トレーナーが風呂にいる時に部屋に凸るウマ娘(4月26日は良い風呂の日) 作:のるどすとりーむ
──数十分前──
「今日は早めに仕事が終わった……」
いつもは日が落ちてから何時間も残業するが今日は日が落ちる前に帰れた。いつもはシャワーで済ませているが、今日は風呂にでもしようか。
「ただいまー」
トレーナー寮に帰る。いつもの忙しさによって部屋は結構散らかっている。
「掃除も後でしようかな……」
取り敢えず今は早めに帰れた幸せを享受するために、風呂場に向かう。
──マンハッタンカフェの場合──
「トレーナーさん、私です。おすすめのコーヒーを持ってきました……」
チャイムを鳴らすカフェ。しかし、トレーナーは風呂にいるので気付かない。
「変ですね……今日は早めに帰ると言っていましたが……?」
そこで何もない空間に目を向けるカフェ。お友達に調べてもらう。
「……うん?……なるほど。トレーナーさんは今お風呂に……」
しばらく考え込んでから、カフェは扉に手をかざす。
すると、不思議なことに先ほどまでロックが掛かっていたドアが、ガチャ、と鍵をさしていない状態で開いた。
「お邪魔します……」
静かに部屋に入るカフェ。その雰囲気はどこかのヒットマンに似ている。
「ふんふん〜♪」
トレーナーは呑気に風呂に入っている。
「この扉の先に……トレーナーさんが……」
お風呂場の前の扉に立つカフェ。
「入りましょうか……?いや、しかし……」
ここは流石にためらっている。それならトレーナーの部屋に不法侵入する際も躊躇ってほしかったが、それはもはや彼女にとっては関係の無いことである。
「……よし、3、2、1で扉を開けます……」
「3、…………2、………………1……」
カフェがドアに手をかけた瞬間、トレーナーが上がってきたようで、腰にタオルを巻いただけの状態で出てくる。
「ふー、いい湯でした!ってうわああ!?」
驚いたトレーナーはその場に尻餅をつく。
「あ……えっと、トレーナーさん」
「カ……フェ?えっと……なんでここに?」
「その……トレーナーさんにおすすめの豆がありまして……」
さすがにこの状況はカフェには堪えたようで、年相応というべきか、少し初々しい反応をする。
「えっと……ありがとうね」
(あれ、俺部屋の鍵かけたよな?)
トレーナーは疑問に思っていたが口にはしなかった。
「その……トレーナーさん。そろそろ服……着てもらえますか?」
「え?……あああ!!ごめん!!」
急いでクローゼットのもとに走るトレーナー。
「……」
(もし、もっと早く扉を開けていれば……一体どうなったのでしょう?)
そんな妄想をしながら赤面するカフェ。
部屋には入浴剤の甘い匂いがしていた。
──アドマイヤベガの場合──
「トレーナー、休んでいる時にごめんなさい、トレーニングについて相談があって……」
チャイムに語りかけるアヤベ。しかしそのインターホンに答える者がいない。
「変ね……外出中かしら?……また後で来ることにしましょう」
その場を後にしようとするアヤベ。しかしここである人物がアヤベの前に立ちふさがる。
「あれ?アドマイヤベガさんじゃん。どうしたの?君のトレーナーに用事?」
ナリタトップロードのトレーナーだ。彼とアドマイヤベガのトレーナーは昔からの縁で、よく飲みに行く関係だ。
「ええ、そうですが……」
「あー、あいつのことだしすぐ返ってくるんじゃない?あいつの部屋で待ってたら?」
「どういうことですか?」
トレーナーが不在なのに、トレーナーの部屋で待っているなんて不可能な話だ。
「いや、あいつほとんど鍵かけないからだいたい部屋は開いてるよ。俺からも連絡しておくし君は部屋で待ってなよ」
「……ありがとうございます」
(正直ここまで懇意にやってくれるとは思わなかったわ……なんというかトレーナーはウマ娘に似る、というものかしら?)
──
「お邪魔します」
靴を丁寧に脱いで、部屋に上がる。廊下を突き当りまですすんで、リビングに出る。リビングとは言ってもそこまで広くはない。
「また散らかして……」
アヤベは床に散乱しているペットボトルのゴミや衣類を見て呆れる。
ふと、机の上にあるものが目に入った。スマホだ。通知が来たのかホーム画面が映し出される。レースで勝利した時の、トレーナーとアヤベのツーショットだ。通知には、「トプロトレ お前の部屋にアドマイヤベガさんいるから──」と映し出されている。紛れもない、トレーナーのスマホだ。
(……妙ね。いくらあの人でも、流石に外出の時にはスマホぐらいは持っていくはず……つまり)
「ふぃー、あがった、あがった」
リビングに誰かやってくる。
「ふー……ってギャアアア!」
その人物はタオルを腰に巻いた状態で、アヤベの姿を見るなり後ろへ飛んで驚く。
「ア、アヤベさん……?」
「トレーナー、その……ごめんなさい」
まさかトレーナーが風呂に入っているとは思わなかったアヤベは素直に謝罪する。
「あー……俺も鍵かけて無いのが悪かったわ、ごめんね」
「その……何が、とは言わないけれど、見えそうだから隠してもらえるかしら?」
「え?ア゛!やべっ!!」
自分の格好を見てひどく驚くトレーナー。慌てて物陰にかくれる。
「……プッ……フフフッ……」
それがツボにはまったのか、思わず吹き出すアヤベ。
「ほんと、貴方って馬鹿ね」
やれやれ、と思いながらアドマイヤベガはそう漏らした。