聖槍に祈りを   作:坂本コウヤ

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連日投稿フェイズ、3日目です。

前回、正義の味方かと思いきや謎の極悪人宣言をして去っていった『ファウスト』。
本日はその後からの続きです。

若干シリアスも混ざるので、苦手な方はご注意ください。


それでは、どうぞ!


第六詩裏:『ティーパーティー』と『普通』と『モモフレンズ』⑤

 

 そんな『ファウスト』の行動を少し離れた所から見ていたミカだったが―――なぜか呆れていた。当然である。何故なら彼女は『ファウスト』が何者か知っているからである。

 

 

「う、うわぁ〜・・・。ちょっとクサくないかな、リーちゃん。」

 

「えっ? アレ、リーちゃんさんなんですか?」

 

 

 ヒフミからの質問に頷いて答えるミカ。そう、件の『ファウスト』を演じていたのは、リンデであった。

 リンデはこういう面倒な事態が起こった際の『保険』として、

白い外套と長手袋にハイソックス、そして黒い仮面を一纏めにした変装セットを忍ばせていたそうで、今回はそれを流用した形であった。

 余談だが、外套の内側には翼を仕舞うポケットのような部位が設けられてたり、着替えが面倒にならないよう二重構造になっていたりと、便利機能が追加されている模様。

 

 また、先程のあの謎の名乗りだが、あれは事前にリンデがミカに伝えた所によると、正義になる事をした後に敢えて反対の宣言をする事で人々に印象付かせて、後々他の事で隠れ蓑として利用できるようにするためとの事だった。

 

 ただ、ここまであからさまな態度をとったら、逆に嘘くさくなるのではないかとミカは感じていた。しかし、そう思って周りを見渡してみると―――

 

 

「『ファウスト』・・・、裏世界を牛耳るもの。」

「そ、そんな人がいたなんて。」

「は、早く『ヴァルキューレ』に通報を・・・!」

 

「あ、あれ~?」

 

 

―――何故か皆、遅まきながら『ファウスト』の事を信じ始めていた。冷静に考えれば相当嘘くさい演技に見えるはずだとミカは思っていたため、この反応にはさすがに困惑していた。

 

 

「お、思ったりより信じられてますね。」

 

「当然ですよ。そうなるように、大仰なパフォーマンスをしたんですから。ハァ〜、疲れました。あっ、ヒフミ。これ頼まれていたものです。どうぞ。」

 

 

 困惑するミカヒフミが話しかけると、その後ろから元の服装に戻ったリンデが合流しながら、ヒフミに頼まれていた分の『ペロロ様』グッズを手渡していた。勿論、先程購入した『ペロロ様ハーモニカ』も彼女への手土産である。

 

 

「あ、ありがとうございます。今渡すんですね。」

 

「本当は合流した時に渡したかったのですがね。まぁ、一品増えたので許してください。」

 

「いえいえ、それに関しては私が原因ですから。」

 

 

 ヒフミは少し苦笑しながら、手渡された『ペロロ様』グッズを受けとった。そこへ、ミカも一仕事終えたリンデを労いながら合流。そのミカに、リンデはさっきの不良生徒生徒への制裁とパフォーマンスについて尋ねた。

 

 

「おかえりリーちゃん。お疲れ〜。」

 

「お疲れ様です、ミーちゃん。どうでしたか?」

 

「うん、まぁ良かったと思うよ。ちょっとわざとらし過ぎる気もしたけどさ。というか、あの『トリックショット』とかいうの、何なの? 銃も普段となんか違うかったし。」

 

「そう言えば、普段使ってるのとは銃種も違いましたね。ショットガンじゃなくて、ハンドガン二丁でしたし。それに見えた感じ、弾が変な軌道してたのもすごく気になります。」

 

「そうそう。ね〜、アレなんだったの?」

 

 

 尋ねられたミカはちょっと苦笑しながら感想を述べて、ついでにリンデの銃がいつもと違っていた事と、不良生徒へ撃つ前に言っていたセリフetc.が少し気になり、ヒフミと頷き合いながら尋ね返していた。

 

 

「え゛っ?あ~、アレですか。アレは、その・・・。その場のノリと言いますか、何といいますか・・・。一応、銃はその、変装用の緊急時装備のようなもので、弾の軌道がおかしかったのは、見えないように『ロンギヌスの槍』で弾いて操作したからなんですけど。」

 

 

 すると、尋ね返されたリンデが急にあたふたとし始めた。一応、ヒフミの疑問点には簡潔に答えていたが、ミカの尋ねてきたセリフに関しては、聞かれると思っていなかったのか目は泳いでいた。そしてよく見ると、何だか顔が少し赤くなってるようにも見えた。

 

 何か聞いてはいけないことだったのだろうか、とミカが思い始め、答えたくないなら答えなくてもいいと言おうとしたが、その前にリンデが、目尻に涙を浮かべながら、消え入りそうな声で答えた。

 

 

「すみません、普段の自分として見られていない事をいい事に、つい、はっちゃけてしまったんです。ごめんなさい・・・。幻滅、してしまいましたか?」

 

 

「「・・・・・・。」」

 

 

 リンデの答えに、しばし無言になるミカとヒフミ。普段のリンデを知ってる二人からしても珍しい様子と声音に面食らったのもあるが、それ以上にリンデにもそんな一面があった事に驚いていた。

 

 静寂の後、ミカとヒフミは目を見合わせると―――、プッと吹き出した。

 

 

「えっ、み、ミーちゃん? ヒフミ?」

 

 

 一世一代の告白のようなつもりで呟いた言葉を爆笑され、怪訝な表情をするリンデ。そんなリンデの様子などお構いなしに、ミカとヒフミは笑いながらこう言った。

 

 

「アハハハハッ! も〜、リーちゃんってば、今更そんな事心配してたの? アハハ、おかしい〜☆」

 

「ちょっ、ミーちゃん様、笑っちゃ失礼ですって! フフフ!」

 

「ヒフミちゃんだって笑ってるじゃん! 人のこと言えないじゃんね?」

 

「ミーちゃん様こそ!」

 

 

 互いに爆笑していることを事を指摘し合う二人。

 その横で笑われたリンデはというと、初めは急に吹き出したミカとヒフミの事を怪訝な表情で見ていたが、何時までも笑い続ける二人にさすがにイラッと来たのか、ムッとした表情で

 

 

「な、何ですか二人して! こっちは真剣に」

「大丈夫だよ、リーちゃん。」

 

 

―――悩んで言ったのに、とそう言いかけたその時だった。

 

 リンデの目に映ったのは、優しげな笑みを浮かべて自分に微笑みかけてくるミカの姿だった。

 その姿に一瞬見惚れかけたリンデであったが、それを悟られまいと何が大丈夫なのかと尋ねた。すると、

 

 

「私もヒフミちゃんも、今更そんな些細な事でリーちゃんの事、嫌いだとか変な娘だとか思わないって事。」

 

「そうですよ。むしろ、リーちゃんさんにもそんな可愛い所があるんですね、って、親近感湧いちゃいました。」

 

 

二人から返ってきたのは、そんな普段通りの言葉だった。

 

 なんて事はない。ミカもヒフミも、リンデにあんな一面があった事に驚きはしていたが、その程度でドン引きしたり、嫌いになったりするような事はなかったのだ。なのにそれをリンデが、今回出してしまった自身の一面を恥ずかしいものだと思い込んで、『前世』の経験から勝手に嫌われると思ってしまっただけの話である。実際、二人の顔は今バカにする様な顔ではなく、いつも通りの見慣れた、楽しそうな笑顔だった。

 

 

「っ、アレ、可愛いですか? どっちかというと、カッコいいとか、そういうものでは・・・。それに、本来の私の、キャラではないですし。」

 

 

 それでも、うちにある不安から、自分のキャラではないから変ではないかと、そう自信なさげに返すリンデ。しかし、そんなリンデの不安を払うように、ミカとヒフミはさらに言葉をかけていった。

 

 

「え〜、私はいいと思うけどな〜。だってリーちゃん、普段は割と淡々としてるから、そんな一面があるって分かるだけでも皆見る目が変わりそうだけど。ねぇ、ヒフミちゃん?」

 

「アハハ、まぁ確かに普段のリーちゃんさんで考えると違和感はありますけど。」

「う゛っ゛!」

 

「む、ちょっとヒフミちゃ〜ん?」

 

「あっ、で、でも!身内に見せる意外な一面としてなら、私は全然有りだと思います!」

 

「ヒフミ・・・。」

 

「そうそう! それにさ、ナギちゃんだってキレたらすっごい口が悪くなるんだしさ。今更そんなのが増えたくらいで、誰も気にしないよ。」

 

「ミカ・・・。」

 

 

 一瞬、ヒフミから少し鋭い一撃は入ったものの、二人の言いたいことは何となく伝わってきたリンデ。ようは恥ずかしがらず、もっと気楽に表に出していいと、難しいなら自分達だけている間だけでもいいと伝えたいのだろう。

 

 正直、まだ不安はある。何せこれに関しては、『前世』では白い目で見られる事もあったため、今世でもあまり出さないようにしてきたからだ。それが今回、演技という形で表に出てしまい、剰えそれをミカに、『前世』の『最推し』にして、自らの『太陽』で『月』で『一番星』で、替えのない唯一無二の『輝き』に見られた事がきっかけで、『前世』の時の恐怖をリンデは思い出していたのだ。

 

 だがミカも、そしてヒフミも、そんなリンデの一面を暖かく受け入れて、その上で肯定してくれていた。それが何より、リンデにとっては救いだった。

 

 だからリンデは、残った自分の不安を鎮めるために、二人に問いかけた。

 

 

「いいの、ですか? こんな私の一面を、これからも見せても。」

 

 

 そんな、不安の入り混じったリンデの問いかけに真っ先に答えたのは、勿論ミカだった。

 

 

「いいのいいの! むしろ私、リンデちゃんのそういう所、も〜っと見たくなっちゃったじゃんね! だから、これからもよろしくね!」

「ちょっ、ミカ!?」

 

 

 そう言って勢いよくリンデに飛びつくミカ。それをリンデは何とか体幹で支えることは出来たものの、不意の飛びつきだったせいで思わずたたらを踏んでしまった。

 

 

「お、お二人共! さっきからまた呼び方が戻ってますよ!」

 

「えっ? あ、ごめん!」

「ご、ごめんなさい。つい。」

 

 

 抱き合うミカとリンデへ、ヒフミが呼び方が戻ってる事を指摘すると、似たような反応をしてしまう二人。それがおかしかったのか、どちらからともなく顔を見合わせると、ニコッと笑い合うのだった。

 

 

「う、うーん・・・。あれ、ここは?」

 

 

 そうやって一段落した所で、今度はヒフミに膝枕をされていたナギサが目を覚ました。ナギサが目を覚ましたのに気づいたヒフミは、笑顔でナギサへと呼びかけた。

 

 

「あっ、ナギちゃん様。気が付きましたか?」

 

「やっと起きたんだ。ヤッホー、ナギちゃん。」

 

「ヒフミ、さん? それに、ミカさんも。あれ、私。どうして・・・。」

 

 

 ミカもナギサが目を覚ましたのに気づいたようで声を掛けると、ナギサはヒフミの膝から身体を起こして、直前の記憶を思い出そうとしていた。そこへ、ミカと一緒に近づいてきたリンデが

屈んでナギサと目線を合わせて、小さく謝った。

 

 

「ごめんなさい、ナギちゃん。私が怒りすぎてしまいました。あなたがわざと間違えたりするような人ではない事は分かっていたはずでしたのに。本当にごめんなさい。」

 

 

 リンデの謝罪を聞いて、ナギサはようやく直前の記憶を思い出した。自分が無意識にヒフミを傷つけ、それによってリンデを起こらせてしまった事を。

 

 おそらく、リンデとしてもあそこまで怒るつもりはなかったのだろう。ただ、普段怒るということに慣れてないリンデを怒らせてしまったせいで、こんな事態になったのは、元をたどれば自分がヒフミを悲しませるようなことをしてしまったからである。

 

 ならば、本来謝るべきは自分であるべきだと考えたナギサは、ヒフミに膝枕をされていたという事を忘れて、普段通りに呼びそうになりながらリンデに顔を上げるよう頼んで自分も謝罪するのだった。

 

 

「リン、ンンッ!リーちゃんさん。顔を上げてください。私の方こそ、ごめんなさい。ヒフミさんが好きなものの名前を何度も間違えるようなことをしてしまって。そのせいで、あなたを怒らせてしまいました。本当に、何とお詫びすればよいか。」

 

「そ、そんな。ナギちゃん様が謝るような」

「はいはい、ストップストップ!」

 

 

 ナギサが謝ると、今度はヒフミがそれに反応して謝ろうとしたが、それをミカがパンパンと手を叩いてやめさせて自分に注目を向けた。

 三人の視線がこちらへ向いたのを確認したミカは、呆れながらリンデ達に向かってこう言った。

 

 

「も〜、またそうやって謝り合戦しだすんだから。そんなんじゃ、楽しい時間なんてあっという間に過ぎちゃうよ?」

 

「「「あっ・・・。」」」

 

 

 ミカに言われて三人はそれぞれの顔を見合わせた。その中でリンデはヒフミと顔を見合わせた時に、何だか今日はミカに同じ事を何度も言われている気がする、と感じてどちらからともなく笑った。

 

 

「・・・そうですね。謝ることなら、後でも出来ますが。」

「今のこの時間は、今しかないですもんね。」

 

「っ、リーちゃんさん。ヒフミさん。」

 

 

 笑い合う二人の言葉に、ナギサもそうですねというように頷いた。お忍びとはいえ、せっかく大好きなヒフミやミカ、リンデとのお出かけなのだ。落ち込んだり謝ってばかりでは、楽しい時間が台無しなのだから。

 

 リンデ達の顔に笑顔が戻ったのを見たミカは、立ち上がった自分の『お日様』の手を繋ぐと、いの一番に駆け出した。

 

 

「そ〜いう事! ほら、分かったら行くよリーちゃん☆」

 

「ちょっ、ミーちゃん!? 危なっ、分かりましたから! 引っ張らないでください!」

 

「ちょっとお二人共! 何処行くんですか?! 待ちなさ〜い!」

 

「あ~、ちょっとナギちゃん様! 置いていかないでくださいよ〜!」

 

 

 そして、走り出した二人を追うように、ナギサとヒフミもミカの後を追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

だが、そんな感じでまた楽しい時間を過ごしに回り出した四人とは別の所にて。

 

 

「わ〜! さっきの人カッコよかったね〜、マコト先輩?」

 

「キヒヒ、そうだなぁイブキ。だが、あんなのよりマコト様の方が、も〜っとカッコいいぞ! なぁイロハ。」

 

「ハァ〜、まぁそうですね〜(棒)」

 

「おいイロハァ!」

 

 

 と、後に何かと因縁が絡むことになる『ゲヘナ』の重鎮たちと、そして―――

 

 

「ふぁ、『ファウスト』・・・。なんてアウトローな人なの? あれこそ、まさしくアウトローの中のアウトロー。私が目指すべき、悪の花形・・・! よし、決めたわ! 私は絶対、あの人を超えるアウトローになってみせる!」

 

 

―――同じく、こちらもとある縁で交錯する事となる、自称アウトローの少女の姿があったのだった。

 




前回、リンデははっちゃけた後にそれを指摘された際の反動が凄まじいと言いましたが、こういう事です。
推しに自分の知られたくない一面見られたとか、オタクからしたら憤死もの確定の地獄ですからね。
まあ、ミカ達が優しかったのと、日頃積み重ねてきた友情のお陰で救われました。よかったね。

敬語組三人は何かと謝罪が先に出ちゃうタイプです。基本的に自分に非があると思ってるメンバーなので。
なので、そこら辺さっぱりしてるミカに適度に流してもらう必要があるんですよね。マジでこれ出来るの、この小説のメインキャラの中でミカぐらいなので、こういった役回りはこれからも出てくると思います。よろしくお願いします。

最後にチラ見せ程度に出した四人ですが、実は最初アルちゃん以外出す予定はありませんでした。ただ、アルちゃんが単独でこんな所に来るイメージないので、ならこういう所に行きたいって言いそうなイブキがいる『万魔殿』の手伝いとしてついてきた、という形で出てもらいました。この頃ならまだ1年のはずだし、たぶん便利屋立ち上げてない、ですよね? と思いながら書きました。
もし立ち上げてても、この世界線ではまだ、という事にしてください。ガバガバですまない。


感想・評価、ここすき、誤字・脱字報告はいつでもお待ちしてます。いつも通り、感想は返せる分は返信しますので、よろしくお願いします。

それではまた次回!
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