして翌朝。
「おはよう、イヴ」
「あ、お、おはよ……」
まだ少し慣れていないのか、彼女はぎこちなく挨拶をする。
「さて、今日はイヴの為にお洋服買いに行こうか!」
「あ!はい!」
「イヴにいつまでも俺の服を着させるわけにもいかないしね!」
「でも、私、外に出ても大丈夫かな……?」
「うーん……。多分だけど大丈夫だと思うよ?そう言えば翼って隠せたりしないの?」
「一応見えなくすることなら、出来ます……」
「なら、そうしようか!」
「わ、分かりました!」
そう言ってイヴはぺこりと頭を下げる。俺は彼女に微笑みかける。
「よしっ!じゃあ、朝ごはん食べたら出かけよ」
「はい!」
こうして俺たちは家を出て、駅に向かった。
電車に乗り、ショッピングモールに向かう。向かっている最中、イヴは目をキラキラさせながら辺りを見回した。
そしてショッピングモールに着いた。休日ということもあり人が多く混雑していた。
「イヴ、はぐれないように手繋ごう」
「は、はい……。その、よろしくお願いします……」
そう言うと、彼女は俺の手を握った。
「あははっ。なんだか照れるね」
「う、うん……。///」
俺たちは手を繋ぎながら店に入る。
「まずは服からだよね……」
「う、うん……」
店内に入り、適当に見ていく。
「どう?気に入ったのあった?」
「ごめんなさい……。よく分からなくて……」
「そっか……じゃあ、試着してみる?」
「はい……」
「じゃあ、これなんかどうかな?」
俺はシンプルな白いワンピースを指差す。すると彼女はそれを手に取る。
「ど、どうかな……?」
「うん。似合ってると思う」
「本当ですか……///嬉しいです……///」
はにかみながら笑う彼女を見てドキッとした。
(可愛い……)
「哉太さん?」
俺が黙っていると彼女は首を傾げる。
「あっ、ごめんね。何でもないよ」
俺は誤魔化しながら答える。
「次はこんなのどうかな?」
「あっ……。これは可愛くて好きかも……」
「そっか!良かった。これも買おうか」
「はい!ありがとうございます」
その後、俺は彼女の服や下着などを買ってあげた。
買い物を終え、昼ご飯を食べようとフードコートに入った。席を探しているとイヴの姿がないことに気づく。
「あれ……?どこ行ったんだろう……。トイレかな?」
俺は辺りをキョロキョロと見渡す。しかし、どこにもいない。
「おかしいな……。もしかすると迷子かもしれない……」
「おーい……。イヴ―?」
「哉太さ~ん!」
後ろから声が聞こえたので振り向くと、
「ごめんなさい。あのアイスクリームに看取れてしまって……」
と、申し訳なさそうな顔をしながら彼女が駆け寄ってきた。
「もう!心配したんだぞ!」
「ご、ごめんなさい……。本当にごめんなさい……。」
「まぁ、無事ならいいけどさ……。気をつけてね?」
「はい……。でもあのアイスクリームが気になって……つい……」
「仕方ないなぁ……。じゃあ、買ってあげるから一人で行かないこと!」
「はい!分かりました!」
嬉しそうに返事をする彼女を見ていると怒れなくなってしまう。俺はため息をつきながも楽しいと思った。
「よしっ!じゃあ、お昼食べよっか」
「はい!」
俺たちはテーブルにつき食事をする。
食事を終えた後、俺たちはショッピングモールを後にし家に帰った。
そして夜。俺はリビングでイヴとテレビを見ていた。
「ねぇ、イヴ。今日は楽しかったかい?」
「うん……。哉太さんと一緒にお洋服選んだり、お外で食べたりしたの……。すごく幸せだった……。ちょっと怒られちゃったけど……」
彼女は少し俯きながら話す。
「まあ、仕様がないよ。イヴにとってはじめての事ばかりだったし」
「うん……。私、ずっと家に閉じこもりっきりで学校以外、外に出たことがなかったんです……。だから今日みたいに出かけて……一緒に遊んで……色々見て……お洋服選んで……とても楽しいかったです……。」
「そうか……。それは良かったよ」
俺は笑顔を向ける。
「それでね……その……」
イヴは何か言いづらそうにしている。俺は優しく問いかける。
「どうしたの?」
「私……また行きたいなって思ったんだけど……ダメかな……?」
イヴは上目遣いになりながら聞いてくる。俺は思わず笑みがこぼれてしまう。
「もちろん!イヴのお願いはなんでも聞くよ!」
「やったー!ありがとう!」
そう言うとイヴは俺の腕に飛び込んできた。
「ちょ、イヴ!?急に抱きつかないでよ……。びっくりしたじゃないか……」
「えへへ……ごめんなさい……。だって、嬉しくて……」
イヴは恥ずかしそうに頬を赤らめる。俺はそんな彼女を見て微笑む。
「そっか……。それじゃあ、今度はどこに行きたい?」
「うん……!あのね……映画観に行って……それから遊園地にも行って……あとは……」
イヴはとても楽しそうに話している。俺はそれを眺めながら、この幸せな時間がいつまでも続けば良いと思った。
(そうだ……)
「なあ、イヴ。この世界の学校に行ってみない?」
俺は、彼女に提案してみた。
「学校に……ですか?」
「ああ。俺は今大学生だけど、朝から夜まで居ないし。イヴはまだ15歳だろ?だから、通っておいた方がいいんじゃないかと思って……」
「確かに……それもそうですね……」
彼女は真剣に考えている。すると、
「うーん……。でもやっぱり、まだ遠慮しておきます。」
彼女は残念そうな表情を浮かべながら答えた。
「どうして?」
「私が行くと……きっと迷惑をかけてしまいます。それに、……またいじめられちゃうかもしれないし……嫌なんです……。」
彼女は暗い顔をする。
「大丈夫だよ……。もし何かあったとしても、全力で俺が君を守るから……!」
「哉太さん……。ありがとうございます……。」
「学校に行きたくなったらいつでも言って欲しいな。俺が何とかするから」
俺は笑顔で話しかける。
「はい……。分かりました……。」
イヴもぎこちないながらも笑顔を見せてくれた。
俺は、彼女との会話を終えると風呂に入り、ソファーの上で仰向けになる。
「イヴには悪いことをしてしまったな……。でも、まだ心の傷が癒えてないだろうし……。」
俺は天井を見つめながら呟く。
すると、部屋の扉が開く音がした。
「哉太さん?起きてますか?」
イヴが心配そうな顔をしながら尋ねてくる。
「起きてるよ。どうかしたのかい?」
「いえ……。特に用事はないのですけど、眠れなくて……」
「そうか……。どうしようか?」
「あの……哉太さん。」
「何だい?」
「手を握ってもらってもいいですか?」
「分かったよ」
俺は彼女の小さな手を握りしめ、優しく語りかける。
「これでいいかな?」
「はい……。あの、私のために無理させていませんか……?」
「全然!むしろ、もっと頼ってくれてもいいんだよ!」
「ふふっ……ありがとうございます。でも、あまり甘えると申し訳ないです……。」
「……」
俺は苦笑いをする。
「じゃあ、そろそろ寝ようか?」
「はい……。」
俺は彼女を部屋に連れていき、ベッドに寝かせる。そして電気を消し、布団に入る。
「おやすみ、イヴ」
「おやすみなさい……。」
俺は目を閉じて眠りについた。
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そして次の日、俺はイヴに挨拶をしていつも通り大学に向かう。しかし、その途中で奇妙な光景を目撃した。
「あれは……?」
大通りの道端に人集りができていた。しかも、みんな携帯を片手に持っている。
俺は、少し気になりつつも、その場を通り過ぎようとした時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「すみません、通してくれない?」
「キャー!可愛い!」
「ねえ、一緒に写真撮ろうよ〜!」
(これは……?)
俺は、野次馬の間を縫って前に出ると、そこには見慣れた人物が立っていた。
「イヴ……?」
そこにいたのは、イヴによく似た白髪紅眼の美少女だった。彼女は、白いYシャツに黒いネクタイ。黒いショートスカートを着ており、頭には黒い帽子を被り、大きなうさぎのぬいぐるみを持っている。その可愛らしい容姿から、周囲の注目を集めているようだ。
「おい!お前らどけよ!その子は俺たちが先に見つけたんだぞ!」
「うるせぇ!邪魔すんじゃねぇよ!」
男達は、イヴに似た少女を取り囲みながら口々に罵る。
「イヴ……なのか?でも家に居るはずだろ?……」
俺は、状況を飲み込めずに呆然と立ち尽くしていた。すると、
「皆さん!私、用事があるから失礼しますね。」
少女はそう言うと、人混みをかき分け、こちらに向かって歩いてきた。
「あっ!待ちやがれ!!」
一人の男が少女を追いかけ腕を掴む。
「きゃあ!」
という悲鳴と周囲のどよめきが響く。
「と、取り敢えず助けなきゃ!」
俺は慌てて駆け寄る。
「おい!!離せよ!!!」
「ぐわぁ!?」
俺は男の手首を掴み捻ると、男は痛みで悶絶する。
「な、なんだこいつ……強え……」
他の奴らは怯えた様子を見せる。
「早く行け……」
俺は静かにそう告げる。
「ひぃ……すいませんでしたー!!!」
すると、男たちは一目散に逃げていった。
「大丈夫かい?」
俺は、座り込んでいる少女に手を差し伸べる。
「……」
彼女は俺の手をとり立ち上がる。
「……別に助けに来なくても、いいのに」
彼女は不機嫌そうな表情を浮かべながら呟く。
「そういうわけにもいかないだろ?……それにしても本当、そっくりだな……?」
「……なんの事?」
「いや、俺の知り合いに……」
「他人の空似じゃないの?」
「まあ、確かにそうだよね……。ごめん、気にしないでくれ」
「それじゃ……。」
少女は足早に立ち去ろうとする。その時、
「ちょっと待った!」
俺は彼女を呼び止める。
「君、名前は?俺は夏目 哉太」
「……エルヴィア。それじゃ、私やることがあるから……」
「そうか……。気をつけてね。」
「……」
エルヴィアと名乗った少女は、小さく手を振りながら走り去っていった。
ふと、スマホを見ると講義の時間が迫っていた。
「やべっ!講義に行かないと」
俺は、急いで大学へと向かった。
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夜。
「ただいまー」
「あ!お帰りなさい、哉太さん!」
いつものコンビニバイトを終え帰宅すると、イヴが上機嫌に出迎えてくれた。
(なんかこういうのいいなぁ)
そんな事を考えながら俺は夕食の準備をしていた。すると、インターホンが鳴る音がした。
(誰だろう……?)
俺は玄関に向かい扉を開ける。
「はい……。どちら様ですか?」
「こんばんは、哉太さん」
そこにいたのは、今朝出会った少女だった。
「君は、朝の……」
「単刀直入に言うわ。……私の妹を返して」
「……え!?」
俺は彼女の突然の言葉に驚愕した。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第1話 完 ~To Be Continued~