「ふわあぁぁ……もう、朝か」
俺は目を擦りながら、起きた
隣にはエルがすやすやと寝ている。
俺は起こさない様に布団から出る。
「うぅん……哉太ぁ……?」
「あ、エル。ごめん。起こしたか?」
「大丈夫……それより、よく眠れた……?」
「ああ、まあね」
俺はそう言い、支度を始める。
歯を磨き、顔を洗い、服を着替えた。そしてキッチンに向かう。
「おーい、エルー?」
布団から出てこないエルを優しく起こす。
「むにゃむにゃ……ふぁい……?」
目を擦るエル。小動物みたいで可愛いな。
「ほら、イヴを起こして来て」
「分かったぁ……よいしょ……」
そう言い起き上がろうとしたその時。
「……っ!!」
「えっ!おい、どうした!?」
エルが倒れ込みそうになる。俺はとっさにエルを支える。
「大丈夫か?」
「大丈夫……ちょっとフラっときただけ……」
そう言うも少し顔色が悪い気がする。昨日の事もあるし、多分疲労がたまってるんだろう。
「取り敢えず、エルはまだ寝てな。イヴは俺が起こして来るから」
「うん……分かった……」
そうして、俺はイヴを起こしに行く。
「おーい、イヴ?朝だぞ」
「ん……あ……哉太さん……おはようございます……」
イヴもまだ眠そうだ。
「ほら、早く着替えてリビングに来てね。朝御飯を作っているから」
俺はそう言い布団を剥がすと。
「……哉太さん……その、ちょっといいですか……?」
「ん?どうしたの?」
「……その……着替えを手伝って貰えますか?」
「……えぇ!?」
「ダメ……ですか……?」
イヴが上目遣いでこちらを見る。反則だろ……!可愛すぎるぞ!?
俺は少し戸惑いながらも、イヴのパジャマのボタンに手をかける。そして一つ一つゆっくりと外していく。すると、白く綺麗な肌が露わになる。
「あっ……んっ……」
イヴが少し艶っぽい声を出す。なんかイケナイ事をしている気分になってきたぞ……?
そのまま俺はイヴのパジャマを脱がせ、洋服を用意する。
「はい、終わったよ。後は自分で着てね。リビングで待ってるから」
俺はそう言って部屋を出ようとすると、イヴが俺の腕を掴む。
「あの……お願いがあるのですが……」
「何?」
「その……哉太さん……」
イヴが何か言おうとした、その瞬間。
バタンッ!!と大きな音がしたので慌ててリビングに戻る。そこにはエルが倒れていた。
「おい!?大丈夫か!エル」
「お姉ちゃん!?どうしたの!?」
俺とイヴはエルに駆け寄る。するとエルがゆっくりと目を開く。そして起き上がりながらこう言った。
「ふぇぇ……頭が痛いよぉ……」
俺はエルの額に手を当てると、かなり熱があるようだ。だからフラついていたんだな。
「まずいな、本当なら病院に連れて行きたいんだけど……」
そう。エルやイヴの見た目は一見すると俺と同じく、人間と何ら違いも無いのだが……。
彼女等は異世界人だ。その為、戸籍も無ければ無論、保険証も無い。つまり病院に行く事が出来ないのである。
だから俺は考えた結果、エルをベッドに連れて行き寝かせてやる事にした。
「よいしょっと……これでよし」
「うぅん……哉太ぁ……」
イヴにパジャマの着替えを任せている間に冷えピタと氷枕を用意しておいた。それを使いエルを看病する。
「んぅ……哉太ぁ……」
「はいはい、大丈夫だからな」
俺はエルの頭を優しく撫でてやった。
「大丈夫?お姉ちゃん……」
イヴが心配そうに声をかける。
「うん……大丈夫よ……イヴ……」
エルは弱々しい声で言った。
「無理しないでね?お姉ちゃん」
イヴは心配そうな表情を浮かべる。
「ありがとう、イヴ……」
エルは弱々しく微笑んだ。
「よし、じゃあそろそろご飯出来るし、リビングに行こうか」
俺は立ち上がり、イヴの方を見た。すると彼女はニコリと微笑んでくれた。
「はい……分かりました」
「エルには、後でお粥を作ってあげるから寝てて」
「うん……分かった……」
こうして俺達はリビングに向かう。テーブルの上に朝食を並べる。
俺達は粛々と朝食を摂った。そして片付けを済ませる。
「さて、どうしようか……」
今日はコンビニのバイトがあるのだがエルがこんな状態で放置するわけには……。
「仕方無い……。店長に連絡するか……」
俺はスマホを取り出し、電話を掛ける。すると、3コールもしない内に出てくれた。
「はいもしもし。あ、哉太くん?どうしたの?」
「あ、店長。すみません、今日出勤出来そうにないので休ませて下さい」
「あ、そうなの?どうして?……もしかして!美優ちゃんとデート?」
「ち、違いますよ!///……ちょっとエルが熱を出しちゃって……」
「え!?エルちゃんが!?大変じゃん!!よし、今からそっちに行くから待ってて」
「えぇ!?いやいや、大丈夫ですよ!」
俺は慌てて店長を止めようとするが。
「遠慮しないで良いから!エルちゃんの事心配だし!」
そう言って電話を切られてしまった。そして数十分後、玄関のインターホンが鳴る。どうやらやって来たようだ。扉を開けるとそこには店長の姿があった。
「やっほー、哉太くん!……で、エルちゃんは?」
「あー、ベットに寝てますけど……」
「オッケー、じゃあお邪魔するね」
そう言って家に入って行く店長。俺はそんな店長を追いかけながら部屋に入ると、そこにはイヴがエルの看病をしていた。
「あ、空さん。来てくれたんですね」
「うん、エルちゃんはどう?」
「それが、熱があって……」
イヴがそう言うと店長はエルの額に手を当てる。するとすぐに手を離した。
「うーん……これは結構高いね……」
店長は困った様な表情を浮かべる。そして俺を見た後こう言った。
「取り敢えず、風邪薬を持って来たよ。飲めるかな?エルちゃん」
「うん……。なんとか……」
店長が買って来た風邪薬を飲み終えると、エルは落ち着いたのか眠ってしまったようだ。
「ふぅ……」
俺は一息つく。するとイヴが俺の手を握ってきた。
「哉太さん……。お姉ちゃん、大丈夫ですか……?」
「ああ、大丈夫だよ。……それより店長、お店は大丈夫なんですか?」
「うん、心配しないで!今日はベテランさんが2人居るし、お店は任せて来たから」
「そうですか……ありがとうございます……」
俺は頭を下げる。
「じゃあ取り敢えず、お茶でも入れますね」
そう言って俺は、立ち上がりキッチンに行く。
「悪いねぇ〜」
「いえ、忙しいのにすみません」
「いいよ〜!気にしないで〜!」
そう言って笑う店長。
「じゃあ取り敢えず、お茶でも入れますね」
そう言って俺は、立ち上がりキッチンに行く。
「悪いねぇ〜」
「いえ、忙しいのにすみません」
「いいよ〜!気にしないで〜!」そう言って笑う店長。います!」
そんなイヴに俺は言う。
「……ありがとう、イヴ」
2人でお茶の準備をしていると、店長が声を掛けて来た。
「ねぇ、哉太くん。エルちゃんが体調を崩した原因って何か分かる?」
俺は手を止めて振り向く。
「え……きっと、俺の大学について行ったのが原因かと……」
「エルちゃんが大学に……?」
店長は首を傾げる。俺は昨日あった事を説明すると、納得してくれた様だ。
「なるほど……そういう事か……」
「はい……」
「じゃあ多分、疲労だね。あの子に相当なストレスが蓄積しちゃったんだね~」
「……そうですね」
「よし、出来た。哉太さん、お茶を運ぶの手伝いますね?」
「分かった、じゃあお盆に乗せてくれるか?」
「はい!」
2人でお茶を運び終えると、店長が口を開いた。
「エルちゃんが起きるまでここに居るよ。2人もゆっくりしなよ」
「はい、ありがとうございます」
「あの……空さん……」
イヴが店長に声を掛ける。
「ん?どうしたの?」
「その……お姉ちゃんが起きたら伝えて欲しい事があって……」
「うん、分かったよ」
そうして俺達はリビングでゆっくりと過ごした。するとしばらくして。
コンコンッ!と玄関をノックする音が聞こえて来た。
「はい、どちら様ですか?」
俺は立ち上がり玄関に向かう。ドアを開けるとそこには……。
「よっ、哉太!お前から借りてた漫画、返しに来たぜ!」
玄関の前には紙袋を持った山田が立っていた。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「おう、山田か……」
「なんだぁ?元気ねぇな?」
「まぁ、色々あってね……」
俺は玄関先で山田と会話を交わす。するとイヴがやって来たので紹介する事にした。
「えっと、こちら俺の友人で同級生の山田直斗だ」
俺が紹介する前にイヴが山田に挨拶をする。
「はじめまして!私はイヴです!」
「おう、よろしくな」
山田とイヴが挨拶を交わすと空さんがリビングからやって来た。
「あれ?哉太くんお客さん?」
「あ、はい……一応……」
俺は苦笑しながら答える。そして山田を紹介し始めた時……。
ドサッと紙袋が落ちる音がして山田の方を見ると、ぽっかりと口を開けた山田の姿があった。
「ど、どうした……?」
すると山田は……。
「な、なあ……哉太……」
と突然話しかけてきた。俺は首を傾げる。
「ん?なんだ?」
「あ、いや……じゃあ……お邪魔しましたー」
と言いながらそそくさと帰ろうとする山田の腕を掴む。そしてそのまま強引に家の中に引きずり込んだ。
「何か勘違いしてるだろ?言っとくけど、この人はバイト先の店長さん!」
「え?バイト先の店長……?」
山田は驚いた表情を浮かべている。
「うん、そうだよ〜」
店長が手を上げながら答えると……。山田の奴、急に態度が変わったぞ……?一体どうしたんだ?
「あ、あの!俺……いえ私は夏目哉太の友人で同級生の山田直斗と申します!」
そう言って頭を下げる山田。
「いや〜こんな、美人なお姉さんが知り合いに居るなんて……なんて羨ましい!」
そう言って俺の肩を叩く山田。
「あのな……」
山田の発言に俺は、肩を落とす。
「すみません!お姉さんお名前、お伺いしても宜しいでしょうか?」
「ん?私は安達空。気軽に空さんって読んでいいよ〜」
「分かりました!空さん!」
そう言って山田は敬礼のポーズを取る。そして……。
「あ、そうだ哉太」
「ん?なんだ?」
俺は首を傾げると、山田がとんでもない事を口にした。
「俺、後でお前のバイト先に応募しに行くわ」
「……へ?」
「だって!こんなスタイル抜群の美人が店長とか最高じゃん!」
「いや、それは……うん……」
山田の発言に俺は苦笑しながら答えた。
「へぇーそうなんだぁ~」
店長がニヤニヤしながら俺を見てくる。俺は慌てて視線を逸らした。
「あの!哉太とはどういう関係なんですか!?」
山田が鼻息荒く質問する。すると店長は笑顔で答えた。
「えっと、可愛い可愛い哉太くんの上司にあたるのかな?」
「そうなんですか!?じゃあ、空さんは……まさか!?愛人!?」
山田の発言に俺は慌てて否定する。
「はあ!?何言ってんの!!変な事言うなよ!!」
「ごめんごめん。冗談だって」
「そうそう、私は愛人じゃなくて本命だからね〜アハハ!」
「店長!!余計に誤解を招くような発言しないで下さい!!」
俺達のやり取りを聞いていたイヴがクスリと笑った。
「ったく……。俺には、美優って大事な彼女が居るんですから!」
「うえ〜ん!哉太くんに振られちゃった〜」
「はいはい……」
全くこの人は……。すると今度は山田が口を開いた。
「あの、空さん!」
「ん?何〜?」
山田は深呼吸をしてから言う。
「あの、俺と結婚を前提に付き合って下さい!」
「はぁ!?」
俺は慌てて山田を止めた。
「ちょっ!?ちょっと待った!!」
しかし、時既に遅し……。店長は笑顔で言った。
「う〜ん?どうしようかな〜♪」
「お願いします!!」
「そうだねぇ〜。じゃあ、私の条件を聞いてくれるなら良いよ?」
「はい!何でも聞きます!」
イヴは困惑しながら2人を見つめる。そして俺に小声で聞いてきた。
「哉太さん……あの人、本当に大丈夫なんですか……?」
俺は深いため息を漏らすと、イヴがそう聞いて来た。
「あいつはいつもあんな感じだから気にしないで……」
イヴは不安げな表情を浮かべていた。そして……。
「じゃあ、そろそろ私は失礼しよっかな?」
と店長が言って立ち上がった時……。山田は慌てた声を上げる。
「え!?もう帰っちゃうんですか!?」
「うん、仕事中だからね〜。また遊びに来るから楽しみにしててね〜」
そう言って店長は山田に手を振ってリビングから出て行った。そして、去り際に俺にこう耳打ちした。
「哉太くん……エルちゃんにお大事にって伝えといて♪」
「はい……」
俺は静かに返事をすると、空さんは満足そうな顔をして帰って行った。
「……ふぅ……」俺は軽くため息をつくと、山田に声を掛けた。
「おい、山田……さっきのは一体どういう冗談なんだ?」
俺が聞くと山田は真剣な表情を浮かべた。そして言う。
「哉太、頼む!俺とあの人をどうにか、くっつけてくれないか!!」
「いやだから何で俺に言うんだよ?自分でやれよ!」
「俺じゃあ駄目なんだよ!頼む!!」
そう言って山田は俺の肩を掴み懇願してくる。俺はため息をついた後、山田に言う。
「あのなぁ……お前、さっき会ったばかりなのにそんな事いきなり言われても困るだろ?」
「じゃあ、どうすれば良いんだよ!?」
余りの気迫に俺は少し考えて込む。
そしてある事を思い付く。
「そういや……お前の実家ってリゾートホテルの経営者じゃなかったけ?」
「そうだけど……。それがどうした?」
俺はニヤリと笑みを浮かべて言う。
「じゃあ、今から言う事をしてくれたら、お前のお願いを聞いてやるよ」
「マジか!?」
「おう。マジで」
俺は山田に耳打ちする。
「……そんな事でいいのか?」
「まぁ、エルの体調が良くなったらだけどな」
すると山田は嬉しそうに言った。
「本当か!?……しかし何であのちびっこが出てくるんだよ?」
俺はもう一度、山田の耳元で呟く。
「簡単な話だ。エルが元気になれば、店長も様子を見に来るだろうし。それに……」
「……それに?」
「それに、もう少しで夏休みシーズンだ。……後は言わなくても分かるな?」
「……?あ!なるほど!!」
「そういう事だ。分かったか?」
俺が聞くと山田は何度も頷いた。そして俺は更に言葉を続ける。
「ただし。お前が先走った行動をしたら、この話は無しだからな」
「おう!分かってるって!」
そう言って笑う山田を横目に、イヴは困惑した表情を浮かべていた。そんなイヴに声を掛ける。
「エルが元気になったら、旅行に行こうな!」
「え?……あ、はい」
イヴは状況がイマイチ飲み込めていないのか、ポカンとしている。
「それじゃあ、イヴ。悪いけどエルの様子を見て来てくれるか?」
「はい!」
イヴは笑顔で返事をするとエルの元に向かった。俺は山田に言う。
「じゃあ、そろそろお前も帰れ」
俺が言うと山田は俺に指を指しながら叫ぶ。
「おう!……例の件忘れんなよ?」
「あぁ、分かってるって」
すると山田は満足そうに帰っていった。俺はリビングに戻るとイヴとエルが楽しそうに話している声が聞こえてきた。どうやら、体調は少し良くなったみたいだった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
翌朝、 エルの体調も回復してみんなで朝食を取っているとイヴが話し掛けてきた。
「哉太さん、今日は確かお休みでしたよね?」
「そうだね。じゃあ、とりあえず買い物でも行くか?」
俺が言うとイヴは嬉しそうな表情を浮かべた。
「やった!」
「ふふっ」
俺とイヴのやり取りを聞いてエルが口を開いた。
「買い物って何を買いに行くのよ?」
「……君達。旅行に行きたくは無いか?」
俺はニヤリとして言う。
「旅行……?」
「そう。旅行だ……!」
「いいわね、旅行!行きたいわ!」
エルは嬉しそうに言う。
「実はな……あの山田ってヤツ居るだろ?アイツの実家はこの世界で有名なリゾートホテルのオーナーなんだよ」
「へぇ、凄いじゃない!」
イヴが興味津々に聞いてくる。
「そのホテルってどんな所なんですか?」
俺は自慢げに答える。
「うーん……一言で言えば天国みたいな感じかな……?」
「天国!?」
エルは目を輝かせながら言う。イヴも目をキラキラさせている。そんな2人を見て俺はさらに続けた。
「あぁ、そうだ!しかもな、そのホテルにはプールもあるんだぞ?」
「プール!?行きたい!!」
エルが興奮気味に言う。イヴは目を輝かせながら俺を見た。
そんな2人を見ながら話し続ける。
「プールだけじゃない。目の前には何処まで続く広い海もあるんだ!」
「へぇー!」
イヴは目を輝かせながら俺を見る。エルも興奮した様子で聞いてきた。
「他にはどんな所があるの!?」
「そうだなぁ……例えば……」
俺は考える仕草をした後、答える。
「例えばな……」
俺はニヤリと笑いながら言う。2人の顔が期待で輝くのが分かった。
「この間行った銭湯よりもおっきいお風呂もあるし……」
「うん!うん!」
「それに……」
「それに!?」
イヴとエルは息を呑みながら聞き入る。そんな2人を見ながら俺は口を開く。
「なんとな、ホテルの近くには遊園地もあるんだぞ!」
「「行きたい!!」」
2人は同時に叫んだ。俺は苦笑しながら言う。
「……まあ、落ち着けよ」
興奮する2人を宥めながら。俺は続けた。
「しかし。1つだけ条件があるんだよ」
「条件……?」
「そうよ!条件って?」
2人は首を傾げる。俺は真剣な表情で言う。
「あぁ。それはな……店長をその旅行に連れて行かないとダメなんだよ」
「えぇ〜!そうなの?」
2人は困惑した表情を浮かべる。俺は2人を見て言った。
「まあ、そうなるよな」
イヴとエルは不満げな表情を浮かべながら言う。
「でも……あの店長さんを連れて行かないとダメって……」
2人は困った表情を浮かべた。そんな2人に俺が言う。
「大丈夫だ。取っておきの秘策があるんだ!」
そう言い俺はスマホを取り出し電話を掛ける。
掛けた相手は俺の彼女の笹木だ。
「……もしもし。あれ?先輩!珍しいですね!先輩から電話くれるの」
「ああ、ちょっと頼みがあるんだけど……」
俺は笹木に事情を説明した。すると……。
「……あ〜なるほど。分かりました!」
「悪いな。頼むわ」
「はい!任せて下さい!!」
そう言って電話を切った後。エルが俺に話し掛けてきた。
「ねぇ、秘策って何なの?」
「あぁ、それはな……」
俺はエル達に、“秘策”の説明をする。
「簡単な話さ。店長を水着で釣るのさ」
「水着で釣るのってどういう事よ?」
「そのままの意味だよ。イヴやエルの水着姿が見れますよって店長を誘うんだよ」
「なるほど!それなら、きっとあの人も来てくれるわね!」
エルは納得した様子で言う。
「でも……本当に大丈夫でしょうか?」
「あぁ、確実にな」
俺は自信満々に答える。そしてエルが俺に聞いてきた。
「それで?いつ行くの?」
「そうだな……とりあえず、大学が夏休みに入ってからだな……?」
そんな会話をしていると……。
ドドンッ!!と玄関のドアを叩く音がした。
俺はびっくりしつつも玄関に向かうと、聞き慣れた声が聞こえて来た。
「……ちょっ!?ちょっと、空さん!そんなに強く叩いたら、周りの人に迷惑ですよ!?」
「えぇ〜?だって、急がなきゃいけないしぃ〜」
「いやでも……」
ガチャリとドアを開けると、鼻息が荒い店長と、暴走気味の店長を必死に取り押さえる笹木が立っていた。そして笹木は俺を見た瞬間大声で叫んだ。
「夏目先輩っ!!助けて下さい!!」
俺は困惑しながらも、とりあえず家に入れたのだった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「……それで、旅行の計画を立ててるってホントなの?」
何時になく真剣な眼差しで店長が話し掛ける。
「まぁ、まだちゃんと決まってはいないですが……」
俺はそう答える。すると店長はニヤリと笑って言った。
「じゃあ、私も参加させてよ♪」
「それは此方としても願ったり叶ったりですよ〜」
「勿論!美優ちゃんも行くよね~」
店長はニヤニヤしながら笹木の方を見る。
笹木はと言うと、顔を真っ赤にしながら両腕で胸を隠す。
そんな中イヴが口を開く。
「でも……私達水着なんて持ってないし……」
「大丈夫ですよ。私のをあげますよ!」
「え!?でも、サイズとか合わないんじゃ……」
すると笹木はニッコリ笑って言った。
「それなら問題無いです!私が子供の時に使ってた水着がいくつかあるので、それを使って下さい!」
「あ、ありがとう、ございます……」
イヴは少し恥ずかしそうに言う。そんなイヴを見てエルが話し掛ける。
「ねぇ、美優?その水着ってどんなデザインなの?」
すると美優はスマホを取り出して写真を見せる。それは可愛いフリルが付いた水着だった。
「これだよ!」
2人は驚いた表情をする。
「可愛い……!」
「わぁ……!」
2人は目を輝かせながらその写真に見入っている。その様子を見て笹木は嬉しそうに微笑んでいる。
「良かった〜♪じゃあ今度持ってくるね!」
「え?いいんですか!?」
2人が同時に言う。そして2人はお互いの顔を見合わせると微笑みあった。
「じゃあ、決まりだな!」
俺は3人の会話に割り込む。そして続ける。
「後は……俺の水着だけか……」
するとエルが笑顔で言う。
「それなら、私が選んであげる!」
そんなやり取りをしている中。俺はふとある事を思い付いた。
そして……
「……あ!そうだ」
と呟いた後。店長に話し掛ける。
「あの〜?店長?」
「ん~?どうしたのぉ~?」
「店長は水着って持っているんですか?」
俺が尋ねると店長は少し困った様な表情を浮かべて言った。
「あ~……実は持ってないんだよね~」
「やっぱりか……」
俺はガックリと肩を落とす。そんな俺を見て笹木が話し掛けてきた。
「大丈夫ですよ!店長さんも一緒に買いに行けば良いんですよ!」
そんなやり取りをしていると、俺のスマホが鳴った。画面を見ると山田からの電話だった。
「もしもし?」
『よお!哉太』
「何だよ?山田?」
『お前今暇か?』
「まあ……今、笹木と店長が家にいるけど……」
すると、電話の向こう側から興奮気味な声が聞こえてきた。
『マジか!?ちょっとそっち行くわ!!』
「はあ!?ちょっ……切れた」
俺は呆れた表情を浮かべる。
「何なんだ?アイツ……」
すると後ろから声が聞こえてきた。
「ん〜?どうしたのぉ?」
その声に驚いて振り返ると、いつの間にか後ろにいた店長が話し掛けてきた。そしてそのまま俺に抱きついてくる。俺は慌てて言った。
「ちょっ……!ちょっと!離れて下さいよ!!」
そんなやり取りをしていると……。玄関の方から声が聞こえてきた。
「お邪魔しま〜す♪」
そこに居たのは、山田だった。
を見て俺は言った。
「……何でもう玄関に居るんだよ」
「まあまあ、細かい事は気にするなよ!」
バシッと俺の肩を叩き、家に上がる山田。
「おじゃましま〜す」
そんな山田を見て俺は深いため息をついた。すると、笹木が話し掛けてきた。
「先輩?どうかしたんですか?」
「いや……何でも無いよ……」
俺は苦笑しながら答える。
「おおっ!空さん、今日もお美しいです!」
山田が両手を広げながら言うと、店長は頬を赤らめて言った。
「まぁね〜♪でも褒めても何も出ないよ〜」
俺は2人のやり取りを見て苦笑いを浮かべるしかなかった。
そんなやり取りを見ていると、イヴが話し掛けてきた。
「哉太さん、哉太さん!これからみんなで、ショッピングモールに行きませんか?」
「え?何で?」
俺が尋ねると、イヴはニコニコしながら答えた。
「水着を買いに行くんですよ♪」
「ああ、なるほど……」
俺は納得して頷いた。するとエルが話し掛けてきた。
「ねえ!早く行くわよ!哉太!!」
エルは服の端を引っ張ってくる。
「分かったから、少し待ってよ」
俺は苦笑しながら返事をした。
「あの〜、これからみんなでモールに行きません?」
イヴの提案に、笹木と店長は嬉しそうに頷く。
「よっしゃ!ショッピングモールに行こうぜ!」
山田は拳を高く掲げ、宝からに叫ぶ。
第5話 完 To Be Continued〜