あと1話で連投記録更新です!
今回は残っていた最後の首長との日常回です。
今回は前回3話分に比べて割とあっさり目ですが、彼女には次槍特大の見せ場があるのでね。楽しみしていてください。
実装、ずっと待ってます(小声)
また、久々に『ティーパーティー』の分派に関する話が少し出ます。間違ってたらご指摘お願いします。
皆様のお陰で、この小説もついにお気に入り登録が250の大台を突破しました!(投稿時点で260前後)
UAもこのまま行けば20000に届きそうなくらい見てもらえてるみたいで、物凄く励みになっております!
これからも頑張りたいと思いますので、どうかこの『聖槍に祈りを』を、これからよろしくお願いします!
それでは本編です! どうぞ!
「百合園首長、この書類はどうしましょうか?」
「あぁ、それか。そこの棚の2段目に頼むよ。」
「畏まりました。」
ミネとの一件から数日経った放課後。リンデは珍しく、セイアのいる『サンクトゥス分派』の執務室にいた。今日は月に一度、セイアのサポートとして出向する日であり、ミカをカナギ達に任せたリンデは、セイアと書類仕事に勤しんでいた。
『サンクトゥス』は『パテル』とは違い、『文化財』の保護や『歴史』の編纂、『信仰』の解釈という、過去から積み上げられてきたものを守り、調べる事に重きをおいている。『シスターフッド』と性質的には近いのだが、あちらと違い政治的なものが根深く繋がっているため、政治色が強いのが特徴である。
またその性質上、外よりも内との関係を重視する傾向があり、常に外界との繋がりがある『パテル』とは反目し合うことが多い。セイアのサポートでここに来るようになって初めの頃は、リンデもそういった負の視線に晒される事が多く、今でもまだ疑いや怒りの目を向けてくるものはいるものの、日々の活動のお陰である程度緩和はされているように感じていた。
ちなみに、残る『フィリウス』の担当だが『伝統』と『規律』である。法・条例の整備や、学園内の諸問題へ対処するのは大抵『フィリウス』であり、各部活の予算や備品の管理、申請なども最初はここを通す事になっている。また啀み合いがちな『パテル』と『サンクトゥス』の仲裁も兼ねないといけないので、実は意外と苦労人気質な分派でもあったりする。―――閑話休題。
さて、そんな『サンクトゥス』でのリンデの仕事は、主に回されてきた書類の整理や整頓、セイアの体調管理である。セイアは元々病気がちで体調が安定しない面があり、その為誰かがついていないと何かあった際の対処が出来ない。だが元々『サンクトゥス』は分派として人数があまり多くない。その上そのメンバー達も各々の仕事があり、手が回らない事も多々あった。
そこで『首長補佐』としてリンデを任命する際、セイアが条件として盛り込んだのがこれである。自身の身の安全を確保しつつ、かつ分派としてもメンバーを割かなくて済むこの案は、最初はミカや『サンクトゥス』のメンバーから反対があったが、ミカはリンデが何とか宥め、『サンクトゥス』の方はセイアが淡々と説明することで何とか納得させる事が出来た。
余談だがナギサは守秘義務や情報漏洩のリスクを理由にこの月1の出向制度を利用しない考えだったのだが、利用し始めてからミカセイアリンデの距離が縮まっているように感じて、無自覚な羨ましさから改めて制度の利用を申請した経緯がある。それでいいのか『フィリウス分派首長』。
「首長、そろそろ一度休憩を入れましょう。無理は体に障りますよ。」
「おや、もうそんな時間かい。分かった、そうしよう。」
そんな事はさておき、リンデは一度時計を見ると、セイアに休憩を促していた。促されたセイアも仕事用の椅子から離れると、リンデと一緒に休憩用のソファへと移動した。
セイアが座るのを見届けてから、リンデは『サンクトゥス』の執務室備え付けのティーポットで紅茶を淹れ、それをセイアへ差し出した。セイアもそれを受け取ると、ゆっくり味わうようにチビチビと飲み始めた。
「・・・相変わらず、キミとナギサが淹れる紅茶は美味しいな。ありがとう。」
「お気になさらず。それに、ナギサと比べればまだまだです。」
「謙遜することはないさ。評価すべきものは、正しく評価されるべきだ。」
「ありがとうございます。」
セイアの言葉にお礼を言うと、リンデも自分用に淹れた紅茶を飲み始めた。それからしばらく、二人で紅茶を味わうだけの時間が流れる。静かでゆったりとした時間の中で、ミカやナギサと共に過ごすのとはまた違う穏やかな雰囲気に、リンデは思わず外からこの空間が切り離され、時が止まっているようにも感じられた。
そんな緩やかな静寂の中、セイアの言葉が軽やかに響いた。
「さて、リンデ。ここからは『個人』として話したいのだが。」
「・・・どうしましたか、セイア。」
セイアの『個人』という言葉に反応して、呼び方を変えるリンデ。すると、さっきまでの静謐とした空間の雰囲気がいくらか和んだ気がした。その弛緩した空気の中で、セイアがふぅっと息を吐き出し、リンデに更に言葉を投げていく。
「すまないね、いつも気を遣わせてしまって。」
「いえいえ。セイアにも十分気を遣っていただいてますから。」
「分派の中には、未だに君を警戒しているものもいる。そのために『個人』と『補佐』を切り替える事を強いているからね。これくらいは、友人として言わせてくれ。」
「なるほど。では、私も友人として受け取らせていただきます。」
「そう言ってくれると助かる。少しだが、肩の荷が下りるよ。」
『サンクトゥス分派』内の、リンデに対する疑いの目を向ける者達へのアピールも兼ねて、口調の切り替えを強要せざるを得ない状況をリンデに謝るセイア。リンデとしては特に気にしていないどころか、逆にそういう気遣いをさせないといけなくなっている自分の至らなさの方が申し訳ないと思っているのだが、普段からそこそこの付き合いがある気兼ねない友人としての言葉であれば、素直に受け取ることにした。
「そういえば、ミカから聞いたが。先日、ミネと何かあったらしいね。大丈夫かい?」
「っ、その件は本当にご迷惑をおかけしてしまいました。ここまで大事にするつもりはなかったのですが。」
セイアが先日のミネとの一件について尋ねると、リンデは少し動揺した後、すぐさまセイアに頭を下げた。本当は自分とミネの間で消化すべきものであるのに、あの日の自分は本当に疲れていたのか、ミカやカナギに余計な心配をかけてしまうようなことを話してしまった。そのせいで別の日にナギサにも心配され、本当に議題に挙げられそうになって慌てて止めたのは、リンデにとっても記憶に新しい。
幸い、「本当にどうしても我慢できなくなったときには必ず相談する」という約束の元、ミカとナギサには納得してもらったので、セイアも含めた場で議題に上がることは無かったのだが、それはそれとしてセイアにもどうやら共有はされていたのが、リンデとしてはまた余計な心配をかけてしまったのではと感じて、本当に申し訳ないと思っていた。
「まあ確かに君の言い分も分かる。今回の一件は突き詰めれば、極論君とミネの問題でしかない。当人以外が関わる必要はないだろう。」
セイアもそれが分かってるからか、リンデの気持ちには深く踏み込むことはしなかった。ただ、友人として一つ言いたいこともあったので、「だかね」と一つ前置きをすると、言葉を続けた。
「だがね、リンデ。君はもう少し、周りに自分がどう思われているかに目を向けたほうがいい。」
「自分がどう思われているか、ですか。」
オウム返しのようにセイアの言葉を繰り返すリンデ。しかし、周りに自分がどう思われているかという事は、この役職についてから嫌というほど考えている。その上で、『負の感情』に関しては爆発されないよう、うまくヘイトコントロールしながら過ごしているつもりだとリンデは考えていたのだが、セイアの言いたいことはそういうことでは無いようで。
「そうだ。特にナギサやサクラコ、ヒフミのような君に近しい人達に君がどう思われているのか。それに対して、君は少し疎い面がある。ミカに関してはそうでないようだが、それでも理解した上である程度踏み込ませないようにしているだろう?」
「・・・・・・。」
「沈黙は肯定と受け取らせてもらうよ。」
セイアの言いたいことが理解できたリンデは、少し目を逸らして俯いた。確かに、一般『ティーパーティー』生徒やクラスメイト以外からの視線や悪意には敏感なリンデだが、ミカやナギサ、ヒフミ、サクラコと言った友人達、カナギ達『事務方』の自分へ向けてくる気持ちというのをうまく汲み取れている自信がなかった。
それにしたって、最近ようやくミカからの好意に気付けるようにはなったものの、それを素直に受け取るべきではないと考えているリンデは、セイアの言う通り、意図的に壁を作ってそれ以上踏み込ませないようにしていた。そして、そう思う根拠もリンデの中には確かにあり、それを少しぼかしながら、セイアに言葉を返した。
「・・・ミカには、私なんかよりも相応しい人がいます。将来必ず、彼女と愛し合える『王子様』が。」
「だから自分は、彼女の好意を受け取るべきではない、と。」
「はい。」
そう。リンデにとって、ミカは確かに救いたい存在で、一人にさせたくないという思いもまた本物である。だが、その最終到達点で隣りにいるべきは自分ではなく、近い将来現れる『あの大人』であるべきだと思っているのだ。だからその未来に到達するためなら、自分の存在の全てを擲つ覚悟があるし、その道の途中で朽ち果てる事になったとしても、『あの大人』が必ずミカを救い出してくれると信じている。ならば自分がやるべき事は、その為の道を、未来を貫く一つの『槍』であるべきで、そんな『槍』が彼女の心からの『想い』を受け取る訳にはいかない。その一心で、リンデはミカからの好意をやんわりと受け止めていた。
リンデの言葉を聞いたセイアは、浅く溜め息を吐くと、呆れながらも彼女の、彼女達の幸せのために、リンデに一つ忠告することにした。
「・・・筋金入りだとは思っていたが、ここまでとはね。いいかい、リンデ。君がそう思う根拠が何なのかは知らないが、少しは自分を大事にしたまえ。君が受け取るべき好意も含めてね。でないと近い将来、後悔することになる。」
「それは、そうなる『未来』を見たからこその忠言、という事ですか?」
「あぁ。」
セイアに宿る『神秘』。
それは、『未来』を見通す力。
自由に使えるわけではないが、セイアはこの力で、いくつもの未来を見せられてきた。
当然その中には、リンデが関係する未来もある。その中でも特に多いのが、ミカやナギサ達からの好意を素直に受け取れず、役目に殉じて、全うしきってしまうというものだった。そしてその先に待っているものをリンデが見れば、それは決してリンデの望む未来などでは無いだろうと言う事も分かった。
だからこそ、セイアはここでリンデに釘を一つ刺した。本当に君が望む未来を見たいなら、ミカからの好意を素直に受け取るべきだと。
リンデは目を閉じて、セイアの言葉をゆっくりと咀嚼する。ここでセイアがわざわざ言ってくるという事は、近い将来本当にそういう出来事が起こるのだろう。それに関しても、『前世知識』のおかげで何となくこれかなと該当するものがあるので、セイアが見た『未来』は、確かに起こるのだろうと確信を持てた。しかし―――
「―――忠言、痛み入ります。ですがそれでも、私は・・・。」
―――それでもやはり、ミカからの好意を素直に受け取るのは難しかった。
リンデにとってミカとは、『前世』からの『最推し』であり、今世では暗闇の中独りだった自身を救ってくれた『太陽』/『月』/『一番星』であり、替えのない唯一無二の『輝き』なのだ。
今くらいの距離感であれば、ただミカが甘えて、自身もそんなミカの好意で甘えさせてもらえる絶妙な距離感で済む。しかし、今よりさらに近くなるのは、リンデの中の『推しを想う気持ち』と決意が許してくれそうになかった。
それを聞いて、これ以上は無理かと判断したセイアは、あとはミカの努力次第だなと思いながら、後悔しないようにと言葉を告げた。―――ついでに自分が、少しだけ望んでいる『未来』の事を付け加えて。
「・・・まあ、後悔しない選択を選ぶと良い。ただ、願わくば君達が、揃って笑顔である事が、私のささやかな望みだがな。」
「セイア・・・。」
「それに、君の『解答』に私はまだ理解が追いついていないんだ。勝手に居なくなられては困る。」
セイアが言った『解答』が指すもの。
それに気づいたリンデは一瞬面食らうと、少し笑って茶化すように聞いた。
「・・・フフッ、そちらが本音では?」
「・・・どうかな? 」
「素直じゃないですね。」
紅茶一口飲んで、口元を隠すように返すセイアに、素直じゃないなと感じたリンデは、そのままセイアに思った事を言った。すると、今度はセイアがジト目でリンデを見ながら、呆れた表情でこう言った。
「君がそれを言うのかい?」
「私は何時だって素直なつもりですよ。今だって」
「ミカの好意を知ってて受け取らないくせにかい?」
「っ、受け取ってはいます! まだ返事してないだけです。」
セイアからの思わぬ反撃に少し言葉が詰まりそうになるも、何とか言葉を返していくリンデ。しかし、その程度ではセイアの追撃の手は回避できず、セイアは冷静に次の言葉を放ってきた。
「それは素直じゃないのではないかね?」
「っ、言ってくれますね。・・・いつかは返事します、いつかは。」
そう言って、少し不貞腐れたようにふんっ、と顔をセイアから背けるリンデ。普段は年上のように感じることもあるリンデの珍しい一面に、何だかミカに近いものを感じたセイアだったが、それを言うとまたややこしくなりそうだと考えて、最低限の事だけ言うことにしたのだった。
「それは返事しないものの言葉な気がするが。まぁ、いいだろう。期待しないで、吉報を待つとするさ。」
それだけ言って、再び紅茶をチビチビと飲みだすセイア。
言われたリンデはというと、「・・・そこは『期待してる』じゃないんですか?」と小声で呟きながら、拗ねた感じで紅茶を飲み干して、自分の分を追加していた。
そんな彼女の姿が、やはり彼女の幼馴染と似ていて。セイアはクスリと小さく微笑むのだった。
友人同士は、お互い多かれ少なかれ影響を与え合うもの。
普段からお肌の触れ合いもしてる二人なら、その距離感は推して知るべし、という事です。
それと前回のアンケートですが、意外と需要があるみたいなので、第一槍が終わって落ち着いたら描いて載せようと思います。
アナログかつ白黒ですが、それでもよければ楽しみにしていてください。
感想・評価、ここすき、誤字・脱字報告お待ちしてます。 いつも通り、返せる分は返信しますので、よろしくお願いします。
それではまた次回!