「先輩、おはようございます」
「ふあぁ~……おはよう美優」
笹木に起こされてリビングに行くと、そこには俺以外の住人達が既に揃っていた。
昨日は色々あったせいで疲れていたのか、俺はいつもより遅くまで寝てしまっていたようだ。
「ああ、二人ともおはよ……」
「珍しいですね、哉太さんがお寝坊さんなんて……」
イヴはそう言いながら朝食をテーブルに置いていく。
「いやー、なんか寝つけなくてさ。なかなか眠れなかったんだよ」
「そうなんですね……。でも今日はお休みですし、ゆっくりできますよね!」
イヴの言葉を聞きながら席に着くと、エルが口を開いた。
「ねぇ、ちょっと聞いてもいいかしら?」
「ん?どうしたんだエル?」
「貴方達は一体どういう関係なのかしら?」
その言葉を聞いた瞬間、俺は思わず飲んでいるお茶を吹き出しそうになった。
「ど、どういうって言われてもだな……ただの先輩後輩の関係だよ」
「本当にそれだけ?私にはもっと深い関係のように見えるんだけど……」
鋭い!鋭すぎるぞこの子ッ……!!
確かに俺と笹木は恋人関係になった訳だが、だからと言って別にそんなに気にする必要はないと思うのだが……。
すると今度は隣に座っていた笹木が声をあげた。
「そっ、そんなこと無いですよ!先輩の言う通り、私達は先輩後輩の関係ですよ!ねっ、先輩!!」
とりあえずここは笹木に合わせておくしかないだろう。
「えっ、あっ、うん。そうだよエル。俺達はあくまで先輩後輩の関係でそれ以上もそれ以下もないから……」
「ふぅん……」
なんとか納得してくれたみたいだ。危ないところだった……。
「それじゃあ食べましょうか。冷めないうちに頂きましょ♪」
こうして、今日の朝ごはんが始まった。
「うまっ!?朝からこんな美味しい料理が食べられて、幸せだな!!」
「ありがとうございます。口に合って良かったです」
「ほんとに凄いわね。こんな料理を毎日食べられるなんて……」
「美優さんすごいです!憧れちゃいます……」
みんなもかなり満足しているようで何よりだ。
しかしエルだけは不満げに言った。
「……私は料理が苦手だから羨ましいわ」
「え、そうなのか?」
「イヴは良くお母さんと一緒に料理してたけど、私は手先が器用じゃないから……」
意外だ。見た目的になんでもこなせそうなイメージがあったのに……。
「へぇ~……それは知らなかったな。今度一緒に作ろうよ!」
「……ありがと」
少し嬉しそうな表情を浮かべたが、すぐに表情が暗くなった。
「どうかしたのか?」
「……何でも無いわ。それより早く片付けましょう」
それから食器の片づけをして部屋に戻ると、俺は早速笹木に話しかけた。
「なぁ、昨日の事なんだが……」
「分かってますよ。誰にも言わないですから大丈夫です!」
「助かるよ。それともう一つ聞きたい事があるんだが良いか?」
「はい、なんですか?」
「お前の両親ってどんな人なんだ?」
「私のお父さんとお母さんですか……。父は普通のサラリーマンで母は専業主婦です。特に変わった所はないと思いますよ」
「そっか、分かった。変なこと聞いて悪かったな」
「いえ、全然良いんですよ!それよりもこれからどうしますか?」
「そうだな……どうするか」
「哉太さん~!」
突然、部屋にイヴが入って来た。
「どうしたの?そんなに慌てて」
「あの、ちょっと今良いですか?」
「ん?何かあったのか?」
「お客さんが来てますよ!」
「え?誰だ?」
俺は、イヴに連れられて玄関に向かった。そこにいたのは、ラフな格好をした女性がいた。
「いやぁ、おはよ~哉太くん」
「店長!?一体どうしたんですか!?」
「いやぁ、なんか最近大変そうだったから心配になって会いに来たんだよねぇ~」
「わざわざ来てくれて嬉しいんですけど、コンビニはいいんですか?」
「今日は休みだしさ、問題なしだよ~!それにしてもこの子は何者なの~?可愛いねぇ~」
店長はイヴを見て目を輝かせている。
「あっ、えっと……この子はその……異世界から来た天使と悪魔のハーフで……イヴと……」
「天使と悪魔のハーフ……?なにそれ!?詳しく話聞かせて!!」
店長はグイグイ迫ってくる。
「わ、分かりましたから。取り敢えず落ち着いてください!」
「ごめんね~つい興奮してさ~」
店長が落ち着くのを待って話を戻そうとした時、店長のお腹の音が鳴った。
「あはは、お恥ずかしながら朝ご飯まだでさ。ちょうどいいし、哉太くんなんか作って~」
「えぇ……何が食べたいんですか?」
「う~ん、なんでもいいかな!あと飲み物にコーヒーをお願いね。砂糖多めに入れて~」
「了解しました……」
「じゃあ、お邪魔するね~」
店長は靴を脱ぎ中に入る。
「イヴ、悪いんだけど店長にコーヒーを出してくれないか?」
「はい、わかりました!」
俺は台所に向かい、冷蔵庫の中を確認した。
「取り敢えず、ベーコンエッグでも作りますか」
俺はフライパンに油を引き、ベーコンを敷き卵を落とす。そして蓋をして弱火でじっくりと焼く。
その間にレタスとトマトを切る。
「よし、完成っと。店長、出来上がりまし……って」
「あれぇ~?なんで、美優ちゃんがいる~?」
いつの間にか、ソファーに座っていて、美優に話しかけていた。
「えっ、店長さん!?どうしてここに……」
「いやぁ、哉太くんに会いにきたら、君が居たもんだからびっくりしちゃった~」
「あの……あなたは哉太さんの知り合いなんですか?」
「うん、哉太くんがバイトしてるコンビニの店長の安達 空『あだち そら』。気軽に空ちゃんって呼んで~」
「はい、空さん!私は、イヴァーノ・ルシフェールって言います」
「こっちは、私のお姉ちゃんのエルヴィア・ルシフェールです」
「はじめまして……」
「こちらこそよろしくねぇ~」
2人は自己紹介を終えると、美優と会話を始めた。
「ところで、美優ちゃんはなんで哉太くんの家にいるのかな~?」
「え!?そ、それは……」
「ふぅ~ん、まあいっか。それより私お腹空いたよぉ~」
「今作り終わったんで持ってきますね」
「ありがと~」
俺は出来上がった料理を持っていく。
「はい、どうぞ」
「ありがとう~。いただきまーす」
店長はまずコーヒーを一口飲むと、次にベーコンエッグを食べ始めた。
「う~ん、美味しい!哉太くん料理うまいねぇ~」
「褒めても何も出ませんからね」
「あはは、分かってるって~」
店長はあっという間に完食してしまった。
「ふう、ご馳走様でした。おいしかったよ~」
「お粗末さまでした」
「さてと、哉太くん。この子達の事を話してくれるかな?」
店長の目つきが変わった気がした。
「え、あ……はい」
俺は店長にイヴ達について説明をした。
「へぇ、面白いね。それにしても、その2人が本当に異世界から来たなんて……信じがたいけど、今目の前にいるから信じるしかないよね」
「はい……。それで、俺はこの子達の保護者みたいな感じで生活してるんです」
「なるほどね」
「はい。最初は俺が保護してるだけでしたが、今は普通に家族として接しています」
店長は何やら考え込んでいる様子だった。
「う~ん、でもそうなると、やっぱり家に帰らないとダメだよねぇ~」
「でも、帰る方法が分からないんですよ」
「なるほどねぇ~。だからあんなにシフト入れてたんだねぇ~」
「すいません……」
「別に謝ることじゃないってば。それより、家に帰る方法が見つかるまでここで暮らすんだよね?」
「はい、そうですね……」
店長はまだ何かを考え込んでいた。
「あの、どうかしましたか?」
「あぁ、うん。ちょっと気になってる事があってさ」
「気になってる事?」
「イヴちゃん達はさ、帰りたくないの?」
「えっと……正直言うと、あまり元の世界に帰りたくはないです」
「……でもこの世界に居続けても哉太の負担になるし……」
イヴとエルは表情を暗くしそう呟いた。「負担になんかならないって言ったろ?そんな事気にするな」
「そうだよ~。なにかあったら私も美優ちゃんもいるし、遠慮しないで甘えていいんだよ?」
「空さん……」
店長の言葉を聞いた2人は安心したような顔をしていた。
「……しっかしイヴちゃん達は可愛いなぁ~。私にもこんな妹がいたらいいのになぁ~」
店長はニヤリとした顔で、イヴの頭を撫でている。
「わっ!くすぐったいですよ空さん!」
「あはは、いいじゃんいいじゃ~ん。うりゃうりゃ」
「ちょ、もう止めてくださいよぉ~」
「あはははは。よーし、今日は皆で銭湯行こうか!」
「え!?そ、それは……」
エルは頬を赤く染め、俯きながらモジモジとしている。
「え、何々?恥ずかしがっちゃって~。女の子同士なのにぃ~」
「だって、まだ会ったばかりだし……」
「ふぅん。この世界のことわざに『裸の付き合い』って言葉があるんだけど、知ってるかな?」
「いえ……知らないわ」
「まあ簡単に言えば、お風呂に入ったらすぐに仲良くなれちゃうよって意味なの。さ、そうと決まれば早速行こっか」
店長は2人の手を取る。
「え、ちょ、待ってください店長!銭湯って何処に行くんですか!?」
「ん、私の行きつけの銭湯だよ~」
「せ、銭湯ですか……」
「な~に?まさか嫌だなんて言わないよね~?」
店長が笑顔で威圧してくる。これは断れない雰囲気だ……。
「……分かりました」
「よし決まり!それじゃレッツゴー!!」
店長に連れられ、俺達は家を後にする。
イヴとエルはというと、店長と手を繋いで歩いている。その後ろで俺と美優は歩く。「あの、先輩。良かったんですか?」
「何が?」
「いや、店長さんの勢いに負けてついて来てしまいましたけど、もしかしたらあの子達にとって迷惑だったんじゃないかなって思って」
「あぁ、その事なら大丈夫だよ。見てみなよ、2人ともめっちゃ笑顔だよ」
「本当だ!あんな楽しそうなイヴちゃん達初めて見ます!」
「それに店長も言ってたろ?『遠慮せずに甘えていいんだよ?』って。だから大丈夫だと思うよ。あの人、ああ見えて気前の良い人だから」
「そうなんですね!」
美優は微笑みながら納得してくれたようだ。
しばらくすると、目的の場所に着いたのか店長は足を止める。
「着いたよ~」
「ここが銭湯なんですね。大きい……」
そこはまるで旅館のような佇まいをした建物があった。
「ここは私が学生時代から通ってる場所でねぇ~。ほら、早く入るよ~」
3人に続き、中に入る。受付にはおばちゃんが座っていた。
「あら空ちゃんじゃないの。久しぶりねぇ~」
「どうもです~」
「そちらのお嬢さん方は新しいバイトの子かい?」
「はい。この子は笹木 美優ちゃん。んで、こっちが……」
「初めまして。夏目 哉太です」
俺は自己紹介をしながら頭を下げる。
「よろしくね。空ちゃんの友達なんだって?いつも空ちゃんが世話になってるみたいで悪いわねぇ」
「いえ、こちらこそ店長にはとても良くしてもらっています」
「そう言ってくれると嬉しいわ。空ちゃんの事、お願いしますね」
「も~おばちゃんってば~あ!そそ、この子達は哉太くんの親戚のイヴちゃんとエルちゃんで~す♪」
店長が強引に話を進める。そして二人は挨拶をする。
「イヴァーノ・ルシフェールと言います。宜しくお願いします!」
「……エルヴィア・ルシフェールです。よ、よろしく……」
2人は緊張しているのか少しぎこちなく見える。
「ふむふむ……なるほどね」
「どしたの?おばちゃん」
「いや、なんでもないわ。それより5人とも今日はゆっくりして行って頂戴ね」
「はい!」
早速、俺達は男湯と女湯に別れ更衣室に入り着替えを済ませる。
「さて、入るか」
ガラガラッ
扉を開けるとそこには―――
「おぉ……」
思わず感嘆の声が出る程、広い湯船が目に飛び込んで来た。しかもサウナ付きだ。
「すごいな……これ。こんな所があるなんて知らなかったぞ」
「でしょ~めっちゃ良くない?」
と、壁の向こうから店長の声が聞こえて来た。
「店長。もう入っているんですか?」
「だって待ちきれなかったんだもん〜」
「子供かっ!!」
つい突っ込みを入れてしまう。
それから数分後、3人もやって来たようだ。
「お待たせしましたーうわぁ~広い!」
「大きい……!」
「わぁ~すごい~!!」
三者三様の反応を見せる。まぁ無理もない。何しろイヴとエルにとっては生まれて初めての銭湯なのだ。驚くのも当然だろう。
「とりあえず身体洗うか~」と、店長がイヴ達に言っている。俺も適当に洗い場に座り体を洗い始める。
「きゃあ!?いきなり何するんですか!!」
「いやぁ~美優ちゃんおっぱい大きいねぇ~」
「ちょ、ちょっと空さん!!どこ触ってるんですか!!」
「いいじゃんいいじゃ~ん減るもんじゃないしぃ~」
「恥ずかしいですよ~!!!」
そんなやり取りを聞きながら、俺は黙々と体を洗っている。
「イヴちゃんも、エルちゃんも肌が白くてすべすべ~」
「きゃあ!?」
「ひゃああああっ!!!」
その後も店長は2人の胸を揉みまくり、2人は悲鳴を上げていた。
「よし、次は背中を流しっこしようか」
店長が提案している。
「えぇっと……」
「あの、私達その……」
どうやらイヴ達は抵抗があるらしい。
「大丈夫だよ。私、こう見えても結構上手だから」
「そうなのかな?ならやって貰おうよ、お姉ちゃん」
「う、うん……。わかった……」
こうして、イヴ達の背中流しが始まった。最初は店長がやり始めたのだが……
「あらら、エルちゃん肩凝ってるねぇ~」
「ひゃん!くすぐったい……」
「あはは、ごめんね。でももう少し我慢してね~」
「はい……」
「じゃ、今度はイヴちゃんね」
「はい……お願いします」
店長は慣れた手つきでイヴの背を流す。
「ふむふむ……これはなかなかいいものを持ってるね。将来有望だねぇ~」
「ひゃああんっ!」
「あはは、ゴメンね。痛かったかな?」
「いえ、平気です……」
「それじゃ、最後は美優ちゃんの番だね」
「え!私もやるんですか!?」
「いいからいいから」
半ば強引に店長に背中を流される美優。
「お背中流しますねぇ~……うりゃッ!!」
「きゃあああッ!!」
店長は勢いよく笹木の胸を掴んだ。
ちなみに男湯と女湯の境にはタイル張りの壁が分かれているので、互いの姿を見る事はできない。
「……はぁ。店長は元気だなぁ」
俺は、呆れながらも、体についた泡を流し、湯船に浸かる。すると……
「夏目先輩!!助けてくださ~い!!」
壁の向こうから美優の悲痛な叫びが聞こえて来る。
「店員!そろそろやめてあげてくださいよ……」
「いやぁ~だって面白いんだもん♪」
店長の楽しそうな声が聞こえる。
「うぅ……夏目先輩のばかぁ……」
「はいはい、店長、もう終わりにしましょう。これ以上やったらエリアマネージャーに言い付けますからね」
「それは困るなぁ〜。仕方ない、この辺にしておいてあげるか」
それから数分後、ようやく解放されたのか、美優の声が消えた。
「ごめんね、みんな。もう何もしないから」
店長がそう言うので、美優達は恐る恐る中に入っていく。
「うわぁ~広いですね。それにいい匂いがする」
「本当。気持ちいい……」
どうやら2人とも気に入ったようだ。
「じゃ、ゆっくり浸かってて。私は哉太くんの所に行って来るから」
「え、ちょ!?待って店長!?」
俺の言葉を聞く前に、店長はどこかへ行ってしまった。
「……マジかよ」
しばらくして脱衣場の方から話し声が聞こえて来た。どうやら、店長と女将のおばちゃんみたいだ。
「こら、空ちゃんそんな格好で何処行くつもりだい?」
「ん?それは勿論、哉太くんのいるお風呂だよ?」
「なに言ってるの。ここは混浴じゃないんだよ」
「えぇー。せっかく来たのに、一緒に入れないなんてつまんないじゃん」
「ダメなものはだめ。ほら、早く着替えてきなさい」
「ぶぅ。ケチなんだから」
「はいはい、いい子だから、ね?」
「ちぇ、わかったよ。じゃあまたあとでね」
……相変わらず自由奔放な人だ。
「はぁ……これでゆっくり出来るな」
俺はゆっくりと目を閉じ、温泉を満喫した。
「ふぅ~気持ち良かった」
俺が脱衣所を出ると、ちょうどイヴと鉢合わせた。
「あ。哉太さん!」
「イヴか……いつもと違う、お風呂はどうだった?」
「はい!とても楽しかったです。でもちょっと疲れました……」
「そっか。じゃ、少し休憩しようか」
俺達は、ロビーのソファーに腰掛けた。
「あの、哉太さん……ひとつ聞いてもいいですか?」
イヴが遠慮がちに声をかけてきた。
「なに?」
「その、空さん達は何処に居るんでしょうか?姿が見えないみたいなのですけど……」
「確かに何処だろ?って、あ!」
「哉太く~ん」
店長は食事処でビール片手におつまみを食べている。
「……ったく、空さん、何やってるんですか」
「いいじゃ〜ん。それより哉太君も飲む?」
そう言ってジョッキグラスを上に掲げる。
「飲みませんよ。というより、お酒飲まないでください。」
まったく、この人はいつになったら大人になるんだろう。
「まあまあ、いいじゃない〜。ところで、イヴちゃんとエルちゃんは何を飲むのかな?」
2人に聞く。
「私達未成年なので……」
「ジュースとかありますか?」
「あるよ。すみません~オレンジジュース二つ~」
店長が注文してくれた。
「ありがとうございます。ではいただきますね。」
「美味しいです」
「あの、店長」
「ん?なにかな、哉太くん」
「なんでここに居るんですか」
「そりゃもちろん、風呂上がりの一杯だよ」
「はぁ……もういいですよ。それなら、俺も何か頼んできますね」
「哉太さん!私、オレンジジュースでお願いします!」
「……私も」
「じゃあ私は、ウーロン茶で」
イヴ達が一斉に言った。
「わかった。すみません、ウーロン茶1つとオレンジジュース2つお願いします」
しばらくすると飲み物が届いた。
「あの~先輩」
笹木が話しかけてくる。
「ん?なに?」
「ここのお料理凄く美味しそうじゃないですか?」
確かにどれもこれも美味そうだ。
「うーん、確かに美味しそう……」
すると店長が口を開いた。
「そう!ここの料理はどれも絶品だよ~!」
「そうなんですか!?じゃあ、これ食べてみたいです」
笹木が指差したのは、川魚の塩焼きだった。
「おっけー。じゃあそれ頼むねぇ~」
「イヴちゃん達は?」
「え?じゃあ……私はこれで」
「私もこれで」
二人は、イカの唐揚げとフライドポテトを指さした。
「了解。じゃあそれも追加するねぇ~」
数分後、テーブルには色とりどりの料理が並ぶ。
「お待たせしました。こちら、川魚、山菜の天ぷら、野菜炒め、イカの唐揚げ、フライドポテトになります。ごゆっくりどうぞ」
「わぁ……美味しそう!……」
イヴが思わず声をあげる。
「ほんと、美味しそうですね!」
笹木が言う。
「じゃあみんな、食べるか」
「はい」「うんっ」
俺達は手を合わせて
「いただきます」
と言ってから、食事をはじめた。
「やっぱり、美味いねぇ~」
「本当だ。すげぇうめぇ」
「こんなにおいしいなんて……」
みんな感動しているようだ。そして、あっという間に完食してしまった。
「ふぅ、食べたな」
「はい。とてもおいしかったです!」
「また来たいですね」
笹木も満足しているようだった。
「よし、そろそろ帰るか」
俺は時計を見ながら言った。
「そうですね……暗くなって来ましたし」
笹木が答える。
会計を終えて店を出て、暫くして店長が口を開いた。
「今日は楽しめた〜?」
店長が聞いてきた。
「はい!」
「ええ」
「はい。すごく良かったです」
イヴ達が答えた。
「それはよかったよぉ~!また行こうねぇ~」
店長が笑顔で言った。
「はい!ぜひ、また行きたいです!」
「それじゃ、私は此方だから。じゃあねぇ~」
俺達は、店長を見送って帰路についた。
「先輩。今日は色々ありましたけど、すっごく楽しかったです!では、また明日。おやすみなさい。」
美優が別れ際に言ってきた。
「ああ、気をつけて帰れよ。お休み」
こうして、美優も帰っていった。
「哉太さん。店長さんとっても面白い人ですね!」
イヴが満面の笑みで言って来た。
「ちょっと変だけどね。いい人だよ」
「えへへ、またお会いしたいですね!」
「さぁ俺達も早く帰るか」
「はい。哉太さん、今日はとても楽しい一日でした!ありがとうございます」
「喜んでくれたなら何よりだよ」
そんな会話をしながら歩いているうちに、家に着いた。
「疲れた~!」
イヴが元気よく家の中に入っていった。
「……哉太ちょっといい?」
玄関の前でエルが話しかけて来た。
「ん?なんだ?」
「ちょっと、あの子に聞かれたく無いから外で話せない?」
エルにそう言われたので、俺は家のドアを閉め家の前で話し始めた。
「それで、何かあったのか?」
「……哉太。私の事好き?」
突然の質問に少し戸惑ったが、すぐに返答した。
「勿論好きだ。急にどうしたんだ?」
「……それって私を1人の女として?それとも友達として?」
エルの表情が曇る。
「どういう意味だ?」
「……いいから、答えて」
有無を言わさないような口調で言われてしまったので、仕方なく正直に話すことにした。
「そうだな……。確かにエルの事は友人として好きかな?それに、今はもう大切な家族だし……」
「そう……分かったわ」
エルは呟き俯きながら、家に入ろうとドアノブを握った。
「待ってて!」
俺は慌てて呼び止める。
「なに?」
振り返ったエルの眼には涙があった。
「どうして泣いてるんだよ……」
「なんでもない。気にしないで」
「なにかあるだろ!教えてくれよ!」
「……別に。なんでもないから……」
「本当に?」
「……」
「ちゃんと、話してよ。ちゃんと聞いてあげるし、相談にも乗ってあげるから」
「……わかった。言うわ」
エルは、一呼吸おいて話し始める。
「実は、私。哉太と美優がキスしてるのを見ちゃったの。その時に、私は哉太の事が好きになってたんだって気づいたんだけど、同時に凄く悲しくなって……。ごめんね……。こんなこと聞かされても困っちゃうだけなのに」
「……」
まさか、エルに昨日の行為を見られていたとは。
「やっぱりそうなんだ。私じゃダメだよね。分かってたけど。……辛いなぁ」
「いや、そんな事……」
「ねぇ、お願いだから、本当の事を言って!そしたら諦めがつくと思うの」
「……」
言葉が出なかった。なんて言えば良いのだろうか。
俺が黙っていると、エルは静かに言った。
「哉太。今までありがとう。短い間だったけれど楽しかったよ。さよなら。」
エルは今にも涙が溢れ出してしまいそうだったが、必死に耐えているようだった。
「まってくれ!!」
俺は咄嵯に引き留めた。ここで引き止めなければいなくなってしまいそうだったから。
「……離して。」
エルが冷たく突き放すように言ってきた。
「確かに俺達は付き合ってる……」
「……」
「だけど、エルがいなくなったら俺は嫌だ。だって大事な家族だから」
「……えっ?」
「俺はエルのこと大切に思っているし、これから先、可能な限りずっと一緒に居たいと思ってる。それは美優も同じだ。だから、勝手に決めつけるなよ。」
「いいの?私、人間じゃないのに?」
「関係ないさ。種族の壁なんか関係無い!」
「……」
「それに、エルが望むならその……キスでいいならしても……いいけど……?///」
恥ずかしくて顔が熱くなるのを感じた。
「ふーん。それってつまり、私の事も女として見てたってことだよね?」
「ああ。そうだよ!本当は恥ずかしくて言いたくなかったけど、お前の裸見た時ちょっと興奮した……///」
「……嬉しいな。」
エルが笑顔になった。
「じゃあ、今ここでしてくれる?美優としてたこと」
「ああ。いいよ///」
俺は身体を屈める。
「じゃあ、お願い」
「目閉じて……」
エルが目を瞑った。俺はゆっくりと顔を近づける。そして、唇と唇を軽く触れさせるだけのキスをした。
「これでいいのか?///」
「……うん///ありがとう」
「どういたしまして///」
2人で照れ笑いをした。すると突然……!
「……そんなのずるいですよ!」
突然家のドアが開いた。
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第3話 完 ~To Be Continued~