「……え!?ちょっと……どういうことなの?」
アパートの玄関先に現れた、白髪で紅眼の少女は俺を睨み付けながらそう言い放ったのだった。
「ちょ、ちょっ待って!一体どういう訳だか教えてよ!」
俺は少女の言葉の意味が理解できず、慌てて説明を求めた。
すると少女は怒りを露にして、俺に迫って来た。
「だーかーら私の妹を返してってば!あんたが私の妹の居場所を知ってるんでしょ?さあ早く連れて来て!!」
少女はそう言って俺のお腹をポコポコ殴り始めた。
「イタッ……痛いって!てか、なんでその事を知ってるんだよ」
「うるさい!!早く妹を連れて来なさい!じゃないと……」
そう言うと少女は再び俺のお腹を殴ろうとした時……。
「哉太さ~ん!どうしたんですか?」
とイヴがリビングの方から顔を覗かせる。
「あっ!イヴ!!私だよ、エルヴィアだよ!!」
「お、お姉ちゃん!どうしてここに……?」
「どうしてもこうしてもないわよ!あなたを迎えに来たんだからね!さあ、帰るわよ」
「い、嫌……です。もう、向こうには帰りたくない……」
「そんなわがまま言わないの!ほら帰るわよ!」
「嫌だって言ってるじゃん!!!!」
「ちょっ!?取り敢えず、中に入って!」
姉妹喧嘩が始まったので、エルを中に入れることにした。そしてリビングへと通す。
「お姉ちゃん!私はこっちの世界で暮らすって決めたの!だから邪魔しないで!!」
「ダメよ!お父さんもお母さんも心配してるんだから一緒に帰るわよ!」
「そ、それは……でも」
「まあまあ、取り敢えず晩ごはんが出来てるからそれ食べて落ち着いて」
俺は二人の間に入り、なんとか落ち着かせようとする。
すると、イヴもエルも少し落ち着いたのか、
『分かった』『分かったわ』と言って椅子に座った。
一方、イヴはと言うと俺の隣に座ってずっと俯いていた。
「よし!じゃあ冷めないうちにたべようか。」
「いただきます……」
「……」
俺達は黙々と食事を始めた。
(なんか気まずいなぁ……)
そう思いながらも何とか食べる事ができた。
そして食器を片付けて、お茶を出す。
「はい、これ飲んでゆっくりしてて」
「ありがとう」
「哉太さん、私も手伝いますよ」
「いいよ、いいよ。俺がやるから二人は休んでて」
「いえ、手伝わせてください」
「う~ん、なら手伝って貰おうかな」
そうして俺とイヴは洗い物を始める。
ふぅ~これで一息つけるな。
「あの……哉太さん」
「うん?何?」
「……本当にごめんなさい。哉太さんのお家なのに……うるさくしちゃって……」
「別に気にすること無いよ。それに、エルちゃんだってイヴの事が心配なんだと思うよ」
「……そうですね、哉太さん」
それから、昨日までの出来事をエルに話した俺は、エルに質問してみた。
「そう言えば、エルちゃん。帰るってどうやって帰るの?」
「え!?……帰る方法?うーん……」
俺の質問で思い出したかのように、エルは少し困った顔をした。
「えーっと、イヴ分かる?」
エルはイヴに問いかける。しかしイヴは首を横に振るだけだった。
「……私は、ただあそこから逃げたい一心でこの世界に来ちゃったから……」
「私だってイヴがいなくなっちゃって、大慌てでお母さんに行き方を教えて貰って……」
「えーっと、じゃあ帰り方は……?」
「教えて……貰ってない……」
「うわぁ〜えぇ〜どうしようか?」
俺は頭を抱えて考え込む。
まさか帰り方が分からないとは思わなかった。このままではイヴもエルも帰れない。
すると。
「……うぅ……どうしよう……ぐすっ……お家に、帰れない……ぐすっ」
「え?」
「……うわぁぁぁん!!私まで帰れなくなっちゃったよぉぉ!!!」
突然、エルは泣き出してしまった。
「だ、だ大丈夫だよエルちゃん!俺が絶対に帰れるようにしてあげるから!」
俺はエルに近づき、頭を撫でながら慰める。
一頻り泣いたエルは、泣き止み顔を上げた。
「……ほんとうに?」
「ああ!任せてくれ!」
「ありがと……ぐすっ」
「礼なんて要らないよ。それよりさ、俺達と一緒に暮らさない?二人ともまだ未成年だし」
「でも、迷惑かけられない……」
「俺は元々一人暮らしだし、別に問題は無いよ。それに、イヴもいるしさ」
「……いいの?哉太さん?」
「もちろん!イヴもその方が楽しいでしょ?」
「……はい!」
「よし!決まり!そうと決まれば、今日から3人で暮らそう!」
「……ありがとうございます!」
こうして、天使と悪魔のハーフの姉妹を居候させることになった。
イヴはともかく、エルも普通に可愛いんだよな。
そんな事を思いつつ、俺は今後の事を考えてみる。
まず、帰る方法を探さないとな。
それと生活費も今よりもっと稼がないと。でもバイトを増やすと彼女達の面倒をしてやれないし、ダメ元で両親に相談するかなどをお茶を飲みながら色々と考えを巡らせていると、いつの間にかエルが隣にいた。
「……これからお世話になるわ。でもこれだけ言わせて……」
「……妹に手を出したら、ただじゃ置かないから!」
「ブーッ!?」
俺は、衝撃の一言で飲んでいたお茶を盛大に吹いた。
「ゲホッゲホッ!!……いきなりなに言い出すんだよ!」
「だってあんたがイヴと話してる時、顔がいやらしいんだもん!」
「してねぇよ!断じて!」
「ホントかしらね?」
「本当だって……」
「なら良いけど。……兎に角よろしく」
「お、おう。こちらこそ、改めてよろしく」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「お疲れさまでーす店長」
「あー、お疲れ。あれ、哉太君。何か疲れた感じだけど大丈夫?」
「あはは、ちょっと色々忙しくて……」
「そっか、体には気をつけなよ〜」
「はい、それじゃ失礼します」
「はぁ……今日も一日終わったな」
俺は家に帰るため、歩き出した。
「ただいまー」
「おかえりなさい、哉太さん」
「遅かったじゃない」
「悪い悪い。バイトが長引いてさ」
そう言って、俺は鞄を下ろす。
そして台所に行き、冷蔵庫から麦茶を取り出しコップに注ぐ。それを一気に飲み干した。
『ぷはっ、うめぇ』と思わず声が出る。
「あの、哉太さん。今日の晩御飯はなんでですか?」
「今日は野菜炒めと魚の塩焼きだよ……」
「やったー!哉太さんのご飯美味しいから好きですよ」
「あはは、ありがと」
俺は照れ臭くなり頬を掻く。
それから夕食を食べ終え、風呂に入り寝るだけとなった。
ちなみにエルとイヴは二人で仲良く入浴中だ。
俺は自分の部屋に戻り、ベッドの上で仰向けになりながら考える。
明日、学校が終わったら親父に連絡を取ってみようかな……とそんなことを考えていたら、部屋の扉が開いた。
「哉太?入っても良い?」
「ああ、いいよ」
「では、失礼しま……す」
俺の部屋に入って来たのは、バスタオル一枚のエルだった。
「なっ!?何やってんの!?」
「……一緒に寝よ?」
俺は慌てて顔を逸らす。
「ちょっ、エル!?その格好はまずいだろ!」
「うわぁ~やらし~やっぱりイヴもそう言う目で見てるんでしょ?この変態」
「ちげえよ!」
「ふぅ~ん?」
ニヤニヤと言いながら、エルは洗面所に戻った。
どうやら冗談のようだ。全く心臓に悪すぎる……。
「哉太さんお風呂空きましたよ!」
イヴの声が洗面所から聞こえて来た。
「わかった!すぐ行くよ」
そう返事をして、着替えを持って脱衣所に入ると、そこには……
「……へ?」
お風呂上がりで裸のイヴがいた。
「きゃあっ!哉太さん見ないで下さい!」
『ごめん!』と言って急いで目を瞑り後ろを向く。
「いやぁ~ん、へんた~い!そんなに、イブの裸見たかったのぉ〜?」
エルはニヤニヤしながら、笑っている。
「今のはお前か!エル!!」
「あら、バレちゃった♪」
「この……虚仮にしやがって……!」
俺は怒りで震えていると、イヴは恥ずかしがりながらもエルに文句を言う。
「お姉ちゃん、いくらなんでもこれは酷いよ……」
「だって面白そうだったんだもん」
「むぅ……もう、お姉ちゃんってばぁ……!」
「はいはい、私が悪いでーす」
姉妹喧嘩が始まりそうになったので、俺は二人を宥める。
「もう、エルは、寝る準備をしなさい!」
「イヴも、早く体拭いて服を着て。風邪引くぞ?」
「……うん」
「はいはーい」
イヴが着替えを終えるまでリビングゆっくりしているとしばらくして、着替えたイヴが横に座る。
「……ねぇ、哉太さん」
「なに?」
「……私の裸見ちゃいましたよね……?責任取ってくださいね……」
「あぁ、わかっ……えぇ!?」
「あはは、嘘ですよ。お姉ちゃんみたいにからかっただけです」
「なんだよ……」
俺は安堵のため息をつく。
「それじゃ、私達は先に寝てますね……」
「うん、分かった」
イヴは俺の部屋に向かって行った。そして、俺も風呂に入りリビングにあるソファーに向かった。
「ふぁ~あぁ。そんじゃ、俺も寝るか……」
俺はソファーに寝っ転がり毛布を掛けて寝ようとした。
すると、エルが俺の上に乗っかってきた。
「ぐぇっ!?なにしてんの、エル!?」
「んー?一緒に寝よ?」
「いや、狭くなるじゃん……」
「私は別に良いよ?」
「エルが良くても、俺が良くないの」
『ぶー』とエルは頬を膨らませる。そして、そのまま抱きついてきた。
「お、おい!?エル!?なんか、当たってんだけど!」
「当ててるのよ?」
エルは妖艶な雰囲気を出しながら微笑む。俺は、そんな彼女の表情を見てドキッとした。
「エル……?」
「ふふ、可愛いわね」
俺はエルを押し退けようとするが身体が動かない。
エルは俺の耳元で囁いた。
「このまま襲っちゃうよ?」
ゾワッと背筋がむず痒くなる様な感覚に襲われる。
「冗談よ。さすがに私でもそこまでしないわよ?」
「そ、そうか……」
ホッと胸を撫で下ろす。
「まぁ、哉太さんが望むなら……してあげなくもないですけど?」
「望まないから大丈夫だ」
「残念……」
「エル……。こういうのやめろよ……」
「え~?どうして?」
「どうしてもこうしても……。お前は女の子なんだぞ?少しは自分の体を大事にしろよ」
「ふぅ~ん?」
エルは何やら意味深な笑みを浮かべる。
「哉太にの襲われちゃう~」
「はぁ!?何言い出すんだよ!しねぇーよ!!」
「ほんとかしらぁ〜?」
「本当だし!」
「ふ~ん……じゃあ、おやすみ~」
そう言ってエルは離れてくれた。
「なんか納得いかねぇ……」
俺はそう呟き眠りについた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
朝になり目が覚めると、エルが横で寝ていた。しかも全裸である。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ん~?どうしたんですか?哉太さん?」
イヴは目を擦りながらリビングに来る。
そして、ソファーの上の下着姿の俺と全裸のエルを発見する。
「きゃああぁぁ!!」
イヴは顔を真っ赤にして叫ぶ。
「いや、違うんだイヴ!」
「なにが違うんですか!こんなことしといて!!」
「だから誤解だって!!」
俺は必死に弁解するがイヴは聞く耳を持たない。
そして、エルが起きると俺に囁くように言った。
「昨日はすごかった……♡あんなに激しいの、癖になっちゃうわ♡」
「……は?」
俺は固まってしまった。同時にイヴも固まってた。エルはクスリと笑い、イヴは俺を睨んでくる。
「哉太さん!!あなたなんてことを!!」
「いや、待ってくれイヴ。本当に俺は何もしていない!」
「信じられません!」
「いや、マジでホントなんだよ!」
「……」
「信じてくださいよ……」
「ふん!……」
「……ごめん」
俺は素直に謝ったが、イヴはそっぽを向いたままだった。俺はエルにも言う。
「エル、頼むから変な嘘つくなよ」
「えへへ、ちょっと遊びたくなっちゃった♪」
「……反省してないのか?」
「えーっと……はい」
「お仕置きが必要かな?」
「あの……その……優しくお願いしますね?」
エルは上目遣いで俺を見てくる。
「……はぁ、もういいよ」
「あはは!おもしろ〜い」
「次はないからな……」
「はーい」
「さて、朝食の準備するかな……」
そう思い立ち上がろうとすると、服を引っ張られた。見ると、そこには泣きそうな顔のイヴがいた。
「あ……」
しまったと思った時には遅かった。
「い、イヴ……」
「酷いです……。本当は私達の身体が目的で家に上げたのですか?」
「そんなわけないだろう?」
「じゃあなんで……」
「あれは……エルが勝手に言ってるだけだよ」
「本当ですか?」
「本当だって」
「今回は、信じてあげますけど……」
「はい……」
「次は無いですからね……」
「わ、分かりました……」
とても気まずい朝を迎えたのだった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今日は日曜日だが、俺はバイトがある為早めに家を出た。そしてバイト先に着くと、いつも通り仕事を熟す。
暫くして、店長に声をかけられる。
「ねぇねぇ、哉太くん」
「はい?」
「この前、新しい子が入ったんだよ」
「へーそうなんですか」
「それでね、その子を案内して欲しいんだけどいいかな?」
「別に構いませんよ」
「助かるよ〜」
俺は店長と一緒に店を出る。そして、新しく入ったという女の子の元へ向かった。
「あ、あの……」
その子はおどおどしながら話しかけて来た。
「君は……!?」
「先輩!?」
彼女は俺を見て、とても驚いているようだ。
「え!哉太君の知り合い?」
「ま、まぁ……」
「そっか〜、じゃあ私はこれで失礼するよ。後は若い二人で楽しんで〜」
店長はそう言い残し去って行った。残された俺達は少し気まずい雰囲気になってしまう。
「……まさか、先輩がここでバイトしてるんなんて」
「俺だって驚いたよ……。でも、なんでここに?」
「それは……その……」
彼女の名前は笹木美優さん。笹木とは大学のサークルで知り合った後輩で、同じ学部の1年生である。性格は真面目で人当たりもよく、誰からも好かれるような人柄の持ち主で、学内ではファンクラブまであるらしい。
「まさか、ここでも夏目先輩が先輩なんて♪」
「はは、これからよろしくな!笹木」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。夏目先輩♪」
笹木の笑顔はとても可愛らしかった。
それからしばらくして、仕事の説明を終え帰ろうとすると、笹木に声をかけられた。
「夏目先輩!」
「どうした?」
「これから先輩のお家に伺ってもですか?」
「え?何か用事でもあるの?」
「はい、実は……」
「うん」
「私の料理を食べて貰いたくて……」
「笹木が作ってくれるの?」
「はい!それで先輩の感想が聞きたいんです!」
「そっか、わかった。いいよ」
「ありがとうございます!」
俺は何か忘れてるような気がしたが、笹木を連れて帰宅すると。
「あら、おかえりなさい」
「お帰り~、哉太さん!」
家に帰ると、エルヴィアとイヴが出迎えた。
「え……先輩?この子達は?」
「あ……えっと……」
俺は、イヴとエルの事をすっかり忘れていた。
「あ、いや、この子達は……」
俺がしどろもどろしていると、エル達が自己紹介を始めた。
「初めまして、私の名前はエルヴィア・ルシフェールよ」
「私はイヴ・ルシフェールです……」
二人はそれぞれ自己紹介をする。
「は、はじめまして、笹木美優と言います」
「あなたは哉太の何なの?彼女?」
「え!?そんな、彼女なんて……///」
エルの言葉に赤くなる笹木。
「ふーん、ならいいけど」
「あの……夏目先輩の親戚の方でしょうか?」
「えっと……その……」
言い訳を考えてると、エルが切り出した。
「いいえ、違うわよ」
「え、じゃあいったいなんなのですか……?」
「私達は異世界から来たのよ」
「い、異世界!?」
驚く笹木に、イヴが説明を始める。
「私たちは夏目さんの家でお世話になっています……」
「どうして……?」
「それはですね、哉太さんが私たちを助けてくれたからなんです」
「助けたってどういうことですか?夏目先輩!?」
笹木は疑問に思ったことを俺に質問してくる。
「話せば長くなるけど……」
腹をくくった、俺はこれまでの事を全て話した。なぜ異世界から来たのか、天使と悪魔のハーフのこと、そして俺の家に居候していることなど。
「そんなことが……。流石は夏目先輩です!」
笹木は目を輝かせながら言う。
「でもね、哉太さんがいなかったら今頃どうなっていたか……考えるだけ恐ろしいです」
「そうね、哉太には感謝してるわ」
「確かに、夏目先輩がいなかったら大変なことになっていたかもしれないですもんね……」
笹木は納得してくれたようで良かった。しかし、笹木はまだ不思議そうな顔をしていた。
「ところで、お二人はおいくつなんですか?見たところ、幼く見えるのですが……?」
「ああ、二人とも15歳だよ」
「えぇ!!夏目先輩ってロリコンだったんですか!?」
「ちょっ!?こら、変な誤解するんじゃない」
「ひゃ!……ごめんなさい」
「と、とりあえずご飯にしようか」
「はい!」
「笹木、そう言えば何を作るんだ?」
「ハンバーグを作ろうと思ってます!」
「おお!いいねぇ、あー腹減ったよ」
「じゃあ、すぐ作りますので座っていてください!お二人もゆっくりしててね!」
「はーい♪」
「楽しみにしてるよ!」
それから数分後、料理が完成した。
「できました~♪どうぞ召し上がれ」
テーブルの上にはハンバーグやサラダなどが並べられている。
「いただきまーす」
「いただきます!」
「いただくわ」
俺達は早速食べ始める。
「おお、うまいなこれ」
笹木の作ったハンバーグは、お肉の味がしっかりしていてとてもボリュームがあり、まるで高級レストランに出て来てもおかしくないレベルの物だった。
「ほんとだ、おいしいです!」
「……美味しい」
「お口に合ってよかったです」
俺達の感想を聞いて、笹木の顔がぱぁぁっと明るくなる。
それから少し雑談しながら食事を終えた。
「それでは、私は帰りますね♪」
「あ、ちょっと待ってくれないか?」
「どうしましたか?」
「……この事は俺らだけの秘密にしてくれないか?」
「わかりました。誰にも言いませんよ」
「ありがとう、助かるよ」
「いえ、こちらこそ貴重な体験をさせてもらったので……あ、そうだ!」
「どうした?」
「これからも、先輩のお家に料理を作りに来てもいいですか?」
「おお、それはありがたい!是非頼むよ」
「はい!じゃあまた明日来ますね」
「わかった、気をつけて帰れよ」
「はい、おやすみなさい」
「お休み~」
笹木を見送ると、イヴが話しかけてきた。
「あの人いい人ですね」
「ん?ああ、いい奴だから仲良くしてあげてくれな」
「はい!」
「さて、風呂入って寝るか……」
「お背中流しましょうか?」
「大丈夫だよ、自分で洗えるから」
「えへへ、冗談ですよぉ」
「まったく……」
俺は浴室に行き、体を洗い始めた。
「ふうぅ、今日も色々あったなぁ」
今日の出来事を思い返しながら、湯船に浸かっている。すると、突然ドアが開かれた。
「ふっふっふ……お邪魔しまーす」
入ってきたのはバスタオルを着けたエルだった。
「ちょ、何やってんだよ!?」
「あら、別にいいじゃない」
「よくねえよ!」
「いいからほら、一緒に入りましょ」
「うわぁ、おい入って来るなって」
エルは、強引に浴槽に入った来た
「ふぅ~気持ちい~♪」
「おい、やめろって……」
「いいの、いいの。細かいことは気にしないの」
「はぁ……もう好きにしろ」
「やった♪」
結局、そのまま二人で入ることになった。
「気持ちいいわね」
「そうだな」
「哉太、あんた結構筋肉あるのね」
「まあな、一応鍛えてるし」
「でも細い体よね」
「そうか?」
「うん、もう少し肉をつけた方がいいかもね」
「善処するよ」
そんな他愛もない会話をしていると、エルが何かを思い出したかのように話し出した。
「ねぇ、哉太に聞きたいことがあるんだけどいいかしら?」
「なんだ急に改まって」
「哉太の好きな女の子のタイプを教えて欲しいの」
「なんでだ?」
「いいから教えなさい」
「?……そうだな。優しい子かな」
「なるほど、他には?」
「後は、可愛い系より綺麗系の子が好きだな」
「そうなんだ、他にはないの?」
「特にないけど、強いて言うなら髪が長い方が好みだ」
「そっか、ありがと」
「?」
それから、少しして俺達は風呂を出た。
「じゃあ、部屋に戻るわね」
「ああ、分かった」
「じゃあおやすみ」
「おやすみ」
そして、俺は脱衣所を出てリビングに戻ろうとした時。
『きゃあ!!』という悲鳴が聞こえた。声の主はエルのようだ。
急いで俺の部屋に入る。
「どうした!!?」
そこには下着姿のエルがいた。
「み、見ちゃダメェ!!!」
「ぐはッ……!」
俺は強烈なボディーブローを食らい、その場に倒れ込んだ。
「あ、ごめん!つい……」
「いや、こっちこそ悪かった……。それより何があったの?」
俺は痛む腹を押さえながら、聞いた。
「ま、窓に大きな虫が……!!」
「ああ、そういうことか……」
「本当……死ぬかと思った」
「そりゃ大変だったな、とりあえず服着たら?風邪引くぞ」
「えっ……あっ!!忘れてた!!!」
エルは慌てて服を着ると、顔を真っ赤にして言った。
「さっき見た事は、誰にも言わないでよね!」
「分かってるよ、安心してくれ」
「絶対よ!?約束だからね!」
「はいはい、分かりましたよ」
こうして、今日も一日が終わりを告げた。
明日はどんな日になるのか、不安と期待が入り混じった複雑な感情を抱きながら眠りについた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
翌日、朝食を食べ終えた後、俺は大学に行く準備をしていた。
「それじゃ、行ってきます」
「気をつけてね」
「いってらっしゃーい」
イヴとエルに見送れられ、大学に向かった。
「……では、今日のレポートは明日の18時までに指定のボックスに入れること」
授業が終わり、大学の食堂に向かった。
食堂に入ると、既に大勢の生徒が来ていた。その中に、笹木の姿もあった。
「よう笹木」
「あ、先輩!おはようございます!」
お互い挨拶を交わした後、笹木が話しかけてきた。
「昨日の事なんですけど、良かったら私にもお手伝いさせてくれませんか?」
「ん、あぁ全然いいよ」
「そうですか……!良かったです!」
「こっちも、助かるよ」
すると笹木が、急にモジモジし始めた。
「あの……もし良ければ今日二人で遊びに行きませんか?」
「二人だけでか?」
「はい……駄目ですか?」
「う〜ん、まあいいか」
「本当ですか!?嬉しいです!!」
笹木はとても嬉しそうな表情を浮かべている。そんなに喜ぶような事なのかなと思いつつ、笹木に尋ねる。
「それで、どこ行くんだ?」
「それはですね……」
「おい哉太!お前こんな所でなにやってんだよ」
突然後ろから声をかけられた。振り返るとそこには、同じサークルに所属している同級生の、田中と鈴木が立っていた。
「なにって別に何だっていいだろ?」
「お前!笹木とイチャイチャしやがって!羨ましい……」
「別にいいだろ……。それに、俺が誰と何処で何をしようが勝手だろうが」
「ちげぇねぇ!」
二人は俺の肩に手を置きゲラゲラ笑い出した。
「じゃあ、俺ら行くわ。楽しんでこいよ!」
「今度会ったら、感想聞かせてくれや」
「……どうゆうことだよ」
俺は訝しんで、二人に聞いた。すると、鈴木が小さい声で。
「……お前、これから笹木とホテル行くんだろ」
「なッ!?」
その言葉に驚いたと同時に、周りから視線を感じた気がした。
「バッカ!!行くわけ無いだろ!?///」
俺も周りに聞かれないよう、小声で反論する。しかし、二人の耳には届いてないようだ。
『じゃ、また明日な〜』と言い残して去って行った。
(ったく……あいつら~!!)
彼らに怒りを覚えつつも、冷静さを取り戻す為に深呼吸する。
暫くして笹木が腕を引っ張る。
「さて、行きましょうか!」
「あぁ、うん。ところで何処に行くんだ?」
「ふふ、それは着いてからのお楽しみです♪」
俺は笹木の笑顔を見て、少しドキッとした。
「どうかしましたか?私の顔に何か付いてますか?」
「い、いや何でも無い……///」
「?そうですか……。では、行きましょう!」
こうして俺は、笹木に連れられて歩き始めた。
しばらく歩いていると、ある建物の前で立ち止まった。
「ここですよ」
そこは、駅前の百貨店だった。中に入ってみると、色々な店があり、大勢の人で賑わっていた。
「なあ、なんでここなの?」
「えっと……これからあの子達にもお世話になるので何かプレゼントでも、と」
「なるほど!いいんじゃないか?」
「はい!それじゃ早速探しに行きましょ!」
そう言って、笹木は楽しそうな足取りで店内を回りはじめた。
「これなんか可愛いんじゃありませんか?」
笹木が手に取ったのは、猫が描かれたコップだった。確かに可愛らしいデザインで、値段的にも悪くなさそうだ。
「いいと思うけど、もうちょっと見てみないか?」
「うーん、分かりました。そうですね!」
「ああ、いいよ。行こうか」
それから一時間程経っただろうか。笹木はまだ悩んでいるようだったので、先に店外に出ることにした。外にはベンチがあったので、そこに腰掛けた。
ぼぉ〜っとして待っていると、『お待たせしました』という声が聞こえた。
「おっ、決まったのか」
「はい。これにします」
笹木の手には二つ、黒猫と白猫の形のコップを持っていた。どちらも細部まで丁寧に作られていることが分かる。
「いいじゃん!それで決まりだな」
「はい!!」
嬉しそうな顔で返事をした後、彼女は俺の隣に座った。その時、彼女の髪が風に吹かれて揺れていた。思わず見惚れてしまったが、気を取り直して話を切り出す。
「よし、これで買い物終わりか?」
「いえ、まだありますよ」
「そっか、なら行こうか」
俺は立ち上がり、彼女に手を差し伸べた。
「は、はい!」
恥ずかしがりながらも、俺の手を握り返してきた。そのまま、俺達は店を後にした。
その後、デパート内の様々な店でショッピングを楽しんだ後、近くのカフェに入った。そこで、俺はコーヒーを飲みながら、笹木に質問をした。
「今日はどうするんだ?」
「勿論今日もお夕飯を作りますよ!やっぱり1人で作って食べるよりも、みんなで食べた方が美味しいですし」
「そりゃ良かった。俺も余り料理のレパートリー少ないからなぁ。でも、無理して作りに来る必要はないからな」
「ふふ、大丈夫です。それに、夏目先輩やあの子達に喜んで欲しいので」
そんなこと言われたら、何も言えなくなるじゃないか!
なんで、皆彼女に惚れるのが分かった気がする。
「分かった。じゃあ、お願いしようかな」
「はい!任せて下さい!!」
笹木は笑顔で答える。その表情を見て、俺は思った。
(この子は本当に良い子だなぁ)
「夏目先輩、今私のこと『良い子』だって思いませんでしたか?」
「え!?何で分かるんだよ」
「ふふん、女の勘ですよ♪」
そう言うと、笹木は得意げな顔をしていた。
「……もしかして、超能力者なのか?」
「違いますよ!夏目先輩が考えそうなことを予想してみただけです!」
「へぇ〜」
「もう!信じていませんね!」
頬を膨らませている彼女を見ると、なんだか微笑ましく思えた。
「ごめん、ごめん冗談だよ。それより、早く帰らないとな」
「むぅ……。そうですね、帰りましょうか」
少し拗ねていたが、すぐに機嫌を直し、席を立った。
会計を終え店を出ると、辺りは既に暗くなっていた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「すっかり遅くなったな」
「本当ですね。夏目先輩のお家に泊めて貰えるなんて、ラッキーです!」
「まぁ、一人増えたところで変わらないしさ」
「本当に嬉しいんですよ?……あっ、今日のお夕飯の買い物しないと!夏目先輩、スーパーに寄ってもいいですか?」
「ああ、もちろん」
俺達は近所のスーパーマーケットに向かった。
「夏目先輩は何が食べたいですか?」
「そうだな……オムライスがいいな」
「分かりました!では、材料を買いに行きましょう!」
「おう」
こうして、俺達の買い出しが始まった。
「夏目先輩、卵を2パック買うので、カゴに入れておいてもらっていいですか?」
「おっけ」
俺は言われた通り、卵を入れる。すると、笹木がこちらに向かって歩いてきた。
「夏目先輩、鶏肉がお買い得ですよ!ところで、先輩は何のお肉が好きですか?」
「んー……肉だったら何でも好きだな」
「なるほど、先輩らしい答えですね♪」
彼女はクスッと笑った。その後も、色々と見て回り、必要な食材を全て購入し終えた。レジで支払いをしている時、笹木が財布を取り出した。
「夏目先輩、私が払いましょうか?」
「いいよ、俺が払うから」
「ダメです!ここは私に払わせてください!」
「いや、後輩に奢らせるわけにはいかないだろ」
「でも……」
「いいから」
「……ありがとうございます」
渋々といった感じだったが、納得してくれたようだ。
「それじゃあ、行くぞ」
「はい」
袋詰めされた商品を持ちながら、俺達は再び帰路についた。
「夏目先輩、荷物持ちますよ」
「いいのか?」
「これくらいさせて下さい」
「分かった、じゃあ頼むわ」
俺は持っていたビニール袋を手渡すと、笹木は嬉しそうに受け取った。そして、二人で並んで歩き始める。
「今日は楽しかったです」
「それは良かった」
「夏目先輩はどうでしたか?」
「俺も楽しかったよ」
「ふふっ、夏目先輩にも楽しんで頂けてよかったです」
正直に言ってしまえば、俺はこの生活をまだ完全に受け入れられていない。
異世界から来た少女達との生活。これはあくまで一時的なものだ。
いつかはこの生活とも別れることになるかもしれない。
だからといって、今の状況を否定するつもりはない。彼女たちが元の世界に戻るまで、出来る限りのことはしてあげようと思っている。
「どうかしましたか、夏目先輩」
「いや、なんでもない」
「そうですか。……あ、着きましたよ!」
「ただいま〜」
玄関の扉を開けると、リビングの方からエルヴィアが飛び出してきた。
「おかえりなさい、哉太。随分遅かったのね」
「すまんな、ちょっと寄り道をしててな」
「そうなの……。あら、美優も来てたんだ」
「はい!お邪魔します!」
「哉太に迷惑かけてないかしら?」
「かけてないですよ!!」
「なら良いのだけれど」
「おーい、二人共。いつまで揉めてんのさ。早く中に行って」
「ごめん、哉太」
「すみません、先輩」
二人は謝ると、中に入っていく。その後に続くように、俺もリビングに入る。するとイヴが。
「あの今日のご飯はなんですか?……もうお腹ペコペコで……」
「今日は夏目先輩のご要望でオムライスです!腕によりをかけて作りますよ!」
「わぁ~うれしい!!」
「本当!?やったぁ!!哉太、大好き〜♡」
「はいはい、ありがとよ」
抱きついてくる二人を適当にあしらいつつ、テーブルに座る。
「腕に縒りを掛けて作りますから、楽しみしててください!」
「おう」
それからしばらくして、料理が完成した。全員分のオムライスが用意され、早速食べ始めた。一口食べると、その美味しさに驚いた。
「うまい……」
「ほんとうにおいしいですね……」
「すごい……」
三人が感嘆の声を上げる。
「えへへ、ありがとうございます。実はこのオムライス、私のお母さんに教わったんです」
「まじかよ……」
これが……母親直伝だというのか!?一体、笹木のお母さんは何者なんだ?。
「先輩。どうかしましたか?」
「いや、なんでもない……」
「そうですか?あ、そうだ。今日はイヴちゃんとエルちゃんにプレゼントがあるんですよ!はい、どうぞ」
笹木が取り出したのは、小さな箱だった。それを開けてみると中には、今日デパートで買った白猫と黒猫のコップが入っていた。
「わぁー、いいの?」
「うん、かわいい!」
「喜んでもらえて嬉しいです」
「良かったな。笹木」
「えへへ……///ありがとうございます」
「でもどうしてこれをくれたの?」
「それは、二人と友達になりたいからだよ」
「美優……!」
「大切に使うね!」
「はい!是非使ってください」
二人のやりとりを見ていて思ったのだが、笹木とエルヴィア、それにイヴは本当の姉妹のように仲が良い。
最初は少し不安だったが、これなら仲良くやっていけるだろう。
「さて、そろそろ片付けるか」
「そうね。私達も手伝うわ」
「いえ!私がやりますので、皆さんはゆっくりしていて下さい」
「いいのか?」
「はい!任せて下さい!」
「じゃあ、お願いするよ」
俺は食器を流し台に持っていくと、洗っている笹木の隣に立った。
「先輩?手伝ってくれるんですか?」
「ああ。洗い終わったら拭いてくから」
「はい、よろしくお願いします」
こうして二人で皿を洗っていく。
「先輩は優しい人です。こんなにも優しくしてくれる人は初めて会いました……」
「そんなことねぇだろ。俺よりもっと良い奴なんていっぱいいるだろ?」
「いいえ、違います。先輩は本当に素敵な方です。私は先輩に出会えて幸せです」
「……っ///」
不意打ち気味に言われた言葉に、思わずドキッとした。
「だからこれからもずっと仲良くしたいと思います」
「お、おう……。俺も同じ気持ちだよ」
「ふふ、ならよかった。あ、終わりましたよ」
「ん?ああ、後は拭き上げるだけだな」
「はい、では次はこっちを頼みます」
「了解。ほら、貸して」
俺は布巾を受け取ると、濡れた食器を丁寧に拭いていく。そして全ての作業が終わると、笹木と一緒にリビングに戻った。
「美優の作ったオムライス凄かったわよね。また食べたいなぁ〜」
「えへへ~」
イブは目を輝かせながら、笹木に話しかける。
「わたしも作りたいです。今度作り方教えてもらえませんか?」
「もちろんいいですよ。いつでも言って下さいね」
「ありがとうございます!美優さん」
3人はすっかり意気投合したようで、楽しそうにしている。その様子を見ていると自然と笑みがこぼれた。すると突然笹木がこちらに近づいて来た。
「あの、先輩。今日先輩のお家に泊まっていいんですよね?明日学校休みですし……」
「別にいいけど、着替えとか大丈夫なのか?」
「はい、一応持って来ているので」
「わかった。それならいいけど……」
「本当ですか!?やった〜!ありがとうございます。先輩大好きです!」
「ちょ、抱きつくな!離れろって」
「えぇー、いいじゃないですかぁ。減るものでもないでしょう?」
「そういう問題じゃなくて……あっ……」
笹木が抱き着いてくるので、彼女の柔らかい胸が腕に当たっていた。
その感触にドキドキしながらも、何とか理性を保つことが出来た。
「もういい加減にしなさい。哉太が困っているでしょ」
エルヴィアが助け船を出してくれたおかげで、やっと解放されたのだった。
「ごめんな。ちょっとトイレに行ってくるから、先に風呂入ってて……いいぞ」
俺は逃げるように部屋を出て行くと、そのままトイレに向かった。
(危なかった。もう少しで理性が飛ぶところだった)
笹木の柔らかすぎる身体のせいで、危うく一線を越える所であった。
俺は深呼吸して心を落ち着かせると、用を足してから再び部屋に戻ってきた。
「あ!哉太さん」
「あれ、二人はどこに行ったんだ?」
先程までソファーに座って話していたはずのエルと笹木の姿がない。
「美優さんなら、さっきお風呂に行きましたよ。お姉ちゃんも一緒です」
「そうなのか。まあ、ゆっくりしててくれ。何かあったら呼んでくれればいいから」
「わかりました〜」
イヴが笑顔で言うと、俺は自分のベッドに寝転がった。
「はぁ……。疲れた……」
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今日の出来事を思い出しながら目を瞑ると、いつの間にか眠りについてしまった。
「うぅ……あれ?」
ゆっくりと目を開ける。まだ外は暗いようだ。
時計を見ると、時刻は12時であることがわかった。
「なんだこの感じは?まるで誰かに抱きしめられているような感覚だ」
背中に感じる温もりに違和感を覚えた。恐る恐る振り返ると、そこには下着姿の笹木がいたのだ。しかも俺を抱き枕代わりにして眠っている。
「なッ!?お、おい、起きろよ。何してんだよお前は!!」
慌てて引き剥がそうとするも、なかなか離そうとしない。
「むぐっ……んにゃ?」
「あ!起きたか?」
「先輩……どうしたんですか……?」
眠そうな顔で見つめてくる彼女に、思わずドキッとしてしまう。
「それはこっちのセリフだよ!なんでこんな事してるの!?」
「だって先輩が寒そうだと思って温めていたんですよぉ。でも安心しました。私の体温が心地良かったようですね。ふわぁ〜」
大きな欠伸をしながら、呑気にそんな事を言っている彼女を見て呆れてしまう。
「だからって一緒に眠る必要はないだろう?ほら、早く服を着替えてこい」
「えぇー嫌ですよ。せっかく気持ち良く眠れると思ったのにぃ……」
「ダメなものはダメなの。頼むから離れて……」
「先輩……」
笹木は上目遣いで覗き込むようにこちらを見てきた。
「……先輩に……先輩になら、私の処女……捧げても良いですよ……?」
「そ、そういう冗談やめろよな……」
「よいしょ!」
「わぁ!?」
笹木は俺に飛び付き押し倒した。
「先輩、我慢のし過ぎは良くないですよ?ここ、こんなに膨れ上がってますよ?」
笹木は俺の股間を擦りながら言うと、妖艶な雰囲気を醸し出してきた。
「それに、先輩だって私のおっぱい、堪能したいんじゃないんですか?ほら、触っても構わないんですよ?」
彼女はブラジャーを外そうとする。
「くっ、誘惑するんじゃない」
「もう!素直になって下さいよ。私の胸。触りたくないですか?」
笹木の甘い声に、なんとか抗おうとする。
「だ、駄目!やっぱりこう言うのは、まだ……!」
俺は彼女の胸に手を伸ばすとする本能を理性で抑える。
「こんな事……先輩にしか、お願いしないですよ?」
「……ゴクッ」
もう自身の本能を開放しようかと思った瞬間。
「哉太さん……?どうしたんですか……?」
目を擦りながら、イブが部屋に入って来た。
「「!?」」
「あれ?……哉太さん?」
イヴは寝ぼけながら俺と笹木を見る。
「あの……その、これはだな……」
なんとか弁解しようと試みるが上手く言葉が出てこない。
すると、イヴが倒れこんでしまった。
「うわぁ!イヴちゃん!?」
「おい!大丈夫か!?」
急いで駆け寄り抱き起こすと、彼女は幸せそうな表情を浮かべていた。どうやら眠っているだけのようだ。
「はぁ……びっくりしたぁ……」
「ごめんなさい……私ったらつい……」
「もういいよ。それよりイヴを布団に運ぶから、服着なよ」
俺はイヴを抱き抱えると、リビングへと向かった。彼女を布団に寝かせると毛布を掛けてあげて自分の部屋に戻った。
「先輩……。ごめんなさい……」
笹木は落ち込んだ様子で謝ってくる。
「もういいよ。それより、どうしてあんなことをしたの?」
俺はベッドに腰掛けながら聞いた。すると彼女は気まずそうにしながらも口を開いた。
「だって……先輩が他の女の子達と仲良くするのを見てたら、なんだか胸がモヤモヤしてきちゃって……それで思わずあんな事を……」
「はぁ……まったく仕方ないなぁ……」
「すみません……反省してます」
笹木は俯きながら答えた。そんな姿を見た俺は、彼女をそっと抱き寄せた。そして耳元で囁くように言う。
「よしよし、ちゃんと手順を踏もうな?」
頭を撫でながら言うと、彼女はビクッと体を震わせた。
「え……先輩?」
「こ、こう言うのは……///」
俺は恥ずかしくなって頭を掻きながら。
「ちゃ、ちゃんと付き合ってからに……しような……///」
「は、はい……///」
暗い部屋の中だが、笹木の顔は真っ赤になっているのが分かる。それは、俺も同じだが……。
「じゃ、おやすみ」
俺は布団に入り寝る準備を始めた。すると後ろから服を引っ張られる感覚があった。
「あの……先輩?」
「なに?笹木……」
「先輩……好きです。付き合ってください……///」
「……っ」
俺は思わず息を呑んだ。そして、ゆっくりと振り返り彼女の目を見つめる……。
「俺もだよ……」
「でも、今はイヴ達を元の世界に帰す事が大事だから……。それまで待ってて欲しい」
「はい……わかりました……///」
彼女は微笑みながら頷いた。
そして、月明かりが差す暗い部屋の中で、俺達は唇を重ね合わせたのだった。
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第2話 完 ~To Be Continued~