聖槍に祈りを   作:坂本コウヤ

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昨日言った通り、2日連続投下です!

前回、カナギとイチカの終了宣言で終わった合同演習。
今回はその続きから始めていきます。


それでは、どうぞ!


第十詩:『首長補佐』と『正義実現委員会』②

 

「―――ふぅ〜・・・。お疲れ様ですハスミ、ツルギ。大丈夫ですか? 怪我などはありませんか?」

 

「えぇ、私は何とか。槍が翼を少し掠めたくらいです。ツルギは?」

 

「・・・まだ頭が少しふらつく。相変わらずの馬鹿力だな、ミカ様は。」

 

「アハッ☆ ツルギちゃんからも痛いの何発ももらったから、おあいこじゃんね♪ でも、加減なしだったから、かなり勢いよく投げ飛ばしちゃったかな。ごめんね。」

 

「・・・演習とは本番を想定して、本気でやるものだ。だから気にするな。」

 

「・・・うん、ありがと。」

 

 

 演習が終わり、リンデとミカはツルギ達と感想戦に入っていた。リンデがハスミとツルギに体調や怪我の有無を尋ねると、ハスミは自分の翼の羽の先端を軽く触りつつ大丈夫だと返し、ツルギはふらつく頭を少し抑えながら、ミカの怪力について言及していた。言われたミカはというと、あぁしないとツルギから反撃されそうだと判断したからと理由を言いつつ、まだふらついているツルギに謝った。

 すると、ツルギは演習は本番を想定してやるものだから気にするなと伝えた。互いに本気でやっている以上、こうした事は起こりうるものだと。ミカは元々、演習や鍛錬といった事とはあまり縁が無い。今日だってリンデ以外にカナギも参加するということで偶々気が向いたから参加しただけで、それ故に加減を間違えたのではと少し心配していたのだ。

 だが、加減無しでやったのが結果的に良かったのだと分かり、ミカはツルギに小さくお礼を言った。そんなミカの様子にほっこりしつつ、リンデはある提案を持ちかけてみた。

 

 

「フフッ、良かったらミカも、今度から私達との鍛錬に参加します? 今回の合同演習ほど大規模なものではないですが、きっといい経験になりますよ?」

 

 

 それは、リンデ・ツルギ・ハスミの三人で暇な時間によくやっている鍛錬への参加だった。今回の戦闘を見ても、やはりミカは我流のセンスだけで戦っているためまだ少し荒削りな部分があると感じられた。確かに、ミカが前線に出ないといけないのは相当な有事でもないとあり得ないが、その有事が将来あり得るかもしれないとリンデは理解しているため、提案してみたのだ。

―――ちなみに下心として、ツルギやハスミとの交流、そして自分もミカと共有できる時間を少しでも増やしたいという思いもあるが、あくまでミカのスキルアップやレベルアップが優先だとして、リンデはそれが表に出ないように努めていた。

 

 リンデの提案を聞いたミカはというと、「ん〜」と顔をしかめると、首を振った。

 

 

「リンデちゃんとの時間が増えるのは嬉しいんだけどさ。流石に毎回こんな汗掻くのは、ちょっとね。・・・さっきツルギちゃんに自慢されたから、気にはなるけど。

 

「ミカ?」

 

「っ、何でもない! ・・・まぁ、一回くらいなら、考えても、いいじゃんね? あっでも、最初は見学にさせて。いきなりは無理だから。」

 

「っ、はい!」

 

 

 ミカの了承の意に、思わず歓喜の声をあげるリンデ。直後に少し恥ずかしくなったのか、口元を手で押さえて視線を明後日の方角へ向けていたが、その場にいた三人には喜んでるのは丸わかりだった。

 

―――ここで終わっていれば和やかな雰囲気で済んだのだが。直後、背後から聞こえてきた声のせいでリンデは喜びの感情から一転、ビクッと身体を恐怖で震わせた。

 

 

 

 

「な〜にをほっこりしてらっしゃるんですか。リ・ン・デ・せ・ん・ぱ・い?」

 

「ビクッ!?」

 

 

 思わず口で「ビクッ」と言ってしまうほどにびっくりしながら、首をギギギと後ろへ向けると、そこには真っ白に眼鏡を光らせながら、背中に般若を背負っているのではないかと感じる程、普段の落ち着いた彼女からは考えられないくらいの覇気を漲らせたカナギがいた。1年生にしてこれ程の覇気が出せるのは、将来有望だなと現実逃避気味に考えていたリンデだったが、明らかにヤバい雰囲気なのは肌で感じていた。

 

「ど、どうしたんですか。カナギ? 一度落ち着きましょうよ、ね?」

 

「落ち着いてますよ、私は。えぇこの上なく。」

 

「いえ、その様子で落ち着いてるというのはあまりにも無理が」

「な・に・か?」

 

「…イエナンデモナイデス。」

 

 

 とりあえず覇気を漲らせたカナギを落ち着かせようとリンデが言葉をかけたが、とりつく島もなくあえなく撃沈させられていた。この辺りでミカもカナギが、何となく怒った時のナギサのような雰囲気に似てるなと感じて「あれ、これやばくない?」と思い始め、こちらへ飛び火する前にツルギ達とそろ〜っと何処かへ逃げ出そうとしたが―――

 

 

「さてリンデ先輩。それと後ろで逃げ出そうとしてるミカ様に委員長さん副委員長さん?」

「ギクッ!?」

「っ、私達も、だと?」

「な、何故?」

 

 

―――今のカナギには全て捕捉されていた。しかも、ミカだけでなく何故か他陣営のツルギとハスミにも覇気が及んでいて、巻き込まれた二人も驚いていた。だが、有無を言わさないその態度に、とりあえず話を聞こうと三人がリンデのいる辺りに集まってきた。すると、

 

 

「正座。」

 

「「えっ?」」

「何?」

「はい?」

 

「正座してください。早く。」

 

 

カナギは突然、目上の四人に向かって正座を要求し始めた。要求された四人はというと完全に困惑しており、あのツルギですら珍しく「こいつは何を言ってるんだ?」と頭に「?」を浮かべていた。

 

 そしてそれはリンデ達も同じで、特に事実上の直属の上司であるリンデは、ツルギ達には流石に不味いと判断してカナギを止めるために動いたのだが―――

 

 

「ちょっとカナギ! 何が気に障ったのかはわかりませんが、身内でもないツルギ達は流石にもごっ!?」

「り、リンデちゃ〜ん!?」

 

「せ・い・ざ、してくれますね?」

 

 

―――何と、カナギは何処からともなく大口のおにぎりを取り出してリンデの口に突っ込んだ。突っ込まれたリンデは、後頭部から演習場の地面へと倒れ伏して白目を剥いて気絶してしまった。それを見てミカが悲鳴を上げてリンデを心配するが、尊敬する先輩がそんな風になってるのも気に止めず、カナギは残った三人に淡々とまた正座を要求した。

 

 

「・・・どうします?」

「・・・何が彼女の逆鱗に触れたか分からんが、明らかに正気ではないな。」

「そうですよね。それにしても、あのおにぎりはいったいどこか、ら、・・・。」

 

 

 ハスミとツルギは小声でどうするべきか相談する。ツルギは明らかにカナギが正気ではないのは気づいていて、ハスミもそれに同意したのだが、突如視線を一箇所に向けると口を開けて固まった。いったい何があったとツルギもハスミの向いてる方へ視線を移すと―――

 

 

「早く正座、してくれますか? それともそこのお二人みたいに仲良くぶっ込まれるのをご所望ですか?」

 

「「・・・・・・。」」チーン

 

 

―――両手に大口のおにぎりをそれぞれ1個ずつ持ったカナギと、その目の前でいつの間にかリンデと同じく、大口のおにぎりを口に突っ込まれて沈められたミカがリンデと仲良く倒れ伏していた。それを見た瞬間、何となく身の危険を感じたツルギとハスミの動きは早かった。素早くリンデとミカの横に正座の姿勢に移行して、カナギの話を聞くことにしたのだった。

 それを視認したカナギは、倒れ伏した己の敬愛する先輩二人を気にすることなく、烈火のごとく話し始めた。

 

 

「良いですか? 貴女方はそれぞれの組織のトップツーなんです。そしてこれは『合同軍事演習』であって『戦術対抗戦』ではないんですよ。何率先して突撃かまして暴れ散らかしてるんですか? 本来なら貴女方は後方から指示出すだけで十分なんです。誰も貴女方に全力戦闘しろなんて言ってないんですよ。死屍累々と化した貴女方の部下たちを回収するのにどれだけ苦労したと思ってるんですか? 加減ってもの知らないんですか? プライベートの鍛錬ならいざ知らず組織同士の合同演習というものは本来互いの『組織』としての強さを披露する場であって『個人』の強さを見せ合う場ではないんですよ。分かってます? 確かに演習では本番さながらの雰囲気でやる事は重要でしょう。ですが貴女方『人間兵器(ワンマンアーミー)』に暴れられたらその他一般メンバーはそれどころじゃなくなるんです!まるで自律兵器みたいに縦横無尽かつ無軌道に槍があっちへこっちへ飛び回るわ見えない衝撃波が飛んでくるわ突如上空から流星群が降り注いでくるわ奇声上げながら真っ赤な目光らせて接近してくる鬼神がいるわ常に的確かつ理不尽な狙撃に晒されるわ! 貴女方は部下をいったい何と戦わせる事を想定してるんですか?! ねぇ聞いてます?!

 

 

 早口でまくし立てながら徐々にテンションをヒートアップさせ、滾々と説教をし続けるカナギ。矢継ぎ早に飛んでくる言葉に、ツルギもハスミも完全に唖然としてたのだが、それが聞き流してるように見えたカナギは更にヒートアップしてしまうのだった。

 その一方で、普段突っ込まれてるものがものだけに、大口のおにぎりから早期に復帰出来たリンデとミカは、それぞれその考えに至った起点は違えども、今のカナギを見て何となく心のなかでこう思ったのだった。

 

 

(何と言いますか、今のカナギは―――)

(何だろう、今のカナギちゃんって―――)

 

((ナギサ/ナギちゃんにすごく似てますね/似てるね・・・。))

 

 

―――その後、流石にずっと早口で喋って息切れしたカナギは、深呼吸してから自分のやらかした事に羞恥がMAXとなってしまい、今度は逆にリンデ達五人の前で頭を地面に突き刺しかねない勢いで何度も頭を下げていた。ただ、カナギの言い分も理解できた*1五人はそれを笑って流した。そしてツルギとハスミから、「寧ろ1年生でこれだけはっきり言いたい事が言えるのは将来有望」と太鼓判を押されることとなり、羞恥が天元突破してしまったカナギは顔を覆って蹲ってしまうのだった。

 

*1
ミカだけリンデの解説付き




カナギちゃん、ブチ切れるとナギちゃん化する、の巻でした。
ぶち込む(捩じ込む)のはおにぎりですが。

いや、ホントなんでこうなっちゃったかな。
何かね、リンデが止めようとする所で天啓のごとくよぎっちゃったんですよ。
で、気がついたらね。リンデの口におにぎり突っ込まれてたんですよ。ついでにミカも巻き添えでナレ込まれ(ナレでぶち込まれる)されてたんです。

・・・まぁ、いっか。カナギも一応ナギちゃんとの繋がりは簡易紹介で出してますし。これも一つの個性ってことで。
あっ、ちなみにカナギの元ネタの方にはこんな特技や特徴、微塵もないです。世界観的にガッツリ西洋系だし。

前回、大量の『ティーパーティー』モブと『正実』モブが倒れていましたが、大半はブチ切れたカナギの言っていた通り、四人、というより主にミカリンデツルギのリアル無双組の暴威に巻き込まれたのが原因です。ハスミは一応、超長距離狙撃しながらちゃんと指示出してました。気がついたら指示先がなくなってた上に、ミカに捕捉されて追っかけ回されてただけです。ただ上澄みの連中じゃないと捕捉できない理不尽狙撃してたから、巻き込みで怒られただけです。不憫だ・・・。

あと、本当はイチカにも宥め役で出演してもらう予定でしたが、カナギが余計にヒートアップして収拾つかなくなりそうだったので、あえなく断念しました。次回出るとしたら、マシロちゃん入ってからかな?(←えっ?)


ちなみに次回の話ですが、難航してるのでどうしようかな〜、とか思ってたら、投稿してから急に筆がめちゃくちゃ進んで投稿できそうなので、明日投下出来そうなら投下します。

本当はアンケートまで取ってどうしようか一週間見るつもりでしたが、やっぱり最新話投稿して感想とかお気に入りが増えるのを見ると、モチベが上がりますね!
改めてになりますが、これからも筆者と『聖槍に祈りを』を、応援の程、よろしくお願いします!!


感想・評価、ここすき、誤字・脱字報告お待ちしてます。 いつも通り、返せる分は返信しますので、よろしくお願いします。

それではまた次回!
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