聖槍に祈りを   作:坂本コウヤ

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ぎ、ギリギリ間に合ったあ!!

はい、という訳で本編がまだな上かつ数時間クオリティですが、『最推し』の誕生日という事で、番外編で誕生日回を書きました!
時間軸は今の本編から少々進みまして、リンデ達が3年生になり、原作もいよいよスタートし始めた頃という絶妙な時間の頃のお話です。それにしてはだいぶ平和ですけど。
まぁ、たまたまヘルメット団とかが大人しかったとか思ってください。そうでもないとこんな平和な日常回かけないので(⁠;⁠^⁠ω⁠^⁠)

また、本編に先駆けて原作から2人ほど登場します。誰と誰なのかはリンデの設定集を読んでたら分かるようにはなってますが、相変わらずエミュ出来てるか自信がありません。特に『委員長』。
戦闘が絡めばまだどうにか出来そうなんですけど、普段の日常だとどんな会話してるのか、マジでムズい。ハスミと話してる時くらいはリラックスしてるのかな、とか思いながら書いてたので、いつも通りキャラ崩壊や解釈違いを起こしていた場合はごめんなさい。

さらに彼女達とは別に、次回投稿予定の本編で登場するオリキャラが1人だけ出ます。名前は本編登場後に改めて書きますので、登場したら、「あぁ、あの時の娘か」と、温かい目で見てください。


それでは、初番外編です! どうぞ!

追記:『会計長』ちゃんの名前が本編で登場したため、名前を追加しました。



番外編:『楽園』の誕生日集
番外編第一誕:唯一無二の輝きに祝福を


「む〜〜〜。」

 

 

 進級してから3年生となって一月ほど経ち、世にいう『G.W.』が終わった頃の昼下がり。ミカはプクーッと頬を膨らませて、鋭い視線を向けていた。

 視線の先にはリンデがいて、クラスメイト達との交流に余念がないようにも見えるが、それをミカは何だかひどく面白くないといった表情で見ていた。

 

 

「ど、どうされましたかミカ様?」

 

 

 そんなミカを見かねて声をかけた人物がいた。『トリニティ』の治安維持を務める『正義実現委員会』所属、『副委員長』の『羽川ハスミ』である。この世界では同委員会所属の『委員長』『剣先ツルギ』と共に、リンデとミカのクラスメイトになっており、たまたま教室で近くの席のために、気になったハスミが声をかけたのだ。

 そして、声をかけられたミカはというと、ハスミの方をチラッと見て、またリンデに視線を戻すと口を開いた。

 

 

「・・・ねぇ、ハスミちゃん。」

 

「?」

 

「何か今日のリンデちゃんさ、ちょっと余所余所しくない?」

 

「? そうでしょうか?」

 

 

 ミカと同じ方へ視線を向けると、そこには級友と交流を深めているリンデの姿がある。確かに、ミカと共に生活しているといっても間違いではないくらいに、リンデはミカと行動を共にしている。それは同じ『ティーパーティー』の『パテル分派』に所属しているというのもあるだろうが、何よりリンデは『ミカ至上主義』と周りから言われるほどに、ミカの事を最優先にしている。ミカのためなら何でもやる、なんてまことしやかに囁かれる程に、リンデはミカの事を好きなのは学園内では周知の事実だ。

 

 とはいえ、リンデとて一人の生徒であり、いくらミカファーストといえど他の生徒との交流がないわけではなく、寧ろその優しさから逆に交流はそこそこ多いほど。『首長補佐』という立場もあり、かつナギサ達に比べて話しやすい気質とその裏表の無さも相まって、無所属や無派閥の生徒らの相談役や受け皿にもなっている。それに無理に自分の派閥である『パテル』へ引き込まないのも、要因としてはプラスになっているのだろう。なお所属している『パテル分派』から見ればメンバーが増えないのはマイナスなので、右翼の武闘方からはあまりいい顔はされていないものの、左翼の事務方は大半リンデが引き抜いたかリンデに感化されて所属してきたため、いつかこちら側に来るだろうと期待半分程度で待っていたりする。―――閑話休題。

 

 そんなリンデがミカに大して余所余所しいようにはハスミからは見えず、たまたまリンデがクラスメイトの相談に乗っているようにしか見えなかったため首を傾げたのだが、ミカは納得できず噴火した。

 

 

「絶対そうだって! 話しかけようとしても何かはぐらかすか、すぐ他の娘と話し出してさ!もう〜!!」

 

「そ、そうですね。」

 

 

 プンスカ怒るミカにハスミも少したじたじになりながらも、近くにいたツルギと目があったので、目だけで話す。

 

 

〈これは、だいぶ荒ぶってますね。〉

 

〈無理もないな。リンデがあからさますぎる。〉

 

〈ですよね。〉

 

 

 ハスミもツルギも、リンデがミカに何かを隠しているのだろうというのは、本人の雰囲気、行動、態度から薄々察してはいたのだ。伊達に『正実』のトップツーを務めてはいない。ただ、ミカに今それを言っても、おそらく逆効果だとツルギが判断して止めていた。余計に火に油を注ぐだけだろう、と。

 

 そんな二人の他所に、ミカの独り言は続いていく。

 

 

「というか、思い返すと昨日から何か携帯を頻繁に見てるし。そりゃ、『先生』が来たからその情報収集とかかもしれないけど、明らかに今日は変だって! あ~、ムカムカする!」

 

「お、落ち着いてください、ミカ様。きっとリンデの事ですし、何かじ」

「ハスミ。」

「っ、ツルギ。」

 

 

 そろそろ暴れ出しかねないミカを何とか宥めようと、我慢できずにハスミが声をかけそうになると、ツルギがハスミを諌めるように声をかけた。声をかけられたハスミがツルギの方を見やると、ツルギは真剣な表情でこう言った。

 

 

「そっとしておいてやれ。悪いようにはならないはずだ。」

 

「ですが」

「心配するな。明日には戻ってるはずだ。」

「明日、ですか? ・・・分かりました。」

 

 

 ツルギの意味深な『明日』という指定がピンと来なかったものの、ハスミはとりあえずその場は納得することにした。どちらにしろ、そろそろ次の授業のため、いつまでもミカの事を見ているわけにもいかないのだから。

 

 

▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

(・・・結局、あの後も先に本部に行くからとか言われて、逃げられちゃったし。リンデちゃん、本当にどうしちゃったんだろう。)

 

 

 結局、あの後ほぼ丸一日授業中以外はリンデと一緒にいられなかったミカは、フラストレーションもそのままに『ティーパーティー』の『パテル分派』本部にある自分の執務室へと足を運んでいた。ただし、昼までと様子が違い、段々怒りよりも悲しみの方が勝ってきたのか、その顔はいつもより眉が下がっていた。

 とはいえ、執務室はリンデも仕事をしている部屋だ。ここには書類の提出以外で滅多に人は来ないし、今日は『お茶会』の予定もないため、邪魔は入らないはず。そう考えて、昼までのリンデの態度を問い詰めようと歩いていたミカだったのだが。

 

 

(・・・ん?)

 

 

 扉の前まで来ると、執務室の扉に何か張り紙がされているのに気づいた。足早に近づいて読んでみると、そこにはこう書かれていた。

 

 

 

ミカヘ

 

 ナギサ達が呼んでいますので、至急『ティーパーティー』の

『中央会議室』まで来てください。

 私も先に行って待っています。よろしくお願いします。

 

『ティーパーティー』『首長補佐』十郷リンデより

 

 

 

 

(『モモトーク』でいい内容を、わざわざ張り紙で? ・・・どういうつもり?)

 

 

 昼間の態度といい、この張り紙といい。まるで徹底的に自分と距離を取るようなリンデの行動に、先程までの怒りがまたぶり返してきそうになるミカ。ただ、呼ばれた先にリンデもいるのであれば、この件もまとめて問い詰めればいいかと思い直すことにした。身内の問題とでも言えば、ナギサも、おそらくいるであろうセイアも口出しはしてこないはず。

 

 

「まぁ、早く来て、っていうなら行くけどさ。」

 

 

 少し苛立ち混じりにそう呟くと、ミカは足を『中央会議室』の方へ向けて、また歩き出した。

 

『中央会議室』は、別名『大広間』とも呼ばれており、普段はあまり使用しないが、ナギサミカセイアの三人の『首長』とリンデ『首長補佐』以外も含めたメンバーで話し合わないといけない案件に関する相談や、各派閥の主催イベントなど、『ティーパーティー』内で行う大きな催事で使用される部屋で、『会議室』と銘打ってあるが、会議で使用されることはほぼ稀である事で有名だったりする。

 冷静な状態のミカであれば、その部屋でナギサ達とリンデが待っていると言われたら、何かしらのイベントだと察することが出来ただろうが、あいにく今のミカはリンデの事で頭がいっぱいで、そこまで頭が回らなくなっていた。

 

 そんなミカは扉の前まで来ると、一呼吸入れて扉のドアノブに手をかけて開けた。すると―――

 

 

 

 

 

 

 

 

パンパンパンパンパンッ

 

 

「「「「「ミカ(さん/様)、お誕生日おめでとう(ございます)!!」」」」」

 

 

 

「・・・・・・えっ?」

 

 

―――大きな破裂音がいくつも鳴ると共に、リンデ達からお祝いの言葉をかけられた。いきなりの出来事に混乱しているミカに、セイアの冷静な声が届いた。

 

 

「おや、今日が自分の誕生日だと気付いていなかったのかい?」

 

「たん、じょうび・・・?」

 

 

 セイアに言われて、今日の日付を思い出す。

 

 今日は5月8日。

 

 ミカがこの世界に、生を受けた日。

 

 つまり、自身の誕生日。

 

 

(まさか、じゃあ、リンデちゃんが余所余所しかったのって、これのため?)

 

 

 視界に入ってくる情報から、ようやく状況の確認と、昼までのリンデの態度に納得がいったミカ。リンデがミカに対して余所余所しい感じだったのは、このサプライズ誕生日パーティーを成功させるためだったのだろう。おそらく、ナギサ辺りの口添えだとは思うが。

 リンデはミカに隠し事をするのがあまり得意ではない。聞かれなかったら話さない、程度の事はできるが、今日の日付の事をミカに問われるか、会話の中でふと気づかれたりしたら途端にボロが出て、サプライズが失敗してしまうかもしれないと思ったのだろう。だからあえて距離を取り、ミカと話す時間を極力抑えることで、このサプライズを成功させたかったのだろう。

 

 

「すみません、ミカ。私が話すと、ボロが出てしまうだろうとナギサ達から・・・・・・、ミカ?」

 

 

 リンデの口からも、ミカが思った事と同様のことがネタバラシされ始めたが、ミカの様子がおかしい事に気づいたリンデが、心配するような声音でミカを呼んだ。何故そんな声で自分を呼ぶのかミカが訝しんでいると―――

 

 

「・・・え? あれ、おかしいな。私、なんで、泣いて・・・。」

 

 

―――いつの間にか、自分が涙を流している事に気がついた。

 なぜ、どうして? サプライズパーティーを開いてもらえて、自分は嬉しいと思ったはず。なのに何故?

 

 

「あぁ、ミカ・・・。」

 

 

 困惑するミカをリンデが優しく抱きしめる。そのリンデの温もりに触れたことで、ミカはようやく、自分が涙を流している理由に気がついた。

 

 

「う、うぅ、・・・うわぁぁぁん! 私、私! リンデちゃんが急に、余所余所しくなって、それで、き、嫌われちゃったかと、思って・・・!」

 

 

 なんてことはない。ミカはただ、不安だったのだ。普段から自分の傍にいるのが当然で、ずっと一緒にいるのが当たり前なリンデから1日中急に距離を開けられて、自分が何か取り返しのつかない事をしてしまって、リンデに嫌われてしまったのではないかと不安で仕方なかったのだ。

 涙ながらにそう話すミカに対して、リンデは大切なものを取りこぼさいように、力強く抱きしめて即座にミカの言葉を否定した。

 

 

「っ、ありえません! あなたを嫌う事など! 例え天地がひっくり返ろうと、例え明日世界が滅ぼうと! 世界中の誰もが、あなたの事を嫌おうと! 私は、ミカの事が大好きです!」

 

 

 十郷リンデが、聖園ミカを嫌いになるなどあり得ない。何故ならそれは、前世における自身の『最推し』である事以上に、この世界でリンデが生きる最大の意味だからである。例えこれを言葉に出来ないとしても、その思いの一片でも伝わればいい。そう思って、リンデは力いっぱいミカを抱きしめる。

 

 

「っ、リンデちゃん・・・!」

 

「ごめんなさい、不安にさせてしまいましたよね。でも、今言った事は全て、真実ですから。だから、安心してください。・・・生まれてきてくれて。私と、出会ってくれて。友達になってくれて。本当に、ありがとうございます。ミカ。」

 

 

 そして徐々に力を緩め、ミカの事を愛おしそうに抱きしめながらそう優しく語りかけるリンデ。言葉には出来ないが、本当は友達以上の関係になりたい思いもある。だが、それはきっと成就されるべきではない思いだとリンデも理解している。だから、今はこれが精一杯ミカに伝えられる思いとして、いつものように頭を優しく、髪を梳くように撫でながら、ミカに言葉をかけた。

 ミカも、どれくらいリンデの思いが伝わったかは分からないが、それでも自分が生まれてきた事を祝福してくれるリンデの思いを感じて、頷きながら感謝を伝えた。

 

 

「っ、うん。うん! ありがとう、リンデちゃん。私の方こそ、こんな私と友達でいてくれて。いつも傍にいてくれて。本当に、ありがとう!」

 

「ミカ・・・。」

 

 

 互いに抱き合い、そのまま見つめ合うリンデとミカ。一瞬、「もう、ゴールしてもいいよね?」とかいう悪魔の囁きが聞こえた気がしたが、それは出来ないとリンデは再度否定する。しかし、空気的にはもう終わってもいいかなと感じられるような雰囲気で、思わずそのまま二人でこの空気をずっと共有していたいと思えるような空気感だった―――

 

 

 

「ゴホン! リンデさん、何時までそうしているつもりですか?」

 

「えっ? ・・・あっ。」

 

 

―――のだが、そうは問屋が降ろさなかった。

 ナギサの咳払いと真面目なトーンの声に、リンデは思わず現実に引き戻された。周りを見渡してみると、ヒフミは何かいい笑顔で親指立ててるし、セイアは呆れて溜め息をついているし、最近『パテル分派』の『会計長』に就任し後輩も出来た『藤堂カナギ』もこめかみを指で抑えて呻いていた。極めつけにナギサは、笑顔ではあるのだが目が明らかに笑っていなかった。

 

 

「す、すみません! 泣いているミカを見て、つい。」

 

 

 思わずミカから離れて平謝りするリンデ。急に離されたミカはというと、少し名残惜しそうにしていたものの、ナギサの表情から自分から抱きついたら不味そうだと感じてその場に踏み止まっていた。

 

 ナギサはリンデの平謝りに溜息を吐くと、右手で額を抑えて首を降ると、再度目だけは笑ってない笑顔でリンデを見ながらこう言った。

 

 

「ハァ〜、こうなるかもしれないと想定はしていましたが、いったいどれほど露骨な態度を取ったんですか? あぁ、言わなくても結構ですけど、どちらにせよ折檻はさせてもらいますよ。」

 

「っ。も、黙秘権は・・・?」

 

「弁護人?」

「アハハ、無しで。」

 

「ヒフミ、そんなご無体な?!」

 

 

 ナギサの雰囲気から、『折檻』がただならぬものになりそうな予感がしたリンデは、即座に黙秘権を行使したいと願い出たが、残念ながら弁護人(?)のヒフミから却下されたせいで、普段では見せないほど焦っていた。

 

 

「リンデさん、今回は『パテル分派』メンバーを代表して言わせていただきますが。受けるべき罰はしっかり受けるべきかと。」

 

「カナギ、あなたもですか!?」

 

 

 そこに更に、追い打ちをかけるようにカナギからも『折檻』されるべきと通達され、思わず「ブルータス、お前もか」といった感じで訴えるリンデ。しかし、ふとナギサの方に視線を向けると、何かヤバそうなものを片手に持っているのが見えて、ドン引きしながら尋ねた。

 

 

「あ、あの、ナギサ? その片手に持ってるものは?」

 

「ん、私が今朝調理して、今日のサプライズパーティー用に用意しておいた『バウムクーヘン』の予備ですが?」

 

「・・・お、お慈悲は?」

 

「あると思いますか?」

 

「・・・・・・。」

 

 

 オワタ。

 そう内心で呟くことで現実逃避を図ろうとしたリンデだったが、しかし現実(ナギサ)は速攻で距離を詰めてくると、それはもういい笑顔で右手を構えて―――

 

 

「と、いう訳で。言い訳は後でたっぷり聞かせてもらいますから。まずは反省の意味も込めて。リンデさん、お覚悟!」

 

 

―――ロールケーキをブチ込む時と同じように、横向きにしたバウムクーヘンをリンデの口へとブチ込んだ。

 

 

「モゴォ!?」

 

「ふぇ? り、リンデちゃ〜ん!?」

 

 

 ブチ込まれた勢いそのままに後頭部から床を叩きつけられたリンデの意識が最後に捉えたのは、そんなミカの一瞬困惑した声と、自分を心配する悲鳴だった。

 

 

▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

「ハァ、ハァ・・・。し、死ぬかと思いました。」

 

「リンデちゃん、大丈夫?」

 

「えぇ、何とか。それにしてもナギサ、やってくれましたね。今回ばかりは本当に、一瞬マズいかと思いましたよ。」

 

 

 あれから時間が経って、パーティーもお開きになった頃。

 ミカとリンデは片付けを終えたパーティー会場から出て帰路についていた。既に月も登って、時間も夜になっている。

 

 リンデがナギサのバウムクーヘンブチ込みによって意識を失った後。何とか復活出来たリンデに待ち受けていたのは、今日ミカに対してどのような態度を取り続けたのかというナギサからの尋問であった。

 先ほどの事もあったので、それは誠心誠意謝りながらやった事について白状したのだが、ナギサは納得はしつつも、それでもミカに対してやった事については「それはそれ、これはこれ」ということで再度バウムクーヘン(ただし今度は切れてるやつ)をブチ込まれる羽目になったのであった。―――時々思うが、彼女は罰を下したいのか、自分の作ったお菓子を食べさせたいのか。いったいどちらなのだろうか。と、リンデが頭の片隅で考えていたのは完全な余談である。

 

 

「私にロールケーキブチ込んでくる時もそうだけどさ。毎回、上手いこと調整してくるよね、ナギちゃん。何であの器用さを、人間関係でも活かせないんだろ?」

 

「それ、ナギサの前で絶対に言わないでくださいね。本人も気にしてるんですから。」

 

「アハハッ☆ 分かってるって。」

 

 

 本人がいないのをいいことに、ナギサの地雷になりそうな事をポロッと口にするミカ。それをリンデが諌めると、快活な笑い声を上げながら笑って分かってると返した。

 

 そのまま、しばらく無言で静かな帰り道を歩く二人。すっかり夜も更けて、街の至る所でライトが爛々と光り、道路を車が通り過ぎていく音が、耳に届いてくる。そんないつも通りの風景に、リンデが意識を傾けていると、唐突にミカが足を止めて振り返った。

 

 

「・・・ねぇ、リンデちゃん。」

 

「どうしましたか、ミカ?」

 

「その、まだ貰ってないよね? リンデちゃんから。」

 

「ん? あぁ、そうでしたね。」

 

 

 少し困った顔で笑うミカに、リンデがバツが悪そうに答える。パーティー中は結局、ナギサからの尋問と折檻に時間を持っていかれて、結果、皆と違ってパーティーの間に渡すことが出来ていなかった。リンデは帰り際に、さり気なく渡すつもりだったのだが、祝われるべき本人が求めているなら、ここで渡すのがベストだろうと思い、カバンから2つの箱を取り出して、ミカに渡した。

 

 

「では、改めて。誕生日、おめでとうございます。ミカ。」

 

「わぁお☆ 2つもあるんだね。ね、両方開けていい?」

 

 

 リンデから2つもプレゼントを貰えた事で、嬉しそうな声を上げるミカ。早速開けていいかと聞くと、リンデはすこしはにかみながら、大丈夫だと伝えた。

 

 

「はい、どうぞ。気に入っていただけると、いいのですが。」

 

「リンデちゃんからもらった物なら、何でも嬉しいよ! あっ、これ欲しかったコスメのやつじゃん! ありがとう!」

 

「以前から欲しいと伺ってましたから。無難ではありますが。」

 

 

 1つ目の箱を開けると、中にはミカが前から欲しがっていた「サミュエラ」の新作コスメが入っていた。以前から欲しいと聞いていたリンデは、この日のために購入していたのだ。リンデとしても無難な所を選んで渡したため、喜んでもらえたのは予想通りでもあった。

 そんなリンデの言葉を少し笑いながら、コスメを一旦鞄に仕舞って、もう一つの箱を開けてみた。

 

 

「フフッ、無難でも嬉しいよ。で、もう一個は・・・、ん、アクセサリー? これって、『太陽』?」

 

「はい。『月』と『星』のアクセサリーは、もう既に身につけてましたから。特注で作ってもらったんです。」

 

 

 もう一つの箱を開けてみると、中から出てきたのは、『太陽』のような形を模した、ミカが翼につけてるのと同じようなアクセサリーが入っていた。リンデとしてはこちらの方が本命だったようで、わざわざ特注で作ってもらったようだった。何故アクセサリーのモチーフが『太陽』なのかは、『月』と『星』のアクセサリーを身に着けているというリンデの言葉から、それ以上語るまでもないだろう。

 しばしアクセサリーをぼーっと見つめるミカ。しかし、あまり反応のないミカに、リンデも少しだけ不安になったようで、首を傾げながら尋ねた。

 

 

「その、嫌でしたか?」

 

「う、ううん! ちょっとびっくりしちゃっただけ! そっか、確かに『太陽』のアクセサリーは持ってなかったなぁ。ありがとう、リンデちゃん!」

 

 

 そう言って、何処につけようかと考えていたミカだったが、そこでアクセサリーが入っていた箱から、何か別のものが入っているような音が聞こえてきて訝しんだ。

 

 

「あれ? プレゼント取り出したのに、何かまだ入ってる? 」

 

 

 もしかして、何かこれの付属品でもついていたのだろうかと思ってアクセサリーの方を見てみるも、『太陽』がモチーフという事以外は、特に何の変哲もないアクセサリーでしか無く、何か別のものをはめたり交換したりといったギミックはなさそうだった。では先ほどの音は何だったのか? 気になって一旦アクセサリーを鞄の別ポケットにしまい、箱の底を触ってみると、箱の底が二重になっている事に気づいた。そして、直ぐ様外して見てみると―――

 

 

「・・・・・・えっ、これは?」

 

 

―――そこには、もう一つアクセサリーが収まっていた。モチーフは広がった翼のような形で、その中間点の上辺りに穴が空いていて、そこを通って一周するように、パールが数珠繋ぎに繋がれていた。

 

 

「そ、その・・・。手作りの、ネックレス、です。私の、翼を模した。も、勿論、完全に1人でやった訳では、無いのですが。」

 

 

 リンデが最後に用意したプレゼント。それは、自身の翼を模したアクセサリーがついたネックレスであった。このアクセサリーは、元々さっきの『太陽』のアクセサリーとセットでショップに頼んでいたのだが、せっかくならと別々で特別なものにしたいとリンデが店員に頼んで、ネックレスとして制作を手伝わせてもらったものだった。

 リンデが昼間頻りに携帯を確認していたのは、これらの完成とネックレスへの加工準備が整った事の連絡待ちだったためで、早めに本部へ行くといったのも、このアクセサリー達の受け取りと、ネックレス制作の手伝いをするためだった。勿論、パーティー会場の飾りつけも理由の一つではあったが、そちらは『会計長』含めたメンバーに任せてくれと言われていたため、ゆっくり集中してこのネックレスの完成に力を注ぐことが出来たのだ。

 

 

「・・・・・・。」

 

「本当は、さっきのコスメとアクセサリーだけのつもり、だったのですが。何か、手作りで形に残るものを、お送りしたいなと、思ってしまいまして。・・・ミカ?」

 

 

 と、リンデが色々簡単なネタバレを話していると、ミカの様子がまたおかしい事に気づいた。リンデが首を傾げてミカに呼びかけると、ミカはさっきまでよりも月に照らされた眩しい笑顔で、リンデの方を見て口を開いた。

 

 

「・・・嬉しい。最高のプレゼントだよ。ねぇ、つけてもらっても、いいかな?」

 

「っ、はい。」

 

 

 ミカの手からネックレスを受け取り、接続されている部分を外して丁寧にミカの首と髪の間を通してネックレスをつけた。ミカの胸元には、リボンのようにリンデの翼を広げた姿のようなアクセサリーがちょこんと乗っていて、まるでミカの胸元でミカを護るように、されどミカの綺麗さを際立たせるように、そこに確かに存在感を表していた。

 

 

「・・・どう? 似合ってる?」

 

「えぇ。思った通りです。」

 

 

 思い描いていた通りに、自身のプレゼントしたものがミカに似合っていたため、リンデもまた、いつもより少し誇らしそうに笑った。そんな滅多に見れない珍しい表情をしたリンデを見て、―――ミカの悪戯心が少しだけ働いた。

 

 

「フフッ、そっか。また一つ、リンデちゃん色に染められちゃったかな?」

 

「ちょっ、ミカ!? 急になんて事、い、言ってるんですか?!」

 

 

 慌てて距離を取って顔を右手で隠すリンデ。その顔はさっきまでの自信たっぷりな表情から、年相応と言っていいのか、顔を真っ赤にして物凄く慌てふためいていた。その様子が何となく可笑しくて、ミカはいつも以上の笑顔で、リンデに今の思いを伝えた。

 

 

「アハハッ☆ やっぱりリンデちゃんのその顔、私好きだよ!これからもよろしくね、私の『お日様』!」

 

「っ、もう! 」

 

 

 思わぬ方向からのミカの言葉にたじろいだものの、ミカの言葉のおかげで冷静さを少しだけ取り戻せたリンデは、またいつもの様にミカヘ、自分の想いを伝えた。

 

 

「・・・はい! こちらこそ! 私の『太陽』で、『月』で、『一番星』で、替え難き唯一無二の輝き!」

 

「ハハッ、相変わらずちょっと重いよリンデちゃん。」

 

「フフッ、知ってますよね? 私が重い事。」

 

「何を〜! 私だって〜!」

 

 

 相変わらずのリンデの自分に対する評価に苦笑いで重いと返すも、リンデもミカがそれを知ってる事を指摘して反撃する。それにミカが何を〜、と子供っぽく返すと、どちらともなく二人でプッと吹き出して、月の輝く夜空に、二人の笑い声が響いた。

 

 

(・・・うん。やっぱりリンデちゃんは、私にとって特別だ。いつか、リンデちゃんにも何か、こうやってお返し出来たら、いいな。)

 

 

―――そんな風に願いながら、ミカはリンデと共に、また帰り道を歩いていく。その『特別』がどういった感情なのか。今日のようなお返しが何時かできるのか。それはまた、未来のお話。

 

 

 

▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 さて、誕生日パーティーを終えて帰宅し、明けた翌日。ミカとリンデの教室ではというと。

 

 

「えへ、エヘヘヘヘヘ〜。」

「もう〜、ミカ。顔が緩んでますよ。」

 

「だって〜。エヘヘ・・・。」

 

「ハァ、しょうがないですね。」

 

 

 ミカがリンデからもらったネックレスを弄りながら、普段はなかなか見られないだらしない笑顔を浮かべていた。リンデが軽く諌めてみるも、ミカの表情は治るどころか余計にだらしなくなっていて、そんなミカを見て満更でもない表情を浮かべていた。

 

 そんな二人の様子を、何とも言えない表情でハスミが見ていた。

 

 

「・・・・・・。」

 

「な? 戻っただろう?」

 

「えぇ、まぁ、そうですね。ただ・・・」

 

 

 ツルギが何故か、少し得意げな表情でこちらへ言葉を投げかけてきたのに返事しながら、再び二人の方を見るハスミ。ミカもリンデも、昨日のあの様子から考えられないほど互いに幸せそうな表情を浮かべていて、それは素直に友人として喜ばしい事であった。ただ、二人とも幸せすぎて互いの事しか見えていないようで、現に先ほど、周りのクラスメイトの一部が二人のことを見て「砂糖吐きそう」とつぶやいていたのを耳にしていた。言葉の意味はよく分からなかったが、とにかく何か、周りに悪影響を与えるような方向に悪化しているような気がして、ハスミは少し心配していた。

 

 

「その、別の意味で悪化している気がするのですが。」

 

「ん? ・・・まぁ、そうだな。だが。」

 

「ツルギ?」

 

 

 と、そこでツルギは言葉を止めると、普段あまり見たことのない優しそうな笑みで二人を見つめて、再び口を開いた。

 

 

「あぁやって幸せそうに笑い合えているなら、少なくともここは『平和』だということだ。そう思わないか?」

 

 

 そう言いつつ、ハスミの方へと視線を向けるツルギ。確かに、周りの事に一度目を瞑れば、二人の関係は幸せそのものだ。親友同士で仲良く笑い合って、何かを話している。耳を傾けてみると、今日の予定はどうするのかとか、お昼はどうするかとか、そういったごくごく有り触れた、およそ普通の生徒が話すような会話が聞こえてきた。権謀術数渦巻くこの『トリニティ』の中心部たる『ティーパーティー』の一角のトップに所属するミカとリンデだが、今だけはそれを感じさせないような、和やかな雰囲気で日々を過ごしていた。

 

 そんな二人の様子に、ハスミもツルギの言いたい事が何となく分かり、自分達の所属するものの理想に、改めて心から誓うのだった。

 

 

「・・・そうですね。そして、そういった『平和』な『日常』こそ、私達が守るべきもの。ですよね、ツルギ。」

 

「あぁ。」

 

 




はい、という訳で後書きです。

この話なんですが、前書きに書いた通り数時間クオリティです。
昼間にミカの誕生日だと思い出して、大慌てで書いたので、文章の長さの割にクオリティが少し低いかもしれません。何なら原作と矛盾した描写を入れてるかもしれませんが、そこは深く突っ込まないでいただけると助かります。

でも、書きたいことは全部書けたので、個人的には満足です!

ちなみに、ツルギがミカとリンデの事を翌日元に戻ると知っていたのかといいますと、事前にリンデから誕生日パーティーをする事を伝えられていたためです。
じゃあ何でハスミはそれを知らないのか? それは、ちょうどハスミはいつものダイエット中で、この話を知ると間違いなく決意が揺らぐからです。後日その事を教えられて、複雑な気持ちになっているハスミがいるかもしれません。

ミカへのプレゼントに関してですが、リンデが渡したものの理由は以下のとおりです。

1つ目:原作におけるミカへの贈り物で効果が高い物
   かつ形に残るもの
2つ目:リンデがミカを表現する上で話す3つの内、ミカの
   身につけてるアクセサリーの中で唯一無かったもの
3つ目:離れていても、ミカの傍に自分がいられますように

とまぁ、こういった感じで渡してます。1個目以外は、独占欲という名の『愛』が重いが故に送ったものですね。「リンデちゃん色に染められた」というミカの言葉も、あながち間違いではないです。
本人的には似合ったものを送っただけのつもりですが。

前回、本編にてトリモブを出した際に、色々とボロカスに書いた活動報告もあげました。ですが、今回出てきたクラスメイト達に関しては、おそらく例外的に、こんな感じで平和な日常を一緒に過ごしている級友として書いていく事になると思います。リンデ達が日々を過ごす中で、各々もそれぞれの青春を楽しんでいる。そういった日常の風景の一つと思っていただければ幸いです。

砂糖吐きそうになってるクラスメイトは、たぶんこういった百合方向の知識を持っていたんでしょう。そのせいで余計なダメージを追っていますが、まぁおそらく誤差です。コラテラルです。


感想・評価、ここすき、誤字・脱字報告お待ちしてます。 いつも通り、返せる分は返信しますので、よろしくお願いします。

それではまた本編で!

Happy Birthday、ミカ!!
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