「なんで、お姉ちゃんはよくて私は駄目なんですか!」
イヴが頬を膨らませながら不満げに聞いてきた。
「イヴ!?いつから見てたんだよ」
「『私の事好き?』のあたりですかね」
ほぼ最初からじゃないか!!
「なにを話してたか、分かるか?」
恐る恐る聞いた。
「はい。もちろん。」
「そっか……」
「やっぱり哉太さんは私よりお姉ちゃんの事が好きなんですね……」
イヴが拗ねたようにつぶやいた。
「違う!ただ、その……なんていうか……」
「違うなら、私とも大人なキスしてください」
イヴはそう言うと、俺の首に腕を巻き付け、顔を近づけてきた。
「お、おい!イヴ」
「もう!なんですか?」
イヴが口をとがらせながら聞いてきた。
「その……なんだ……まだ早いっていうか……」
俺はしどろもどろに答えた。
すると。
「お姉ちゃんとはしたのに……ぐすっ」
イヴが半泣きになりながら言った。
「……分かったよ。」
俺はイヴを抱き寄せ、唇を合わせた。
イヴの唇はとても柔らかく、少し暖かった。
「んっ……」
イヴが少し色っぽい声をあげた。
「……これが大人なキスだよ」
「えへへ、なんか恥ずかしいです。」
イヴは顔を赤くしながら、照れ笑いをした。
その仕草はとても愛らしかった。
「でも、これで私も哉太さんの彼女になれた気がします……//」
イヴが嬉しそうに微笑んだ。
「ああ……そうだな」
俺も少し照れくさかったがそう返した。
イヴは俺の首に手を伸ばし抱き付く。
「哉太さん……だいすき」
「私も、哉太。大好き!」
負けじと、エルも抱き付く。
「わ、分かったから!早く家に入ろって!?」
俺達は、家に戻りリビングに入った。
「今日は哉太さんと一緒に寝たいです!」
「私も!哉太とくっついて寝たい!」
イヴとエルが興奮気味に言った。
「わ、分かったから!落ち着け!」
俺は2人をなだめながらベットに向かった。
ベットに横になると、俺の両隣にイヴとエルが横になる。そして俺達は手を握り合いながら眠った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
翌朝。
目が覚めた時には既に二人はいなかった。
「ん……、あれ?2人は……?」
「あ、おはよう。哉太」
「おはよう、エル。」
「よく眠れた?」
「ああ、おかげさまでね。それよりイヴはどこに?」
「お風呂場にいるわ。私もこれから入るわ」
「そっか。なら俺も後で入ろうかな?」
「構わないけど、覗きは禁止よ?」
「分かってるって」
そんな会話を交わし、キッチンへ向かう。
まだ寝ぼけてる頭を起こす為にコーヒーを作るためだ。
「あ!哉太さん、おはようございます」
「イヴ、昨日はよく眠れたか?」
「はい。久しぶりに気持ちよく寝れました!」
隣同士に座って仲良く会話をする。相変わらず可愛いな……などと思いつつ、出来上がったばかりのコーヒーを飲む。
「今日は何をするんですか?」
「そうだな……。今日は大学とバイトがあるから夜まで帰れないけど、2人はどうするんだ?」
「そうですね……。それなら、私達でお家の家事をします!」
「ずっと哉太さんのおんぶに抱っこじゃ、哉太さんに迷惑ですし……」
「イヴとエルは家事が出来るのか?」
「一応、一通りのことは出来ますよ」
「ふふっ、私達を信じて頂戴」
2人の目に曇りはない。どうやら本当に自信があるらしい。ならここは素直に任せることにしよう。
「分かった。じゃあ頼むよ。でも無理だけはしないでくれよ?」
「任せてください!」
「ありがとう」
そんなやり取りをして、3人で朝食を済ませる。その後準備を終えてアパートを出た。
(よし、今日も頑張っていこう!)
そう気合いを入れて大学へ向かった……。
数時間後
バイトが終わり帰路につこうとしたその時。
「あー。ちょっと哉太くん?」
店長に呼び止められた。
「なんですか、店長?」
「あのさ~悪いんだけど、今日家に行ってもいい?」
「え?い、家にですか?」
「そうそう。イヴちゃんとエルちゃんがいるんでしょ?」
「はい、まぁ」
「いや~あの子達とお話ししたいんだよね~」
そう言って店長は悪戯っぽく笑う。恐らく本心ではなさそうで、これは冗談半分といったところだろう。
「……本当は自炊するのが面倒で、夕飯をご馳走になりたいだけじゃないですか?」
「ギクッ。そ、そんなことないよ?」
図星らしい。まったくこの人は……。
「はぁ……分かりましたよ。その代わり材料費は店長の奢りですからね」
「やったー!ありがとね!」
子供のように喜ぶ店長を見て思わず苦笑いする。この人本当に大人なのかと時々疑問に思う。
「じゃあ早速行こうか!」
「はい」
こうして2人でスーパーに向かうことになった。
買い物を終えて店を出る。結局今日のメニューは冷やし中華になった。店長のリクエストだ。
「ふぅ~暑くなってきたねぇ〜」
「そうですね」
「あ、そうだ。さっき買ったアイス食べる?」
「え?いいんですか?」
「もちろん!遠慮はいらないよ!」
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
そう言って俺は差し出された棒つきのソーダ味のアイスキャンディーを受けとった。
「ありがとうございます」
そう言って口に運ぶ。口の中に広がる爽やかな甘さと冷たさが心地よい。
「美味しいです」
「でしょ?最近出たばかりの新商品なんだって」
「へぇ、そうなんですか。知らなかったな……」
そんな他愛もない会話をしながら歩くこと数分、家に着いたので鍵を開けて中に入る。
「ただいまー」
「お帰りなさい!哉太さん!」
出迎えてくれたのはイヴだった。エプロン姿で、まるで新妻のように見える。エルの姿は見えないが部屋にいるのだろうか。そんなことを考えながら靴を脱いで家に上がる。
「うわぁ~!イヴちゃんかわいい~」
店長はエプロン姿のイヴを見て興奮気味に言った。
「え?そ、そうですか……?」
イヴは少し照れながら頬を掻く。
「うん!すっごく似合ってるよ!」
「えへへ、ありがとうございます♪」
イヴは嬉しそうに微笑んだ。確かに可愛いな……と思ったその瞬間、エルに抱きつかれた。
すると俺に向かってこう言った。
「お帰りなさいませ、御主人様!」
「は!?エル。いきなり何言い出すだよ!?」
「いや、哉太ってどういうのが好みなのかなって思って、哉太の部屋見たら本棚の裏からいっぱいメイドさんの本が出てきて……」
そう言うエルの手には、メイド服を着た女の子が描かれている成人向け雑誌があった。
「わー!?い、いつの間に見つけたんだよ!」
俺は慌ててそれを奪い取る。
「へぇ~哉太くんって、こう言うのが好きなんだぁ〜!」
「いや、違うんですよ!これは友達から借りてるだけで……」
必死に弁解するも、店長はニヤニヤしながらこちらを見てくる。
イヴとエルは興味津々といった様子で俺をまじまじと見てくる。
「もういいだろ!それより早く夕飯作るから、この話はお終い!」
俺はそう言ってキッチンへ向かった。そして、そそくさと料理を作ることにした。
数分後、出来上がった料理をテーブルの上に並べる。俺の作った冷やし中華はとても好評で、3人とも喜んでくれたので良かったと思う。
そして、食事も終わり俺は一人で食器洗いをしていると、店長が缶ビール片手に近づいて来た。
「いやぁ〜哉太くんって、本当料理上手だよね~」
「ありがとうございます。でもまだまだですよ」
「そうかな?こんなに美味しいのに……」
そう言いながら店長は缶ビールを口に運ぶ。
そんな姿を横目に見ながら俺は食器を洗い続ける。すると、急に肩を抱かれた。驚いてそちらを見ると、綺麗な青い瞳と目が合う。
その瞳にドキッとしてると……。
「でも、料理も家事も出来るのにメイドが好きなんてねぇ~」
「……美優ちゃんにメイド服とか着せたりするの?」
「!?」
俺の耳元でボソっとそんな事を言ってきた。
「ま、まさk……!」
俺は慌てて否定しようとするが店長はニヤリと笑って。
『まぁ冗談だけどね♪』と言って離れる。
まったくこの人は……と思いながらため息を吐く。しかしその後すぐに真剣な表情になって俺を見つめてきた。その表情はとても真剣で少し怖いほどだった。そしてゆっくりと口を開くとこう言った。
「……あの子を悲しませる様な事したら、徒では済まないからね」
店長の言葉に背筋が凍る様な感覚に襲われる。これは冗談や酔っ払いの戯言ではない、本気の言葉なのだと理解した。そして俺は一言だけ返事をした。
『……はい』と……。
「ふふっ!なら良し!」
そう言っていつもの笑顔を見せると俺の背中をバシッと叩きながらその場を後にした。
(……本当にあの人は……)
そう思いながらも俺は食器洗いを続けた。
「ふぅ~終わった……」
ようやく片付けが終わったのでリビングへ向かうと、イヴとエルがソファの上で寝転んでいた。どうやら2人とも疲れていたようだ。
すると店長が俺に声をかけてきた。
「哉太くん!お風呂空いたよ〜」
「あ、分かりました。それじゃ入ってきますね」
俺は着替えとバスタオルを持って脱衣所へと向かった。服を脱ぎ浴室に入ると、いい香りがした。恐らく店長が入れた入浴剤の香りだろう。そう思いながら身体を洗い始める。すると突然後ろから声をかけられた。
「あの……哉太さん?ご一緒してもいいですか?」
声の主はイヴだった。どうやらお風呂に入りに来たらしい。
「別にいいけど……大丈夫なのか?」
俺が聞くとイヴはこくりとうなずくと服を脱ぎ始めた。そして下着姿になると恥ずかしそうにこちらを見つめてくる。そんな彼女に俺はドキドキしながら目を逸らす。
「と、取り敢えず。バスタオル巻いて此方に来なよ」
俺がそう言うと彼女は素直に従ってくれた。そして湯船に浸かると、ふぅ……と息を吐いた後俺に話しかけてきた。
「あの……哉太さん」
「……ん?なんだ?」
「空さんは今日、此処に泊まるんですか?」
「?」
俺はイヴの質問に対して頭に『?』が浮かんだ。
「あーー!!」
俺は思いっきり立ち上がった。
「哉太さん!大丈夫ですか!?」
イヴは心配そうに俺の顔を見上げる。
「あの人!ちゃっかり俺ん家に泊まろうとしてんじゃん!?」
「そ、そうみたいですね……ひゃ!?」
イヴは苦笑いしながら言うと急に顔を真っ赤にして手で覆う。
そんなイヴを見て俺は首を傾げるが、改めて今の状況を見てみる。
「あっ」
それに気づいた瞬間、俺の顔も熱くなるのを感じた。それから少しの間沈黙が続いた後……。
「ご、ごめん!!」
俺はそう言って、直ぐに湯船に浸かる。イヴは顔を真っ赤に染めてもじもじしている。
「も、もう上がろうか……!」
「そ、そうですね……!」
2人は急いでお風呂から上がると、リビングへ向かう。そこにはソファの上で疲れ切っているエルと更にお酒が入りご機嫌の店長がいた。
「あちゃー」
俺は溜め息を吐くと、店長に声をかける。
「すみません!ちょっといいですか!」
「ん〜?どうしたのぉ〜?哉太きゅ〜ん?」
「いや、その……。はぁ……今日はもう遅いですし、泊まっていきますか?」
俺がそう言うと店長は目を輝かせた。
「え!?いいのぉ〜!?」
「まぁ……一応布団はあるんで」
「ヤッタぁ〜!ありがとう哉太くん♪」
そう言うと抱き着いてきた。俺は慌てて引き剥がす。
店長は不満げな表情をしていたが、特に気にせずキッチンへと向かうと冷蔵庫を開ける。中から缶ビールを取り出すとそれを持ってリビングに戻る。そしてテーブルに置くとソファーに座りながら話し始めた。
「ねぇ〜哉太く〜ん。お願いがあるんだけどぉ〜」
俺は店長が出した缶ビールの空き缶を片付ける。
『まったく……』
俺はそう呟きながら空き缶の入ったビニール袋を置きにキッチンへと向かう。
「なんですか?」
俺が聞くと、店長はニヤリと笑い。
「おっぱい揉んでぇ〜?」
俺は一瞬固まってしまったがすぐに我に帰ると慌てて叫んだ。
「何言ってんですか!?」
すると店長はケラケラ笑いながら言った。
「冗談だよ〜ん!さぁ、イヴちゃんとエルちゃん寝かしてきてねぇ〜」
俺は溜息を吐きながら2人を寝かせに行く。そしてなんとか着替えさせた後、寝室で布団を用意した。ちなみに店長にはリビングのソファを使ってもらうことにした。
そして寝室に戻るとイヴとエルはもう既に寝てしまっていた。起こさないように静かに布団に入る。すると、店長が声をかけてきた。
「哉太くん?まだ起きてる?」
「はい、どうしたんですか?」
俺が聞き返すと、店長は『ちょっと付き合ってよ』と言いながら冷蔵庫から缶ビールを取り出してきた。
俺は仕方なく付き合うことにした。そして2人で乾杯をする。
「今日もお疲れ様!」
「お疲れ様です……」
そんな会話をしながら俺たちは缶ビールを空けていく。ある程度飲んだところで、俺は気になっていたことを聞いてみた。
「あの……なんで美優と付き合ってる事知ってんッスか?」
「実はねぇ~美優ちゃんから相談されててさぁ〜」
「相談?」
店長の言葉に首を傾げる。
「そうそう!『どうやったら告白出来ますか?』とか『どうすれば、いい雰囲気をつくれますか?』って、色々と聞かれてねぇ~」
「へぇ……」
(あの美優がねぇ……)
そんな事を考えながらビールを口にする。そしてしばらく沈黙が続いた後、店長は突然こんなことを言い出した。
「それで!実際のところどうなの?どこまで進んだの?」
俺は思わず口に含んだビールを吐き出しそうになるのを必死に堪えた。そしてゴホゴホッと咳き込みながら聞き返す。
「ど、どこまでって……どういう意味ですか?」
すると店長はニヤリとしながら言った。
「えっ?そんなの決まってるじゃん!キスとかその先の事だよ!」
俺は頭が痛くなった。どうしてこの人はそんな事を気にするのだろうか。
「……ノーコメントでお願いします」
そんな俺の反応を見た店長はニヤニヤしながら言う。
「えぇー!教えてよ〜」
そう言いながら俺に抱きついてくる。俺は慌てて引き剥がそうとするが、今度は腕を掴まれてしまう。そしてそのまま引っ張られて……。
『え?これってまさか!』と思った瞬間、俺の顔に柔らかいものが押し付けられた。
「んぐっ!?」
俺は突然の事に驚き、離れようとするが店長の力が強くなかなか抜け出せない。そしてそのまま数秒間経過した頃、やっと解放された。
「ぷはぁ!何するんですか!!」
俺が叫ぶと、店長は舌なめずりをしながら言った。
「えへへ♡もしかしてまだ、シた事ないの?」
「当たり前でしょう!?」
俺は顔を真っ赤にしながら叫んだ。すると、店長はククッと笑いながら言う。
「そっかぁ~じゃあ、私が教えてあげよっか?」
「……え?……いや遠慮しときまs……」
俺が断ろうとするが途中で遮られてしまう。そして、店長は妖しい笑みを浮かべながら服のボタンを1個1個外していく。
「ちょっ、ちょっと!?店長!?」
店長の突然の行動に驚いていると、ついには下着姿になってしまった。そしてそのままソファーの上に押し倒されてしまう。俺は必死に抵抗しようとするが力が強くて振り解けない。そして遂にズボンに手をかけられた時、イヴが目を覚ましたようだ。
「ん……哉太さん?どうしたんですか?」
その言葉にハッとして扉のほうを見ると、口を抑えながら欠伸をするイヴがいた。
「い、イヴ!助けてくれ!」
俺が叫ぶとイヴは驚いた表情になるが、すぐに状況を把握してくれたようで。
「空さん?……何してるんですか?」
イヴの冷たい声に店長はビクッと震えると慌てて言い訳を始めた。
「ち、違うんだよ!?これはその……不可抗っていうか……。そ、そう!寝ようとしたんだけど、よろけちゃって……。あははっ!」
店長は冷や汗を流しながら必死に弁解する。しかしイヴの目は完全に据わっていた。そして静かに一言だけ呟く。『おすわり』と……。
するとその言葉を聞いた瞬間、店長はその場で正座をした。
その光景を見て俺は思わず吹き出しそうになるが、なんとか堪える事ができた。そして暫くして落ち着いた頃、店長が口を開く。
「えっと……イヴちゃん?そろそろ許してほしいかなーって……」
「ダメです」
即答されて肩を落とす店長だったが諦めずに再度頼み込む。
「お願いします!この通り!」
そんな様子を見て俺は呆れてしまった。すると、今まで寝ていたエルが起きて来た。
「……うるさい。酔っ払い、早く寝なさい……」
「エルちゃんまでそんな事言うの〜?」
店長は涙目になりながら訴えるが、2人にスルーされた。結局その後、俺達はリビングで寝る事になった。俺はソファーに寝転がりながら考える。
『“笹木と何処まで進んだ?”か……』
俺がそんなことを考えているうちに睡魔に襲われ眠りについたのだった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
チュンチュンという鳥の鳴き声を聞き目を覚ますと、既にイヴとエルは起きていた。なので俺は2人に話しかける事にした。
「おはよう」
俺が挨拶をするとイヴが笑顔で答えてくれる。
「おはようございます!哉太さん!」
「おはよ……。そこの、酔っ払いのせいでよく寝られなかった……」
しかし、エルは相変わらず眠たそうにしている。
そんなエルを見て俺は苦笑した後、朝ご飯の準備をする為にキッチンへ向かった。そして朝食を作り終えた後、テーブルに並べていると店長が起きてきたようだ。
「ふわぁ〜おはよう〜」
欠伸をしながら挨拶をしてくる彼女に、俺は苦笑しながら返事をする。
「おはようございます。朝食出来てるんで、一緒に食べましょう」
そう言うと店長は目を輝かせながら席に着いた。そしてみんなで手を合わせて『いただきます!』と言い食べ始めると、イヴが話しかけてきた。
「哉太さん!今日はどうしましょうか?」
その問いに俺は少し考えた後答えた。
「取り敢えず、店長を家まで送り届けてそのまま大学に行くよ」
俺がそう言うとエルが口を開いた。
「私も行く」
それを聞きイヴが驚いた表情を浮かべる。
「え?お姉ちゃんも行くの!?」
「この世界の『大学』っていうのに興味があるから。……それにずっと家に居るのも飽きたし」
「いやいや!大学は駄目だよ!怒られちゃうよ!それに……大学には変な奴が居るかもしれないし!」
俺はそう言って、エルを説得するが……。
『大丈夫だってば』とエルは言っているが、イヴはかなり心配そうな表情を浮かべていた。
「でも……」
「大丈夫よ、イヴ。いざとなったら哉太がいるもの」
エルの言葉にイヴは少しムッとしながら『まぁ、哉太さんがいれば安心だけど……』と呟いた。そんな2人の様子を見て俺は溜息を吐くのだった。そして朝食を食べ終えると食器を片付けてから出発した。
外に出ると日差しが強く照りつけていて暑かったので、俺達は日陰になっているところを歩く。
「店長。この辺で大丈夫ですか?」
「うん。大丈夫だよ~大学頑張ってね〜」
「はい。ありがとうございます」
そう言って店長と別れて、俺達は大学へと向かう事にした。
「そういえば哉太?私達のこの羽って、この世界の人達からしたらかなり変わって見えるのよね?」
エルの言葉に俺は答える。
「ああ。そうだな……でも見えなく出来るんだろ?その羽」
「まあね〜」
そう言ってエルは背中にある翼を消した。
そんな会話をしながら歩いていると、俺達は大学の門の前に着いていた。
「なあ、その羽が消せるって事は姿も消せるんじゃないの?」
俺は疑問に思った事を聞いてみると、エルは少し考えるような仕草をして答えた。「姿を完全に消せる訳じゃ無いけど、認識出来なくする事なら出来るわ」
「なら、そっちの方がいいな」
「じゃあ、哉太。手を出して」
そう言われ俺は手をエルの前に出す。
「これを持ってて。そうすれば、私の姿を認識出来るはずだから」
そう言ってエルは首につけていたネックレスを渡して来た。俺はそれを受け取ると早速首につける。そしてエルを見ると確かに認識出来た。
「なるほどな」
「でしょ?これで他の人には見えないから一緒にいられるでしょ」
「ああ」
こうして俺達は大学の中に入っていくのだった。
「うわぁ……!広い……!」
エルは大学の広さに感嘆の声を漏らす。
「すごい!人も沢山いて、色々やってる!」
目を輝かせながら大学を見渡すエル。そんな姿を微笑ましく見ながら歩いていると、後ろから声をかけられた。
「あれ?哉太じゃん!」
振り向くとそこには友人である山田がいた。彼は身長が高くイケメンだ。チャラチャラした見た目をしているが根はいいヤツだ。
「お?なんだよ、そのアクセ。そんなのお前持ってたっけ?」
山田の問い掛けに少し、しどろもどろになりながら答える。
「あーこれね。知り合いから貰ってさ……」
「へぇー。その知り合いって同じ学部の1年の子か?」
「はぁ!?ち、ちげぇし!」
動揺してつい声を荒げてしまった。そんな俺を見て山田はニヤっと笑っていた。
「おっ!図星か?」
「ちげぇって言ってんだろ!」
「またまた〜」
山田はそう言いながら肩をポンポンと叩いてきた。俺はその手を振り払う。
「しっかし。あの子いいよなぁ~!顔は良いし、胸も大っきいし、あのおっとりとした雰囲気とか最高じゃん!」
山田が興奮しながら言う。俺としては面白くないわけで……。すると、そんな俺を見てかエルは急に抱きついてきた。
「うわぁ!?ちょっと、なにしんてだよ!」
「は?いきなりどーした、哉太?」
「いや、なんでもない!!ていうか離れてくれ!」
俺は必死に抵抗するがエルは全く離れようとしない。それどころか更に強く抱きしめてくる始末だ。
その光景を見た山田は呆然としていた。
それも当然だ。山田には、エルの姿が見えていない。
山田からすれば何も無い空間を理由の分からない事を言いながら、押している様にしか見えないのだから。
やがて山田が口を開いた。
「えーっと哉太?これはどういう状況なんだ?」
そんな事を言いながら山田は頭の後ろに手を置く。
「そ、それはだな……」
俺がそう言うと山田は更に混乱し始めたようで頭を抱えている。俺は慌てて事情を説明したのだが、その間ずっとエルはずっと俺に抱きつきっぱなしだった。
「なんか今日の哉太、変だぞ?」
「そ、そうか?いつも通りだろ?」
「いや、絶対違うって。いつもならもっと落ち着いてるし」
「き……気のせいだって!」
俺はなんとか誤魔化そうと必死になるが、山田は疑いの眼差しを向けてくる。そして遂に耐えきれなくなったのか、エルが口を開いた。
「もう良い、早く次の所に行こうよ?哉太」
突然のエルの声が聞こえる。
「え!?なに何!?何なのこの声!?」
山田は動揺して辺りを見渡しているが、エルの姿は見えていないので見つかる筈がない。
「おい!哉太!!一体誰と話してんだよ!?」
「あーもう!」
俺は山田の言葉を無視し、エルの腕を掴むとその場から逃げ出した。後ろから何か聞こえるがそれを無視して走り続ける。そして中庭から少し離れたところで止まると、肩で息をしながら呼吸を整えた。
「はぁ……はぁ……ったく。いきなり抱きつかれるこっちの身にもなれよな」
俺が愚痴を言うとエルは少し申し訳なさそうにしながら謝ってくる。
「ごめん……。でも、からかいたくなってつい……」
「全く……」
俺が呆れていると山田が話しかけてきた。
「なぁ哉太。さっきから誰と話してんだょ?」
急に山田の声が聞こえてきて、俺は肩をビクつかせた。
「えっ!?なんでお前ここにいるの!?」
山田はいつの間にか俺の後ろに立っていた。しかも、その表情はかなり険しいものだった。
「そんな事どうでもいいだろ?それよりも質問に答えろって」
俺はエルのことをどう説明すべきか迷ったが、下手な嘘はつけないと思い正直に話すことにした。
「わかった。話すから、誰にも言うなよ……。いいか?」
山田は無言で頷く。俺はそれを見てから話し始めた。
「手、出して……」
「おう……?」
俺は首に掛けた、ネックレスを山田の手に乗せる。
「ん?……どわぁ!?え、え?!哉太……お前の隣に女の子が!?」
「しっ!山田声が大きい!」
俺が注意すると山田は口を手で塞ぎ、慌てて周りを見渡していた。そんな様子をみて俺はホッと胸を撫で下ろす。
どうやら山田にもエルの姿が見えた様だ。
「えっと、その……彼女は俺の知り合いで……」
俺が恐る恐る説明し始めると、山田は目を輝かせながら詰め寄ってきた。
「なあ!このちっちゃい女の子は何なんだよ!?なんでこのネックレス持ったら見えるんだよ!?」
「いや、だからそれは……」
俺は何とか説明をしようとしたが山田は興奮していて聞く耳を持たない。
「ほら!早く答えろよ!」
「あーもう!!分かったから少し落ち着けって!!」
俺は観念するとエル達の事を説明し始めた。
「……つまりその子達は異世界から来て、哉太の家に居候してると……?」
「ああ」
俺の説明を聞いて山田は頭を抱えていた。そして少し考えた後口を開く。
「にわかに信じがたいけど……でも実際に女の子の姿が見えてる訳だしなぁ……」
俺は溜息を吐くとエルの方を見た。すると先程まで黙っていた彼女が口を開いた。
「そう、哉太の言った通り哉太の家でお世話になっているわ」
「へぇー」
「この世界に来て行く宛も無かった私達を助けてくれたわ」
「うん、うん」
「でも私、況してや妹には哉太のお家のお金なんか払えないから、私の身体で払ってるの」
「へぇー……って、は!?身体!?」
「な!なな、何言い出してんだよ!?エル!!」
「昨日も私の身体を堪能してたじゃない」
平然と答えるエルに対して山田は混乱している。
「はぁ!?ちょ、ちょっと待て!それはつまり……」
「ええ。そうよ。私は哉太に毎晩抱かれてるわ」
「ちょっとまてー!!!!」
俺は大声を上げながら叫んだ。すると周囲からの視線を感じたので慌てて口を抑える。
「あー山田。これはコイツが勝手に言ってるだけで、根も葉もない嘘だから!!」
「お前!?見た目、小中学生の女の子に毎晩あんな事こんな事してんのか!?」
「いや、だから誤解だって!」
俺が必死に弁明している中、エルは悪びれもなく喋り続けていた。
「最初は痛くて血も出てたけど、今じゃすんなり挿入る様になって。んーと、開発済み?っていうのかしらね?」
すると、山田が口を開いた。
「哉太!お前最低だな!!」
「だから違うって!!」
そんな俺の叫びも虚しく、エルは話を続けた。
「嘘よ、うーそ。哉太は私に指一本触れてないわ」
「へ?そうなのか……?」
山田が意外そうな表情を浮かべる。俺はホッと胸を撫で下ろした。しかしエルはニヤリと笑みを浮かべると、とんでもない事を言い出したのだ。
「だって……哉太、美優と付き合ってるもの……」
「な!?おまっ!?」
「はぁ!?」
俺と山田の声が重なる。するとエルはまた話し始めた。
「だって哉太、美優とキスしてたもの。それも濃厚な奴」
「な、ななな!?!?」
山田の顔がみるみる赤くなっていく。
「おま!お前!美優ちゃんと付き合ってたのかよ!」
「いや!それは……」
俺は
何とか誤魔化そうとするがエルはそれを許さなかった。
「そうよね?哉太は美優の事が好き、なのよね?」
「いや、……何ていうか。その……」
「あれ?違うの?」
「うぐっ……」
完全に追い詰められた俺。この八方塞がりの状況の中で、俺は意を決して山田に問う。
「山田。俺はお前を、唯一無二の友人と思っている。だから誰にも喋らないって誓ってくれ。勿論、エルの事も」
「嗚呼、分かった。約束するよ。こう見えて、口は硬いんだぜ?」
「俺は……美優と付き合ってる」
俺は山田に笹木の事も全て話した。
「そう……だったのか」
俺の話を聞き終えた後、山田は少し放心状態といった様だがやがて口を開いた。
「まあ、ちょっと悔しいけど……、あの子には哉太がお似合いだな……」
「ありがとう……」
俺はホッと胸を撫で下ろす。そんな俺を見てエルはニコニコしていた。
「それで哉太」
「ん?なんだ?」
「その子達の事は、どうするんだ?」
「……ああ、そうだな」
俺は少し考える素振りを見せた後、答えた。
「取り敢えず、当面の間はこの子達を養うつもりだよ。何時までかは分からないけど……」
「そっか、なら俺も協力するぜ!」
「お、おう。ありがとう」
俺は素直に嬉しかった。山田はいつもこうだ。困っている人がいたら放っておく事が出来ない性格なのだ。だからこそ彼は多くの人に信頼されているのだろう。
「さてと……じゃあそろそろ行くか……」
時計を見ると時間は10時前だ。そろそろ講義が始まる時間だろう。
「おう!そうだな」
山田も時計を確認して同意する。するとエルが急に文句を言い出した。
「えー……哉太、もう行っちゃうの……?」
「いや、仕方ないだろ?講義があるんだし……」
「ぶー」
頬を膨らませるエルを見て俺は思わず苦笑いする。
「いーじゃん、どうせこのネックレスが無いと姿が見れないんだし、エルちゃんも講義を受けてみる?」
「嫌よ!そんな退屈な所行くなんて!」
山田の提案に対してエルは即答で拒否した。
まあ、普通に考えれば異世界人のエルが大学の講義について行ける筈がないのだが……。
「おい。そんなに文句ばっかり言ってると置いていかないからな?」
「むぅ……」
俺の一言でエルは黙り込んでしまった。どうやら納得してくれた様だ。俺はホッと胸を撫で下ろすと、改めて山田に別れを告げる事にした。
「じゃあな」
「ああ、また後でな!」
こうして俺は山田と別れた後、講義室へと向かった。
「ふぅ……やっと終わった」
講義が終わると俺は大きく伸びをした。
「ねぇ哉太!私お腹空いたわ」
エルは目を輝かせながら、そう言った。俺は苦笑すると荷物を纏めて立ち上がる。
「分かったよ……何か食べに行くか……」
「やったー!」
俺がそう言うと、エルはとても嬉しそうに飛び跳ねていた。そんな様子を見て俺はまた苦笑いをするしかなかった。
しかし、学食で食事をするのはエルの存在がバレる危険性があるので、仕方無く校内に併設されているコンビニで弁当を買うことにした。
「ねぇ、哉太!あれ食べたい!」
エルが指差す先にはドーナツのホットショーケースがあった。俺は溜息を吐くと財布を取り出した。
「エル……お前なぁ……」
するとエルは少し申し訳なさそうな顔をしながら口を開いた。
「だって、異世界にはあんな食べ物見たことないし……」
「はぁ……分かったよ」
結局、俺はエルに甘いのだ。しかし、そんなやり取りをしていると突然声をかけられた。
「あれ?先輩!何しているんですか?」
声の方を向くとそこには笹木が立っていた。
「あ、笹木か。ちょっとな……」
俺がそう答えると彼女は首を傾げた。
「あれ?先輩いつも学食ですよね?」
するとエルが口を開いた。
「あ、美優。久しぶり」
突然自分の名前を呼ばれたことに驚いたのか、笹木は周りをキョロキョロする。
「あれ?あれ?今、エルちゃんの声が!?」
辺りを見渡す笹木を余所にエルは、笹木の身体をくすぐり始めた。
「ちょっ、ちょっと!なにこれ!なにこれぇ!?」
笹木は身を捩らせながら笑い出す。しかしエルはそのまま笹木の身体を触り続けていた。やがて満足したのか手を離すとエルは言った。
「どう?美優」
「はぁ……はぁ……何!?どういうこと!?」
笹木が息を切らせながら聞いてくると、エルは口を開いた。
「哉太、ネックレス」
「えっ!?あぁ……笹木これ持って」
「え?先輩?……分かりました……」
エルにそう言われ笹木にネックレスを持たせる。
「ほら、これで見えるだろ?」
「わあ!本当だ!」
笹木は驚きと喜びが入り混じった表情でエルを見つめていた。エルは得意気な顔をしながら笹木に言う。
「どう?驚いた?」
すると、笹木がエルを抱きしめながら言った。
「もう!エルちゃん!イタズラっ子はこうだ〜!」
笹木の胸が小さな身体に押し付けられる形になっているのを見て、俺は少し複雑な気分になった。
当のエル本人は苦しいそうな声を上げる。
「ちょっと!美優……苦しい……」
「あっ!ごめんね!」
笹木は慌てて手を離す。すると、エルが口を開いた。
「はぁ……はぁ……美優のおっぱいで……死ぬかと……思った……」
エルの言葉に笹木は少し照れた様子を見せる。俺はそんな二人のやりとりを見ながら口を開いた。
「あー……それで、笹木はなんでここに?」
すると笹木が答えた。
「あ!はい!実は先輩を探していました!食堂には居なかったので……」
「え?そうなのか?」
俺は驚いて聞き返した。すると、笹木は少しモジモジしながら答えた。
「その……お昼一緒に食べたくて……」
「あ、ああ……別に構わないけど」
俺が了承すると、笹木の表情がパアッと明るくなった。
「やった!ありがとうございます!」
こうして、俺達三人は中庭のテーブルで食事をする事になった。席に着くと早速笹木が話し始める。
「あの……先輩。なんでエルちゃんを大学に……?」
「エルが『大学を見てみたい!』って駄々捏ねさ」
俺が説明するとエルが反論してきた。
「駄々なんて捏ねてないわ!哉太がいつも家で留守番ばかりさせるのが悪いのよ」
そんな事を言い合っていると、笹木は苦笑いしながら口を開いた。
「あはは……でも本当に可愛いですね!」
そんな笹木の言葉にエルは少し照れながら答える。
「なっ!可愛くなんて無いわ!」
すると笹木はエルに近寄り、頭を撫で始めた。
「ほら〜、よしよし」
「ちょっと美優……やめてよ……」
そんなやり取りを見ながら俺は思った。
(なんか姉妹みたいだな……)
そんな事を考えつつ食事を済ませると、俺達は次の講義のために別れる。「じゃあ失礼します。先輩!」
笹木はそう言うと走り去って行った。俺はそれを確認して教室へと向かうのだった。
「うーん。やっと終わった……」
今日の講義が全て終わり、時計を見ると時刻は17時だ。
辺りはオレンジ色に染まり始め、とても綺麗な景色を作っている。
「哉太!早く帰りましょ」
エルは目を輝かせながら俺の服を引っ張ってくる。どうやらお腹が空いているらしい。
「分かったから引っ張るなって」
そんなやり取りをしながら歩いていると、突如声をかけられた。
「お!哉太。今帰りか?」
声の主は山田だった。
「そうだが、山田も帰るのか?」
「あぁ!途中まで一緒帰ろうぜ!」
「おう、分かった」
そんなやり取りをしながら校門を出るとエルが話しかけてきた。
「ねぇ哉太。美優はどうしたの?」
どうやら笹木の事を聞いて来た様だ。俺は少し苦笑いしながら答える事にした。
「いや、今日は用事があるって先に帰ったんだよ」
するとエルは悲しそうな表情を浮かべる。
「ふーん……私美優と一緒に帰りたかったのに……」
エルは不満そうに呟いている。俺は苦笑しながら呟いた。
「しょうがないだろ?用事があるんなら」
そうこうしているうちに分かれ道に到着した。
「じゃあな山田」俺がそう言うと、彼は笑顔で言った。
「おう!あ!今度、お前の家に行ってもいいか?エルちゃんと色々話したいし」
「分かった。いいよ、また連絡してくれ」
俺がそう答えると山田は走り去って行った。俺はそれを確認してから家路につくのだった。
家に着き玄関を開けると、イヴが迎えにやって来た。
「おかえりなさい!哉太さん!」
イヴは満面の笑みを浮かべる。そんな姿に癒されつつ、俺は口を開いた。
「ただいま」
そんな俺達のやりとりを見てエルが言った。
「イヴ、良い子にしてた?私達が帰ってくるまで」
エルの言葉にイヴは嬉しそうに答える。
「もちろんだよ!お姉ちゃん!」
そんな二人のやりとりを見ている。ふと時計を見ると時刻は18時を示していた。
「さてと……そろそろ夕食の準備でもするか……」
俺は台所に向かい冷蔵庫を開けて食材を確認する。するとエルが声を掛けてきた。
「ねぇ、哉太。本読みたいから借りていい?」
「ああ、いいぞ」
俺がそう言うとエルは本棚の方に向かって行った。しばらく待っていると、彼女が戻ってきた。
「ねー、本棚の裏の本が無くなってるんだけど!」
「ちょっ!?あの本はエルにはまだ早いから、読んじゃダメ!」
俺は慌てて声を荒げる。
「なんでよ!ちょっとくらいいいじゃない!」
エルは不満そうな表情をしている。
「ダメったらダメだって」
そんなやりとりをしつつ、俺達は夕食の準備を済ませた。今日は簡単に親子丼を作ったのだが、これがなかなか美味しくできた。我ながら良い出来だと思う。
そんなこんなでまた一日が終わりを迎えた。
「はぁ……今日も色々あったな……」
ベッドに横になりながら呟く。すると、エルが話し掛けてきた。
「ねぇ哉太」
「ん?なんだ?」
俺が聞き返すとエルが言う。
「あの山田って人居るじゃない?」
「ああ、居るけどそれがどうした?」
俺が聞き返すとエルは答える。
「私あの人嫌い」
「えっ?そうなのか?」
俺は驚きながら聞き返した。すると、エルが怒った口調で言う。
「そうよ!だってあの人私の事エッチな目で見てるわ!」
「……そうか?」
そう呟く俺に対して、さらに続ける。
「絶対そうよ!私には分かるもの!」
「へぇ……」
(まぁ、確かに山田は女好きだからな……)
そんなやり取りをしていると俺は眠たくなってきた。
「ふぁ……悪いエル。俺もう寝るわ」
欠伸をしながら言うと、エルが答えてきた。
「うん分かった。おやすみ」
「ああ、おやすみ」
俺はそのまま眠りにつくのだった。
第4話 完 To Be Continued〜