ただ、想定以上に後編の話が長くなって4分割になってしまったので、前編中編と分けていたものも含めてタイトルの部分をナンバリング方式に変更します。ご了承ください。
今回はミカリンデ組とヒフナギ組が合流した直後からの話となります。果たしてヒフミの精神は無事なのか?
それではどうぞ!
「あっ、ナギちゃん! ヒフミちゃん! お疲れ〜!」
「お疲れ様です、ミーちゃんさん。リーちゃんさん。」
「お疲れ様です、ナギちゃん。ヒフ」
「リーちゃんさんちょっとこっち来てください。」
「えっ、ちょ、ヒフミ!? 何を?!」
お昼を過ぎ、予定していた合流ポイントについたリンデとミカであったが、そこでナギサとヒフミと合流した途端、ヒフミがリンデの腕を引っ掴んで物陰へと連れ込んだ。普段とは様子の違うヒフミにリンデは困惑するが、連れ込まれた先でヒフミの顔を見た途端、何故ヒフミが自分を物陰に連れ込んだのかを薄々察したのだった。
「急にどうしたんですかヒフ、ミ・・・?」
「ア、アハハ・・・。あの、リンデさん?」
「ど、どうしましたか、ヒフ、ミ・・・。あの、気のせいか顔が引き攣ってませんか?」
「そうですかね? でもそんなことどうでもいいんです。リンデさん次ナギサ様にお会いする時までにせめてナギサ様に『ペロロ様』の名前がちゃんと言えるようにしといてもらえますか? 何ですか『ペロペロさん』ってふざけてるんですか? ナギサ様に悪気が無いのは重々承知してますけど間違える度に私がどれだけ(以下略)」
「あっ(察し」
ヒフミの珍しい早口と、物陰に連れ込まれた途端元に戻っている呼び方に加えて、ハイライトを失ったかなり引きつった笑み、そして額に浮かびかけているシワから、リンデはナギサの愚行を大凡理解した。
おそらくナギサは、『前世』でのヒフナギネタによくあった『ペロロ様』の名前ミスをやらかしたのだろう。それも、一度や二度ではなく、何度も。今もつぶやき続けている中に「何で他の『モモフレンズ』達は覚えたのにピンポイントで『ペロロ様』だけ」なんて言葉も聞こえてくる辺り、他の『モモフレンズ』の名前は自分の好きな『ウェーブキャット』含めて覚えたのにという気持ちも含まれているのかもしれない。
それでもここまでヒフミが耐えれたのは、偏にヒフミがナギサの事を『先輩』として尊敬し、憧れているからだろうと思ったリンデは、必ずナギサに次回までに『ペロロ様』の名前を言えるようにしようと決意した。そして、表情がヒフミというより『ファウスト』と言った方がいいような笑みを浮かべて「アハハ」と笑い出した、もうどう見ても限界なヒフミを抱きしめて慰めることにした。
「アハ、アハハハハハ、ハハッ、ハハ、っ。り、リンデ、さん?」
「ヒフミ・・・。よく我慢しましたね。偉いですよ。でも、今ぐらいは泣いて構いません。辛かったですよね? 大好きな人に、自分の本当に好きなものを分かってもらえなくて。名前を、覚えてもらえなくて。」
ミカにいつもするように、ヒフミの頭を撫でながらそう慰めるリンデ。もう一人の憧れにして『モモフレンズ』仲間のリンデにそう慰められたからか、ヒフミの瞳は光を取り戻し、その目には涙がうっすら浮かび始めていた。
「ち、違いますリンデさん。私は、別に」
―――泣いてなんかいない、と。
そう言おうとしたヒフミを、リンデはさらに自分へと強く抱き寄せて、彼女の耳元で優しく囁いた。
「いいんです、隠さなくて。今だけは、私しか見ていません。ナギサは今、ミカと一緒にいますから。だから、我慢しなくていいんです。」
「っ、リンデ、さん・・・!」
そう言われたヒフミはリンデの胸に顔を押し付けると、啜り泣き始めた。まるで何かを押し殺すように、ひた隠すように。
それはきっと、ヒフミの優しさだとリンデは感じた。この場所の空気を壊したくない。せっかく楽しんでくれてるナギサ達に、自分の泣き声を聞いて心配してほしくない。そういう思いから、こうやって泣いているのだと。
本当は泣き喚きたいのだろう。怒りの感情もあるのだろう。ただ、それら全てを直接表に出さないよう、涙という形に変えて絞り出す事をヒフミは選んだ。こちらが我慢しなくていいと伝えたにも関わらず、その何処までも他人本位な優しさはいったい誰に似たのやらと呆れるリンデであったが、それを無下にするのは憚られたため、ミカとよくやるように、翼も閉じて彼女の涙を受け止めるのであった。
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「グスッ、ひぐっ。もう、大丈夫です。ありがとうございます、リンデさん。」
「いえいえ。普段からよく色々と頼りにさせてもらってますから。こういう時くらい、先輩らしい事をさせてください。」
数分後。ようやく精神状態がある程度回復したヒフミは、まだ少し涙のこぼれる顔を離して、リンデにお礼を言った。まだ若干本調子ではないかもしれないが、先程に比べればだいぶ戻ってきたなという印象を受けたリンデもまた、ヒフミに向けて微笑み―――、目を閉じて一呼吸置くと、すぐにその顔を真顔に変えて振り返った。
「さて。色々と言いたいことはあるでしょうが・・・。今回あなたが怒るのはお門違いですよ、ナギサ?」
「っ、ヒッ!?」
「わ、わぁお・・・。」
リンデが振り返ると、そこには先程リンデがヒフミに引っ張られた結果、置いていかれていたナギサとミカがいた。
どうやら戻りが遅かった事で心配して見に来たようで、ヒフミのすすり泣く泣き声のせいでナギサも怒りのスイッチが付きそうになっていたのだが、リンデが珍しく怒気を放っていた事で出鼻を挫かれただけでなく、普段滅多に怒らないリンデの怒りに当てられてナギサは数歩後ずさっていた。ついでに横にいたミカも、珍しいリンデの怒り様に顔が引きつっていた。
そんなリンデであったが、ミカを見ると怒気を和らげて笑顔を浮かべ*1胸に抱いていたヒフミを差し出した。
「えっ、り、リンデさん?」
「ミカ。」
「な、何かなリンデちゃん?」
困惑するヒフミをよそに、リンデはミカに話しかけた。話しかけられたミカは、自分が怒られている訳でもないのにビビりながらどうしたのかと返事した。すると、いつものように優しげな声音*2でリンデはミカに頼み事をしてきた。
「申し訳ないのですが、ヒフミと一緒に少し席を外してもらっていいですか? ナギサと少々『O☆HA☆NA☆SHI』したい事がありまして。」
「う、うんもちろん! ヒフミちゃんの事は任せてよ〜☆ さあヒフミちゃん、ちょっと私とこっち行こ♪」
「えっ? えっ?! ちょっと、ミk、じゃなかった。みーちゃん様!?」
リンデからのお願いにブンブンと頭を振って、全力で即答すると、ミカはヒフミの困惑も気にせず、ビューンと離れていった。
置いていかれたナギサも、怒気をまとったリンデの傍から早く離れるべく二人を追いかけようとしたが――――
「ちょ、ちょっと待ってください二人とも! 置いていかないで」
「ナ ギ サ ?」
「っ! ・・・ヒィッ!?」
―――肩を掴まれてギギギと振り返ると、そこには『鬼』、否『悪魔』の形相を浮かべた『
「少し、『O☆HA☆NA☆SHI』しましょうか。」
―――それから数秒後、ナギサの悲鳴が周囲に響き渡る事となったのは、言うまでもない。
余談だが、ヒフミは幸いミカに目も耳も塞がれており、ナギサの悲鳴は辛くも大切な後輩に聞かれずに済んだようだった。
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「ゴメンナサイ……、ゴメンナサイ……。」
「だ、大丈夫ですかナギちゃん様?」
「あ~、もう。リーちゃんやり過ぎだよ? ナギちゃん壊れちゃってるじゃん。」
「す、すみません・・・。加減を間違えました。」
更にまた数分後。リンデがナギサと『O☆HA☆NA☆SHI』を終えた頃まで時間は飛んで。
『O☆HA☆NA☆SHI』をされたナギサは、元々白に近い風貌だったのがさらに真っ白に漂白されて、「ゴメンナサイ」Botと化していた。普段あまり怒り慣れてなかったせいか、リンデが加減を間違えてしまったようで、そのせいでこうなったそうだ。
ただ、この頃には幸いヒフミも調子を取り戻していたため、普段のようにナギサの事を心配していた。また、各々呼び方もさっきまで元に戻っていた事に気づいて、渾名の方で呼ぶ事も復活していた。
ミカが珍しくリンデを嗜める発言をすると、リンデも今回ばかりは流石にやり過ぎたと痛感していたため、平謝りするしか無かった。まさか、自分でもここまで怒りの感情をコントロール出来ないとは思っていなかったリンデは内心かなり猛省していて、次こそはこんな事のないようにと、自戒の意味を込めて自発的に正座をしようとしていたくらいだった。尤も、そんな自分の『お日様』の心の機微は察していたミカによって、正座は阻止されていたが。
とはいえ、このままだと今度はリンデまで自責の念で落ち込んで、せっかくの楽しい時間がいよいよ台無しになりかねない。なのでミカは、いつもとは逆にリンデの頭を撫でようとして―――、背伸びをしても若干届かない事に気がついた。
「? ミーちゃん?」
自分に近づいてきたと思えば、急に背伸びをして手を伸ばし始めたミカに首を傾げるリンデ。その様子が少し可愛いな、と心の中のスクショにすぐさま収めたミカであったが、すぐに頭を振ってしゃがむように頼んだ。
「リーちゃん、ちょっとしゃがんでくれる?」
「えっ? それは、構いませんが。何故」
「いいから! ほら、早く!」
「わ、わかりました。」
さっきの奇行(リンデ視点)から急に屈めと言われて、頭の中に疑問符が溢れてきたリンデであったが、今追及しても余計拗れる気がしたので、そそくさとしゃがんだ。すると―――
「・・・? ミー、ちゃん?」
―――優しげな笑みを浮かべるミカが視界に入ってくると同時に、頭を撫でられる感触がリンデに伝わってきた。
(え? えっ? 何ですこれ? どういう状況ですか?)
いきなり撫で始めたミカに、困惑の色を隠せないリンデ。しかし、そんなリンデの困惑をよそに、ミカは話し始めた。
「お疲れ、リーちゃん。嫌だったんだよね? ヒフミちゃんが泣いてるのが。そうなった原因が、ナギちゃんだったのが。」
「・・・はい。」
「フフッ、だと思った。もう、リーちゃんってば優しすぎ。それでやり過ぎたって自分まで落ち込んでたら、世話ないよ? 私達を、楽しませてくれるんでしょ?」
「っ、そう、でしたね。」
このイベントへ足を踏み入れる前、そういうつもりでマッピングや予定を組み立てていた事を思い出すリンデ。ミカにその事を指摘されて、自分が本末転倒な方向へ思考を向けていた事を理解したリンデは、撫でてもらっていた手を掴んで立ち上がり、ミカにお礼を言った。
「すみません、ミーちゃん。大事な事を忘れる所でした。おかげで助かりました。ありがとうございます。」
「いいっていいって。たまには私にも、リーちゃんを励ますくらいはさせてよ。ね?」
「・・・はい。」
少しはにかみながら、ミカの言葉にそう返すリンデ。それを見て、ちょっと調子が戻った事を察したミカは、ヒフミが慰めてるナギサの方へ向き直り、早く起こしてイベントの続きを回ろうと動こうとした―――
「さ、あとはナギちゃんを」
「おいゴルァ! 売れねぇ、ってのはどういう了見だ! アァン!?」
―――瞬間、誰かの叫び声が聞こえてきて、ミカもリンデもそちらへ視線を向けた。
「? 何あれ?」
「どうやら不良生徒のようですが。何があったのでしょうか?」
視線の先には、『即売会』の一角にある店にて、不良生徒が店主に向かってがなり立てているという光景があった。ただ、不良生徒側も見た所お金が不足している、という風には見えないので、何かしら店の側と食い違いが発生しているのかもしれない。
そう判断したリンデは、とりあえずミカと静かに不良生徒と店主の様子を見守る事にした。すると、その答えは店主の口からあっさり出てきた。
「ど、どういうも何も。あなたはこちらの出す質問に答えられませんでした。ですからこの店のシステムとして、お売りする事は出来ないと言っているんです。」
「えっ、どういう事?」
「『転売対策』の一つですね。毎回少ないながらも、『ブラックマーケット』へ転売・横流しをして儲けようとする輩が紛れ込んでるんです。それらへの対策で、『モモフレンズ』のファンなら誰でも答えられる簡単な質問をいくつか設け、それに答えられた人にだけ売るというシステムを設けている店もあるんです。ようは、本当に欲しい人に行き渡りやすくするための、一種の試験ですね。」
ミカにも分かるよう、店主のいうシステムについて、掻い摘んで答えるリンデ。リンデ達の回ってきた側には、ああいったシステムを設けている店が無かったのもあってミカは最初首を傾げていたが、リンデの説明のお陰で何となくそういうものというのは理解して、軽く頷いていた。
「ふ〜ん、そうなんだ。」
「っザケんじゃねぇぞコラ!! こちとら金は払うつってんだろ?! お客は神様って言葉知らねぇのかコラ! ア゛ァ゛!?」
だが、目の前の不良生徒はそれが納得いかないのか、ガンを飛ばしまくって店主を威圧していた。今にも銃を抜きそうな勢いで切れ散らかしていたが、それに少し気圧されながらも店主は毅然とした対応をとっていた。
「で、ですから! 何と言われましても、システム上、あなたに売ることは出来ないんです。どうか、お引き取りください。他にもまだ、お客様はおりますから」
「知るかよ! テメェが売りゃ済む話だろうがよ!」
「あ、あまりしつこいようですと、『ヴァルキューレ』の方々を呼びますよ? いいんですか?」
「ハン、あんなヘナチョコ共なんざ怖くねぇんだわ! こちとらそれ以上の姐御に鍛えてもらってんだ。ヘボ『ヴァルキューレ』でも何でも呼びやがれってんだ!」
しつこい不良生徒に対して、店主が『ヴァルキューレ』を呼ぶと脅しをかけてみるも、とうの不良生徒はまるで聞く耳を持たないどころか、むしろ呼んでどうにかできるものならしてみろと、強気な態度を崩さない始末。おかげで周りのイベント参加者も、不良生徒の圧に怯えてその矛先がこちらに向かないよう、我関せずを貫くしかなくなっていた。
そんな中、不良生徒の態度やその他諸々に苛つき始めた参加者がいた。
「・・・なんかムカついてきた。ねえリーちゃん、ぶっ飛ばしちゃダメ?」
そう、ミカだ。せっかくリンデが調子を取り戻して、これから4人でまた回ろうと思っていた矢先に出鼻を挫かれ、挙げ句目の前でピーチクパーチク叫ぶ『
ただ、いきなり動いたらせっかくのお洋服が台無しになるし、リンデ達に迷惑がかかるのも一応理解しているので、隣のリンデに確認を取ったのだが、結果はNoだった。
「ダメです。いくらお忍びの姿とは言え、流石に顔が目立ちすぎます。そうなったら、この後の予定に支障が出ます。」
「でもさぁ。」
リンデの言い分も理解は出来るが、それでも納得出来ないミカ。しかし、ミカが納得しないのも察していたリンデは、ミカに一つ微笑みかけると、自分に任せてくれないかと提案した。
「ミカ、ここは私に任せてくれませんか?」
「えっ? 別にいいけど、何する気?」
リンデが何をしようとしているのか分からず、怪訝な表情をうかべるミカ。すると、リンデはガサゴソと鞄から何かを取り出して、こう言った。
「何、『保険』で持ってきていたものがちょうどありますので、ちょっとした『手品』を、ね。」
リンデが最後に取り出したのはいったい何なのか。それは次回のお楽しみに。
ヒフミ、精神的にファウスト化しかけるも、リンデのおかげで何とか踏みとどまるの巻。代わりにリンデがブチギレてナギサを「頭冷やそうか?(中の人ネタ的な意味で)」した模様。
友人相手であっても、リンデだってたまには怒ります。なお、そういう怒り方は慣れてないせいか、加減できずにやりすぎてしまいましたがw
たぶん今回のメンバーの中だと、その辺の匙加減うまそうなのはナギちゃん。今作では幼い頃から、ミカリンデに鍛えられてるのでね。年季が違いますよ。
こういったイベントでこんな転売対策的な事してる店があるかは存じないんですけど、今回は話の都合上、あるものとして扱います。
たぶん公式かその委託先だったんでしょう。そういう事にしておいてください。
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それではまた次回!